今回は『私をくいとめて』の感想記事ですが……この映画が好きな方はご注意願います!
まあ、9割愚痴です
カエルくん(以下カエル)
「えー、うちは東京国際映画祭で鑑賞していましたが、多分1番イライラしていた観客なんじゃやないかなぁ。
劇場内は爆笑の渦で、すごくいい感触だったよね」
主
「あとで語るけれど、ホームだから当然と言えば当然なんじゃない?」
カエル「えー、繰り返しますが、今回の記事は愚痴記事です。
大した中身も、説得力のある文句でもないので、受け流してもらうのが一番かもしれません」
主「予防線も貼り終わったところで、記事を始めますか」
映画『私をくいとめて』本予告 〈12月18日全国ロードショー〉
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
相性が悪いのかな
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年11月5日
監督の話題作からの演出力はわかった
そこを強化したのも理解できる
ただ上映時間に対して途中から息切れしてしまっているし、武器の足りなさがもろに感じちゃった
コメディでゲラゲラ笑い声はあったけど、ただのホラーだったなぁ
個人的には、とても相性の悪い作品でした
カエル「一応、東京国際映画祭では観客賞も受賞しているし、世間評価はとても高くなるような予感もあります、とは言っておきたいね。
ただし、個人の相性としては全く合わなかったというだけでさ」
主「まあ、でも東京国際映画祭の観客賞を取ったからなんだ? って気もするけれどね。だって、他の映画を見ていない人も多いわけでしょ?
しかも、役者が登壇するんだからファンが集まる、超ホームじゃん、そんなの取れない方がおかしいってものじゃない?」
カエル「意見には個人差があります!」
主「とても難しいのは作品としての良し悪しの他にも、コメディとして笑えるのか? という問題だ。
そしてコメディって……1つ間違えると、単なるホラーになるんだよ。
例えとして適切かはわからないけれど、漫才を舞台でやっていたら面白いよ? でも急に観客が漫才を始めたら、それは不気味でしょ。
ホラーも一歩間違えると変な顔の人が追っかけてくる! みたいな感じでコメディになるけれどさ……」
でもさ、それこそ『勝手にふるえてろ』なんかは大絶賛だったわけじゃない!
そうなんだけれど、今度はそれをやりすぎた気がする
主「『勝手にふるえてろ』の場合は、結構構成からして変化に富んでいるんでいるんだよ。
ネタバレになるから、あんまり言えないけれど……ある大きな仕掛けがあって、そこで物語が転調する。そこがズバッとはまった。あと、自分は松岡茉優を非常に高く評価しているから、その主演としての力がハマったこともあるだろう。
で、今作に関しては……その構造の転調がなく、ずっとテンションが同一な気がしている。だから、序盤は面白いと思ったけれど、途中から飽きる。
途中である転調が起きるけれど、そこも……原作を読んでいないから原作通りなのかもしれないけれど、全体で見ると効果を発揮しておらず、まるまるカットしてもいい印象を受けた」
カエル「『勝手にふるえてろ』の出来が良すぎた、というのもあるのかなぁ……」
主「大九明子監督って結構経験があるけれど……今回に関しては演出にかなり疑問符がある。
一辺倒な気がするし、ある種の女性の生きづらさを描いているようだけれど、それが描き切れているか、自分には疑問がある。
極端なことを言うと、福田雄一監督に近い印象かもしれない。もちろん、あれよりもちゃんと映画になっている。だけれど、演出が一辺倒でコメディなのに笑えないという点では同じ。まあ、『勝手にふるえてろ』がかなりヒットしたから、今作でもそこに挑戦するのは当然なんだけれどさ。
しかも福田監督はすべり芸みたいな部分もあるのに、こっちは全くそうなっていないと言うのは、自分には大きな懸念があるね」
女性の自意識を描いてきた綿谷りさ
それでいうと、明らかにうちらはお客さんではないんだよねぇ……女性映画を語る資格があるのかどうかというところから、問題は始まるわけで
ちなみに、今回比較対象になるのって自分は『空の青さを知る人よ』なんじゃないかなって思うわけですよ
どちらも、30代の女性の恋愛を扱っているという意味で対比をしたい
カエル「イマジナリーフレンドとの対話と、30代の女性の恋愛、あとはどうしようもない閉塞感を抱いている、という点で共通点を見出した、と。まあ、女子高生は出てこないけれど……」
主「31歳、久々の恋愛……まあ、いろいろあるんでしょうね。
だけれど、今作は、ここまでくると拗らせすぎなのではないかと。その拗らせ女子が大いに受けたのはわかるけれど、間口が相当狭くなっていないかなぁ、と。
男だから理解できないのかねぇ。
『空の青さ〜』の場合は、お姉ちゃんだからというのもあるけれど、あの自意識バリバリの脚本家である岡田麿里だけれど、その自意識があまり感じられなかったんだよね。だからこそ間口は広がったけれど、その代わり味わいが淡白になった感もあるんだけれど」
カエル「え、でもさ、原作が綿谷りさだから、そこを言い出しても始まらないんじゃ……」
主「そうね。
それこそ『インストール』『蹴りたい背中』から、ずっと女性の自意識を扱ってきた作家であり、作者の年齢が1つ上がるごとに、作品の登場人物の年齢も1つ上がるって感じなんだけれど。
その意味では綿谷りさ原作としては正解なのかもしれない。
でも、そこから映像にするときの問題が大きい気がするんだよねぇ……」
役者について
じゃあ、役者については語りましょう!
少なくとも、作品にはマッチしていたのではないだろうか
カエル「あれ、意外にもここは酷評じゃない……」
主「はっきりと言ってしまえば、自分はのんという役者はそこまで高く評価していないんですよ。
多分、彼女はその独特の雰囲気や空気感があるタイプではあるけれど、作品は選ぶと思う。なんでも卒なくこなせますよ、というよりは、独特の存在感を発揮するタイプだろう。
その意味でいうと、今作はベスト級。
とてもぴったりと合っているし、逆に言えばこういう作品だからこそ1番輝くタイプの女優さんなのではないだろうか」
カエル「……褒めてるのか、貶しているのかわからないね」
主「役者って難しいと思うよね。
彼女は監督が望むタイプの演技を披露できるタイプではないと思う。そこまで器用ではないからこそ、監督や演出家が彼女に会った役を用意しなければ、なかなか輝ききれないだろう。だけれど、合えば素晴らしい。
重ねていうけれど、この作品が彼女のベストアクトになるのではないだろうか」
大好きな橋本愛とかはどうだったの?
……いやー、輝かないよねぇ
カエル「キネ旬でのインタビューで大九監督は、今回の新型コロナウイルスの騒動があってイタリアでの撮影は思うようにできなかった。だけれど、その時に感じた不安感というものを取り入れたと語っています」
主「うん、言われたら、なんとなくそれもわかる。
でもさ、明らかに橋本愛がイタリア語がわかっていないし、あの家族にすら馴染めていない。
ただの異国の地で不安がっている女優になっていたんじゃないか、という思いが強い。
思った以上に出番がなかったというのもあるけれど、あのイタリアパートそのものが必要だったのか、という思いが強い。
あそこで物語が途切れちゃっていて、そのパートに巻き込まれた役者たちは……すごく微妙な演技になってしまった印象がある」
カエル「林遣都は?」
主「女性が思う、理想の男性像だよね。
逆に言えば、男性から見ると汗の匂いを感じない。完璧な年下男子。女子の描き方がリアル感があるからこそ、男子の描き方が浮いている印象。
彼がちょうど良くないって話が作中であるけれど、そりゃそうだ。あんなの2次元にしか存在しない王子様なんだから。おならもしないんじゃないの?
その意味でも、リアル感がなかったという理由になるのかもしれない……
結局、話も演技もフワフワしてるんだよ。
カーター役の若林拓也は良かったけれど、あそこまで過剰に演出されたキャラクターでないと面白くならないのかと考えたよ」
以下ネタバレあり
作品に対する愚痴
違和感を抱いた2つの描写
ここからはネタバレありで語っていきますが……特に問題に感じた描写ってどこなの?
やっぱり、芸人のシーンと飛行機のシーン、あとはイタリアかなぁ
主「それでいうとほぼ全体的に中盤以降は違和感しかなかったんだけれど……ラスト付近のホテルとか、意味不明で気持ち悪くてしょうがなかった。
イタリアはすでに語ったから……今回特に語りたいのはこの2点かな」
- 温泉の女芸人のシーン
- 飛行機の中のフワフワしたシーン
カエル「まずは、温泉の女芸人のシーンの説明から入りましょう。
主人公のみつこが温泉に行った時、芸人さんを見かけます。何組もの芸人の最後に女芸人が出てきますが、観客の若い男性たちに絡まれてしまいます。そこでみつこは怒る妄想をしますが、現実ではなぁなぁで舞台が終わってしまいます」
主「あれって、女性の生きづらさを表現するシーンの1つみたいな意味があったらしいし、それもわかるんだけれどさ……でも、芸人というか、舞台に立つってそんなことなんじゃないかな。
公演中ではないけれど、観客やお客さんに絡まれるって意味では、自分が今やっているのも同じだし。
そんなの、割と良くあることなのではないだろうか。
特に芸人さんってお酒が絡む場に出ることも多いし。
むしろ、そういった客をどのように扱うのかも含めて、演者の腕だろう。
落語なんかでも、演じている最中に携帯の電話が鳴ってしまって、それを注意する時に腕の差が出る場面は自分は何度も見てきた」
カエル「つまり、女性に限った話ではないと?」
主「確かに女性だから、無条件に恋愛対象や絡まれる対象になることもあるだろう。
でも、それって男性も同じじゃないかなぁ。
男性だから絡まれないということもないし、喧嘩に巻き込まれることだってある。というか……そもそも、芸人ということで、シーンの意図がずれる気がする。
なんか、この映画って終始こんな感じで……自分と感覚が合わなかったんだよねぇ」
飛行機のシーンの恐怖
1番の見せ場なんじゃないの? 大瀧詠一の『恋は天然色』が流れてノリのいい場面で……
……あの歌も何回も使いすぎな印象もあるけれど、それはいいか
主「いや、もう、単なる愚痴なんだけれどさ……あのシーン、ただの悪ふざけじゃない?」
カエル「ずっと愚痴だし、それを言い出すんだ……」
主「あのシーンが最大の分かれ道だったと思う。
フワフワした風船がいくつも飛んで、人々にぶつかる。そこで前作のミュージカルのような快感を呼ぶつもりだったんだろうけれど……全く合わなかったんだよね。
悪ふざけがすぎて、気持ち悪かったんだよ。
そもそもさ、お一人様というほど、お一人様か?
あんなお一人様バッカなの、世の中?
あれだったら、人生になんの文句もないんじゃないかなぁ……少なくとも、自分ならすごく楽しい毎日だと思うし、それ以上望むことはほぼないと思う」
カエル「それは、人によるんじゃない?」
主「まあ、そうなんだけれど。
この東京国際映画祭で橋本愛が『みつこの最後の選択だけが正解じゃない』って語っていて、その通りだよなって思った。この真意はわからないけれど、自分だったらみつこの選択は選ばないし、そっちにいきたくはないかな。
まあ、野郎の意見なんて無視してくれてもいいんですけれどね」
最後に
というわけで、9割愚痴の、読む価値なしの記事でした……
期待値が高いのと、単純な駄作ではないだけに、久々にモヤモヤが溜まった作品だったなぁ