今回は『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の感想記事になります!
公開延期を経て、ようやくといったところかの
カエルくん(以下カエル)
「今回はBDの発売や、ガンプラの発売などもあって劇場も大混雑ということで、やはり人気の高さを伺えるね」
亀爺(以下亀)
「もはや宇宙世紀は大河ドラマじゃからの。
しかも、オールドファンが特にアニメ化を待望していた『閃光のハサウェイ』ということで、盛り上がりも期待大、といったところかの。
どうやら初日だけで1億円越えの大ヒット、ガンダムシリーズ歴代最多の20億円超えも見えてきたということらしいし、この勢いが続くかもしれんな」
カエル「さすがはロボットアニメの金字塔、その影響力は今も健在どころか、なお増すばかりといったところだろうね。
それでは、記事を始めましょう!」
感想
それでは、ツイッターの短評からスタートです!
#閃光のハサウェイ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年6月11日
冒頭15分ほどのAパートに関しては今年ベスト級だったが、残念ながら息が切れてしまった感もあるから
植物たちの美しさ、富裕層と貧困層の暮らしなど宇宙世紀の社会と自然を美しく描きつつキャラクター演技などを見せ場に戦争とテロを語る手法は歴代ガンダムでも上位にお気に入り pic.twitter.com/Y8lHhvKeJm
自分自身はガンダムには戦争や社会を語って欲しいので満足できるが、単純なバトルが観たい人は辛いか
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年6月11日
またモビルスーツ戦に興味が薄いからかもしれないが、暗い画面と合わさりあまりアガルことはなかったのが残念か
基本的には、2021年でも屈指の作品となることは間違いなじゃろうな
カエル「本作は3部作のうちの1作目であり、どちらかといえば劇場版というよりもOVAの特別上映に状況が近いかもしれません。
映画も割引が効かない特別上映1900円均一だし、ガンダムUCなどに近い印象だよね。一昔前ならばOVAで家で楽しむ高クオリティ作品が、劇場でかかることが前提になったのは大きな変化かもしれないね」
亀「まず間違いなく、この作品の登場は2021年でも大きな出来事と言えるじゃろう。
それはガンダム作品としても、アニメ業界の売り方の変化としても……の。少しはこの後語るとしよう。
映像クオリティも高く、人物もMSもしっかりと動き回る。特にカメラを意識した映像は観ていて飽きることがあまりなかった。
わしは冒頭15分ほどが特に圧巻じゃったな。
なるべく劇場で楽しもうと、YouTubeで配信されていたものは観ておらんかったのじゃが、その影響もあり一気に引き込まれた印象じゃな」
音楽・演技なども含めて全てにおいてリッチな作品といえるよね
これが3部作でできるのじゃから、さすがはロボットアニメの王様、ガンダムといったところじゃな
カエル「UCなどに続いて、現代のアニメ音楽業界を語る上では欠かせない、屈指の名作曲家、澤野弘之の音楽を聞きに行くだけでも劇場に向かうべきでしょう。
個人的には、Aパートが終わり、タイトルがクレジットされるのですが、そこの音楽の合わせ方などは特に鳥肌ものでした」
亀「村瀬修功監督作品は、近年不遇な作品もあり……『虐殺器官』や、またテレビアニメの『GANGSTA.』などはマフィアものということもあり、わしは非常に楽しんでおったのじゃが、制作会社のゴタゴタと倒産を受けて徐々に残念な作りになってしまった。
本来のしっかりとした体制を整えれば、これだけの作品が……特に”それぞれの正義と社会悪”を描いた作品たちという繋がりも感じられ、本来の監督の力量と魅力が発揮された形じゃな」
世界目線を狙いにきたガンダム?〜垣間見えるビジネス面の戦略〜
近年だとハリウッドでの実写映画化なども決定しているけれど、ガンダムがまた注目度をあげてきているよね
今作も世界市場を狙いにきたと言えるのではないかの
カエル「日本以外ではNetflixが独占配信契約を結ぶなど、配信による世界市場のアニメ熱の高まりをしっかりと抑え、そこに迎えにいった形だよね。
また中国では上海で実物代フリーダムガンダムがお披露目されるなどもあり、着実に人気を増している感じだね。
ガンプラなどの玩具にも繋げられるし、色々と商売のやり方に広がりを持たせられるのも強みなのではないでしょうか。
詳しくは以下の記事を読まれた方がいいかと思います」
今作も”映画”であることを強く意識しているの
亀「一番ビジュアル的にわかりやすいのはケネスじゃろうな。
小説版では金髪の白人であったが、今作では黒人に変更されておる。シャアとの差別化のためらしいが、これでハサウェイ=アジア系、ギギ=白人系、ケネス=黒人系という人種的多様性と、”日本の作品らしさ”をある程度抜くことができているようにも思う。
近年はポリコレ臭が強すぎる作品もあるが、しかし日本が世界戦略を狙う上ではまだまだ考えが及んでおらん部分でもあるし、これも世界進出の一歩であると考えるべきじゃな 」
カエル「また、内容も映画的だなぁ……と感じたんだよね。
もちろん、原作があるからなんでも好き勝手できるわけではないけれど……スタートのカメラワークから、びっくりするほどの奥行き、序盤のハイジャックシーンなどは実写洋画を見ているような気分になったんだよね。
今作を知るには『逆襲のシャア』を見ていることが望ましいけれど、それでも今作単体でも理解できるように作ろうという、意思は感じたかなぁ」
亀「まあ、国内だけでも現にBD、パンフレット、ガンプラなどが飛ぶように売れておる。
ガンダムというコンテンツがまだまだ現役であることを示す一方で、あとは今後を担う若者をいかに取り入れていくのか……それを考える時代と言えるのかも知れんの」
作品考察
社会と戦争を描くガンダムシリーズ
今作はどちらかといえばヒューマンドラマが多めの采配だったよね?
今の日本では数少ない、”社会と戦争”を語ることができるのがガンダムじゃからの
カエル「あれ、でも日本は戦争作品は諸外国に比べれば、特に最近は決して多いとはいえないかもしれないけれど、でも戦争について語った作品はあるんじゃないの?」
亀「いやいや、わしに言わせて貰えば、日本の戦争映画のほとんどは"第2次世界大戦の敗戦国である日本"について語っているだけじゃ。
もちろん、それはそれで大事なのではあるが……もっと大きな主題である”戦争とは何か? 正義とは、社会とは何か?”という問いはあまりなく、戦争反対、かつての日本の選択は間違えだったという作品になりがちだと思っておる。
そして、それを語れる数少ない媒体がロボットアニメじゃ」
確か、近年だと『蒼穹のファフナー』の時でも同じことを語っていたよね
ファフナーやガンダムは、架空の世界を舞台にしたファンタジー混じりのSFじゃから、大きなテーマである戦争と人類ということを論じることができる
亀「そしてわしがガンダムに望むのは”戦争とは何か? 社会とは何か?”という問答である。
その要素がとても強かったのが近年ではガンダムUCであり、わしは大好きなタイトルである。また、他の作品では『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』じゃな。
亀「今作に関しては、明らかに人間ドラマを描くことに振っておった。だからこそ、MSの戦闘などを期待していた人には、少し肩透かしかもしれんが……富野節の混じったものが感じられる会話や物語に、わしは震えた。
難しい話であり、色々と頭がこんがらがりがちではあるが、それでも一見する価値は大いにあることは間違いない」
ハサウェイ・ノアの描き方
今作の主人公であるハサウェイ・ノア(マフティー・ナビーユ・エリン)の描き方については、どう思ったの?
複雑な内面性を多く内包した人物であるの
カエル「今回は時間も合ったので、舞台挨拶付き上映を鑑賞しましたが、ハサウェイ役の小野賢章が『本来はカッとなりやすい激情型だけれど、なんとか抑えて大人の対応をしていることがわかるようにディレクションされた』というようなことを語っていて、すごくそれが印象に残っています。
確かに本作を見ていると、Aパートのテロリズムの描写などもそうだけれど、すごく思慮深い人物のようでその場の思いつきのような、激情で行動してしまう一面もあって、とても複雑な人間だったね」
亀「この映画は基本的には対比構造で物語を動かしておるように感じたの。
- 連邦の大佐のケネスとテロリストであり連邦の軍人の息子のハサウェイ
- 上流階級の連邦高官と、貧困街で暮らす人々
- 人工的に作られた都市と、美しい自然描写
これらの対比を行うことで、ハサウェイ=マフティという人間を描いておった。
面白いのは、ハサウェイ=マフティというのは、どちらか1つの面に偏っているわけではない。
- 激情家(ハサウェイ)⇄思慮深い戦略を持つテロリスト(マフティ)
- ブライト大佐の息子(ハサウェイ)⇄連邦に仇なすテロリスト(マフティ)
- 富裕層の息子(ハサウェイ)⇄貧民街に潜伏するテロリスト (マフティ)
こういったように、様々な面を内包し、そして己の中で見つからない答えを持ちながら戦っている」
作中では、タクシーの会話が印象深いよねぇ
『本当の貧民は明後日のことなんか考えていられない』というものじゃな
カエル「多分、マフティにはマフティの正義があるんだよね。それは地球から人類をいなくさせることであって、マフティが守りたいものとして自然環境があって、圧倒的にそれが美しくて……
浮気だろうがなんだろうが、好き勝手している政府高官と、貧困でも地球で生きなければいけない人類の両方を地球外に送ることができるのだろうか?
同時に、その対比って貧困層が……必ずしも貧困というわけではないけれど、地球に比べると地位が低い宇宙のコロニーで暮らす人々のことを考えると、地球とコロニーの対比にもなるわけだよね」
亀「本作のマフティが人類の地球外進出をより強く訴えたシャアの思いを継いでいるとしたら、ハサウェイはアムロの人類が見せたあの光を信じているとも言える。
革命家・テロリストが富裕層の息子というのはよくあることではあるが……この作品もまた、富裕層であるハサウェイ、ケネスと、そうでないマフティの対比で物語が紡がれておったの」
MS戦闘について
これについては……うちはちょっとだけ語りづらい部分があるのかなぁ
うちはあまりMSの戦闘シーンを重視しておらんからの
カエル「あんまりわかりづらい部分が多くて、語ることは難しいんだけれど……今作に関しては、正直思うところはあるんだよね。
MS戦闘自体がそこまで多くはないし、しかも暗い中で行われていて何がなんだか、わかりづらかったかなぁ」
亀「まだ1章ということで、この後に期待する一面もあるじゃろうがの。
しかし、意図はわかる。
確かに市街戦などでは、流れ弾などにあたり一般市民に被害が出る描写などが、恐怖感を与えていた。
今作はMS戦闘をかっこいいものとして描かず、あくまでも”恐るべき暴力”として描いておるわけじゃな。
それでいうと……巨大ロボットが戦闘して一般市民が被害に遭うというのは、富野由悠季監督の『無敵超人ザンボット3』が、初めて描写された作品かもしれんの。
またそれ以降でも前述の『0080』でもそのような描写があり、非常にガンダムらしい描写ということもできる。
爽快感を与えるというよりは、扱うMSの恐ろしさ、テロリズムの暴力性を描いておった」
とても崇高な理想に対して、恐ろしい暴力だね……
暗い中でビームライフルなどの流れ弾などが人を焼失させる様などは、恐怖感をさらに煽っておる
亀「確か『機動戦士ガンダム』の中でも、キシリアが一瞬で骨となり焼失するという、ほんの1カットを板野一郎が描いたという話があったように記憶している。
そのように戦争の恐怖、かっこいいだけではないMS戦を今作では描いておったわけじゃな」
カエル「その結果、人間ドラマがより深くなった印象だね」
亀「今作の場合は、MSの戦闘シーンなどの快楽性よりも、人間ドラマ、そしてガンダムなどを通して富野由悠季が説いてきた社会や人間というものを強調しているように感じられた。
この後、この路線がどのようになっていくのか……そこも注目したいものじゃな」
最後に〜軽く声優について〜
というわけで、この記事のおしまいです!
軽く声優について語るかの
カエル「今作の声優さんも佐々木望から小野賢章に変更されていたり、既存の媒体とは異なりますが、それが見事にハマっていたのではないでしょうか?」
亀「印象に残ったのはやはり上田麗奈じゃな。
あのような狂気性も含んだ美女の役を演じさせると、天下一品じゃな。
舞台挨拶ではホワホワとした女性であったが、役になると変わるのじゃろう。見事な演技であった」
カエル「満足度のある作品でした!」
物語る亀、全編書き下ろし書籍がKADOKAWAより発売です!
電子書籍版もあるので、是非ともご購入をお願いします!
上記画像クリックでAmazonのリンクへと飛びます