物語る亀

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物語愛好者の雑文

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』感想&評価! 昭和・平成を越えて全く新しいジョゼ虎の世界がここに登場!

 

今回は試写で拝見した『ジョゼと虎と魚たち』のレビュー記事となります!

 

 

 

 

……偶然にも、ネット試写会と劇場試写の2回当たったため、その両方にいってきたぞ

 

 

カエルくん(以下カエル)

「2020年の12月25日公開のアニメ映画作品ってすごく多くて大変だから、できるだけ早めに見ておきたい! と思って試写会に応募をいっぱいしていたら、結構当選したというね……」

 

亀爺(以下亀)

「今作は特に多く配っていたようじゃな。

 まあ、競合も多いしヒットを祈念したいところじゃろう。口コミ勝負ということもあるじゃろうから、少しでも貢献したいものじゃな」

 

 

カエル「とはいっても、ちゃんと観たからこそ、良いものはいい、ダメなものはダメとはっきりと言いたいと思います!

 なお、今回は当然ながら物語のネタバレは無しで語っていきますので、ご了承ください。

 それでは、記事のスタートです!」

 

 

ネタバレありの記事はこちらになります!

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アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ロングPV

 

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感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートしましょう!

 

 

全体的には良作、と言ったところじゃろうな

 

カエル「今回は試写会で鑑賞ということもあり、ネタバレはしませんので、少し回りくどいような物言いをするかもしれませんので、ご了承ください。

 全体としては悪くないし……特に前半部分に関しては、2020年でもかなり上位に来ると言ってもいいのではないでしょうか?

 

亀「元々、この作品を映像化するのは少し難しい部分があるからの。

 原作は……どうじゃろうな、30ページほどじゃろうか、それほど短い作品じゃ。それをそのまま映像化したのでは、やはり30分の短編ドラマがいいところではないかの。

 それを長編作品にするということは、色々とオリジナル要素を足していく必要がある。

 そこが受け入れられるか否か、というところじゃな

 

カエル「その意味では、本作もリアル寄りの作品になっていて、展開そのものはアニメが得意とするようなファンタジー、SFではないんだよね。

 制作会社はボンズだけれど、アクションの印象が強いスタジオではあるけれど、今作はそれが少なくても、魅力的なアニメを作れると証明したような作品だし。

 今作の脚本を務めた桑村さや香は実写の経験が多くて、いい意味でアニメらしくない物語を構築しているよね」

 

亀「それでいながらも、アニメらしい表現も各所でみられる。

 それは物語としても大きな意味がある描写となっておるの。

 そして日常表現も良く、近年はアニメで日常を描くということが多くの作品で挑戦されているが、今作もその点において成功していると言えるじゃろう」

 

 

それでいうと、あまり文句は出ないタイプなんじゃないかなぁ……

 

強いて言えば、欠点がないのが欠点というタイプの作品かもしれんの

 

カエル「……はぁ。出た、その言い方」

 

亀「欠点というのは強烈な個性の裏返しとも言える。

 その意味では、本作は全体として綺麗にまとまっておる。

 強いて言えば、まとまりすぎているかもしれん。

 だからこそ、多くの人の気分を害するようなことはないじゃろうし、賞賛の声も一定以上の大きなものになると思う。

 じゃが……それは言ってしまえば、この映画だからこその強みをどこまで発揮できたのか? ということでもある

 

カエル「それこそ、実写を観ているような気分になったかなぁ。

 それだけ高いレベルの作品になっているということでもあるんだろうけれどね」

 

亀「決して悪いとは言わんし、どちらかと言われなくても、わしは褒めが多くなる作品でもあるがの。

 あとは……原作を考えれば、ここを重視して欲しかったという部分がなかったりもする。まあ、これは実写版も重視した要素は違うものの、ある要素ができなかったという意味では同じようなものなので、そこまで不満があるわけではないがの」

 

カエル「ただ、原作・実写映画・アニメ映画の3作品において、どれにも魅力がある作品になったのは間違いないし、それぞれの持ち味を発揮した名映像化コンテンツだったのではないでしょうか?

 

 

 

 

映像化について

 

アニメ化に向いている小説

 

この流れで、今作の映像化について話をしていこうか

 

もともと、この作品はアニメ化に向いていると思ったの

 

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

 

カエル「原作は1984年に発表された短編小説です。

 それを2003年に実写映画化を果たし、この2020年にアニメ映画化されたということで……思っていたよりも古い作品なんだね。勝手に、平成に発表された作品だと思っていたよ」

 

亀「この原作を改めて読んでみたが、なるほど、なかなかアニメ化向きの題材のように感じたの。

 というのも、キャラクター描写がとても生き生きしているが、それが実写的なものというよりは、むしろアニメ的な印象を抱いた」

 

カエル「この時代には存在していないはずの、ツンデレ感万歳だもんねぇ。

 例えば……」

 

 

 恒夫は叱られて所在なく、

 「また、来るわ」

 と立ち上がった。

 「来ていらん!もう来んといて!」

 と激しくジョゼはどなった。

 「……ほな、……さいなら」

 恒夫は腰を上げなくては仕方ない。

 ドアの前でスニーカーを履こうとしたら、

 「なんで帰るのんや! アタイをこんな怒らせたままで!」

 ジョゼが息を切らしていう。

 「どないせえ、ちゅうねん」

 「知らん!」

  

 田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』 文庫版193P より

 

 

このやりとりなんて、ライトノベルを読み慣れた読者の方が良さが伝わるんじゃないかなぁ

 

この後も含めて、キャラクターが非常にアニメ的に生き生きしておるの

 

カエル「昔の作品って、ライトノベルがないけれど大衆小説ってラノベ的なのもあるよね。それこそ池波正太郎の『剣客商売』なんて、題材が題材だけれどラノベ的な……主人公がすんごく強かったりとか、そういう要素があったりするもんね」

 

亀「その意味では、細かい機微で登場人物像を伝えるような作品ではないかもしれん。

 じゃが、キャラクターを描写する上では、アニメ的な描き方ができやすい作品といえるかもしれんの。

 また、今作のキャラクター表現では顔を赤らめるなどの記号的な表現もあるが、それがハマっている。

 この辺りも面白い作品じゃな」

 

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障害と萌え描写

 

ちょっと突っ込んだことを言うけれど……障害って実は漫画・アニメの中ではそこまでマイナスには描かれにくい印象もあるかなぁ

 

特に盲目と車椅子の少女というのは、キャラクター表現にはうってつけなんじゃな

 

カエル「多分、盲目に関しては『座頭市』の影響もあると思うんだけれど……その影響下にある『ワンピース』の藤虎などがそうだけれど、盲目の剣士=強キャラ、みたいなイメージがあるじゃない?

 盲目でなくても……それこそ今ならば『呪術廻戦』の五条さんとかも、目を隠しているだけで強キャラ感が出てるし」

 

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亀「これがいいか悪いかはともかくとして、少なくともフィクションの世界では障害=弱者というようには扱われていない。

 そして、もう1つ代表的な例が今作にも登場する”車椅子の少女”じゃろう」

 

カエル「それこそ車椅子の少女=守ってあげたい存在、というのは、伝統的とも言える記号的表現みたいな部分もあるよね。

 

  • アルプスの少女ハイジのクララ
  • 舞HIMEの真白
  • 創聖のアクエリオンのリーナ
  • コードギアスのナナリー
  • 血界戦線の妹・ミシェーラ

 

 ざっと簡単に上げてもこれだけいて、中には守られる立場ではなく、作中でも屈指の実力を持つ強キャラであることもあるね」

 

亀「障害というものがいかにキャラクター描写における記号として扱われているか、ということを示すものではないかの。

 特に車椅子の少女は”守ってあげたい存在と同時に、芯が強い”という描写がされやすい。センシティブな部分なので、それが果たして良いことなのか悪いことなのか、という議論は出てくるとは思うが、病弱設定とならんでアニメ・漫画では多用されがちな描写じゃな」

 

つまり、その2つがあるからこそ、アニメ化されても不思議ではなかった、と

 

近年の”リアル志向のアニメ”という考え方もあるからの

 

カエル「ということは、この作品って色々と考えると……

 

  • アニメ的なキャラクター描写
  • 車椅子の女子という、1つの記号的なキャラクター
  • リアルに現実を描こうとする昨今のアニメ界の風潮

 

 という3つの流れを考えれば、そこまでアニメ化に向いていないわけではないのかもね」

 

亀「それと”障害を描く”ということでは『聲の形』が大ヒット&高い評価を獲得しておる。

 2016年9月に公開後、2020年の……コロナもあったので、ほぼまる3年くらいの期間と考えると、このヒットを受けての挑戦と考えても、機関としては妥当なところであろう。

 今後のアニメ界の流れにも影響を与えそうな作品じゃな」

 

 

 

 

原作・実写・アニメ作品の理想的な関係

 

今作は原作・実写・アニメで比べた場合、どれが1番優れているの?

 

それは一概に言えないのではないかの

 

亀「もちろん、個々人の中では『これが1番好き』というのは当然あるじゃろう。

 しかし、それ以外の評価軸で考えると、どれもその媒体にあった物語を提示することができたのではないかの

 

カエル「まとめると

 

  • 小説版→原作としての面白さであり、障害と性や突飛とも思える物語表現を行う
  • 実写版→障害者と性愛を中心に、当時の障害者像と自立する姿を描く
  • アニメ版→現代だからできる障害者像と恋などを描く

 

 ということだね」

 

亀「それぞれの媒体の強み……つまり、小説であれば文字媒体での少し次元があやふやというか、そういった強みを。

 実写はリアルな物語像を。

 アニメはファンタジーを含みながらもキラキラした物語を。

 それぞれ提示できているわけじゃな。

 どれが1番良いということはない。

 どれも長所もあり、短所もある。だからこそ、三者三様で面白い物語となっておるの

 

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声優について

 

今作では、中川大志・清原果耶なども出演しています!

 

いやはや、とても良い演技を披露しておったの

 

カエル「賛否が割れやすい芸能人声優ではありますが、今作もまた、成功例として名前が上がりやすい作品になるのではないでしょうか?

 特に中川大志はキャラと役が完全に一致していて、言われなければ芸能人声優と気が付かない人がいるのではないでしょうか。

 また、清原果耶も少し芸能人演技らしい部分があるものの、その不器用さがジョゼと合っていたように感じます!」

 

亀「今作は映像表現もリアルとアニメぽさでいうと、ちょうど中間に近いのではないかの。

 それでいうと、アニメアニメしすぎると少し違和感が出たかもしれん。

 その意味では、ちょうどいいバランスの作品となったのではないかの。

 しかし、わしは特に今作のオリジナルキャラクターである舞を演じた宮本侑芽を推したいの

 

最近だと『イエスタデイをうたって』で好演技を披露していたね

 

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この作品の橋渡しをしていたようにも思えたかの

 

亀「『イエスタデイをうたって』も実写を意識した作品であったが、今作でもアニメ的なキャラクターすぎず、実写的な人物過ぎないキャラクターを演じておった。

 今作の場合は、そこまで多くはないとはいえ、崩した、記号的な表現もある中でもそのバランスが崩れないように芸能人声優側が苦心し、そしてアニメ声優たちはそのリアルな世界観を壊さないながらも自分たちの持ち味を発揮したと言えるのではないかの」

 

 

 

 

最後に

 

今回は、公開前なのでここで終了になります!

 

また公開時期が近づいてきたら、ネタバレ込みであれこれと語っていきたい 

 

ネタバレありの記事はこちらになります!

 

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