物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『ブラック・クランズマン』感想&評価! アメリカの現代の差別問題を痛烈に描き出した、黒人監督のスパイク・リーの覚悟のこもった作品!

 

今回はアカデミー賞でも注目を集めたスパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』の感想記事になります!

 

 

……アカデミー賞ねぇ

 

 

カエルくん(以下カエル)

「え〜……映画ファンならば誰もが注目している1大お祭りイベントではありますが、うちは毎年、アカデミー作品賞を受賞した作品に対してイマイチのりきれないところがあります

 

「今年はアカデミー作品賞にノミネートされた中で、すでに日本で公開された作品でも好きな作品は……『ボヘミアン・ラプソディ』くらいかなぁ。

 もっとも、あれもアカデミー賞関連の映画という見方よりは、にわかだけれどクイーンが好きという思いで高評価を与えた印象だけれど」

 

カエル「まあ、そもそも『アカデミー賞ノミネート! ハリウッドが絶賛!』という触れ込みがすでにハードル爆上げな部分もあるけれどね」

 

主「あとは政治性は理解できれるけれど、それが強すぎる気がするんだよねぇ……

 このあたりは個人の好みもあるけれど、主演男優賞なんかは政治的な重要人物や同性愛者などのマイノリティを演じた人に与えられる傾向が強いけれど、その割には作品賞などはかなり保守的にも見受けられる。

 まあ、結局はアカデミー会員が選ぶし”アメリカ人のアメリカ人によるアメリカ人のための映画賞”なので、日本人がグダグダ言うこともないんですが」

 

カエル「そろそろ”アカデミー賞はさすが!”と言いたくなるような、手放しで誉めたたえる傑作が見たいところなのかなぁ」

主「……今作も黒人差別を扱った映画だからなぁ……

 どうなることやら。

 では、感想のスタートです」

 

 

 

 

 

作品紹介・あらすじ

 

 ロン・ストールワースの自伝作品である『Black Klansman』を映画化し、第91回アカデミー賞にて作品賞など6部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した他、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞するなど高く評価されている作品。

 監督は黒人映画監督の代表的存在であり、数々のメッセージ性の強い映画や発言を繰りかえしてきたスパイク・リーが担当。連名で脚本にも携わっている。

 主演の黒人警察官であるロン役にはデンゼル・ワシントンの息子であるジョン・デビット・ワシントン、その相方の白人警察官・フリップ役にはアダム・ドライバーが起用されている。

 

 1979年コロラド州コロラドスプリングスの警察署初の黒人の警察官となったロン。しかし警察内でも黒人差別が根強く残っており、最初に配属された記録係での差別的な発言にうんざりしていた。

 そんな中、白人至上主義団体である『KKK(クー・クラックス・クラン)』の募集広告に目をつけて電話をかけたところ、黒人差別発言を繰り返して面接まで進むことに。しかし黒人であるロンは潜入捜査ができないために、対面しての調査はフリップに対応してもらうことになるのだが……

  

 

 

感想

 

では、いつものようにTwitterの短評からのスタートです!

 

 

 

今年を代表する、アカデミー賞をとるべきだった傑作ではないでしょうか?

 

 

主「もちろん、個人の意見ではありますが、今のところ観た中ではもっともアカデミー賞に推したい、自分が投票権を持っていたら投票したい作品という評価です!

カエル「お! なんかアカデミー賞関連作品ででしかも政治色が強い映画でこの評価って初めてかもしれないね……」

主「もちろん他のノミネート作品もいい作品が多かったと思うけれど、自分は本作をさらに評価したい。

 今作をめぐっては少しだけ騒動もあったじゃない」

 

カエル「アカデミー作品賞の発表時に『グリーンブック』の名前が呼ばれた瞬間にスパイク・リー監督は立ち上がって去ろうとしたんだよね。さすがに関係者に止められたけれど、作品にもどちらかというと否定的なコメントを発表しています。

 黒人を代表する監督でもあるし、ノミネートされている作品の代表者としては大人げない問題のある行動だったのではないか? という思いもあるよね……

主「でもね、自分からするとその行動に納得もするし、賞賛もする。

 むしろ、スパイク・リーがこのような作品を撮っており、それが高く評価されているにも関わらずに『グリーンブック』が受賞となると、思うところもあるのは当然だ。

 それくらいの覚悟と信念がこもった作品でもあるんだよ」

 

カエル「まあ、グリーンブック自体が白人と黒人の受け止め方の違いを象徴するような作品になってしまい、かなり政治的な論争になってしまっている映画だからね……」

主「自分はどちらかといえば憤りを覚える黒人側の視点の人間なので、グリーンブックには疑問がある。

 その点で言えば、2019年公開の映画の中ではイーストウッドの『運び屋』『ブラック・クランズマン』の2作が……白人と黒人を象徴するような存在である映画監督の2作品こそが、現代に必要な作品と言えるのではないかな?

 

 

 

 

映画としては?

 

じゃあさ、映画としてはどうなのよ?

 

……正直、難しい評価になるかもしれない

 

カエル「それは映画としての出来が悪いということ?」

主「いや、映画としての出来はとてもいいよ。

 自分はアカデミー賞関連作品には疑問があるものもあるとは述べたけれど、でもそれはメッセージ性や政治的な主張が偏っているようにも思えるものであるだけで、映画としてはどれも一級品なのは自分も同意する。

 だけれど……これはチャップリンの『独裁者』にも通じる難しさがあるんだよ……

 

カエル「チャップリンの独裁者はすごく有名なヒトラー批判の演説がある映画です。

 ”世界で最も素晴らしい演説”と言われるものではありますが、うちはその演説はすでに映画の枠を超えて、単なるプロパガンダになっているのではないか? という疑問があります。

 チャップリン自体は大好きな映画監督ですが、だからこそ疑問があるということかな?」

 

主「本作が抱えたメッセージ性はあまりにも強すぎるし、1部シーンはこの映画にふさわしいのか? という論争があってしかるべきだろう。

 自分は衝撃を受けたけれど、あれが蛇足だ、という意見はよくわかる。

 そして今作の主張に対しては……メッセージ性が強すぎるがゆえに賛否が間違いなく捲き起こる。それ自体はとてもいいことです。むしろ、全員が賛同するよりもいいことかもしれない。

 だから……この映画に感動したとしても、一度立ち止まって『それは本当だろうか?』と考える必要があるし、それだけのとてつもない力を発している映画なんだ

 

カエル「ふむふむ……その辺りは後述だね」

主「あとは、映像作りなども面白いし、一部シーンは時代を感じるような古めかしいように撮られているのも好印象。

 だけれど、これだけメッセージ性が強い作品となってくると”娯楽映画”として楽しめるかは……微妙かもしれない。

 本作はもはや劇映画というジャンルすらも飛び越えているかもしれないから……かなりの劇薬であり、無条件で賞賛するのは少し違うんじゃないの? という思いもあるかな」

 

 

映画に込められた多くの差別を象徴するワード

 

この映画では”ジャッキー・ロビンソン”などの黒人差別を語る際には外せないワードがたくさん出てきたね

 

野球が好きな方はご存知かもしれないけれど、少しだけ解説しようか

 

カエル「当時のアメリカ野球界では主に白人がプレーするメジャーリーグと、主に黒人がプレーするニグロリーグの2つに分けられていました。そこで近代メジャーリーグでは初となる黒人選手としてドジャースでプレーし、メジャーリーグ初代新人王のほか打撃タイトルを獲得するなど大活躍して、彼がつけていた背番号42は唯一のメジャー全体の永久欠番になっています。

 日本球界でも助っ人外国人の背番号は42をつける印象があるけれど、それはこのジャッキー・ロビンソンに敬意を示すとともに、日本では42が不吉な数字だから、という理由もあります」

 

主「最近だと『スパイダーマン スパイダーバース』でマイケル少年がクモに噛まれるけれど、そのクモに42の背番号が付いていたのが印象的だったな。あれは色々な説があるけれど、ジャッキー・ロビンソン=差別、偏見の中で戦ったアメリカの象徴に敬意を表したという話もあるな

 

カエル「そのほかにも”WASP”=ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント、つまりアメリカを占める標準的な白人を示す言葉などの、多くの人種や壁を連想させることばががありますが……特に語っておきたいのが『国民の創生』についてです

 

 

 

国民の創生-初期ハリウッド映画にて賛否を巻き起こした作品-

 

国民の創生は1915年に発表されたD・W・グリフィスによる3時間にも及ぶ長編作品です

 

今でも論争の的にもある、とても重要な作品だ

 

カエル「まず、大事なこととして上げておきたいのは、この作品はクローズアップなどの多くの技法や編集を駆使し、現代にも残る映画演出の基礎を確立させた作品でもあります。

 その一方で……物語自体が黒人差別の意識が強いため、上映当初から大きな論争が巻き起こっています

主「同時代の映画監督であり、アフリカ系アメリカ人であるオスカー・ミショーが『我らが門の内にて』という作品で国民の創生への反論をしていることもあり、やはりハリウッド映画初期を代表する作品であると同時に、社会的な重大な関心事でもある。

 グリフィスはケンタッキー州の出身であり、父親も南北戦争の南軍の将軍だったことから、根強い黒人差別意識があったことがうかがえる」

 

カエル「とは言っても、100年前だしこの時代では差別意識がない人の方が珍しいというか……

 KKKはテネシー州で南北戦争終結と同じ頃に誕生しており、ケンタッキー州とはお隣だから色々と感覚的に受け入れやすかったのかな?」

主「作中ではKKKを半ば英雄視するかのように美化し、黒人を悪党のように描いている。

 もしかしたら、父親が農場を経営してものの没落し、生活に困窮する少年時代を送っているから、奴隷であった黒人への差別意識が強かったのかもしれない。

 それはともかくとして、この作品の大ヒットと宣伝活動により、KKKは最大900万人とも呼ばれる多くの会員を獲得している

 

カエル「……差別主義者がそれほどまでに多かったんだね」

主「いや、どうも当時のKKKは違うらしい。

 もちろん、白人至上主義のような面は見られるが、当時の時代から考えてもそれは特別過激なものではなかった。反ユダヤなどというよりは、プロテスタントのための会であり、当時の代表のウィリアム・ジョセフ・シモンズは『反カトリック、反ユダヤ、反黒人を望むメンバーがいるとしたら、それは KKKとは相容れない』と語り、暴力革命を否定している。

 この後、KKKは時代を経て過激な保守系差別集団として変貌していくけれど、その隆盛にはグリフィスと国民の創生……つまり”映画”の影響が多分にあったんだ

 

カエル「ちなみに、国民の創生の原作となった作品の名前は『クランズマン』であり……本作がなぜ”ブラック”クランズマン』になったのか、というのも見えてきそうです」

 

 

 

 

すみません、今回は相当長い&構成から考えたり、調べなければいけないので後ほど追記します!

 

土曜日の午前中には追記したいなぁ…… 

 

カエル「もしかしたら相当長い記事になるかもしれません。

 その時はまた2つに分けますので……少しばかりお待ちください。

 今回、熱量もかなりの作品であり微妙な問題も多いために、少し時間を置かせていただきます」

 

 

 

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