今回は新年1発目に、年末に映画館で鑑賞した『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の記事となります!
いきなり旧作からスタートするわけじゃな
カエルくん(以下カエル)
「いやー、でもさ、やっぱり1度は語っておくべき題材だと思うんだよね!
しかも、自分でも意外だけれどマクロスに関してはブログで語るのが初だし!」
亀爺(以下亀)
「アニメ文化の歴史にも大きな意味を持つ作品であるからの。
もしかしたら、新年にふさわしい作品なのかもしれんな」
カエル「この記事では
- 『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の特長
- 今作が描いたミンメイと早瀬の対立とオタク文化
- 戦争と文化の関係性と時代の変化
について語っていきます!
それでは、記事のスタートです!」
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
愛、おぼえていますかは昔見たことがあるのだけれど、当時はまだスパロボ並みの知識しかなくてオタクの教養としてみていた面も
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年12月31日
今回は久々に鑑賞して知識が体感に変わり当時の人々がこの作品を熱く支持した気持ちがとてもよくわかった
歌もそうだけれどメインテーマが流れるだけで感情が昂る!
物語的には今見ても荒い部分があるし、総集編だなぁと感じる部分もあるけれどそれもまた1つの味ということで……
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年12月31日
ミンメイ&飯島真理に惹かれる人々の気持ちも何となくわかったし劇場で見るべき案件だったのは間違いない
昔は絵&歌が古いとしか思わなかったもんなぁ…劇場ってすごい(歳の問題?)
名作と呼ばれるのも納得じゃな
カエル「愛おぼは過去に見たことがあるのですが、当時はマクロスの基本設定くらいしか知らなかったんだよね。それこそスパロボで出てきて”めっちゃ速くて機動力や回避性能は高いけれど火力に乏しい飛行機”くらいの印象しかなかったから、当時見た時はそこまで思い入れができていないんだよねぇ。
もちろん、愛おぼクラスになると知識ばかりは溜まっていくんだけれど、今回は初めて劇場で観て、それが実感として変わったというか!」
亀「”知識として知っていること”と”実感として知っていること”の差が当然あるのじゃが、今回で初めてこの映画に衝撃を受けたという人たちの実感がわかったということじゃな。
こればっかりは時代性などもあるため、公開当時に観た人との差が出てくるのは仕方ないと思っていたが、劇場で公開してくれるのは嬉しかったの」
カエル「前に『マクロスは初めてオタク向けに登場したアニメだ』と語る言説を読んだことがあるんだよね。
ヤマト・マジンガーZ・ガンダムとかはあくまでも子供向け作品の流れで登場していたけれど、アニメ愛好家の大人たちのために登場したのが『超時空要塞マクロス』だったという話だね。それが史実として事実かは別としても、当時はそのような受け止められ方をしたというのも、すごく納得がいくものだったね」
亀「それこそ、ロボット・美少女・メカ・バトル・アイドルなど、オタクが好きなものが全部載せじゃからな」
やっぱり、一般的にはミサイルの軌道などの板野一郎による板野サーカスが有名だよね
当時は20代前半での活躍ということで、やはり際立った才能を感じるの
カエル「ただ、今回劇場で観て改めて感じたのが映像と音響の迫力でさ……こればっかりは感覚的な話になるけれど、セル画のメカの書き込みって相当胸にくるものがあるんだよね。この迫力だけは、今のアニメにも出てこないというか!」
亀「あれは不思議なものじゃな。
セル画で書かれた美しい描写は、緻密な作画や美術、撮影処理が行き届き、より緻密になった現代とはまた違う魅力に溢れているように感じられるの。
その辺りにもオタク心をくすぐられるし、それに合わせてマクロスのOPのメロディや、戦闘などに流れる音楽があることによって、より物語への没入感も増していく。
今回鑑賞して、特に前半の30分ほどの完成度の高さには、舌を巻くものがあったの。後半などは総集編らしい速さはあったが、それもまた一興というものかの」
アイドル的な美少女、リン・ミンメイの透明感溢れる魅力
そして何よりも、リン・ミンメイのアイドル的な魅力だよね!今回見て、僕はメロメロになっちゃったよ!
アニメ界の一大ヒロインとして名高いのも納得するの
カエル「これも昔見た時の話になっちゃうんだけれど、当時は『なんか古いアイドルみたい!』って思っていたんだよね。それこそ、時代的に参考にしているのは山口百恵、松田聖子などのアイドルであるのは間違いないだろうし。
だけれど、これは劇場で観たからなのか、それとも年齢……ゴホンゴホン! まあ、色々と受け止め方が変わったのかはわからないけれど、今回は本当に心底可愛いアイドルに見えたんだよね!
これは確かに、アイドルブームの時代では人気も高いだろうなぁ」
亀「この当時のザ・美少女ということもあったの。
とても可愛らしい仕草であり、清純派ヒロインが主人公に惚れてくれるという意味では、今にも続くオタクの願望がそのまんま出ているという作品だとも感じた。良くも悪くも、今のオタクアニメの源流であるわけじゃな。
彼女の存在がこの作品のキモであるのは間違いなし、ここに関しては後々に語るとしよう」
死を明確に描いた戦争描写
ただ、マクロスってただオタク向けにキャッキャうふふをしているだけじゃなくて、なかなかゴア表現も過酷なんだよね……
この辺りは戦争を知る世代がまだまだ現役で身近な存在だったということもあるのかもしれんな
カエル「例えばミンメイ達が避難しているところに敵機が突っ込んできて人が亡くなったり、あるいは戦闘パートでも死というものが如実に感じられるよね……」
亀「例えばマクロスのロイ・フォッカーは、まだキャラクターとしてカッコいい華々しい死を迎えられる。この辺りは明確にドラマを意識しているパートであるな。
しかしそうではない部分……一般のキャラクター達やモブに関しては、その華々しさも与えられない。
柿崎などはネタとして語られるが、それももしかしたらまだマシかもしれん。まあ、わしもいつの間にか死んでいた……とあっけに取られたほどであるが。
戦争における生々しい死の気配をきっちりと描き、ゴア表現や恐ろしさを加えておる。この辺りは、富野由悠季あたりの影響もあるじゃろうな。
それこそ、板野一郎はガンダムにおいてゴア表現を描いたことでも有名じゃからの」
カエル「ただの明るいだけのオタクが喜ぶだけの話ではないんだよね……」
作品解釈
リン・ミンメイと早瀬未沙
じゃあ、ここから解釈だけれど、リン・ミンメイと早瀬美沙との三角関係に関してはどのように解釈するの?
ここは 一条輝という若者が、どのような形で大人になるのか? を描いたと解釈するかの
カエル「煇は最初はミンメイに惹かれるけれど、その後は早瀬とくっつくんだよね。
そこが当時も話題となったという話もよく聞くね。ただ、早瀬は当初こそ地味ヒロインだったし、ミンメイの方が人気だったらしいけれど、後々はきちんと早瀬も人気になったらしいけれどさ」
亀「わしに言わせて貰えば
- リン・ミンメイ→若者の夢や憧れ、理想の存在
- 早瀬美沙→若者が直面する現実
という解釈も成り立つと思っておる。
リン・ミンメイというのはオタクの男からすれば、理想の存在である。
ルックスも清純派で性格も良く、可愛らしい。それはまさに夢や憧れである
一方で早瀬はきつい性格(実際は喧嘩腰の煇に対して当たりが強いだけで普通の性格)を強調されており、年齢も少し年上じゃ。
まあ、19歳とまだまだ若いし、あの年頃で2歳上であれば、むしろ魅力増大するような気もするがの。
つまりミンメイと早瀬の対立というのは
夢や理想(ミンメイ)↔︎
現実(早瀬)の対立
になると感じた」
この解釈は、もしかしたらエヴァや庵野秀明に引っ張られているのかもしれんがの……つまり、わしが思うにこの作品は……『1人の青年がオタクの理想を捨てて、現実に戻っていく物語』ということになるのではないかの
カエル「現実に帰れってそれこそエヴァっぽい話だね」
亀「もちろん、エヴァの方が後発じゃがな。むしろ庵野秀明が修行を積んだ作品であるわけじゃし。
じゃが、今の時代とは違ってアニメやオタク文化というのは、当時は卒業することが当然とされている文化であった。いつまでもそれに熱中しているのも、おかしなものであると。
それを肯定しているわけではじゃろうが、その時代の空気というのは、愛おぼも感じていたのではないか。
だからこそ、オタク向けアニメでありつつも、オタクに対していい顔をするだけでなく、現実の存在……ミンメイよりは手の届きやすい存在である早瀬とくっつくと言うことにしたのではないか、という解釈が成り立つわけじゃな」
戦争と文化
もう1つの解釈としては、戦争と文化の対立軸を生み出したという点だね
戦争だけが決して物事を解決するわけではない、ということじゃな
カエル「この当時の戦争作品っていうのは、主人公達が戦争に勝って敵を倒して終わるというものが多いわけだよね。それこそ、ヤマトにしろ、ガンダムにしろ、最後は主人公が武力的に勝利を収めている。
だけれど、その戦争では絶対に勝てない相手が敵となった時に、その対抗手段というのは文化でしかないということを描いたということでは、とてもリベラルな気質も感じる作品だね」
亀「うむ。
戦争でただ戦うだけでは、お互いに滅ぼし合うまで決着がつかない。それを男と女の対立としたのがゼントラーディとメルトランディの対決としても描いている。
これは戦争の時代→冷戦の時代を経て、その次の時代へと向かった現実をも反映したと思っておる」
カエル「戦争→冷戦の次となると……テロの時代?
あるいは……経済戦争の時代かな」
亀「まあ、そうじゃろうな。大国同士では戦争という状態はなくなり、その次で対立するのは経済による戦争であったりする。そこでは文化というのは……例えばスポーツの祭典であるオリンピックが然りであるし、映画や音楽などもそうじゃろう。もちろん、アニメもな。
それらに工業製品なども加えたものが、実弾の代わりに文化として飛び交っている。それらが強力な武器となっているわけじゃな。
これによって血で血を洗うような戦争は終わり、今は文化……それは工業製品なども加えたものこそが、血を流さない平和的な戦争の実弾として飛び交っている。
つまり、文化が戦争を起こさないようにしているという解釈も成り立つと考えている」
カエル「今や関税とかで自国を守るっていう時代でもないしね。自由な貿易で活発に連携していくということは、それだけ戦争をするだけ損をするという時代になったとも言えるし」
亀「うむ。じゃから、戦争を終わらせるのは文化であり、戦争の抑止の1つが文化である、ということじゃろう。
そう信じなければ、人間の知性を信じることなど到底できない、ということも含めて……の。
その意味では戦争を扱いながらも、非常に知性的な物語であったという評価になるのではないかの」
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