物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『フード・ラック!食運』ネタバレ感想&評価! 肉が湧き、肉が踊る! 前代未聞の肉のアイドル映画がここに爆誕!

 

今回は異色の焼き肉映画『ネイチャージモン』……じゃなくて、『フード・ラック!食運』の感想記事になります!

 

 

 

これはキワモノなのだろうかね?

 

カエルくん(以下カエル)

「世間的には、ちょっとキワモノみたいな扱いを受けているけれど……」

 

「まあ、芸能人監督だしなぁ。

 寺門ジモンの肉(食)バカぶりって、もうすごく有名だろうけれど……それが映画になるのは意味不明だろうし」

 

カエル「ただし、そういった作品からも名作は生まれるもの!

 特に食事映画ということで、食いしん坊のうちは結構注目しています!」

 

主「グルメではなく、食いしん坊ね。ここ大事だから。

 まあ、そんなことは置いておいて……記事のスタート!」

 

 

 

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映画『フード・ラック!食運』予告編 11月20日(金)ロードショー

 

 

 

 

 

感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

偏愛映画枠に、あと一歩及ばず……! でも、楽しめました!

 

カエル「えー、先に言っておきますが、この映画の場合は明確に贔屓です!

 今回、謎映画とは言われていますが、うちは寺門ジモンの食の本や番組を読んだり、あるいは食べる姿勢に対しても大きな尊敬をしています!

 そのため、冷静な視点ではありません。

 なお、キネ旬では星とりレビューが3人とも、5つ星満点のうち、1をつけるなどの事態になっております」

 

主「その評価も仕方ない部分もあるだろうが……なんもわかっちゃいない!

 確かにこの映画は”劇映画”としては、高評価はできない!

 物語、演出、音楽、編集……多くの分野において、かなり評価は低くなるだろう!」

 

カエル「……あれ、意外と酷評を始めた……」

 

主「ただ、そうじゃないんだよ!

 映画って何を描くものなのか?

 綺麗な映像? 作り込まれた物語? 社会的なメッセージ? 印象に残る音楽?

 それもそうだ……でもそれだけじゃないだろう!

 魂だろう!

 その監督が、作り手が、何を表現したいのか。その表現したいことが伝わり、観客を熱くすることができるのか、それが大事なのではないか!

 

ネイチャージモン MEAT JOURNEY 2021

寺門ジモンのこれを食わずに死ねるか!! (Lightning Books)

 

"肉のアイドル映画"を目指して

 

はい、どうどう……落ち着いて、落ち着いて

 

それでいうと、この作品ほど何を描きたいのかわかりやすい作品はないよね

 

カエル「まずはなんと言っても肉だよね。

 そして食を通して伝わる、職人のこだわり、受け手との関係、そして家族……

 その意味では、食卓をより華やかないしてくれる作品ということもできるわけだね」

 

主「その肉文化、あるいは食事がとても美味しそうだからこそ、この映画は成立しているわけだ。

 逆に、そこが全く美味しそうに見えなかったら、この映画は成立しない。

 その意味ではこの作品は見事。寺門ジモン監督も『この映画を見終わった後に、数人でご飯食べて美味しいを共有してくれればいい』というような発言をしていたけれど、まさにその通りだね。

 この映画は……いわゆる賞レースとか、あるいは映画ファンが言うような"いい映画"を追求するようなものではない。もっと手軽で、誰でもわかって、10年後には誰も覚えていないような、心に残らないかもしれないけれど、見たあとは誰かと話したくなる。そういうところを目指している」

 

言うなれば”肉のアイドル映画”なわけだ

 

 

カエル「……肉のアイドル映画」

 

主「だから、ダメダメでも目的はしっかりと達成できている。

 さらに言えば”寺門ジモン、ここにあり!”と言う映画になっている。何よりも個性が強いんだよ。この個性を出すのに、どの表現者も苦労する中、映画は初デビューでありながらも、しっかりと個性を感じさせる。

 その点においても評価ができる。どうだろう……ジモンが20代の若手監督であれば、苦笑しながらも面白い監督が出てきたな、と自分は笑うかもしれない。

 その意味では、新人賞を送りたいくらい。

 超荒削り、でも個性抜群、魂も感じる。これって新人賞では、1番大事なことだと思うからね

 

カエル「……その個性を映像で発揮してくれると、またいいんだけれどね」

 

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筆者も行ったことがありますが、すごくおいしかったです

 

 

一方、欠点について

 

一応、映画としてどうだったのかにも触れておきましょうか

 

いや、もう、わかりやすくダメダメだよ

 

カエル「まあ、そういう意見になるんでしょうね」

 

主「だって、全く意味わからないだよ。

 何が意味わからないって、話としての整合性をとろうとか、いい意味で観客を騙そうとか、そういうのを一切感じない。

 笑わせようとしているのかと思ったら、割と真面目なんだったりする。

 例えば……初期設定だから明かしちゃうけれど、主人公の実家が焼肉屋なんだけれど、それが18年前に潰れたっていう設定なのね。で、主人公は28歳だから、当時は10歳なわけ。

 18年前に潰れた店が綺麗すぎる、時間の経過を感じさせないのは……まあ、いいとしよう。

 だけれど、色々と抱えているトラウマとかドラマが、全て安い上にツッコミどころ豊富なんだよ

 

カエル「母と息子の確執の物語なんだけれど……10歳の少年ということは、そのあと18で家を離れたとしても8年間は一緒に暮らしているわけだもんね。

 それにしては、お母さんの状況を知らなすぎるし、そこまでどうやって生きてきたのか、バックボーンを全く感じない話だったね……

 

主「この10年間、何をやっていたのか知りません! というわりには、いやそれ知らないの無理があるだろ! って感じなんだよ。

 多分、年1、2くらいでは普通にあっているような親子関係だし。

 お母さん、超いい人だし。

 あとは、その時点では主人公たちが知り得ていないと思われる話を知っていたり、物語が都合良過ぎたりと……まあ、ボロボロですわ」

 

……えっと、そのほかのパートに関しては?

 

まあ、面白いといえば面白いけれど、映画ファンからはナンセンスと言われる演出もあったかなぁ

 

カエル「これも予告でありますが、うんちくを語るシーンでバックにセリフが文字となっているなどは、劇中でも使われています」

 

主「自分はいいんだよ。それって、ジモンのめんどくさいウンチクと同じようなものだし、面白いから。それこそ『もやしもん』の教授の長台詞みたいなものだろうなって感覚だし。

 まあ、そこも結構大事なんだけれど、物語としては読み飛ばしてもいいと言えば、いいしね。

 だけれど、映画好きには大顰蹙だろうね。

 そもそも演出として寒いし、そんなバラエティ演出をするなら、映画である必要性はない」

 

カエル「……絶対、そういう意見は出るよね。

 それでいうと、この映画って全部がバラエティ的なんだよね……」

 

主「バラエティの再現ドラマに毛の生えたようなお話。

 文字演出などでわかりやすさを重視した演出。

 一部シーンなんて、合成かってくらい役者と背景がマッチしていなくて不自然だった……もしかしたら、本当に合成だったのかもね。

 過剰に使われて、煽るだけ煽った、まるで無料音源のような音楽。

 まあ、ボロボロです。

 だけれど……肉。

 そして食事。

 ここには一切嘘がない。

 そこは過剰に演出されている部分もあるけれど、でも面白い。食べたい。見ているだけでお腹が減る。

 だからこそ、自分は褒め称えるわけですよ」

 

 

 

 

役者について〜土屋太鳳の魅力の再発見〜

 

そんな中で、唯一褒められるのが土屋太鳳の演技です

 

彼女は、やはり”本物”の女優だと思うよ

 

カエル「あれ、そういえばうちって太鳳ちゃんの映画って『累』くらいしか扱ってないのかなぁ?

 あの映画では年間ベスト女優に選んだくらい、度肝を抜かれたよね」

 

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太鳳ちゃんがすごいのって、”ちゃんと食べられる”ってことなんだよ

 

カエル「すごく当たり前のように感じられるかもしれませんが、これがまた大変なことなんだよね……」

 

主「この映画が異色のようだけれど、食事シーンってどの作品でもたいていあるわけ。

 例えば”同じ窯の飯を食った仲”という言葉があるように、食事をすることで仲間意識を強くする。そうだなぁ……ちょうどこの記事を書く前日に放送されていたけれど、『ルパン三世 カリオストロの城』の有名なルパンと次元がスパゲッティなどを食べるシーンなどがそうだけれど、あそこは2人のキャラクター性を、関係性を如実に感じさせるよね。

 逆に食べない、あるいはギスギスしている環境下だとその人物たちは対立関係、あるいは緊張状態にあることを強いられている。

 あるいは1人ご飯でも……池松壮亮とかがそうだけれど、汚い食べ方でもガツガツと食べてくれると、飢えている感じが出てくるよね。

 つまり、食事を食べる、食べないってその作品における、その時点の人物同士の関係性や心情を表すのに最も重要な場面なわけだ

 

カエル「だけれど、今って食べるシーンで食べない……あるいは食べてもすぐにカットが切り替わってしまう作品も本当に多くて……

 全部が全部ってわけではないですが、その場合役者さんが体型維持のために食事を制限しているので、食べたものを飲み込まずに吐き出している場合もあるようです

 

主「前にも語ったあるアイドル映画だけれど……『お腹すいたぁ〜』って言って、部活終わりの女子高生がラーメンを注文する。そして食べる1口目がもやしを少しだけ……

 なんだよそれって思わない!?

 お腹すいたなら、しっかり麺を啜れよ!

 でも、それが今の邦画は当たり前なんだよ。特に若い役者は大体そう。

 だから、食べる、飲み込む、それだけで自分は評価をあげてしまう傾向にある

 

その中でも、太鳳ちゃんはちゃんと食べてくれるし、それも美味しそうで程よく綺麗だよね

 

あんまりお上品すぎても作品に合わないしね

 

カエル「あれだけお肉をモリモリ食べて、それでご飯も食べて、ちゃんと飲み込んで……その様子を見るだけで、こっちもほっこりしてくるというか」

 

主「食べる演技って簡単なようでも非常に難しい。

 参考に上げるのが、こちらも2020年の料理映画なんだけれど『みをつくし料理帳』という作品があって、そこで石坂浩二が美味しそうにところてんを食べるんだよ。そこが粋でさ、すごく印象にのこる。

 タイトルのように料理映画だし、その後にも大事な影響を与えるシーンだからこそ、その食べ方1つで映画の意味合いが変わるんだよね。

 それでいうと、今作の太鳳ちゃんも同じくらい最高! 

 食べるっ場面が食材を最高に輝かすけれど、それが本当にうまくできている

 

カエル「ちなみに、他の役者は?」

 

主「EXILE NAOTOは……まあ、普通じゃないかな?

 最初は食べるシーンに違和感があったけれど、肉は普通に食べていたし。撮り方なのか、よくわからなかったけれど。

 あとは、店主たちはとても良かった!

 特に寺脇康文はわかりやすく、気持ちよかったね! もしかしたらモデルがいるのかもね。

 名脇役たちがそれぞれに味を発揮した作品ではないでしょうか」

 

 

以下ネタバレあり

 

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作品考察

 

究極の食〜母の思い出〜

 

では、ここからネタバレありで語りましょう!

 

まずは批評性があるところから中心に扱っていこう

 

カエル「今回は肉の話がメインではありますが、物語の中核となるのはぬか漬けとなります」

 

主「ぬか漬けって難しいんだよ。

 レシピ通りにしても同じ味にはならないと言われていて、それは手についている常在菌が人によって異なり、それによって味が変わる……とか、あるいはもっと単純に保存条件の細かな違い、かき混ぜ方、そういった要素もあると言われている。

 だから、ぬか漬けの味を再現しようというのは、とても難しいことなんだ」

 

カエル「特に今回の話は、おそらくネイチャージモンでも語られていた、あるお店のお話が元になっているよね」

 

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とても感動的なぬか漬けにまつわる物語があるんだよ

 

主「その意味では、この作品はフィクションでありながらも、その元になった話が結構多くあるのだろう。

 自分も最初の”食運”にまつわるウンチクだったり、うなづく部分も多かった。その意味では結果的に下調べしていたからこそ、楽しめたのかもしれないね」

 

カエル「だけれど、最後は結局母の味なんだね」

 

主「子供の頃に味わった食事というのは、その後の人生に影響するからね。

 特にあんなに美味しいご飯を作れるお母さんであれば、その思い出もひとしおだろう。しかも食事に思い入れが深い人物ならなおさらだ。

 この映画の面白いのは

 

  • 高級店の味
  • 大衆店の味
  • 一般家庭の味

 

 それらに区別をつけていないことだ。

 もちろん、こだわりの店も味もあるだろうけれど……それでも”美味しいものを食べてもらいたい”という想いは変わらないことを描いている。

 確かにお母さんは素晴らしい料理人だったかもしれないけれど、それは特別なものを出していたのもあるけれど、美味しいものを食べさせたいという想いがあったからなんだろう。

 そう言った点も含めて、"何が美味しいを作るのか"ということを描いていたのではないだろうか」

 

 

 

 

一方で疑問点も〜食べることと、評価すること〜

 

これだけ大絶賛でありながらも『偏愛枠にギリ入らない』ってのは、どういうこと?

 

 

敵の描き刀がねぇ……

カエル「あぁ……松尾諭が、ただ単に嫌なやつに見えちゃったというのもあるしね……」

 

主「古山が語ることも、自分は間違いじゃないと思うんだよ。

 いや、確かに知識の更新ができていないというのもわかる……けれど、確かに我々消費者側も『A5ランクの和牛』とかさ、そういう御託で物事を評価しがちじゃない?

 それこそ、映画もそうでさ……この映画を評価しない声は、それはそれで正しいと思いながらも、その知識が邪魔しているのではないか? と思う部分もなくはない」

 

カエル「まあ、それこそうちも含めて言われることではあるだろうね」

 

主「だから経済活動という点の評価もあって然るべきだ。

 評論の難しさの1つだけれど、その杓子定規はもっと多様であってもいい。

 あの中に出てきた店も、あんなところには行きたくない! もっと綺麗な店に、もっとお客様扱いしてくれるルールのない店に行きたい! と思う人もいるだろう。

 ジモンってもう感覚が麻痺しているけれど、一人前が1000円超える店には行きたくない! って人もいるわけじゃない。出せても5000円までって。

 味が良ければ、食材に真摯であればそれでいいのか? という問題もある

 

それでいうと、予告はその意地と意地のぶつかり合いにも思えたからなぁ

 

最高の主人公は、最高のライバルが引き立たせてくれるものだろう

 

主「それでいうと、古山の正義や語り口、一理ある物言いを見せて欲しかった。

 ただ彼が知識不足の悪役だとするのは、どうなんだって話。

 商売を繁盛させるためにライターや評論家がいるならば、変なことをしていなければ提灯記事だろうが書いて流行らせるって考え方もあるだろう。

 映画だって、褒めることだけして貶さないって主義の人もいるだろう。

 逆に”いつもは貶す辛口のあの人がほめた!”というのも、1つのライター・評論家への価値基準にもなる。ジモンだって、いつも褒めているわけではなくて、しっかりと苦言を呈しているときもあるんだよ。

 まあ、古山は貶すこともする人ではあるけれど……最初の使い捨ての網の問題も、従業員の人件費などの問題も含めて考えて、記事を書くという視点もあっていいのではないか?

 

カエル「いつもいうことだけれど、悪役、敵役にもっと愛を持ってほしいってことなのかなぁ」

 

主「単にやっつけるだけの存在になるともったいない。

 キャラクターとしては、今作はすごくいいんだよ。ある種漫画・アニメ的だけれど……強力なライバルとして古山が設定されたら、自分は2020年の偏愛作品に決定しただろうね」

 

 

 

 

最後に

 

全体的には満足度の高い作品でした!

 

まあ、オススメはしませんが、食いしん坊な方はぜひ行ってみてはどうでしょうか?