物語る亀

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物語愛好者の雑文

<良作>映画『コーダ あいのうた』ネタバレ感想&評価 原作『エール!』との比較

 

今回は『コーダ あいのうた』の感想記事になります!

 

アカデミー賞でも注目されている感動作のようじゃな

 

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カエルくん(以下カエル)

「試写会組の反応もすごく良かったんだよね。だからこそ、注目していたというか!

 とても面白い作品になっていたら嬉しいね!」

 

亀爺(以下亀)

「わしも何も知らずに予告編を見た時から『これは面白いに違いない!』と思っておったらかの。それだけ感情に訴えかけるものがあったのじゃろう。

 期待して見に行きたいと思うの」

 

カエル「それでは、感想記事のスタートです!」

 

◆この記事には他作品のネタバレがあります!
  • 『エール!』のネタバレがあります

 

 

 

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感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

うまく原作をリメイクした作品となっておるの

 

カエル「今作はアカデミー賞の作品賞ノミネートもほぼ確実視されており、批評家評価、一般評価の両方とも高い作品となっています!

 アメリカの映画批評サイト、ロッテントマトでも批評家評価、一般評価ともに90%超えと非常に高く、日本でも多くの映画評価サイトでの数字がとても高くなっています」

 

亀「それも納得じゃな。

 多くの映画ファンが愛する、娯楽作品の良さを見事に発揮しておったように感じるの。

 映像も音楽も物語も良く、基本的に楽しめる作品でありながらも社会的な側面も発揮されており、批評性もきちんと兼ね備えている作品じゃな。

 うちはFilmarksにて3.8をつけたが、それは低い部類ではないかの。多くの人が4.0以上をつけるであろうし、中には年間ベスト級と早くも連呼するような作品になっているのではないかの」

 

ちなみに、これから語るけれど『エール!』と比較した場合はどうなの?

 

世間的には『CODA』の方が優れているという意見もあるようじゃが、わしはどちらも同じくらい好きな作品じゃな

 

亀「あまりよろしくない言い方をしてしまえば、大元が優れているのだから、その粗を取り除いたこのリメイク版もより素晴らしいものになるのは当然だと考えておる。

 特に『エール!』は作られてから歴史も浅く、そこまで評価の固まった名作でもなければ、完成度も高すぎるということもない。

 それをハリウッドの技術力と予算があれば、これだけの作品を作れるのはむしろ当然と言ってもいいじゃろう。

 もちろん、そんな簡単ではないから難しい部分もあるわけじゃがな……

 わしは大元の『エール!』の素晴らしさを再認識したし、『CODA』も良かった。

 どちらにも違った魅力があって、どちらも等しく良い作品であり、等しくもやもやポイントも残る作品であったということかの」

 

 

原作『エール!』について

 

ここで原作となった『エール!』についても語っていきましょうか

 

このフランス版がとても優れていたという印象じゃな

 

エール!(字幕版)

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カエル「今回、この原作となった『エール!』を鑑賞してから『CODA』を鑑賞しましたが、このエールの良さを引き継ぎながらも、荒々しい部分や欠点をうまくカバーしたリメイク映画になっていたのではないでしょうか」

 

亀「わしはむしろ『CODA』を観て『エール!』の評価が上がった形じゃな。

 それほどまでに『エール!』の功績が大きいし、この映画の魅力があるからこそ『CODA』につながっていると感じさせてくれる。

 

◆『エール!』の優れていたポイント◆
○難聴の聾唖者の家族を支える歌のうまい女の子が主人公という設定
○後半の特徴的な演出技法
○家族のドラマと社会のドラマの両立
○キャラクターの良さ
 

この基本的な設定が優れているからこそ、このリメイク版が面白いのも当然なんだなぁ

 

変更された点も多いが、この基本的な部分のうまさがより『CODA』では際立っておるな

 
カエル「ただ『エール!』はちょっと日本人の目線からすると、少し過激な面や荒々しい部分も見えるんだよね……例えば『涙、涙の感動作!』のつもりで観るんだけれど、実は結構コメディで……それも泣きだけにするとちょっとアレだから、見事に外しているんだけれど……
 そのコメディの下ネタ描写が少しキツいというか……
 
亀「まあ、この辺りはフランスのコメディらしい部分でもあるの。
 フランス映画の特徴でもあるのじゃろうが……例えばフィリップ・ラショー監督の『世界の果てまでヒャッハー!』や『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』などは、下ネタ描写も多くて、しかも結構生々しいというか、エゲツナイというか……そういう面があるの。
 この辺りは性に奔放なお国柄ということもあるのじゃろう。日本の下ネタとはまた、少し違ったノリを感じるの。
 それは『エール!』でも同じで、性描写の生々しさがかなり強調されている。これはリメイク版の『CODA』 でもそうであるが、まだマシじゃろうな。少なくとも、嫌悪感を示すようなほどのものはなかった」
 
カエル「その下ネタ描写があるからキャラクターも活き活きとして、さらに感動もひとしおということもあるのだろうけれどね」
 
改変された設定たち
 

今回、設定面はどんなところが改変されているの?

 

簡単にまとめるとこんなところじゃろうな

 

◆改変された設定◆
 左『エール!』↔︎右『CODA』
○主人公の家族の職業→ 酪農家↔︎漁師
○主人公の兄弟→ ↔︎
○お父さんの行動→ 村長選挙への出馬↔︎漁師組合の立ち上げ
 
 
カエル「こうやってみると、結構改変されているだね。
 1番大きいのは家族の職業なんだろうけれど、酪農家と漁師と変更することでお父さんの行動とかも一気に変化しているんだね
 
亀「もっと細かいことを言い出せばキャラクターの性格なども変更されておるが、それはまあいいじゃろう。
 ここで職業を変えたことにより、様々な部分が併せて変更されておる。その結果、フランス版ではあった変な流れや、やりっぱなしだった部分が大きく変化していることも指摘しておきたいの。
 ただし、これらの物語の影響はあるものの基本的な家族の話などは同じであるから、わしとしては骨格は全く同じなので、そこまで改変されたという感覚はない。
 それが『エール!』の良さを再評価した、という理由の1つじゃな」
 

以下ネタバレあり(『エール!』のネタバレも含みます)

 

 

作品考察

 
社会と聾唖者の描き方
 

では、ここからはネタバレありで語っていくとしましょう!

 

今回は『エール!』との比較が強い記事になるので、そちら側のネタバレもさらに強くなっていくぞ

 
カエル「とは言っても、いうほど語ることもないというか……。 
 『エール!』の時点で”難聴者の家族に伝わらない音楽の才能を発揮する”という、基本的な骨子は出来上がっているんだよね。そこに難聴者、障害者が抱える社会との関係性の難しさもいれていて、元々物語の完成度はとても高い作品だったし!」
 
亀「『エール!』はどちらかといえば……物語が天才音楽少女ではなく、あくまでも音楽大学に進学するレベルの才能を持つ、いわばアマチュアでのトップというレベルであった。だから音楽面も際立っているわけではなかったわけじゃな。
 今作ではそこもより際立つようにアメリカイズムされている。また社会的な見方をすれば、学校の生徒も多種多様であり、いかにもハリウッド映画といえるような風貌となっているわけじゃ。
 まあ、この辺りは賛否両論ありそうじゃがな」
 

それでいうと、今作ではお兄ちゃんのレオ・ロッシ役に本当に聾唖者であるダニエル・デュラントが起用されているのも、今のハリウッド映画の流れに沿っているよね

 

そこも含めて高く評価される理由じゃな

 

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(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

ダニエル・デュラントの名演技が特に高く評価されている

 

カエル「そういった、いわゆるポリコレ的な取り組みっていうのは、時には快く思われないこともあるし、その気持ちはわからないではないのかな……

 でもさ、今作の場合は確かに政治的な意図も0だったとは言わないけれど、だけれどダニエル・デュラントじゃないと絶対ダメだった! といえるくらいに、多くの影響をもたらしているよね

 

亀「映画に別の印象をもたらしたり、あるいは作品のテイストに合わない多様性の描き方もある中で、今作のレオ・ロッシの役というのは間違いなく作品に対してプラスの面しかもたらしていない。

 『エール!』の欠点の1つでもあるじゃろうが、弟もとてもいい子ではあるのじゃが、どうしても影が薄い感が出てしまう。もちろん、見せ場もあるのじゃがな。

 『CODA』の場合、このレオ・ロッシがいないとこの物語が成り立たないということもあるし……少しメタ的な見方をすると、彼が聾唖者であることがとても重要な作品ということもできるわけじゃな」

 

カエル「健常者である妹が夢を諦めるときに激しく怒るんだけれど、そこが”聾唖者(障害者)を理由に夢を諦める”ということにつながるわけだもんね。その言い分を聾唖者が激しく罵倒して拒否することで、聾唖者の自立にもつながり過剰なお節介もなくなるという、メタ的にも重要な意味があるわけだしね。

 レオ・ロッシの役というのは障害者演技でありがちな……小さく丸くなってというような演技ではなく、耳が聞こえない以外は荒々しい部分を多く持つ、それまでにあまりないキャラクターとして表現されているわけだね」

 

亀「うむ。

 その辺りも含めてキャスティングの段階からとてもうまく考えられているといえる。

 『エール!』という作品をより広く届けるためには、この考え方が重要なわけじゃな

 

『エール!』から変更されなかった部分

 

結構変更された部分が目立つけれど『エール!』の評価上昇の理由としては、その変更されなかった部分に着目して欲しいかな

 

やはり、大元の『エール!』が優れていたからこその、今作の批評的な成功と言えるじゃろう

 
カエル「特に変更されなかった点として大きいのは、以下の2点です」
 

 

  • 学校で歌う際に無音になる演出
  • ラストで歌う際に手話を行い、聾唖者にもつながる音楽を描く

 

この2点が元々とても優れていたわけじゃな

 

亀「学校で歌う際に無音になることで、彼らの世界というのも観客も味わえるようになっていた。

 そこで『音が聞こえなくても観客の反応で伝わる』という面と、さらに『どれだけ周囲が感動していても自分達には聞こえない疎外感』の両方を描いているわけじゃな。

 この演出が肝となり、健常者と聾唖者の文化的な分断を描き、その後の物語の感動に繋がる」

 

カエル「それでいうと”冒頭の音が聞こえないから家族が様々なことを乱雑に行う”という描写もうまいよね。ルビーの世界と普通の生活をわかりやすく提示していて。

 だけれど、家族一同が決して音楽的な素養がないわけではなくて……車で大爆音で音楽を流すけれど、それは聾唖者なりの音楽の楽しみ方だでもある。

 意味はわからなくても、振動でリズムを刻んでいたりね」

 

亀「障害の程度にもよるが”聾唖者だから音楽を楽しまない”というのは、健常者の思い込みでしかない。現実には音楽が好きな聾唖者もいるし、楽器を演奏する、あるいはライブに行く人もいる。

 そういった部分を見事に描くわけじゃな。

 そして……これは映画の、特に邦画の字幕論争にもつながるが、字幕などがついていれば聴覚障害があっても音楽を楽しめるという意見もある。実際に一部のアーティストの音楽ライブでは字幕をつけることで、聴覚障害に配慮している面もあるというからの。

 だからラストの手話というのは、とても重要なことで……ここを『エール!』から変更しなかったことが、とても重要じゃ。それだけ、元の段階で完成されていたということじゃからの

 

 

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健常者と音楽という点については佐村河内守問題を扱った『FAKE』もオススメです

 

 

不満点について

 

不満点① 社会と聾唖者の描き方のその後

 

だけれど、これだけ褒めるところが多くても不満点が出てきてしまうんだね

 

これは『エール!』の時から同じなんじゃがな

 

カエル「まあ、簡単に言ってしまうと『あの家族の商売って結局どうなったの?』ということですね。

 『エール!』もお父さんが村長選挙に出馬しますが、そのドタバタを描くだけでその後についてはほとんど描かれていません。

 今作でも家族の漁の問題、仕事の問題が描かれますが、そこに関しては特に言及もなく『頑張ってやっていくよ!』くらいで終わってしまっています」

 

亀「今作が優れているのが『聾唖者が社会から搾取されている現状』をかなり集中的に描いたことにもある。その……まあ航海の安全性の問題などは仕方ない面もあるとはいえ、社会からは隔絶されやすいところにいるわけじゃな。

 その問題というのが『エール!』も含めて投げやりになってしまっておる。あくまでもメインはルビーが家族を離れる部分というのもわかるのじゃがな……」

 

不満点② ラストの爆発力について

 

こちらは一応不満点とは書きましたが、多分個人の好みの問題かと思います

 

なぜだか『エール!』よりも体裁が整ったぶん、物語の爆発力がなくなった気がする

 

カエル「『エール!』は移動時間中に見ていたので、あまり褒められたものではないですがスマホの画面で鑑賞していました。それでもラストの楽曲や演出などは、思わず目が潤むくらいに感動したんだよね。途中の下ネタコメディには参ったなぁ……となっていたけれど、それで全部チャラ、むしろプラスって感じだったけれど。

 でも、今作はそれを知っていたからか、なんだかラストの演出もそこまでジーンとはこなかったのかな

 

亀「これは個人の好みと、あとはこの展開を知っていたかによるかもしれんがの。

 何度も語るように『エール!』は色々と粗も多い作品であり『CODA』はその粗を取り除いて、いいところだけを踏襲していくという名リメイクとなっておる。その分、荒々しさに欠けるからこそ、ラストの感動も少し抑えられているように感じたのかもしれん。

 まあ、この辺りは人によるポイントであるし、めくじらを立てていうことでもないじゃろうな

 

 

ラスト〜究極の表現について〜

 

というわけで、この記事を締めたいと思います

 

最後になるが、究極の表現とは何か? ということについて考えたい

 

カエル「……究極の表現? また抽象的だね」

 

亀「わしが思うに、究極の表現とは 

 

  • 目の見えない人に伝える映像・視覚表現
  • 音の聞こえない人に伝える音楽
  • 文字の読めない人に伝える小説・文章表現

 

このようなものじゃと思っておる。

 それを楽しめないハンデがある人に対して、それを伝えること。そして文字にできない感情を捉える文学、映像にできない感覚を映像にする映像視覚表現などこそが、最も優れたものであり、それを伝えるために表現は存在すると考えておる。

 その点で言えば、今作はその究極に挑んでいった作品の1つと言えるかもしれん。

 もちろん、これが完成形とは言わないまでも、の」

 

カエル「だからこそ、多くの人に響くのかもしれないね」

 

亀「色々と語っては言えるが、もちろん良作以上の作品であることは間違いない。

 もしかしたら、わしが1番辛口なことを言っている可能性もあるじゃろう。

 それくらい万人に愛される作品じゃと、わしは思うぞ」

 

 

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