亀爺(以下亀)
「今年もポケモンの季節がやってきたの」
ブログ主(以下主)
「毎年恒例の世界的キャラクター作品だから、注目度も高いね」
亀「子供たちもたくさんいたし、みんなDSを手にしているの。配信されているポケモンのマーシャード狙いの子も多いのじゃろう。
昔からミュウだったり、セレヴィなどを配布しておったが、これもまた動員につい良い理由なのかもしれんな」
主「そう考えるとポケモンって元祖デジタルおまけ配布作品作品だよね。最近はスマホ系作品がオーブ的なものだったり、キャラクターや強力なアイテムを配布していたけれど、その元祖がポケモンだと思うと中々セット販売だ! って批判もしにくいというか……」
亀「悪いことではないしの。今作は大人の姿も多く見られたが、カップルなどもおって子供向けキャラクター映画であるのは間違いないないが、コナンなどのように大人にもファンが多い1作になっておるのじゃろうな」
主「20年だもんね。
当時……10歳までがポケモンをやっていたと考えても、今は30歳。お父さん、お母さんとなって小さな子供とポケモンを楽しんでいてもおかしくはない。
そう考えてみるとポケモンもドラえもんやコナン、クレヨンしんちゃんなどのように、親子で楽しむことができるキャラクターコンテンツとして根強い人気があるんだな」
亀「ふむ……ここ数年で将来的にそうなりそうなコンテンツというと……妖怪をウォッチくらいかの? そう考えてみるとあの当時はポケモン、デジモンなどのお化けキャラクターコンテンツがたくさん出ていたんじゃな」
主「おもちゃアニメが全盛の時代でもあったんだろうな。
それでは今年は最新作の『キミにきめた!』の感想を書いていこうか」
亀「その前に1つだけ宣伝じゃが……昨年の『機巧のマギアナ』の記事もよろしくの。
おそらく、マギアナに隠された2016年らしい裏のテーマに気がついておるのは、このブログだけじゃろう。
話半分でもなかなか面白い発見があるはずの記事なので是非目を通して欲しいの」
主「マギアナも面白い映画だったし、テレビ放送はされたけれど DVDなどで見て欲しい1作だよ」
1 原点回帰の物語
亀「では本作の感想と行くが……
さすがポケモン、オールドファン狙い撃ちの作品じゃったの」
主「ちなみにTwitterでの鑑賞直後の短評は以下の通りです」
#ポケモン 短評
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年7月15日
オールドファン狙いうちな作品
意欲作でもあり評価したいチャレンジ精神もあるが、個人的にはちょっと期待外れな面もあるかなぁ
ただ劇場に溢れたちびっ子達の鼻をすする音
これが本作の評価を何よりも物語っている
主「ちょっといきなりコアなところを語るけれど、スタートで『めざせ! ポケモンマスター-20ts Anniversary-』が流れる中でスタッフの紹介がある。もちろん、この曲自体もポケモンを代表する1曲であり、すごく重要なもので涙腺を刺激するんだけど、重要なのは本作の脚本で首藤剛志さんの名前がクレジットされているんだよね。
さすがに脚本家に注目するのはコアなファンだろうけれど、首藤剛志さんは初期のポケモンシリーズに深く関わっていて、劇場作品としては『ミュウツーの逆襲』『ルギア爆誕』『結晶塔の帝王 ENTEI』の脚本に関わってきた。
テレビシリーズ版の脚本は、1997年の放送開始から2002年まで関わっている」
亀「残念ながら2010年に亡くなってしまっておるの。
初期のポケモン作品に深く関与し、現在のポケモンの形を作り上げた1人であることは間違いないの。
テレビシリーズでは第1話の『ポケモン、君に決めた!』であったり、感慨深いのは134話の『リザードンのたに! また会う日まで!』などの脚本を書いておる。どちらも本作にも重要な意味を持つ話じゃの」
主「一部脚本とはいえ、首藤剛志さんの名前がクレジットされていたことでじんわりきたファンもいると思う。
さすがにそれはコアなファンかもしれないけれど、内容からしてもあの頃の……20年前の出来事を思い出した人も多かったんじゃないかな?」
ホウオウとの出会い、あの当時でも衝撃で鮮明に覚えている人も多いのでは?
(C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト
オールドファン歓喜の作品
亀「まず、ピカチュウとの出会いはそのまんまテレビシリーズ第1話と同じ流れじゃった。懐かしいの、当時はリアルタイムで鑑賞していたものじゃ」
主「今となっては普通にみんなが知っている存在であるホウオウだけど、当時はアニメが初登場でね。『あのポケモンは一体なんだ!?』ってちょっとした話題になったんだよ。アニメのポケモンで今までに見たこともない未知のポケモンと出会う衝撃、それを視聴者もサトシと同じように体験することができたわけだ。
そう考えると当時からポケモン作品は視聴者や子供向けに、どのようにアプローチをするかしっかりと考えていたということだろう」
亀「その象徴の1つがピカチュウじゃろうな。
これはスタッフが明かしておるが、初期御三家と呼ばれるゼニガメ、ヒトカゲ、フシギダネではなくてピカチュウを選択したのも、どれか1匹だけを選択してそれを選ばなかった子供がかわいそうだから、という理由らしい。
放送前から人気のあったピカチュウをサトシのパートナーに選んだのも、その優しさからくるものじゃというエピソードじゃの」
主「……あの当時ピカチュウって人気あったっけ? 確かにちょっと出現度が低いポケモンではあったけれど……ネットも子供がやる時代じゃないからなんとも言えないけれど、少なくとも自分の周囲ではそこまで人気はなかったかな?」
亀「当時はまだまだデブなネズミじゃったがの。アニメ版も今よりふっくらして、若干小生意気なキャラクターになっておったな。
どのポケモンを主人公のパートナーに選んでも人気は出たじゃろうが、ピカチュウを選んだことも英断の1つと言えるじゃろう」
主「……不遇な存在になってしまったピッピもいるけれどね。
まあ、そんな話は置いておいて、映画に話を戻すと本作はたくさんのポケモンが出てくるけれど、おそらく8割ほどが初代からの登場キャラクターになっている。あいつもこいつも懐かしい! ってなるし、ここ最近のポケモンがわからない人でも鑑賞できるようにできている。
これは全て初代のファン、初代からのファンのための映画を作ろうという意識の表れであり、テレビシリーズのリメイクと言える作品に仕上がっているね」
2 キャストについて
亀「それではキャストについて話すとするかの」
主「今作を見て、アニポケが長く愛された理由の1つがわかったよ」
亀「ほう? それはやはりキャストにも関係するんじゃろうな?」
主「当然、サトシ役の松本梨香の功績は非常に大きい。20年にもわたって主人公を勤め上げてきたし、もはや日本中の誰もがサトシとして認識している声優だろう。
それからロケット団の林原めぐみ、三木眞一郎、犬山イヌコの功績も無視できない。特にあのニャースの独特の声質は犬山イヌコにしか出せない味になっているし、あいつが特別なポケモンである何よりの証明になっている。
だけど……自分はやっぱりピカチュウ役の大谷育江の功績が1番大きいと考える」
亀「有名な話であるが、本来ピカチュウもニャースのように少しずつ喋る予定ではあったんじゃな。しかし、大谷育江が非常に巧みな声優であったために『ピカ』だけで全ての感情表現が理解できたために、その設定も不要なものになった。おかげでニャースだけが喋るポケモンとなり、それが個性の1つとなっておる。
全世界でもピカチュウと大谷育江の声は同じであり、世界共通の声優ということもできるの」
主「本作を見ていて改めて思ったけれど、大谷育江っておそらく現在の声優の中でも泣きの演技をさせたら日本一なんじゃないかな?
他作品では『ワンピース』のチョッパーなども担当しているけれど、あの幼い声で泣かれるとこちらの涙腺を刺激してくるんだよ。
声優の演技で難しいのは怒りと泣きの演技と言われていて、芸能人声優が失敗するのもこの2つの場合が多い。ただ怒鳴ればいい、泣けばいいというわけじゃないし、声だけでそれを表現するのは技術が必要だから。
今作は大谷育江劇場だった。
中盤以降はピカチュウとサトシの行動や絆に劇場中が涙に包まれていてさ、子供達から号泣する声も聞こえたんだよね。これはピカチュウとサトシの力もあるけれど、松本梨香と大谷育江の演技力があまりにも素晴らしいからだろう」
亀「終演後も泣いている子供もおったからの。大人からも鼻をすする音がしたりと、今作は涙腺を刺激するのは間違いないの」
やはりこの2人? の物語
(C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト
亀「それでは今作のゲスト声優について語ろうかの」
主「もう山寺宏一は当然として、中川翔子も語ることなし。この面子を相手にしてもなんの違和感もない素晴らしい演技なので。
ポケモンのゲスト声優は結構難しくて、ベテラン声優陣やしっかりまとまったチームの中に入っていかなければいけないから、浮くなというのが無茶ぶりだけど……佐藤栞里はそこまでうまくないけれど、でもこの中でうまく演じろというのも難しいよなぁということで擁護かな。
本郷奏多は思っていたよりも違和感がなかった印象だな。古田新太はもう何も言わないでもいいでしょう。ベテラン俳優だし、声だけの演技でも定評がある方なので」
以下作中に言及あり
3 名作エピソードが登場
亀「それでは作品内容に言及していくとするが……とにかくポケモンを代表する名エピソードがたくさん詰め込まれていたという印象じゃの」
主「まず予告編にもある通り、ピカチュウとの出会いが描かれている。あとは名エピソードで名高い『バイバイバタフリー』とか、初代ではすごく印象に残る活躍をしていたリザードン関連のエピソードが盛り込まれている。
そこにオリジナルストーリーと、テレビシリーズではなおざりになってしまった印象もあるホウオウ関連のエピソードを交えた新作映画だね」
亀「しかし、実際のところどうなんじゃろうな? 本作を映画館で公開する意義はあったのかの?」
主「う〜ん……正直、ちょっと辛い評価になるところもある。
ポケモンバトルは何の文句も無いよ。相変わらず死者が出ないことが不思議なクオリティだけどさ、それは笑い話の領域だ。
だけど、じゃあ本作が……例えばテーマ性だったり、1作の映画として表現したいことがあったのか? と言われると、そこには疑問がある。過去の名エピソードを詰め込んで、リメイクしましたでは終わってほしくないんだけれどね……」
亀「サクサクとテンポよく進んだといえば聞こえはいいが、少しタメがなかったからの。バイバイバタフリーの感動を覚えている人であれば涙腺にくるかもしれんが、この映画だけを見てバタフリーに感情移入するのか? と言われると微妙なところじゃな」
主「難しいよね。初代ではピカチュウ版で相性最悪の岩タイプのタケシが最初のジムリーダーだからバタフリーにお世話になった人も多いだろうけれど、そのようなバックボーンがない人はどうなんだろう? という思いもある。
1つ1つの表現は確かに感動的なんだけれど、1作の映画としてまとまっているとは思えなかった。その意味では本作はテレビシリーズの特別版ということでも良かったように思う。
確かに懐かしいし、嬉しいけれど……映画に求めるものではないかなぁ?」
マーシャドーも恐ろしいようで可愛いらしいフォルムをしていた
(C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト
挑戦的な姿勢
亀「しかし、すべてがダメだというわけではないんじゃろ?」
主「むしろ、自分はポケモンという作品でやる意義がある素晴らしいテーマが元々は内包されていたのではないか? という感覚もあるのも事実なんだよ。
それは何かと言うと『現実とゲーム世界の差異』について。よく言われるけれどサトシってまだ10歳で、小学生なんだよね。結構キャラクターの頭身も高いしさ、カスミやセレナと恋愛描写とも受け取れるものもあったから忘れがちだけど、まだまだ小学生だ。
その小学生が冒険をするというのも中々変な話なんだよ」
亀「そう考えると今回の配布ポケモンであるマーシャドーの役割というのも非常に重要なものになったかもしれんの」
主「中盤の描写はすごく痺れた。
サトシにありえた可能性、それをポケモンで指し示したのは素晴らしいことだと思う。だけど、そこがあんまり生きてこなかったというか……本作自体がテレビシリーズとはまったく違うパラレル関係にある作品じゃない?
そこが違和感につながってしまったのかもしれない。だったらさ、もっと攻めて良かったと思うんだよ。自分は中盤を見て『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』のようになるのかな? って思ったの。
つまり、現実とゲーム世界、アニメと劇場世界のメタ的な違いについて描いた作品になるのかな? って。でもさすがにそのテーマで過去作のリメイクもやって、100分ちょっと収めるのは不可能かぁ」
亀「それだけで尺をとられるからの」
ポケモンで描いてきたもの
亀「そして本作のもう1つ驚きのテーマというのが『生と死』について語っておったことじゃな」
主「今作はポケモンとの『出会いと別れ』の物語だということができる。だからこそ最初にピカチュウと出会い、バタフリーと別れ、捨てられたヒトカゲを拾い、仲間たちやライバルと知り合う。
その中で明確にあったのが『死別』という別れ方だったんだよね。中盤で明らかにそれを意識させる描写があったし、本作の最も感動的な場面は死を連想させるものだった。
あの描写がイマイチ謎だなって思ったんだよなぁ。名作『ミュウツーの逆襲』のオマージュだというのはわかるんだけれど……どうにもうまくいっているとは思えない。どうせああいう風になるならさ、生と死を司るポケモンでもあるホウオウをもっとうまく扱うこともできたと思うんだよ。
だけど結局ホウオウの出番はバトルだけでしょ? エンテイ、ライコウも活躍の場もないし、単なる顔見せだけで……なんであの生と死のエピソードを出したのか疑問なんだよね」
亀「ふむ……
その意味では本作はやはり詰め込み過ぎだったのかの?」
主「多分ね。生と死を描き、さらにホウオウ関連もやりつつの、出会いと別れとさらに過去エピソードのリメイクも行う……これは非常にやる事が多すぎて難しい事である。
結局は本作ってすごく高い意識とやる気があるのかもしれないけれど、それがうまく処理する事ができなかったんじゃないかな? 20周年という事で特別な意気込みもあっただろうし、やりたい事もやるべき事もある。毎年作品を作り続けなければいけないというプレッシャーもある。
それが空回りしてしまった印象かなぁ」
亀「ポケモンほどになると色々と世界的な制約も多いじゃろうしの」
最後に
亀「では最後になるが……本作のはピカチュウとサトシの関係に注目をした、それこそ原点回帰な作品ということもできるわけじゃな」
主「そうだね。
今作はいつものテレビシリーズのヒロインはいない。
ピカチュウが相棒であり、ヒロインだった。
確かに、ピカチュウがいちいち超かわいいんだよ! しかも決めるところはきっちりカッコよく決めるし。
その意味ではこれ以上ないポケモン映画に仕上がっているんじゃないかな?」
亀「あのラストも涙腺がウルウルしたしの」
主「よかったよねぇ。20年の重みというものが感じられた。
色々と苦言も呈したけれどさ、このタイミングで過去を振り返るってことは必要だったんだよ。これから先のポケモン映画を作るために、1度集大成を作り上げておく。そのための1作。
あとちょっと思ったのが……ポケモン映画にずっと関わってきた湯山監督から副監督でもある『XYシリーズ』などを手がけた矢嶋監督へのバトンタッチも着々と進んでいるのかな? という印象。
まだ湯山監督はまだ60代と現役でできる年齢ではあるけれど、ポケモンも20年だし矢嶋監督がまだ30代前半と若くても実績もあるからねぇ。タイミングとしては丁度いいのかも……」
亀「まあ、インタビューなどを聞く限りではまだまだ湯山監督がやるつもりじゃろうが……」
主「あとは単純に自分が湯山監督のオリジナル作品を見てみたい。オリジナルではないけれど昨年の『ルドルフとイッパイアッテナ』などのような作品を作って欲しいな。
子供向けアニメで重要な役割を果たしてきた方だしね」
亀「ではここで記事を終えるが……」
主「あ、最後に1つ。
個人的にはベストヒロインはセレナだと思うので、セレナが出てきてちょっと嬉しかったです!」
亀「最後に語るのがそれか……」
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