物語る亀

物語る亀

物語愛好者の雑文

2019年書き初め

 身を切るほどの冷たい風が高架下を強く吹き抜けた。

 すでに大晦日の20時を過ぎているが、街を行く人は多かった。それでも、普段の休日と比べればまだ少ない方で、心なしか足どりも早いように感じる。

 街中をうろつき回って何時間になるだろうか。行く当てもなく外に出て適当にぶらつき始めた時にはまだ太陽もそれなりに高かったはずだが、いつの間にか周囲は暗くなり始めていて今に至る。

 小腹が減り、たまに寄る蕎麦屋を思い出してふらりと足を伸ばしたのだが、この稼ぎ時にもかかわらず夕方で店は閉じていた。個人経営ということもあるのだろうが、欲のないものだ。

 無駄足になってしまい、思わずシャッターを軽く足蹴にしてしまう。まあ、誰が悪いという話でもないし、むしろこの時間になっても爛々と明かりが輝き、一向に年越しに向けて眠る様子を見せない街並みの下、疲れた顔で働く人たちを見ればむしろこのお店の方が健全なのかもしれない。

 

 

 家に帰るつもりはなかった。特に帰りたくない理由があるわけでもない。誰か険悪な家族がいるわけでもなく、部屋に借金取りが押しかけてきているわけでもない。確かに、かなり散らかってはいるが、男の一人暮らしとしては標準的な汚さだろう。若干空調の効きが悪いから寒くはあるが、別に居心地が悪いわけでもない。だけれど自分でもわからないけれど、なぜか家に帰る気はしなかった。

 高架下ではダンボールにくるまったおじさんがダンゴムシのように身を丸くしていた。枕元に置いてあるラジオからは、紅白歌合戦の様子が流れていたが、この雑踏の人混みの中で音は彼の耳に届いているのだろうか。

 街はそんな彼らの姿が見えないかのように目をくれることもなく、かといって踏んづけることも蹴飛ばすこともなく過ぎていく。年の瀬だろうがなんだろうが、変わらずにそこにある日常だった。

 

「あら、久しぶりじゃないの」

 最初は誰が誰を呼び止めているのか全くわからなくて、自分ではないと思い、そのまま立ち去ろうとする。すると「あなたよ、そこの赤いマフラーの」と言われて、ようやく自分のことと気がつき足を止めた。

 振り返ると、そこにいたのは手相占いの婆さんだった。この寒空の下、防寒着を着込んではいるものの、体を震わせながらこちらをじっと見つめている。

「そんな久しぶりって感じもしないけどな」

「やあねぇ、年取るとちょっと前のことも忘れちゃって」

 そう言いながら向かいに置いてある椅子を勧めてくる。高架下のホームレスの横で手相占いを開いたところで客が来るのかはわからないが、とりあえず勧められるがままに腰を下ろした。

 

「こんな日に客なんて来るのかねぇ」

「こんな日だから客が来るもんなのよ。みんな迷い子たちばかりだから」

 そっと婆さんが指をさしたのは、目の前にある本屋の店頭に並んでいる本だった。本が売れない、読書離れと叫ばれているこのご時世に、店頭に並んでいるのは目の前の婆さんと変わらない年頃の、もう10年以上前に流行った占い師の本だ。

「中身もほとんど変わらないのに毎年買ってくれるんだから、いい商売よねぇ。こーんなに薄いのに」

 私もああいう本を書けばいいのかしら、なんて言いながら水筒から湯気が立つお茶を蓋についているコップに注ぐと、目の前に置いてくれた。好意はありがたいのだが、いかんせん年季の入ったその水筒と少し黄ばんでいるコップを見ると、あまり飲みたくはない。

「前にここに来た時、ろくに手相すら見ることもなく金だけ取られたけどな」

「酔っ払い達を相手にするには、それくらいでちょうどいいのよ」

 そんなことを言いながら、俺が手をつけていないコップに注いだお茶を少し啜った。

「ここでこうしているとね、いろんな世間のことがわかるのよ」

 婆さんは遠い目でぽつりと呟いた。

 

「占い師ってのはね、別に当てずっぽうなだけじゃないの。こうしてぼーっっっと街を見ていると、なんとなくみえてくることがあるのよ。

 ほら、あそこに中国人がいっぱいいるでしょ? 電気屋の福袋狙いだけれど、去年より人が減ったなぁ……何かもっと狙い目のものがあるか、売れなくなっているのかしらね。その本屋に並んでいるのも、何たら通貨やらっていうのが、もうなくなっちゃったのよね。ほら、あの店。ちょっと前まで蕎麦屋だったじゃない。今はケバブだか何だかを売っているけれど、あれって仲間内で補助金が出るらしいのよ。

 私のところに来る人たちってほら、仕事か恋愛か家庭とか、大体同じようなことで悩んでね。若い人だと転職か結婚か独身でいるのが嫌とか。年取ると老後のことやら何やらって。

 で、自分の中で答えは決まっているだけれど、背中を押してほしいだけの人もいるから、ちょっとだけ手を見てさ、うだむにゃうだって言うと、みんな晴れ晴れして帰ってくの。そんなもんよ」

「単に相談相手がほしいってだけか」

「こんな知らない婆さんだと、み〜んな気軽に言えるのよ」

 

 そう言うと婆さんは白い息を吐き、少し体を揺らす。

 少しかがんで街をじっと見ていると、確かに色々なことに気がついた。目の前をいく人の中でも、何人かは婆さんを見て一瞬だけ動きを止める。でもそのまま話かけることもなく、すぐに何も見なかったかのように、そそくさとスピードを上げて去って行った。

 スマフォに目をやりながらも器用に人混みを避けていく若者、携帯で大声で話しながら人混みも関係なく我が道を進むおっさん、うつろな目でどこか遠くを見ながらゆっくり歩くサラリーマンに、こんな寒いなか足を晒しながら歩くお姉ちゃんと、その後ろをスマホを片手にこっそりとついていく兄ちゃん。

 多分、この婆さんくらいに同じ場所に座ってじっと街を見れば、持ち物や服装、話し方だけでも大体のステータスや悩みの想像はできるのだろう。

 

「いいんじゃないの、好きにしなさい」

 思わずそう言われてどきりとして婆さんの方を見ると、ニヤニヤと笑いながら手の平をこちらに向けていた。

「ちょっとだけいただけると、ありがたいのだけれど」

 勝手に呼び止めておきながら……これも押し売りの一つなのかね、なんて思いながらも、婆さんの顔を見ていたら不思議と毒気も抜けてきた。ポケットの中を探ると、さっきの蕎麦屋で使おうと思っていた千円札が出てきて、そのまま婆さんに渡す。

「あら、こんなに。ありがとうね」

「たまには孝行してやらんとね」

「じゃあ、お礼に。あっちの方に公園があるでしょ、そこにダルマがいるから顔を出してあげたら?」

 

 婆さんは駅とは反対方向に指をさした。とりあえず、年寄りの言うことは聞いておくことにする。

「風邪ひかないように、またな」

「こんな婆さんのことなんか忘れてしまいなさい。まあ、ご縁があればね」

 そう言いながら婆さんはひらひらと手を振った。

 どことなく後ろ髪を引かれる思いもしたが、決して振り返ることはなかった。

 これが、婆さんと最後の別れだと知っていても。

 

 

 夜の公園は昼間と違い、子供達の姿は一切ない。それなりに大きな公園だからか、この時間にもなるとおじさん、おばさん達が何人かで集まって酒盛りをしていた。ブルーシートを敷いて、寒いなかでもそんなことは関係なさそうに集まって騒いでいる。すでに人通りはほとんどなくなっているが、たまに通りがかる人ですら、そちらへと目をくれることもない。

 時計を見るとすでに夜の9時を過ぎていた。その集団の中には何人か見知った顔もあったものの、あの輪の中に入ることに躊躇して踵を返し、再び駅の方へと歩き出す。だが、手相の婆さんの言葉も頭をよぎり、数歩進んだところでまた戻り、さらに数歩進んでまた駅の方へ振り返る。そんなことを繰り返し、しまいには生垣に座り込んでなんとなくスマフォを取り出してじっと見つめていた。

「何やってんだ、お前」

 聞き慣れた声に顔を上げると、目の前には短髪のおっさんの顔があった。ハゲかけた頭は、街灯を反射して少しだけ輝いていた。

「よ、久しぶり」

 スマフォをしまい、言葉を返す。

 ダルさんの顔はいつものようにいかつく、傍目から見るとその筋の人のようにも見えなくはない。体格こそ普通のどこにでもいるおじさんではあるのだけれど、視線が鋭く顔もゴツゴツしていることもあるだろう。ただ、その最大の理由は目にある。

 その目は片方だけ潰れていた。

 だからダルマのダルさん。

 最初にその名前を聞いた時はさすがにどうかと思っていたが、昔は体が横にも大きく横髪は長く、髭も濃かったために、傍目から見ると達磨大師のように見えたらしい。今では体も小さくなり髭も落とすようになってすっかり達磨大師からは縁遠い存在となったが、そのあだ名自体は気に入っているから自分で理由を見つけていた。

 その理由も時々ダルビッシュ有に似ているから、と最近は変わってきている。どうやら由来なんかはどうでもよくて、ただ”ダルさん”という名前だけにこだわりがあるようだった。

 ダルさんは手に持ったストロングゼロの缶を一つ煽ると、大きなげっぷをしてこちらを見やる。顔もすっかり紅潮していた。

「さっき、占いの婆さんにここに行けって言われたんだよ」

「婆さんに? また適当なこと吹き込まれたんだろ。最近会っちゃいねぇけど、元気にしているのか?」

「ありゃ殺しても死なないね」

 違いねぇ、とゲラゲラ笑いながらまた缶を煽る。顔こそはすっかり出来上がっているようだが、呂律はしっかりと回っているし、まだ酔ってはいてもスイッチは入っていないようだった。

 

 ダルさんは俺の横に座った。少しだけおっさん特有の香水のようなムッとしたような匂いが鼻を刺す。

「その目、どうしたんだっけ?」

「おいおい、前にも話してやったはずだぞ……まあ、いいか。まあ、あれだよ。日本が戦時中だった頃にさ、戦場でな。敵さんの弾が目に当たったんだよ」

「……工員時代に金属加工の欠片のせいだって言ってたぜ?」

「そうか? そうだったかもね」

「そんでその前はヤクザと喧嘩した時に負った傷とか、元ボクサーで試合で負ったとか、警察時代に学生運動を鎮圧していた時の傷とかな。大体、戦争中に戦場にいたって、あんた一体いくつだよ。どう見ても戦後のベビーブームくらいの年頃だろうが」

「あー……忘れたな」

 たく、と言葉をもらす。結局、このおっさんの言うことは万事が嘘なのだ。家族はいない、別れた女房と子供に会いたいなどと話したかと思えば、その次には同居する孫の話をする。かと思えば、愛人宅がどうのとか、帰れば一人暮らしがどうだとか、ホームに行くとどうだとか、刑務所帰りだとか。ひどい時は10分前に語った設定と全く違うことを語り始めて、それを指摘するとおきまりの”忘れた”と、とぼけやがる。

 何を言っても安定しないおっさんではあるが、ダルさんというあだ名だけはずっと一定だった。その由来を忘れたとしても、そこだけは忘れないし変わらない。

 

「おーい、ダルさんこっちこいよ!」

 集団からお呼びがかかる。いい年して何をしているのかね、なんて言いながらも腰をあげると、俺に向かって一緒に行くか? とジェスチャーした。渋々ながらも立ち上がる。

 傍目から見るとホームレスのようでもあるが、実際の身なりを見るとそうでもなかった。白髪と髭の整った爺さんと、少し派手な婆さんの夫婦が大きな声で話しているし、黒々とした髪をしたメガネのおっさんはニヤニヤと笑いながら野球の話に花を咲かせている。かと思いきや政治がどうやらと話すおっさんもいれば、誰も聞いていない落語を始めるおっさんもいて、何の一団なのかまるでわからなかった。

 サラリーマンのようにスーツを着こなしたメガネのおじさんがダルさんと俺に気がつくと「お、やあやあこっちへ来なさい」と自分の隣に来るように促す。その言葉に乗っかって2人ともその席に座った。

「今日は平成最後の大晦日ですからね、楽しく飲みましょう」

 そう言いながら日本酒の瓶を紙コップに注いでこちらに差し出してきた。酒自体は有名なブランドのものであり、この会にふさわしくないほどの上等なものだった。多分、酒屋で買えばそれなりの良いお値段がするだろう。

「……それにしても、今日はにぎやかなもんだ。何でこんな馬鹿騒ぎを?」

 そうたずねるとサラリーマン風のスーツ姿のおじさんが柔らかく笑いながら答える。

「そうですな……強いて言うならば、時代の終わりの会、とでもいいましょうか」

「ありきたりな名前…」

「ハハ、何ぶん、こういうのが苦手ですので。根が真面目で正直なものですから、面白みがないんですよ」

 照れ笑いを浮かべながら紙コップを飲み干す飲みっぷりがよく、見ているだけで楽しいものだった。そんなことを言いながらも、周囲の面々と肩を組み、次々に乱暴に酌をしていく姿を見ると、人に好かれる面白いおじさんなのだろう。 

 

 誰かが声を張り上げて歌い始める。節も何もありゃしない、めちゃくちゃな歌すぎて何の曲なのか全くはっきりしない。それでも御構い無しとばかりに、大きな声を張り上げては、周囲の面々もてんやわんやと囃し立て、手拍子を合わせて踊りだす。

 

 歌う阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら歌わにゃ損々

 三千世界の果ての果てまで 響き渡れよこのダミ声よ

 仏も閻魔も裸足で逃げ出し 耳を塞いでのたうちまわり

 逃げる足並み大地を揺らし あの世とこの世がひっくり返れば

 物の道理も無くなっちまって  死者も生者も踊り出す

 下手で結構 時計はカッコウ おいらの衣装は不格好 

 女に振られて懐寂しく 心で泣いて顔は笑えや

 私もあんたも誰も彼も 最後はあの世でお釈迦になるんだ

 さあさあみんなも歌えや踊れ これが最後のお祭りだい

 

 その歌声に合わせてみんなが酒を持ち、おぼつかない足取りでてんやわんやと大騒ぎが始まる。中にはコンサートホールで聴くようなオペラの歌声も響きわたり、ギターも太鼓も三味線も鳴り始める。気がつけば人は増えていき、ホームレスから工場のおっちゃん、金持ちスーツにヤクザに警察官まで、みんなが手を取り踊り合う。

 男も女も子供も大人も、入り乱れた狂乱騒ぎに、何事かと顔を出した人たちすらも、この踊りに加わり出す。たちまち公園は人で溢れ、みんなで歌い踊りの大騒ぎ。

 さあさあ踊れや踊れ!

 今日は祭りだ、好きにしろ!

 

 

 いつまで踊っていたのだろうか、気がつくとベンチの上で星1つ浮かばない空をじっと眺めていた。もうどれだけ時間が過ぎたのかもわからない。これだけの大騒ぎが信じられないほど、周囲は静まり返っていた。

 思わず顔を上げると、どうやら多くの人たちはすでに引き上げていたようだ。残った面々もブルーシートや酒瓶を方付けて、帰り支度を始めている。

 体をゆっくりと起こすと、頭がズキリと傷んだ。隣にはダルさんがカップ酒を飲みながら座っていた。

「起きたか」

 先ほどまでの騒ぎが信じられないほど、静かな声を上げる。今が何時か見ようとするが時計も携帯もどこにいったのかすっかりわからなくなっていた。

「あんたら、これからどっか行くのか?」

「……祭りはもう終わったからな。あとはもう行くだけだ」

「行くってどこへ?」

「そりゃ、まあ決まっているんだろう」

 それ以上はダルさんも教えてくれなかった。ただ黙って、帰り支度をする人たちを見ていた。

「俺も行くよ」

 その言葉にダルさんはゆっくりと首を横に振った。

「お前はまだ来なくていいよ」

「こっちにいても退屈なだけだ、それなら、いっそ一緒に行ったほうが楽になる」

「人生、楽になったら終わりだぜ?」

 ダルさんはゆっくりと立ち上がった。俺も立ち上がろうとするが、不思議なくらいに足に力が入らない。まるで、足がなくなったかのような感覚を受けてしまった。

 俺を置いてみんなは去っていく。その列にダルさんも吸い込まれていて行った。

「置いていくのか?」

 思わず、声が漏れてしまった。ダルさんは振り返ることもなく、片手を大きく上げながら答える。

「老いて逝くんだ。せいぜい迷え、馬鹿者よ」

 そのまま、彼らの姿は見えなくなっていった。

 

 

 再び目覚めた時、すでに太陽は上がり始めて空は白み始めていた。この辺りでは珍しい鳩の群れが空を飛んだいる。どうやら公園のベンチで一晩明かしてしまったらしく、親に連れられた遠巻きに子供がこちらを見ていたが、親に叱られている。それでもこちらを見る目は変わることなく、じっと見つめられていた。

 ふと体を起こして時計を見る。時間は朝の5時49分。始発もとうに動き出している時間だ。もっとも、大晦日から元旦はずっと電車が動いているはずだが。

 立ち上がった拍子に少しよろけてしまう。頭はガンガンと大きな音を上げているし、どうやらまだ酒が残っているらしい。とりあえず、駅の方へ向けた足を進め始めた。

 高架下にいたはずのホームレス達はすっかりと姿を消しており、街は静まりかえっていた。電気屋の前では福袋狙いの人たちが行列を作っている。

 駅に向かう途中で小腹が減ったことに気がついて周囲を見渡す。新年の今の時間、近くで開いている店はチェーンの牛丼屋だけだった。今は重いものを食べる気分でもないが、朝食セットくらいならイケるかな、と思い店内に入る。

 

 外国人の浅黒いグェンという名札をした兄ちゃんが出てきたので、弱々しい声で注文をする。訝しげな目を向けられたが、そんなに今の姿は酷いのだろうかとふとコートを見ると、いつついたのかわからない土汚れにまみれていた。これはクリーニングに出さないとしばらく着ることはできないだろう。

 店内を見渡すと、元旦の朝だというのに机に顔を置いて寝ているおっさんや若者が何人もいた。こういう店で寝ているのは大体男だ、女はどこで潰れているのだろうかと疑問になる。

 出てきた卵かけご飯セットの味噌汁を少しずつ飲む。今の気分ではこれぐらいがちょうどいい。体の芯まで染み入る。

 昨日の夜のことを思い出そうとするが、誰と会って何をしていたのか、途中から思い出すことができなかった。今まで酒を飲んでも記憶を飛ばすことなんて一度もなかったのに、これは人生初の体験だ。

 まあ、いいさ。

 

 なぁ、そこのおっさん。お釈迦さんは悪人でも救ってくれるらしいぞ。

 なあ、そこの若えの。人生なんてどうにでもなるらしいぞ。

 本当かって?

 知るか馬鹿。

 自分の人生なんて自分で決めるしかねぇんだってよ。

 そんなの知るか、馬鹿野郎。

 

 とりあえず、机に顔を当てて横になった。

「お客さん、朝だから起きてヨ」

 グェン、10分だけでいいから待ってくれよ。

 気がついたら、食べ終わっていない食器を片付けられてしまっていた。

 

 

 終

 

 

お題『だるま』『占い』『コンサート』  

 

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