今回は福田雄一監督の最新作『新解釈三国志』の感想記事になります!
……色々言われているけれど、日本最大のヒットメーカーであることは間違いない存在だよねぇ
カエルくん(以下カエル)
「ファンはそれなりに多いよね。
今回は三国志の新解釈ということだけれど……」
主
「……今更、三国志という国民的に愛されたコンテンツの新解釈って何をするんだろうね」
カエル「中国の歴史だから、あんまり派手なこともしすぎてもね……」
主「いや、逆でしょう。
もう、どれだけ遊びに遊ばれたコンテンツだと思っているのよ。
そりゃ横山光輝の三国志なんかは真面目の塊だけれど、そのあとは戦国時代と並んで豊かな発想で作られているじゃない。
パッと思い出すだけでも……無双ゲームはいいとしても、卑弥呼が出てきたり、全員女の子に性別変更される18禁ゲームだったり、あるいは女子高生に転生されていたりもするわけでさ。
今更新解釈ごときで新鮮味を出すことなんてできないジャンルじゃ……」
カエル「はい、そのあたりも含めて注目していきましょうね!」
作品紹介・あらすじ
『勇者ヨシヒコ』シリーズや『今日から俺は!』をなどを手がけてきた福田雄一監督の最新作。広く知られた『三国志』を基に、新たな独自解釈の作品を生み出していく。
監督・脚本を福田雄一が担当し、お馴染みの福田ワールドを展開していく。
主演は今作が福田組初参加の大泉洋。そのほか山田孝之、賀来賢人、橋本環奈、ムロツヨシ、佐藤二郎などのお馴染みのキャストも大集合し、福田組オールスターとしても知られる。またシークレットゲストとして有名俳優も登場することも話題に。
今から1800年前、中国大陸では「魏」「蜀」「呉」の三国が台頭し、しのぎを削っていた。蜀の劉備は人徳に溢れ、民を思い、巨悪を許さない性格であり、世の平定のために立ち上がる……という旧来の通説とは異なり、実はヘタレですぐに逃げ出したくなる性格の持ち主だった。
そのほか、独自解釈に基づいた曹操、孫権、諸葛孔明なども加わりながらも、巨大戦力をほこる魏に立ち向かっていく姿をコミカルに描く。
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#新解釈三国志
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年12月11日
いつもの福田劇場ではあるが、少しでも笑っただけこちらの負けか
しかしいつも以上にグダグダ感はあり、福田監督が関与していないであろうアクションなどは見応えがある出来に
しかしエピソード選択が謎ではあったな
福田劇場にどのように挑むのか、福田監督の苦悩を少し感じた pic.twitter.com/wkowmtyGvZ
まあ、散々な出来と言われたらそうだし、面白いかと言われたら首を捻るよ
カエル「福田雄一監督ほど、映画ファンとそうでない人との評価や好き嫌いの乖離が激しい監督はいないよね……
もう予告の『ネバギバッ!』の段階で、虫唾が走るという人が続出するほどの嫌われっぷり。だけれど、確かにヒットすることから、一定のファン層があるのは間違いない。
むしろ、この映画とかも映画ファンの評価は全く当てにしていないんじゃないかなぁ」
主「ただ、間違いなく言えるのはコロナ禍において日本の映画界を救った1人は、福田雄一監督だろう。
現在『鬼滅の刃』が破竹の勢いで売上を伸ばしているけれど、もちろん時期が良かったなども複合的な要素もあるとはいえ、その前に『今日から俺は! 劇場版』が大ヒットを記録している。このヒットが足がかりとなり、劇場にお客さんが戻り始めていることも無視はできない。
洋画がない中でも……劇場は減収ではあるものの、それなりにまだ経済活動を維持できているのは、鬼滅ばかりが注目されがちだが、福田監督の力も大きくあるのは間違いない」
その中で、うちはどのような見方をしたのか、という話だけれど……
確かに面白くはないけれど、でも色々と工夫は見受けられた
主「まず、大事なのは『三国志を全く知らないけれど大丈夫?』と言う観点だけれど、これは問題ありません。
正確には”三国志演義”だけれど、これを……まあ、解釈や描き方は色々とあるとはいえ、2時間で何もわからない人のも楽しめるように、ダイジェストとはいえ、まとめている。これはとても大きな工夫だよ」
カエル「……この映画の問題点って、三国志を知っているかどうかとは、また別のところにあるもんね」
主「そして、少し座組みの話をするけれど……この映画って、多分予算はそこまでかかっていないような気がするんだよね」
カエル「今作のプロデューサーである北島直明・松橋真三は『キングダム』でもプロデューサーを務めています。また、福田監督ともとても縁が深く、多くの作品をプロデューサーとして携わっています。
そのため、正確に検証はしていませんが、おそらく『キングダム』で使用したセットやら美術などを一部活用しているのではないでしょうか。
また、このような記事もあります」
キングダムであれだけ大規模に製作されたセットを、そのまま1回で壊すとかはありえないよね
まあ、福田監督がそこまで考えていたとは思えないけれど、構想として聞いた後に、これを使えばこれだけのものはできるかなぁ……とプロデューサー辺りがやっているんだろうね。
主「CGも使っていて、背景と人物に対して違和感があって、すごくCGくさいシーンがいくつもあった。例えば桃園の誓いの場面とかさ。多分、あれは桜も含めてCGで作っているんじゃないなかなぁ。
場所も中国っぽく見えるところをよく見つけてきたよね。明らかに日本だけれどさ」
カエル「映画は経済活動の一環でもある、ということを言いたいわけ?」
主「それもそうだけれど、よくやったな、って思うよ。
本来、こういった撮影の外側が見えるのって、映画としては冷めるんだよ。だけれど、福田監督はそこが強みになる。チープであるからこそ笑えるというか……
だから本作は……もちろん予算はかかっているんだけれど、だけれどある程度は抑えられている。まともにやったら超大作だけれど、まともにやらないから抑えられる規模である。
そういった経済的な視点も、監督としてすごく大事な資質だと思うんだよね」
カエル「だから人気なのかもしれないね」
主「誰も損をしないじゃない。
監督は自分がやりたいことをやる、役者陣もしっかりと活かす、お客さんも入る、予算管理もできる。多分、納期にも合わせているんじゃないかな。
そういった誰も損しない映画を撮れる監督として、とても重用されている印象がある」
福田作品の模索
だけれど、映画としては……まあコメディとしてはクスリとはするかもしれないけれど、全体としてはそこまで面白くないんじゃないの?
それはそうなんだけれど……今作からは2つの模索を感じたんだよね
主「福田監督の評価として難しいのはさ……作家性に関しては、ものすごく個性に溢れている監督じゃない?」
カエル「まあ、誰が見ても一眼で”福田節”が理解できるのは間違いないのかな。
それこそチープな出来と、役者任せとも言えるコメディというか……あのくだらないノリというか。
それを作家性というのかは、色々と考えるところがあるけれど」
主「で、今作からは2つの部分について考えさせられた。
- コメディとアクションのバランス
- "映画らしい"テーマ性の模索
コメディとアクションのバランスで言うと、それこそ前述の『今日から俺は 劇場版』が良かったんだよ。くだらないコメディパートも多数ありながらも、きっちりと不良同士の激突を見せる。後半の不良喧嘩バトルは見応えがあった。
今作も『今日から俺は!』に続いて、田渕景也アクション監督なんだけれど、さすがは仮面ライダーなどを担当していただけあって、アクションの見応えがある」
カエル「まあ、そのアクションシーンは決して多く無いんだけれどね。
でもいざ始まると……1対多数のアクションとかも見応えがあるものがあったよね。
役者も趙雲役の岩田剛典なんかは、高い身体能力を発揮していて、いい見せ場だったと思うし。
ただ、なんでそこのエピソードだけ重要視したのか? という思いもあるけれどね」
主「見せ場を作りたかったんじゃないのかなぁ。
で、銀魂の頃からずっとそうなんだけれど……このアクションとコメディのバランスがとても難しいわけだ」
銀魂の時は逆に、コメディが評価されてアクションがあまり評価されなかったよね
この辺りのバランスの難しさを考えているような印象がある
カエル「一部では福田監督はコメディパートになると現場にいるけれど、アクションパートは人に任せて自分はどっかいっちゃうらしいね」
主「別に現場にいなくても、いいんじゃない?
自分が撮りたいものがそれじゃないってわかっているし、口出ししない方がいいものが撮れると知っているんでしょう。わからないのに口出しされるよりも、そのほうが現場としてはいいと思うよ。
監督って、監督するのが仕事であって、有能な人がいたら任せるのも大事だし。
福田監督の場合はコメディが評価されたけれど、その芸も映画という尺に持たせるにはどうすればいいのかわかっていない気がする。模索中、というか。
だから色々と手を出してみて、その結果を色々と模索している。
今回はコメディが8割、アクションが2割。そのバランスが今作はもう少し、アクション多めでも良かったと思うけれど、ある程度映画としての形が『今日から俺は』との2作で見えてきたと思う。
いや、本来ならば矢を回収エピソードはあれだけやるなら、そのシーンを見せなければいけないんだけれどね」
批評性を持たせようとした部分〜歴史をいかに描くのか〜
今作も、単なるバカ笑い映画なんじゃないの?
う〜ん……そうしようとはしていないんじゃないかなぁ
カエル「と言うことは、批評性も一部にはあるということ?」
主「まあ、ないんだけれど……それは結果として批評性が宿らなかっただけであって、掘れば面白いところ、あるいはそうしようとしたところは垣間見える。
それは大きく分けて2つ。
- 歴史をいかに捉えるのか
- 女性の活躍する時代の時代劇のあり方
この点を模索しようとしていた痕は見受けられる」
カエル「”歴史をいかに捉えるのか”というのは、新解釈、という点においても理解できるよね。
つまり既存の歴史に流されない、全く違う歴史があったかもしれないよ、ということで」
主「今作の元になったのは三国志演義のほうだけれど、こちらは三国志を基にした、痛快娯楽作品なわけじゃない?
それこそ日本で言ったら司馬史観なんているけれど、司馬遼太郎も日本の歴史をエンタメとしえ描いていわけで、歴史をそのまま忠実に語ったわけじゃない。歴史書には解釈があり、それに人物像も左右されてしまう。
そこを好きに解釈することで物語としての幅を持たせるとともに、IF ストーリーを作ろうちsたわけだ」
それで言ったら、今作なんて時代を超えた転生ものでも構わないわけだよ
カエル「大泉洋の劉備って、結構現代的な価値観のキャラクターだよね。
戦にそんなに行きたくないし、調子のいいこと言っちゃうけれど、いざとなるとすぐに逃げ出す……むしろ、普通のサラリーマンの現代人が転生しちゃいました! ってストーリーとしても、成り立つ気がするかなぁ」
主「歴史に対していかに向き合うかって話だよね。
そしてもう1つ……大事なのが”語られない歴史の物語”
つまり、女性の活躍だ」
批評性を持たせようとした部分〜女性を描く時代劇のあり方〜
ここは……まあ、福田作品としては、綺麗どころを出すために結果的にそうなった部分もあると思うけれど……
それでも、見事な批評性が宿りそうだったじゃな
カエル「渡辺直美があの時代で最も美女とされる貂蝉を演じているというのも、コメディとして面白い一方で、美の基準という意味でもとても興味深いよね。
ただ、たしかに一部の時代ではふっくらとした女性が美女の条件と言われているけれど、中国は伝統的に柳腰が美人の条件だったような……」
主「まあ、その辺りは詳しい人に任せるけれどさ。
スペシャルゲストもいたけれど、あそこで”美の価値観”というものを考えさせるのも、1つの意味がアッたのではないだろうか。
どうしても歴史物では、女性が活躍する描写は描きづらい。
勇ましい男たち、キレ者の軍師……その影では女の存在があった。
それはもっと大々的に、真面目に取り組めばそれだけでしっかりとした映画にできる。
だけれど、福田監督はコメディに落とし込む。それがいいか悪いかは別としてね」
カエル「それが批評性を持たせようとしたのではないかと?
でも、結局としてはコメディで終わってしまっているよね?」
主「コメディっていうのは、同時に社会を切るものなんだよ。
その意味では福田コメディというのは、まだまだ映画のコメディとしては悪ふざけの領域を出ていない。だけれど、今作はその社会を描こう、社会性を持たせようとしようとしたことは……まあ、ちょっとはうかがえるわけじゃない。
そこも含めて、模索しているのではないか……
だから、映画ファンの中では、それこそ董卓のようにふんぞり帰って笑っているようなイメージだろうけれど、そこまでじゃないと思う。
むしろ、自分の表現を模索しながらも、みんなの望む自分の作品像にいかに答えていくか、すごく真面目に考えているんじゃないかなぁ。
メディアに対するイメージもきっちりと考えて自分の自画像を作り上げている。
そこから見えるのは、ふざけた大人ではなくて、セルフプロデュースも含めて考えている表現者像だと思うのは、自分は肯定的すぎるのかねぇ」
役者について
最後に、役者について語っていきましょう
まあ、福田オールスターズだったわなぁ
カエル「大泉洋はともかくとして、賀来賢人、橋本環奈、山田孝之、小栗旬、それにいつものムロジロコンビといい、いつもの福田組、あるいは福田作品に縁のある人大集合だったね!」
主「同時に、福田作品との相性が出てしまった気もする。
大泉洋はこの手の演技が手慣れているけれど、今作は役にもハマっているけれど……なんだろう、いつもはもっと面白かったと思うんだよね。
その意味では、福田作品てすごく難しいじゃない。物語でありながらも、メタ的な発言も許容される。そのバランスを模索している印象だった。
ぶっちゃけ、映画の前に公開されていたポップコーンの宣伝の方が面白かったかなぁ」
その意味では相性の良さと悪さがはっきり出たのかなぁ
ムロジロ、橋本環奈とかはいつも通りだけれどね
主「今回は難しかったと思うよ。
関羽役の橋本さとし、張飛役の高橋努はその境をすごく気にしているように見えた。あくまでもこの時代の関羽・張飛であるべきか、それとも福田作品のコメディにのるべきか……
ある意味、このくだらないように見えるコメディも、そこまではっちゃけるのは、センスがいるのだろう」
カエル「今作のMVPは?」
主「……全く意味が異なるけれど、魯粛役の半海一晃かなぁ。
出てきた瞬間に『あ、魯粛だ』と思った。それくらいなんとも言えない魯粛感に溢れてる。
それに比べると、黄蓋役の矢本悠馬は、すこしかわいそうかなぁ。お爺ちゃんのイメージが強い役を、まだ若い矢本にやらせるのは無茶振りだよねぇ。
ただ、全体的にはその主要キャストの多くに見せ場があったんじゃないかなぁ。
現場でうるさいことも言わないだろうし、役者に好かれるのもわかる気がする」
カエル「……やっぱり、福田監督を褒めてるのか貶しているのかわからないなぁ」
最後に
というわけで、福田作品の感想でした
まあ、オススメはしませんが、見る価値がないとまではいいません。普通の駄作です!
……やっぱり褒めてないよね?
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