今回は『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の感想記事になります!
こちらも、大ヒットしているようで安心したの
カエルくん(以下カエル)
懐かしの名シリーズのあの回が、ついに劇場で観れるとあって、話題性もあるしね!
亀爺(以下亀)
……劇場で初めて予告が流れた時は『まさかあのドアンをやるのか?』となったがの
カエル「ま、まあ色々と名作とも珍作とも言われる回ではありますが……それがどのように変化していったのか、楽しみにしていました!
それでは、鑑賞した感想記事を始めましょう!」
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感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#ククルス・ドアンの島
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年6月3日
原作15話を映画化するにあたって2時間に引き伸ばした感は若干感じましたが全体的には楽しい作品でした
特に安彦良和らしいキャラクターデザインとコミカルさをみせる動きはガンダメのイメージを良く刷新しており絶妙な軽さと重さを備えた娯楽作でした pic.twitter.com/uI3TGYMaOz
あの30分をここまで映画サイズにしたことが、すでに驚きかもしれんな
カエル「今作は形としては劇場公開されていますが、BDも劇場で販売されていますし、どちらかといえばOVAの上映のような、特別興行に近い形になるのではないでしょうか。
その中でも、本作はやはりガンダム……特にファーストガンダムのファン向けに作成されているのは間違いなく、ファン向け作品の様相はとても強いです。
それでも、ガンダムに馴染みが少なくても、楽しみやすい作品なのではないでしょうか?」
亀「わし自身は、特別ファースト原理主義者というわけではないが、それでもかなり楽しく観ることができたの。
ククルス・ドアンが出てくる15話というのは、全体を通してみればなんて事のない、大きく本編には関わる事のない物語じゃ。ドアンも、この先の物語には出てこないし、Z以降でも生存しているのか、一切語られる事のない、モブとまでは言わんが、まあ、それに近いゲストキャラクターじゃな。
そんな15話を2時間にする労力や工夫なども凝らされており、決して悪い作品とは思わなかったの」
とはいえ、やはり30分弱の物語を2時間にするのは、簡単ではないよね……
元々の物語の荒さがある分だけ、今作はうまく作られていた印象も大きいがの
カエル「ボクとしては、ちょっとだけ長いなぁ……と感じた部分もあったかな。
欲を言えば90分台の作品だったら、もっと素直に賞賛できたかも。
それでも、元々の物語を単純に4倍位の長さにしているわけだから、長く感じるのは当然かも知れないけれどね」
キャラクターの魅力とアムロの未熟さ
今作の原作との違いってどこにあると思う?
やはり、このキャラクターの動きなどの面白さではないかの
カエル「キャラクターの動きの面白さ?
ガンダムというと、作品にもよるけれど基本はシリアスな作品という印象が強いけれど……」
亀「今回は安彦良和が監督を務めておるが、その味わいがかなり出た作品だと言える。
というのは、かなりコミカルなシーンも多い作品なんじゃな」
カエル「序盤のブライト艦長と地球連邦のお偉いさんとの話の時、お偉いさんの動きとか、相当コミカルだったよね。
もちろん、ギャグというほど誇張されたものではないけれど……」
亀「この辺りは安彦流ということができるじゃろうな。
今作が単なるシリアス一辺倒、あるいはガンダムなどのモビルスーツの魅力一辺倒ではなく、娯楽として観やすくなっているのは、このような面があるからじゃとも言える」
今回はギャグ的な動きや要素も目立ったブライト艦長
また、なんといってもククルス・ドアンの魅力が爆発していたよね!
今作を機会に、再評価されるのではないかの
カエル「ガンダムって敵キャラクターが魅力的な部分が多いけれど、今作のドアンもまさしくその通りで!
多分スパロボだと味方になるんだろうなぁ……なんて思いながら、鑑賞していたよね!」
亀「まあ、戦闘を辞めることに意義があるキャラクターを仲間にするのは、スパロボでも難しそうじゃが……それは今に始まった話ではないかの。
それはそれとして、今作はドアンが敵でもあり、またアムロを導く存在としても、子供たちの父親的な存在としても魅力的に描かれておる。
それがまた、アムロをはじめとした地球連邦のキャラクターたちの魅力を引き上げるわけじゃな」
忘れちゃいけない、主人公であるアムロについては、どう思ったの?
今回は等身大の少年らしさが目立った印象じゃな
カエル「近年はやっぱり『逆シャア』以降のアムロのイメージが定着していることもあって、戦闘に特化した最強の軍人というイメージも強いけれど……でも、当然ながらこの時代は、まだまだあどけなさが残る、少年兵だったはずだもんね。
それを考えると、今作でもその一面が強調されたのは、当然なのかなぁ」
亀「うむ。
今作では原作にあるようなナヨナヨとしたイメージは少し減っておるように感じたものの、全体的には芯の通った軍人というよりは、もっと等身大の少年・あるいは青年らしさが目立ったという印象であった。
その未熟さもまた、今作のアムロの魅力でもある。
だからこそ、ドアンのような大人の存在がより引き立つのであるし……それこそ味方側でそこまで絡みがなかったが、スレッガーのようないい加減に見えてしっかりと周りを観察している大人キャラの魅力が引き立ったと言えるかの」
どことなく少年ぽさもあり、キリッとしていないアムロが逆に今は新鮮かもしれない
現代に蘇る1年戦争
今作を今の時代の蘇らせた意義って、なんだと思う?
身も蓋もない話をしてしまえば、当然興行のためであるじゃろう
カエル「ま、まあ、それはそうなんだけれど……
ガンダムファンって根強いし、特にファーストが絡むオールドファンは熱い人も多いからね。1年戦争がらみで『閃光のハサウェイ』以外でも、企画を動かしていたいのは、当然だろうし……」
亀「それはそれとしても、本筋を全て現代化するのは大変じゃし、それも『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で描いたから、その番外編を作ろうという企画じゃろう。それで言えば、本編に絡まず、番外編で有名な今作を扱うのは、OVAとしてはうってつけの企画じゃ。
実際に公開規模に対して大ヒットしておるし、熱いファンが多いということは、高いパンフレットやBDもバカ売れしているじゃろうから、その企画は大成功ということができるじゃろうな
こういうととても嫌がる人もいるじゃろうが……しかし、企業が持つ魅力的なIPの魅力を維持するためにも、作品を作り続けていくのがとても大事じゃ。このガンダム人気を加速させるためにも、このような作品は毎年のように作り続ける必要があるの」
じゃあ、そういう商売っけは無しにして、今の時代に今作を作った意義はなんだと思う?
あまり意義は感じられないというのが本音ではあるが……それこそ『閃光のハサウェイ』との違いを考えれば、面白いじゃろう
カエル「一部ではハサウェイと比較した結果、ガンダムファンから顰蹙を買った記事もあったみたいだね……」
亀「わしとしては、言葉そのものに同意はしないが、少し言いたいこともわかるかの。
『閃光のハサウェイ』は、映像も現代化された最新鋭のものに感じられた。
夜の暗さをアピールしたモビルスーツ戦や、キャラクターを超えた人間らしさを感じさせる魅力も満載じゃ。
また物語にも現代的な社会風刺や投げかけもあり、色々な見どころがあるし……何よりもギギが超絶美人であった」
キャラクターについては好みもあるだろうけれど、確かに映像的な凄みも含めて、わかりやすいのは『閃光のハサウェイ』かもね
一方で今作は、やはりどこかで古めかしさは残している
カエル「もちろん、当時のような作画崩壊はないし、映像表現もすごく凝っているけれどね」
亀「うむ。
わしとしては、例えばキャラクター像を見ても、人間というよりは、今作はキャラクターであることを超えてこなかった。この辺りは主観的なものになるので、その理由は難しいが……しかし、あえて"キャラクター"であることを守ったという見方もできる。
それで言えば、例えばフラウやセイラに関しても、少し古いような、しかし現代でも通じる萌えを内包したデザインやキャラクターになっており、しっかりとオリジナルらしさを残しておる」
まあ、安彦監督がオリジナルのスタッフだから、当然といえば当然だけれどね
これを古いと見るか、それとも新しい今時の表現と見るかは、評価が割れるじゃろうな
カエル「ちなみに、亀爺としてはどうなの?」
亀「わしも古い人間だからかもしれんが……とても見やすかった。
その点で言えば、ハサウェイよりもこちらの方が、ある意味ではガンダムらしい作品と言えるのかもしれん。
斬新な現代性というのは少ないかもしれんが、しかし古き良き作品の魅力は、しっかりと今作にも根付いておる。
それでいながらも、古さを感じさせない。きちんと現代的な丸さというか、萌えというか、そういった要素も内包しているように感じられた。
その意味では"リメイク"としては、まさにお手本と言えるのかも知れんし……まあ、何度も言うようにオリジナルスタッフの安彦監督だから当然かもしれんが、現代に蘇ったファーストガンダムとしては、なかなかレベルが高いように感じられたの」
以下物語&ガンダムシリーズのネタバレあり
作品分析
『ククルス・ドアンの島』の特殊性
この大元の『ククルス・ドアンの島』って、どんな物語だったの?
俗にいう”神回”などとは異なり……まあ、今となってはネタ回に近い扱いを受けているの
カエル「そこまで良い回という噂は、実はあまり聞かないのかな。
もちろん、ファーストガンダム自体がとても評価が高いこともあるけれど、その中では、少し息抜き要素もある回というか……
この例えが適切かはわからないけれど『ONE PIECE』でいうところのガイモンさんの回に近い気がする。
ファンの中では印象深いけれど、全体には大きな影響を与えていないって意味でもね」
亀「総集編になったら、真っ先に切られる回じゃろう。
とはいえ、昔の……いや、長期的に放送されるテレビシリーズでは、そのような回も必要であった。
特にこの話は制作も外部スタジオに委託しており、その作画技術もあまり高くないことで有名じゃ。
ザクが持っていたバズーカが、次のシーンではビームライフルになり、その次ではバズーカになる……なんて話もあるの。それでも、昔ながらの回ごとによる作画技術の違いを味わえるという意味では、味わい深いということもできるの
以下のインタビュー記事でも、このように語られています
(中略)
“捨て回”などと言われることもあるが、独特の魅力があり、ファンに愛され続けている。 田村さんは「作画崩壊とか言われていて、確かにそうなんだけど、あんまり気にならないというか」とも話す
「今見てもヘタだとは思っていないんですよ。味といえば味ですし。絵のうまさをデッサン力だけで見ないところもあって、ゆがみにこそ味があると、ある程度そう思っているところがあるんです。あのカットが僕のところにきたら、作監として直すけど、全否定はしないと思います。あの絵をどう生かすのか?を考えます」
すごく独特な回だけれど、だからこそ、人気があるとも言えるわけだね
ネタになる分だけ、まだマシと言えるのかも知れんな
アムロと対比されるドアン
もう少し真面目に内容に触れると、どういう評価になるの?
この辺りは宇宙から地球へと物語の舞台を移しておるが、そこでアムロは地球で戦うジオン兵や、地球に住む人々との違いを色々と感じるわけじゃな
亀「その前の回である14話の『時間よ、止まれ』では『いいなぁ、地球に住む人々は気楽で』という言葉がある。これは能力とガンダムという装備に優れるアムロと、装備がない若者ジオン兵を対比した話でもあるわけじゃな」
ふむふむ……そうなると、ドアンはどのようになるの?
そうじゃなぁ……やはり、アムロが辿ったかも知れない、もう1つの可能性の存在、ということができるかもしれんの
カエル「アムロが辿ったかも知れない、もう1つの可能性?」
亀「そうじゃ。
つまり、アムロもホワイトベースから降りて、フラウ・ボゥや子供たちと一緒に暮らしていた可能性がある、ということじゃ」
……なんか、これだけだと『都会の生活に疲れたから、田舎で農業で暮らしていく』というスローライフな話みたいだね
戦争中の緊迫感があるものの、そんなところもあるかもしれんの
亀「この話のラストではガンダムがドアンが騎乗していたザクを思い切ったやり方で戦闘不能にするシーンがあるが、あれは戦争・暴力の否定じゃ。
つまり、戦う手法を失くすことによって、戦うことを不可能にし、その島での自給自足という生活を余儀なくした。
まあ、言ってしまえば”戦争の否定”であるわけじゃな。
ドアンは戦闘システムの1つであるモビルスーツがあるかぎり、戦い続けるしかなかった。それがなくなったことによって、戦争をやめて戦士であることを止めるという結末を描いていたわけじゃな」
カエル「それがファーストガンダムにおけるアムロの最後にも繋がるというわけだね」
亀「アムロはこの先も、逆シャアまでもずっと戦士であり続ける。
以前にも語ったが……戦争・戦闘下において、英雄は2つの道しか残されていない。
つまり死か、あるいは英雄の放棄じゃな。
アムロはこの先もずっと、戦うことを選んだ。
だからこそ、逆シャアのラストではああなった……ああしなければ、アムロ・レイという男の物語は、英雄のままでは終わらなかったわけじゃな。
しかし、もう1つだけアムロにあったかもしれない可能性……それこそが、あの島に暮らすように、戦いをやめて、子どもたちと愛する人と共に過ごすという選択だったわけじゃな」
敵によって導かれてきた少年、アムロ
考えてみると、アムロって結構大人……あるいは敵キャラクターから影響を受けているよね
この後のランバ・ラルしかり、アムロの成長を促してくれるのは敵の方が多いかもしれんの
カエル「この回もある意味では捨て回ではあるんだけれど、それでは収まらない魅力を持っているというか」
亀「上記にも述べたように、ドアンというのは、アムロのもう1つの人生を示唆する存在でもあった。
アムロはその道を選ばなかったわけで、だからこそああいう結末になったわけではあるが……今作では、その道に進むこと、そしてアムロがその道を選べないほどに、戦士としての才能に満ち溢れていることも、敵を無情に踏み潰すシーンで示唆しておったな」
カエル「子供たちの数が増えたとか、生活描写がより細かくなったとか、色々あるけれど、1番はやっぱりドアンというキャラクターの人間性の魅力、そして本作が本当に伝えたかったことは、最後に起こすザクへの行動による暴力の否定なんだろうね」
亀「その意味では、迫力のあるモビルスーツ戦を楽しむというよりは……いや、もちろんそちらもあるが、どちらかといえば人間ドラマを楽しむ気持ちで劇場に向かった方がいい作品と言えるじゃろうな」