カエルくん(以下カエル)
「今年もドラえもんシーズンが始まりました!
それにしても、すごい人だったね……ほぼ満員で埋まっていたよ」
主
「子供がたくさん訪れるからなぁ……劇場が賑やかなことでさ。他の映画だとイラッとくるかもしれないけれど、この手の映画に関してはリアルな子供の反応も知りたいから、むしろ騒がしいくらいがちょうどいいんだよね」
カエル「それにしても大人だけで来ている人もいるもんだね。隣に座っていたのが5、60代くらいのお爺さんだったのが印象に残っているよ」
主「意外と大人のファンも多いよ。
あとは自分のように映画はなんでも見る人だったり、アニメ業界関係者もいるだろうし、それから子供向け作品を知っておくと話題にできる人……例えば先生とか小児科医とかも見にくることがあるらしいし」
カエル「子供向け作品だからといって馬鹿にするもんでもないしねぇ」
主「むしろ子供向け作品の方が作るのが難しいからね。
では今年のドラえもん映画は果たしてどのような作品だったのか、感想記事を始めていきましょう!」
作品紹介・あらすじ
毎年恒例、世界的に人気の高いキャラクターであるドラえもんシリーズの長編劇場版38作めとなる作品。
本作の監督を務めるのはテレビ版などで演出を手掛け、初の長編アニメの監督を担当した今井一暁。脚本を務めるのは東宝に勤める映画プロデューサーで小説なども発表している川村元気。
主題歌を担当するのは様々な分野で高い評価を受けている星野源が2曲書き下ろしていることでも話題に。また、おなじみの声優陣に加えてゲスト声優として大泉洋、長澤まさみも声を当てている。
ひょんなことから宝島を探すことになったのび太はドラえもんのひみつ道具である『宝探し地図』を借りて探したところ、新しく出現した島を発見する。
宝探しの冒険をするために海へと航海を始めるが、その島はすでに海賊が占領していた。敵の襲来をなんとか退けながらも、海賊たちはしずかちゃんを自分たちの仲間であるセーラという女の子だと勘違いしてさらってしまう。
フロックという少年と出会い、しずかちゃんを助け出すために宝島へと向かうのび太たちであったが、その居所がわからなくなってしまい……
「映画ドラえもん のび太の宝島」予告3(星野源 主題歌「ドラえもん」ver.)【2018年3月3日公開】
1 感想
カエル「では、いつものようにTwitterの短評からスタートです!」
今年のドラえもんは楽しいを重視!
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年3月3日
特に序盤はこれでもか! というほとアニメの快楽性を発揮して圧倒的なカタルシスすら感じる
ただ中盤はダレタなぁ
後半は反則! あのセリフを使ったら感動するのは当たり前だよなぁ
子供向けアニメ映画の優等生は今年も楽しめる作品に仕上げてきた!
主「子供向けアニメ映画の優等生であるドラえもんらしい作品に仕上がっているし、今井監督のデビュー作品としても大きな実績を残したのではないでしょうか?
これは今井監督がインタビューでも語っているけれど、動きが今回とんでもなくいい!
昨年の『南極カチコチ』はクトゥルフ神話をモチーフとした設定の妙であったり、かっちりと組まれた脚本の面白さが特に際立った、言うなれば『静』の魅力に満ちたドラえもんの映画だった。
今作はその真逆と言えるかもしれない。
つまり、アニメの持つ快楽性を最大限に発揮し、見ているだけで面白い! と思える『動』の魅力に満ちたドラえもんなんだ」
カエル「序盤からグリグリ動くし、その1つ1つがため息が出るほどに楽しいんだよね。子供たちのいる中で『この作画……ヤベェ』と呟いている、どっちがヤバイんだかわからないような状態になっていたし……」
主「それは別にいいんだよ!
いつも語るけれど子供向け映画を魅せるというのは実は難しいことでもある。爆発や血みどろの描写で引き込むという選択肢は、基本的にはできないからだ。特にドラえもんのような幼児も鑑賞対象に入る映画は、あまり暴力的なことはできない。
だけれど、今作はそのような暴力的だったり、派手なものではなくて動きだけで魅了する非常に『楽しい』ドラえもんに仕上がっている」
特に序盤は動きだけでも魅了する描写がとても多い
一方で課題としては……
カエル「今回は脚本を務めたのが川村元気プロデューサーだという話だったけれど、そちらについてはどういう印象があるの?」
主「う〜ん……大人向け映画の脚本になってしまったなぁ、という印象がある。
序盤は動きの快楽性もあって、本当に今年のドラえもんは文句なしの名作に仕上がると思っていた。もしかしたら今年1番の傑作がドラえもんになるのか⁉︎ という思うほどだったんだよ。
だけれど、残念ながら脚本が……悪いとは言わない。
ただ、子供向けの脚本ではないのではないか? という印象を抱いてしまった」
カエル「詳しくはネタバレありで話すとして、ざっくり言うとどういうことなの?」
主「1つは中弛みをしてしまったこと。
本作は約109分とドラえもん映画の中ではちょっとだけ長めの作品なんだ。と言っても、数分レベルだし過去にもあるレベルの長さだけれどね。
子供向け作品というのは、やはり長時間だと子供が飽きてしまう。そうならないように大体100分前後で作るのが相場になっている。その尺にもすんなり入っているんだけれど……ちょっとお話が散らかってしまった印象もあるかなぁ」
カエル「今回は表現したいものがとても多くて、もちろん感動できるシーンも盛り込まれているし、面白いんだけれど詰め込みすぎたのかな?」
主「川村元気流の脚本の作り方もしっかり行っているんだけれど……これだけ動きがあるドラえもんの中で、ちょっと会話で説明しすぎな印象がある。今作のテーマやメッセージまで全て会話で説明してしまったのが残念なところ。
あとは最大の突っ込みどころがあるんだけれど……それは後述ですね。
これは看過できないミスのように思う」
今年も冒険パートについてはゲームで補足するのかなぁ?
今回のドラえもん映画の特徴
カエル「今回のドラえもん映画の特徴としては作画が凄い! ということ以外ではどこに注目をすればいいの?」
主「やっぱり親子の関係性かなぁ。
今回、ちょっとした場面ではあるけれどドラえもん映画では珍しく? パパとの関係性が魅力的に描かれている。
特にさ、最後が本当に泣かせにくるんだよ。
ちょっとそれは『反則だろ!』と言いたくなるようなもので、かつてドラえもんを観ていた子供時代を過ごしていた身としては思い出を刺激してくるようなものでもあった」
カエル「あとは風景描写の美しさも際立っていたよね」
主「特に今回は空や緑、そして何よりも白いコスモスなどの花が美しく描かれています。もちろん、海や船などもいい。
それから食堂などの美術設定も見ていて面白いなぁ、と思う箇所もたくさんあって、絵については文句のつけようが全く無い作品と言えるのではないでしょうか?」
以下ネタバレあり
2 本作で強く意識した作品
カエル「ではここからはネタバレありで語るけれど、まずはどこから?」
主「今作の最大の特徴はある映画が下敷きになっていること。
いや、他にも色々な映画のオマージュは散見されたんだけれど……それこそ、航海に出るシーンとかは川辺の様子などはどことなくシンゴジラぽかったし。まあ、川の描写なんてどこも同じようなものなのかもしれないけれど。
もちろん、多くの過去のドラえもん映画のリメイクになっている部分もあるだろうけれど……これは間違いなく下敷きになっているな、という作品があった。それがこちら!」
カエル「『クレイマークレイマー』かぁ。
子供の親権を争う父親と母親が、どれほど子供を愛しているのかということを描いた名作だね」
主「この作品で効果的に使われているのがフレンチトーストなんだ。
慣れない父親が子供のためにフレンチトーストを作ってあげる。最初はキッチンをベトベトしにして、どうしようもないものしか調理することができなかったんだけれど、いつしか慣れてきて父子家庭としてうまく機能し始める描写がある。
この一連のシーンは深く印象に残る名シーンだけれど、本作でもこの描写に近い部分がたくさんあるんだ」
カエル「父親と息子が同じような仕草をしてしまう、というのはクレイマークレイマーでも微笑ましいシーンとしてあったよね」
主「そして今作との関連性を考えると『父親が子供を育てる』という物語でもある。仕事と家庭の両立というものがテーマになっていることも同じだね。
ドラえもんの方では子供が2人いることと、それなりに大きいというのが違いとしてあるけれど、でもクレイマークレイマーを意識しているのは強く感じたかなぁ」
今回のゲストキャラの1人、フロック
何でもできる万能キャラの印象も……
OPの重要性
カエル「今回ちょっとだけ驚いたのがさ、OPがないんだよね。
過去作全て観たわけではないからなんとも言えないところもあるけれど、くるぞ……! と構えていたらそれがなかったから肩透かしにあった気分だけれど……」
主「自分はここもいただけなかったんだよねぇ。
アニメ映画におけるOPってすごく重要でさ、例えば2016年のアニメ映画3作品『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』もOPはあるし、さらに言えば『夜明け告げるルーのうた』などもOPがあるんだよね。
それこそ、ディズニー映画も明確なOPではないにしろ、スタートを盛り上げるミュージカルは多くの作品で取り入れている」
カエル「OPって本来は日本のテレビアニメだとバンクシステム……言葉は悪いけれど使い回しのシステムじゃない? 同じ絵を使い回しても誰も疑問に思わないシステムで、それを映画に入れる必要性はあるのか? というお話だけれど……」
主「非常に重要です!
特にドラえもんなどの大作キャラクターアニメ映画では絶対必要! なぜならば、その世界観に一気に引き込まれるから。
名探偵コナンの映画で『俺の名前は工藤新一……』って入ったりさ、もっと言えば寅さんであのメロディーが流れて『私生まれは葛飾柴又です』というスタートだって同じなんだよ。海外でもさ、最近でいったら『グレイテスト・ショーマン』だってOPに該当するような盛り上がるテーマソングからスタートする。
音楽や口上を聴いていると当時の思い出が蘇る……なんてよく言うけれど、やはり脳がその思い出を音楽と関連付けて覚えていたり、リズムに合わせてノリノリになったりして映画の世界に引き込まれていく。
大人にも子供にも有効な手段だよね」
カエル「ということはちょっと無理してでも入れたほうがいいのかなぁ……」
主「映画の世界に引き込むのは難しいことだけれど、OPは有効な手段だからね。
それがないのが残念だった。特に今回は星野源が最高の楽曲を用意してくれたからねぇ」
この2人が出会う意味もあまりなかったかなぁ……
それにしても美少女っぷりに拍車がかかっている……
流れの悪さ
カエル「さっき、子供向け映画の流れじゃないように感じたという話があったけれど……それってどういうことなの?」
主「本作は3幕構成になっていて……すごくざっくりと表すと
1幕(序盤) 宝島の発見、冒険へ旅たつ
2幕 敵の襲撃→しずかちゃんさらわれる→フロックと知り合う→宝島がなくなる→宝島を探す
3幕 宝島に乗り込む
という流れになっている。
ここで問題なのが2幕なんだけれど、ここでは動きが少なくて会話劇のようになってしまっている。セリフで説明するパートが多いんだよね」
カエル「ここでアニメとしての動きが少なくなって、それまで抜群の快楽性を発揮してのに中弛みしてしまうんだね」
主「じゃあ、どうすればいいのか? ということで……自分だったら
1幕 宝島の発見、冒険へ旅たつ
2幕 敵の襲撃→宝島の上陸→フロックと知り合う→状況説明と数々の試練→シルバー登場→しずかちゃんだけ取り残されて宝島からの脱出
3幕 宝島に乗り込む
という流れにする。まあ、よくあるシナリオだけれどね。
過去のドラえもん映画でも中盤で敵の本拠地に乗り込んだり、ボスと遭遇してドラえもんや友人たちと離れ離れになる作品も多い。
これはドラえもん(四次元ポケット)というなんでもできる魔法のような秘密道具を如何に使えなくするのか? という工夫と共に、最大のピンチを演出して観客にドキドキとキャラクターの見せ場を与えるわけだ」
カエル「今作の欠点としては、そのピンチがあまりないということだね……」
主「もちろん、最大のピンチは訪れるけれど、あそこはすでに『対決』『決着』のパートで……その前に1度にげだしたり、挫折があるとキャラクターの成長にもつながるし物語はさらに面白くなる。昔のドラえもんとかはそういう流れになっている作品も多いと記憶している。
中盤の宝島を探すパートが……どうしてもダレてしまった要因の1つだな」
本作最大の欠点
カエル「では、いよいよ本作最大の欠点について語っていきましょうか……」
主「いや、すっごい単純なことなんだけれどさ……結局何も解決していなんだよね、この作品って」
カエル「……え? 親子の仲は元に戻ってハッピーエンドだったじゃない?」
主「いや、だからさ……その前に地球が滅んでしまうからってことであんな大それた計画を実行したわけでしょ?
だけれど、そっちの方面に関しては何1つとして解決していないんだよね。
すごく無理矢理ハッピーエンド感を出しているんだけれど、でも地球は滅びることは回避していない」
カエル「う〜ん……まあ、確かにそうなのかも……」
主「それに、お話が壮大すぎてついていけないところがあるよね。
じゃあシルバーは一体何をしようとしていたのか?
なぜそれをしようとしていたのか?
そういう部分が見えてきづらいところがあった。もちろん、ある程度の説明はしているにしろ……今作はかなりグダグダしてしまうところがあって、その原因はやはり詰め込みすぎなところにあると思う。
あの兄妹の使い方もそこまで効果的ではないし、キャラクター設定が機能しているようには見えなかった。
グダッとした割には詰め込みすぎて薄味になってしまった印象かなぁ」
大泉洋の演技自体はとてもいいけれど、シルバーのキャラクター性も悪役にしては弱い印象も……
それでも泣かせにくる映画!
カエル「でもさ、それだけ文句を言いながらもやっぱり泣けるという意見には同意するんだよねぇ……ドラえもんらしい、教育的なメッセージがちょっと強すぎるかもしれないけれど、でもあれは反則だよ」
主「特にさ、あのお母さんのセリフがドラえもん史上でもトップクラスの名言である、『のび太の結婚前夜』を思い出すんだよ。
これはのび太が……どちらかと言えばダメな主人公じゃない? たださ、このドジで運動神経もあまり良くない、だけれどすごく優しい主人公って世界的に人気のあるキャラクターでもあって、例えばスヌーピーで有名な『ピーナッツ』のチャーリー・ブラウンもそうじゃない?
たとえダメな奴だとしても、その根底にはとても素晴らしい人間性があるということを思い出させてくれる名言でもある」
カエル「そしてそれは多くの親が子供に望むことでもあるんだよね……」
主「正直、終盤の感動路線はちょっと強すぎたかなぁ? と思う部分もあったよ。だけれど、この言葉を選択して父と子の……親と子の物語に込めてきたこと、それはとても意義があることでもある。
昨年公開した『かいけつゾロリ ZZの秘密』などでもそうだけれど、この手の親の思いを子供に届けるというのは、やはり児童向けアニメとして非常に真っ当だし、重要なことでさ……それに比べたら、上記で語ったポイントなんてどうでもいいとも言える。
結論を言ってしまえば惜しいポイントはいくつかあるものの、児童向けアニメ映画として、そしてドラえもんシリーズとして世界に誇ることのできる真っ当な作品であると思うよ」
最後に
カエル「では、最後になりますが……色々言いはしたけれど、悪い作品ではないよね」
主「若干賛否割れているし、カチコチの方がいい、カチコチよりもいい、と意見も割れているけれど、それは当然かもしれない。脚本の作り方などがしっかりとしているけれど、ちょっと地味な印象もあったカチコチとは正反対の作品だと思う。
でもさ、ドラえもん映画の奥深さや、アニメとして真っ当な動きの面白さを追求した作品ということもあって、見る価値は大いにある作品だったよ」
カエル「どうだろう……劇場内の子供たちはカチコチの方が盛り上がっていたかな?」
主「まあ、ちょっと難しいところがあったかもしれないかなぁ。
このレベルの作品が普通に毎年公開されること、これも結構驚異的な話なんだけれどね。
ドラえもん映画に興味がある人は、ぜひとも劇場へ行く価値がある作品だったのではないでしょうか?」
関連商品紹介
今作の音楽を担当した服部隆之は『真田丸』や『新撰組』などの大河ドラマを始め、数十年にわたり作曲を続けてきた作曲家であり、アニメでは『機動戦艦ナデシコ』などの楽曲を担当しています。
今回も音楽の魅力は相当大きかったのではないでしょうか?
音楽といえば忘れてはいけないのがテーマソングの作曲を務めた星野源!
10代、20代ほどの男女が劇場にいたけれど星野源の楽曲目当ての人かな?
ドラえもんの映画を見るならばamazonプライムがオススメ!
しかも他の動画配信サイトと違い月額400円、年会費で3900円と非常に安価になっています!
他にもAmazonを理由する際にお得な特典もいっぱい!
下の画像クリックから登録できます!