今回は『劇場版 からかい上手の高木さん』の感想記事になります!
こちらも、アニメファンからは注目度の高い作品じゃな
カエルくん(以下カエル)
原作漫画はもちろんのこと、テレビアニメ3期まで放送されていて、さらにスピンオフも何作も出ている人気作だよね!
亀爺(以下亀)
特に"高木さん系"というジャンルの名前がつくほど、代表的な作品でもあるしの
カエル「そんな日常系の作品がどのような劇場版になっているのか、確認しにいきましたけれど……これはもう、先にいいましょう!
絶賛案件です!
とても素晴らしい映画でした!」
亀「どこがよかったのかも含めて、しっかりと語っていければいいの。
それでは、記事のスタートじゃ」
この記事の短評
- 全体的な感想 → 日常と非日常の変化の予感を感じさせる傑作!
- 映像について → 自然の濃さ、陰影などがより映える作品に!
- 物語について → 恋愛と青春の両方を描いた傑作!
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感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#からかい上手の高木さん
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年6月10日
中学生活の最後の夏休みを通して変化の予感と変わらない2人の関係性を美しく描きました
特に印影の付け方、背景美術の美しさと夏の濃い色合い、音響表現に完全にやられてしまい「これぞ映画」と満足感がとてもとても高い!
2022年最高のラブ&青春作品の1つなのは間違いなし! pic.twitter.com/0ZFzAAIjNk
これは、ファン向けながらも久々のどハマりした作品かもしれんの……!
カエル「もちろん、原作やテレビシリーズを観たファンの人向けの作品であることは、間違いないと思います。
だけれど、これほどまでに感動する作品に仕上がっているとは思わなくて……途中から涙腺がうるうると刺激されちゃって!
よく『咽び泣くかと思った〜』なんてあって、誇張もすぎるなぁ〜と笑っていたんだけれど、今作に関しては、まさにその表現が当てはまりそうなくらいに、心に深く刻まれた作品になったね!」
亀「正直、ここまでとは思わなかったの。
わしはそこまで優れた高木さんファンではないので……内容も、正直1話を読めば基本的な設定などもわかるし、どこから読んでもいい作品とも言えるので、熱心に追いかけてはこなかった。それもまた、いい漫画作品であるとも言えるのじゃがな。
あの日常的な"からかい"の話が、どのようになるのか……そこを楽しみにしておったのじゃが、予想以上の作品が出てきて、驚きと興奮が入り混じっておるわい」
確かに、ここまでずっと追いかけて来たファンが待望の作品なんだけれど……もういっそ、ここから入門してもいいと思うような作品でもあるよね!
それだけ万人に愛されるような、シンプルで奥深い話になっておるからの
カエル「高木さんと西方がからかい合いをする、だけれど毎回のように高木さんに1つ上にいかれてしまい、負けてしまう……そんな単純なプロットさえ理解していれば、誰でもわかる物語だもんね。
しかも日常的な物語だから事前説明もいらないし……老若男女に愛されやすい作品になっているのではないでしょうか」
亀「なぜこの作品が映画化するほど人気があるのかも、この話を見ればわかってもらえるじゃろう。
テレビシリーズは3期まであるが、全話見る必要もないといえばない。
もちろん、ファンになればみてもいいと思うがの。
だが、それでも恋愛もの&思春期の青春譚としてもとても優れており、単純に映画として優れているので、アニメ&高木さんファンでなくても、オススメしやすい作品となっておるの」
高木さんがなぜ流行ったのか
一部では"高木さん系作品"なんて呼ばれているようだけれど、なぜそこまで流行ったのかな?
そもそも、この高木さん系作品の基準が難しいのではあるが……やはり、わかりやすさがとても大きいのかもしれん
カエル「高木さん系の定義は色々あるようだけれど
- 「〇〇さん」のように人名がタイトルに入る
- 男女の日常的な会話ややり取りを描く
などが典型とされているようだね。
高木さん自体は連載されている作品だけれど、近年だとTwitterで掲載されて話題となった連載作品に多い印象で……例えば同じ山本崇一朗の『それでも歩は寄せてくる』とか、あるいは2022年の春期にテレビアニメが放送している『可愛いだけじゃない式守さん』なんかも、その系譜に入るのではないでしょうか」
これらの作品は、近年のラブコメの王道とも言えるものじゃろう
亀「わしとしては……やはりこの手の作品の魅力は、以下の点にあると考えておる」
これらを全てまとめると”手軽に読める”という点に尽きるかもしれん
カエル「ふむふむ……それはどういうことなの?」
亀「この3点は、実は言いたいことはほぼ同じとも言える。
まず『短くて日常的でわかりやすいドラマ』が展開される。基本はラブコメであるが、誰が誰を好きなのか、というのが主軸になるわけじゃな。
この点はTwitterなどの凝ったコマ割りや展開が作りづらく、最悪4コマ漫画ほどではないが、短い連載になりやすい媒体で受けやすい。
次に『キャラクターを前面に押し出しやすい』というのもそうで、今は物語の設定や展開よりも、キャラクターにファンがつきやすい時代となっておるからの」
カエル「つまり”高木さんが好き”というファンが多いわけで、あの世界観だから読んでいます! という人は少ないということだよね。
うちでは物語の3要素で
- 設定(世界観)
- キャラクター
- 展開
を挙げているけれど、その中で特に重要視されているのがキャラクターであり、その傾向は年々強まっているということだね」
特に今の作品で重要なのは『初めから結論が示されている』という部分のように思うわけじゃ
亀「例えば、これが一昔前のラブコメだと
出会いはそこまで惹かれない → 徐々に惹かれていく
というような、ドラマが描かれておる。
しかし高木さんの1話で重要なのは"高木さんは西方が好き"という、この作品の肝であり結論を最初に提示してしまうわけじゃな」
考えてみると、あの1話の完成度がものすごく高いということもできるんだね
カエル「あそこで失敗すると”性格の悪い高木さんが、馬鹿な男子の西片をからかう”ということになりかねないけれど、そこに高木さんの思いを付け加えることで、”好きな人にちょっかいを出す”という、子どもらしい可愛らしい構図が成り立っているわけだもんね」
亀「うむ。
ということは、この作品では、からかいを通して2人の関係性が深まっていく様子を描いているわけじゃな。
いわばキスシーンのような恋愛作品におけるピークを、あるいはイチャコラを延々と繰り返しているのに近い。
キスなどのような手法ではなく、イタズラやからかいとしたことが、今作の優れた点と言えるじゃろう。
その結果、誰がどこから観てもわかりやすく、そしてピークが毎回あるような話になるという作品になり、それが現代の結論を先に知りたがるスピードアップを求める社会、あるいはエンタメ事情と合致したと言えるわけじゃな」
映画としての本作の魅力
色彩・音楽のちから
ふむふむ……それでは、この劇場版の魅力ってどこにあると思うの?
やはり、映像表現そのものの力じゃろう
カエル「映像表現そのものの力?」
亀「うむ。
上記のような、ただのからかいというイチャコラが続くだけの作品の可能性もあったが、しっかりとした内面を備え、中学生の青春ものとしてしっかりとした軸を獲得している。それについてはネタバレ多数になるため、後半で語るとしよう。
さらにいえば、映像表現もまた、今作の場合は優れている」
例えば、こんなシーンだね
自然の背景描写であったり、その色彩のセンスなどがとても優れている印象じゃな
カエル「今作は夏の季節が大事な作品なんだけれど、その夏っぽさを如実に感じられたよね。
それも、やっぱり自然の木々や草花などの緑の青の深さとか、そういった背景描写がとても優れていたからと言えるのではないでしょうか」
亀「高木さんという作品は、アニメ表現においては……例えばWITスタジオのような空間的なアクションによる映像表現などが向いている作品ではない。また、あまりにも過度に凝った自然な動きというのも、それはそれで違和感があるじゃろう。
では、どのように作品を魅力的にしたのか……それは背景描写の色彩などであったり、あるいは細かいキャラクターの可愛らしさを重視した魅せ方である。
これらの情景によって、とても観ていて楽しめる作品に仕上がっているわけじゃな」
あとは、音響もすごく良かったよね!
これは感覚的な部分になってしまうが、映画館で見る価値が特に跳ね上がるの
カエル「わかりやすいところでは……高木さん役の高橋李依の声質もマッチしていたし、物語の流れを映像だけでなく、音楽でも語ろうという意識がすごく強かったんだじゃないかな?」
亀「そうじゃな。
だからこそ、この作品は映像面、音楽面ともに優れており、映画館で観るべき作品になっていると感じたの」
明暗の付け方
それから、作品のテーマに少し触れる部分にはなるけれど、明暗の付け方がとても良かった印象があるなぁ
ここも色彩に含まれるのかもしれんが、それが心情表現と合致しておったな
カエル「なんだか、こういったはっきりとした明暗を見せられるだけで『あぁ、映画を観ているなぁ』という気分になるんだよね!」
亀「うむ。
これらの明暗の付け方というのは、単純に映像を引き締めるだけではない。それそのものが、彼ら、彼女らの想いと直結していると言えるじゃろう。
今作は恋愛劇であり、ラブコメでありながらも、同時に青春劇である。
その青春劇らしさをより強めるのが、この明暗のコントラストじゃ。
それでは、ここから先は作品内容により深く踏み込みながら、その辺りについても話していくとするかの」
以下ネタバレあり
作品のテーマ……別れの予感と思春期の変化
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
今作のテーマというのが”思春期の変化”という話じゃな
カエル「ボクも覚えがあるけれど、中学や高校の頃って、思春期というのもあるけれど安定感があんまりないような気がしていて……
小学生の頃って、まだそこまで人生の選択ってなかったような気がするけれど、でも中学・高校って進路を決めたりとかもする必要が出てくるじゃない?
でもやりたいことがわからなかったり……あるいは友達とずっと一緒にいたかったりとか、色々なことを考えてしまうんだよね」
亀「うむ。
中学生というのは、小学生から……あるいはもっと幼少からストレートで上がってきた人間関係が激しく変化する時である。
それまで築き上げてきた関係性……友人や恋人関係がいつかは破綻するかもしれない、そこまではいかなくても、少なくとも今のままの関係ではいられない。
学生時代というのは、肉体的な変化に加えて、社会が自分達を見る目も変化していくし、将来に向けて色々と選択することもあり、変化が非常に激しい時代でもある。
そう考えると、大人というのはむしろ楽かもしれん。自分で選択しなければ、多くの人は今と変わらない生活を5年後、10年後も続けている可能性があるからの。変化が少ない分だけ、安定しているといえる」
その変化の予感を描いたのが、今作なんだね……
先ほどの"明暗"の部分について、改めて触れていくので、またこの場面を観てほしい
この2つの映像は、かなり暗闇を強調しているわけじゃな
カエル「特に下の絵がわかりやすいけれど、学校の教室内は真っ暗になっていて、2人は明るい外にいるんだよね。だけれど、この絵だと暗い部分が強調されているから、2人がそこまで明るい気持ちを抱いていないのではないかと思わされて……
そこだけでも、未来に対する暗い想いとか、色々な悩みが伝わってくるような作品になっているよね」
亀「うむ。
また上の絵の場合は、高木さんと西方の恋愛(友人・あるいはからかい)関係について、今後も同じようになるとは限らない思いを抱いているわけじゃな。
この頃の少年少女というのは、まだ子どもということもできるかもしれんが、同時に大人への階段をある程度登り始めているとも言える。その境目にいるのが2人であり、いつまでも"からかい上手"の子どものままではいられない、というジレンマがある。
その微妙な感覚の差異を描いた部分でもあるわけじゃな」
恋愛関係に至っては、実は手を握ることすらできない……それこそが、2人がまだ子どもであり。恋愛関係に至れないと示す演出と言えるわけだね
子どもだからこそ本作はずっと"からかい"が続いてきたわけじゃが、そこに一区切りを加える作品になっているわけじゃな
疑似的な家族関係
後半は子ネコを拾ってのラブコメになっていくよね
あれは疑似的な家族関係を示すわけじゃな
カエル「そのまんま西片がお父さんで、高木さんがお母さんで……という構図だよね。
未来の家庭像を見せると同時に、実はビターな思いも描くという面白い部分だったね」
亀「ここは重要な部分で、2人が大人になるのに重要な儀式だったわけじゃな。
それまでは"からかい"という子どもである部分が強調されていた。先ほどから述べているように、からかいというのは、2人の恋愛関係の子どもらしい描き方じゃ。
これが大人であれば、キスシーンやSEXシーンになるが、それを直接的に描かず、比喩表現で描いたからこそ、今作はこれだけ高く評価したい作品となった」
カエル「ふむふむ……子どものからかいから、大人の関係へ、か」
亀「うむ。
高木さんで、真正面からあのようなビターなエンドを迎えることに少しびっくりしたが、それも納得なんじゃな。
つまり、まだ2人は子ネコすらも育てられるような状況ではない……なぜならば、子どもじゃからの。もちろん、あのまま高木さんが子ネコを引き取るという結末もあっていい。
しかし、それだと儀式になり得ない……子ども時代からの脱却というのは、なんらかの喪失があり、それを経て決意されるものである。でなければ、あのまま西方との関係は子どもの"からかい"のまま続いていたじゃろう。
それを超えて、新しい関係へと向かう……それこそが、今作で重要な事柄なわけじゃな」
中身の濃厚なラブコメに
事前の高木さんの映画化の予想からしたら、うちとしては、相当いい意味で裏切られたって気分だよね
まさか、ここまで内容の濃いラブコメ作品になると思っていなかったからの
カエル「それこそ……いつものやつが中身がないというわけではないけれど、からかいだけで2時間(1時間強)を過ごすのかな……なんて思っていたんだよ。それならそれでいいけれど、ちょっと映画館クオリティというには苦しいよな、なんてさ。
まあ、ファン向け映画ってそんなものかもしれないけれど。
でも、その予想が裏切られて、きっちりと"映画"になっていて!
本当にビックリしたなぁ」
亀「これほど軽い題材のようでありながらも、実は正面から思春期や青春を見つめている映画も、そうはない。
むしろ大人向けの実写映画であれば、もっと重く、シリアスに描いたり……あるいは”描いているぞ!”という感が、どこかに出てしまうものであろう。しかし、今作はそのようなことがあまりない。
それだけ軽やかに、いつもの調子や見せ方を崩さず……それでいながらも映画向けの題材をきちんと用意し、映画に合うように作られている作品も、そう多くはない。
シリーズファンも、初見も、誰でも自分なりの楽しみ方を提示してくれる作品と言えるじゃろう。
わしとしては……『劇場版 のんのんびより ばけーしょん』などと並ぶ、夏の日常系の作品の傑作として、語り継いでいきたいと思わせる内容であったの」
最後に
全体的に、満足度の高い作品でした!
これは年間TOP10入りも、かなり硬いかもしれんな
カエル「しかも今作は毎週EDが変わるというスペシャル仕様で、これも通っちゃうよね〜!
あと何回いくことになるんだろうね!」
亀「飽きるまで、何度も通いたい作品じゃな。
少し期間をおいてみたら、新たな発見もあるかもしれん。時間も1時間強ととてもみやすく、調整もしやすいので……これもまた、いい空き時間にチラッと観たい作品じゃな」
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