今回は京アニが力を入れている大人気シリーズ『Free』の新作劇場版のお話です!
結局、テレビシリーズは一切見ないで劇場版のみを鑑賞しているなぁ
カエルくん(以下カエル)
「もちろんテレビシリーズを見てから劇場版を観るのが正解だとはわかっているんだけれど、結局劇場でやるならばそっちを見ればいいかぁ……という形になってしまっている部分があるかな」
主
「でも決して惰性とかFreeシリーズが嫌いというわけではなく、結構楽しみに見に行っているんだけれどね」
カエル「これで劇場版も何作目だろう……多分4作目? くらいになるのかな。
OVA形式のものもあったりしたし、それこそ毎年劇場公開しているシリーズだよね……その人気ぶりがすごいし、新作劇場版も2020年の夏に公開予定ということで、ますますFree人気が上がっていくことになるでしょう」
主「ということは京アニは『ユーフォニアム』『Free』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を同時並行で進めているのか……どれも人気だし、作画なども飛び抜けて素晴らしい途轍もないシリーズばかりだから、どのような作品になるのか非常に楽しみだね」
カエル「では、テレビシリーズを観ていないけれど、過去の劇場版シリーズは全て観ているという、おそらく他に類のない稀有な感想記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
人気アニメーションスタジオである京都アニメーションが手がける、水泳に青春をかけて打ち込む少年たちの姿を描いた人気アニメ『Free!』シリーズの第3期にあたる『Free! Dive to the Future』を再構成し、新たなシーンを追加した劇場版アニメ作品。
過去の『Free!』シリーズの劇場版作品、ならびにテレビシリーズ第3期でも監督を務めている川浪栄作が今作も監督を担当する他、脚本はシリーズを通してシリーズ構成を担当する横谷昌宏が務める。
キャストはシリーズおなじみの島﨑信長、鈴木達央、宮野真守、内山昂輝などの他、3期からの新キャラクターに阿部敦、松岡禎丞、広橋涼などの豪華キャストが起用されている。
岩鳶高校を卒業して大学生となった遥と真琴は中学時代のチームメイトである旭と郁弥と再会するが、ギクシャクした関係となってしまう。さらに真琴は進路に迷いを抱きながらも、自分の進路をどのようにするか模索する日々が続いていた。
岩鳶高校水泳部には新たな部員3名が入部。遥と真琴が去った後、残された渚と怜は部の先輩として後輩たちを指導していく……
感想
では、いつものようにTwitterの短評からスタートです!
Freeの魅力は伝わるものの、ただ少し1つの作品としては辛い評価になってしまうかなぁ
カエル「えっと……決して駄作というわけではないんだよね?」
主「作品そのものの評価でいえば、そこまで悪くはない。
むしろ、青春群像劇として観たら相当面白いし、スポ根ものとしてレベルの高さも感じられる。
ただ、これは自分の見方が……つまりテレビシリーズを観ないで映画だけを観ていくというやり方が悪い部分も大いにあると認めるけれど、やはり映画としてはどうかと思う構成もあるかな」
カエル「まあ、元々映画のために作られた作品ではないもんね……
話によると3期の中でも序盤のお話はバッサリとカットし、OPだけで全てを説明してしまっている模様です。
この構成自体もどうかと思う部分はあるものの、ただすでに劇場アニメだけで数作作られており、テレビシリーズも3期まで放送されているため、ここから入門する新規ファンはほぼいないという判断もあったものと思われます」
主「だから当然のことながら完全初見さんがこの映画を観て理解不能となるのはしょうがないでしょう。
この総集編や映画を何作も続けることの功罪もそれはそれであると思うし、それこそ『響け!ユーフォ二アム』シリーズも同じだけれど……まあ、それはいいとしよう。
ただ総集編映画ではあるし、物語は走った部分や説明を省略した部分は多く見受けられるけれど劇場で魅せるレベルの作画・音楽などのレベルにあることはさすが京都アニメーションと納得した。
元々劇場で見せることもある程度想定はしているのかもしれないけれど、テレビアニメでも劇場で観ても問題ないように作るというのは、非常に手間がかかって大変だろうし、素晴らしいことだよね」
構成の難しさ〜群像劇と主役の問題〜
では、その問題点と難しさについて語りましょうか
う〜ん……やっぱり1本の物語にまとめるにはエピソードが多すぎたのではないだろうか?
カエル「今作だけを観た場合、果たして誰が主役なのか? ということがあまりわからないんじゃないかな? という思いはあったかな」
主「この辺りは同じ京都アニメーションが製作して、総集編も作られている『響け! ユーフォニアム』シリーズと比較するとよくわかる。
ユーフォの場合はあくまでも主人公である黄前久美子というキャラクターを中心に添えて物語を展開していく。番外編である『リズと青い鳥』は例外ではあるけれど、それでも2人の関係が主軸だよ、とわかるように映画を構築してきた。
一方でFreeシリーズはその真逆と言える。本来、クレジットの1番上に登場する人物……つまり遥が主人公として最も活躍しなければいけないのに、この映画のみでいえば彼が出てくるシーンは……もちろん多いけれど、特別多いわけではない」
カエル「優遇されているのは当然わかるんだけれど、でも岩鳶高校の水泳シーンなどではあまり出てこないから、遥が中心の物語とはいいずらい部分があるね」
主「この辺りは明確に欠点として出てきてしまっている。
だから物語そのものは”遥の物語””真琴の物語””岩鳶高校の物語””その他の物語”というような形でいくつも別れてしまっている。
本来、1作の映画として見せるのであれば、それらの物語が集合し大きな意味やカタルシスを味わうためのものにするべきなんだけれど……それができていないのが問題とも言える」
今作の難しさ〜明確なゴールの不在〜
そのカタルシスがあまりないというのは、どういうところに由来するの?
あくまでも新作劇場版への繋ぎなんだよね
カエル「2020年の夏に公開されるという作品は完全新作映画であり、おそらく世界と戦う遥や凛などの姿を描く作品になるだろう、という憶測の作品です」
主「すごく難しいのは、この映画って……言葉が悪いかもしれないけれど色々と片付けることが多い作品なわけ。
まず次回作に向けての遥が向かい合うべき壁、ライバルであり親友でもある凛の存在、そして何よりも次回作以降で強力な敵の存在の描写。
それ以外でも岩鳶高校の物語も卒業してはい終わり! ってわけにもいかないから描かないといけないし、とにかくやるべきことが多い」
カエル「前の劇場版では新入生歓迎会の部活紹介を工夫する姿などもあったから、岩鳶高校を観たい! という人も多いだろうし……それこそ真琴の進路も描かないといけないし……」
主「そのあたりの処理を行いながらも、次に繋げることを描く。だけれど、この作品だけでカタルシスを感じる……つまり世界大会優勝とまでは言わないけれど、大きな成果を残されると次に繋がりにくい。
その意味では相当難しい作品だったと思う。
だからこそ総集編は変にカットすることなく、群像劇としてこのような描き方をしたというのは、自分はFreeという作品の魅力を伝えるためには適していたと考えていて……まあ、難しい作品ではあるけれど、次のゴールに向けての明確なバトンとなっているのではないだろうか?」
過去作品とリレーをして飛び込んでいく物語
Freeシリーズにずっと携わってきた鈴木達央はテレビシリーズ3期のインタビューにて『リレーと同じでちゃんと引き継いで次に飛び込んでいく形になっているな』と語っています
やっぱり、誰か1人だけの物語にならないのもFreeの魅力なのかもね
カエル「劇場版の1作目にあたる『ハイ☆スピード』は武本康弘が監督を『Free』のテレビシリーズ1期と2期は内海紘子が監督を務めています。
今作ではテレビシリーズ3期でも監督を務める川浪栄作にバトンをタッチしています」
主「京アニってさ……これは他の作品も同じなんだけれど、物語自体はそんなに派手なことが起こらないのよ。もちろんドラマとしては派手なんだけれど、たとえば超能力バトルとかさ、ロボット同士の血みどろの戦いなんてものはない。
あくまでも人間同士のドラマに強くスポットライトを浴びせた作品が多いんだ」
カエル「特に青春ドラマが多いのは日本のアニメ全体に通じる特徴だけれど、血なまぐさい作品って初期の頃はともかく、近年はそんなに多くないかな。ヴァイオレット・エバーガーデンも戦争のお話はあるけれど、それはあくまでも過去でありメインはまた違う人間ドラマだし……」
主「それは今作でも同じなんだよ。
明確な1人のスーパースターだけが力を発揮して勝ち上がる物語ではない。
俺つえー系の映画とは真逆の作品といってもいいかもしれない。もちろんエースはいるけれど、きちんと壁にぶつかったり、色々な悩みを抱えている等身大の登場人物だ。
やっぱり、その姿勢って京アニの色だと思っていて……今作ではプレーヤー以外の道も示すけれど、みんながみんなエースになれるわけではない。
でも、そのエースが素晴らしき指導者になれるわけでもない。
その”自分にできること”や”自分のやりたいこと”を見極めて、バトンを繋げてきたシリーズと言えるのではないだろうか」
カエル「それが監督交代劇に出ていると?」
主「そうなんじゃないかなぁ。
京アニの中でのバトンをつなぐ行為……つまり、進学などで次のステップにあがった時に監督が変わることが、この物語の”リレー”というものにメタ的になっているような気がするんだよね。
その意味ではものすごくゴールが長い作品であり、おそらくシリーズが完結しないと何も言えないんじゃないかなぁ……という予感がしている。
今作は若干ごちゃごちゃしてしまった部分はあるけれど、どれも引き継いだバトンとして大事なものだから……だから、誰かの物語にしてシンプルにするのではなく”みんなの物語”として描いたのではないか? 今ではそんな思いがあるよ」
まとめ
では、短めですがこの記事のまとめです!
- 総集編であることは否めないが、Freeの魅力が伝わる物語!
- 今までのお話と次回へのバトンパスや整理のためのお話の印象も……
- 今作のリレーの様子がメタ的な意味合いが監督交代劇に現れている?
またテレビシリーズを見ていると印象が変わるのかな
カエル「さて、次はいよいよ2020年公開の新作劇場版です!
そこに向けてある程度映画を見ておさらいは必要かもね」
主「もっと色々と調べなければなぁ……
本当はもっと語るべきこともたくさんあるんだろうし、勉強してしっかりと愛を持って語れるようになりたいと思います」
最後に
京都アニメーションという会社の大きな魅力はどこにあったのでしょうか?
私はグロや過度なバトル描写などの派手でショッキングなシーンで視聴者を釣らないドラマ性の強さだったと思います。もちろん『フルメタルパニック』などのような派手で時には人が亡くなるようなロボットアクション作品などもありますが、近年はより平和的な、高校生たちの日常を扱った作品を多く手がけてきました。
しかし、それはつまらないという意味ではありません。
ファンを魅了して離さないドラマ性の濃さが多く発揮されていました。
日常の尊さ。
心地いい状況から卒業する姿。
過酷な現実を断ち切ろうと決断する姿。
それは我々、一般の観客の誰にでも平等に訪れる人間らしいドラマでした。
自分にできることは京都アニメーションという素晴らしい日本を代表するトップクリエイター集団の仕事を楽しむこと、そして語ることです。
時にはキツイことも言います。
盲目的に愛する作品もあります。
でも、そうやって作り上げられた”作品”を愛する姿勢が、本来京アニを語る上であるべき姿ではないでしょうか。
京都アニメーションは悲劇と共に語られるべきスタジオではありません。
私は好きなスタジオの好きな作品を好きなだけ好きな切り口で語っていきます。
被害に遭われた方が心身ともに回復されることを心よりお祈りします。
また亡くなれてしまった方のご冥福を心よりお祈りします。
物語る亀