カエルくん(以下カエル)
「マーベルヒーロー映画の新作が公開!
特にアメリカでは評判のいい作品だよね!」
亀爺(以下亀)
「特に黒人問題を多く扱っているという話じゃからの。マーベルがどのように黒人問題を描くのか、少し興味があるの」
カエル「えー、最初に言っておきますが、何度かマーベルヒーロー映画を鑑賞していますが、基本的には評価は高くないということを伝えておきます。
多分、文句なしに褒めたのって……どうだろう『ローガン』と『デットプール』だけじゃないかな?
全シリーズ観ているわけではないけれど、ちょっと合わない作品が多いジャンルでもあります」
亀「それから先に結論から述べるが、今回の記事は酷評記事になってしまう。
世間の評判はそうそう悪いものではないようじゃが、わしにはどうにも合わなかったということは先に言っておきたい。
なので、絶賛評を読みたい人や、マーベルに詳しいファンの評価を知りたい人は他のサイトへといってほしい」
カエル「『映画が好きな人』ではあっても『映画に詳しい人』ではないからねぇ」
亀「多分、検索上位常連の人たちの方がいい記事を書いておる。穿ち過ぎのひねくれた者の映画感想だと思って、読んで『何もわかっていないな』と鼻で笑ってくれて結構じゃ。
というわけで、そんな感想記事のスタートとするかの」
作品紹介・あらすじ
アメリカを中心に世界で高い人気を獲得しているマーベルヒーロー映画の新作。今作では新たなヒーローであるブラックパンサーを主役に起用している。
監督は『クリード チャンプを継ぐ男』にて日本でも高く評価させた若き黒人映画監督であるライアン・クーグラーが務め、脚本も担当している。
主演はチャドウィック・ボーズマン。また『クリード』にて主人公を演じたマイケル・B・ジョーダンがライバル役のエリック・キルモンガーに起用されている。
アフリカの文明国でありながらも、鎖国を続けているワカンダの国王であるティ・チャラはブラックパンサーとなって、万能の鉱石とも呼ばれる『ヴィブラニウム』の秘密を守るために世界中で動き回って活動してきた。
そのヴィブラニウムに目をつけた元秘密工作員のエリック・キルモンガーは引き商人のユリシーズ・クロウと手を組んで暗躍を続けていた。
国を守るために行動を続けるティチャラだったが、キルモンガーにはある重大な秘密があった……
世界の評価
カエル「まず、最初に感想を語る前に説明しておかなければいけないのがこのポイントで……本作はアメリカを始めとして、世界中で高く評価されています!
マーベル作品歴代最多興行収入も見えてくるほどの爆発的ヒット、批評家たちの評もかなりいいものになっています。
人によっては『本作によってアメリカの映画文化は変わる』と称する人もいて、その衝撃度はオバマ大統領がアメリカ発の黒人大統領になったレベルの衝撃だと語っているね」
亀「まあ、穿って見ればアメリカらしいヒットの理由だなぁ……とは思うがの。
しかしヒーロー映画がこれまで白人主導の文化だったことは否めない。やはり世界的なヒーローやキャラクターで黒人が主役になることはあまりなかった。
その意味では昨年話題になった『ワンダーウーマン』と同じ状況だと言えるのかもしれん。アメリカではその手の……マイノリティというのかはちょっと微妙じゃが、黒人や女性に関する差別に非常に高い関心があるということじゃろうな」
カエル「黒人の少年が『これが僕たちのヒーローなんだ!』と力強く言えるというのは、とても良いことだよね。
しかも本作はアフリカを強く意識した作品であり、それまでの黒人の歴史にも言及しているところがあって、確かにヒーロー(憧れの象徴)の映画としてとても真っ当な意義がある作品でもあるよね」
亀「『シェイプ・オブ・ウォーター』がアカデミー賞を獲得したが、もしかしたら来年この作品がアカデミー賞を獲得する可能性も出てきたのではないのか? という話もある。
やはりヒーロー映画は少し下に見られていたところがあるが、描き方1つで社会的メッセージ性を含めることができるという好例じゃな」
1 感想
カエル「では、Twitterでの短評からスタートになりますが……」
マーベル&ディズニーが合わない……
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年3月1日
ブラックパンサーは良さがわからないよ……
主人公達は支離滅裂に見えるし魅力的なのは敵ばかり
しかも最近のマーベル映画ってスターウォーズにしか見えないんだよなぁ
カエル「う〜ん……芳しくない評価だね」
亀「元々ヒーロー映画がそこまで得意ではないたちなことに加えて、本作が持つ強すぎるほどの政治的メッセージがかなり気になってしまった形かもしれんの」
カエル「……まあ、1番嫌いな言葉が『正義』であって、正義を声高に主張する人は信用しないというスタンスだしね……よくよく考えてみると、そういう人が見に行ってはいけない作品だよねぇ」
亀「アメリカでの評判も上々であるわけじゃが、かなり気になる描写も多かった映画といえる。いや、それがコメディーの演出であるのはわかるのじゃが……それにしてもあまりにも酷いのでは? と思うものもあった。
それから、これはまあわしのように外国人の見分けがつきづらい者からしたら、黒人がこれだけたくさん出てくると誰が誰だかわかりづらい。
特に女性はそうじゃな。みんな綺麗だからこそ、顔で見分けることが難しくなってしまうかもしれんの」
カエル「……日本人でもあっても若手の俳優、女優とかはみんな同じように見えてくるんじゃなかったっけ?
まあ、でも登場人物も特別多くはないし、服とか髪型とかで見分けはつくけれどね」
暗い中でのアクションシーンが見づらいと思ってしまったからなぁ……
演出の問題点
カエル「まずはさ、そういうヒーロー映画とかは抜きとして、どこが悪いのかってとこを考えていこうか」
亀「今作は設定を見てもわかるように黒人が多く登場しており、その名の通りブラックパンサーも黒人を強く意識した黒い格好をしておる。
それで闇夜に紛れるようなアクションもあるのではじゃが……ここで画面が見づらくてしょうがない。
またそのアクション自体も、もちろんアメリカの超大作ではあるからそれなりのものではあるのじゃが、これまでのヒーロー映画に比べて特別いいものとは思えなかったの」
カエル「近年のアクション映画はそれぞれ大きな魅力を内包している作品も多いからねぇ。1カット風にうまく演習したり、中にはちょっとコミカルな描写を入れたりとか……」
亀「そういったアクションの売りがよくわからなかっというのが本音じゃな。
見る人が見ればすごい特徴があるのかもしれんが……
それからSFのような描写もあるのじゃが、それがどう見てもスターウォーズにしか見えないという……これは近年のマーベル映画、むしろディズニーの映画に共通することじゃな。
途中からわしは一体何を見ているのか分からなくなってしまった」
カエル「あの宇宙船? のような空飛ぶ乗り物もスターウォーズにそのまんま出てきそうなフォルムだったよね」
亀「操縦席などもスターウォーズにしか見えないというの……
せっかくのマーベル映画なのにもかかわらず、アクション描写に見所が見つからず、さらにSF設定も他の大作SF映画と一緒に見えてしまう……それは大きな減点じゃとわしは思うのじゃがな」
カエル「まあ、アクションやSFのレベル自体はとんでもなく高いんだろうけれどね」
スターウォーズの1シーンと説明されても特に違和感がないような……
(C)Marvel Studios 2017
アメリカでは高い評価
カエル「でもさ、アメリカでは非常に高い人気を獲得しているんだよね。
先ほども語ったように、ヒーロー映画がアカデミー賞も狙える快挙を達成するのでは? という批評家もいるほどで……
それだけ差別問題や黒人問題に高い関心があることの証明なんだろうね。
亀「しかしちょっと差別的な発言があるだけでも、ハリウッドから追放されてしまいかねないほどの状況でもある。
ゴールデングローブ賞でセクハラ問題に抗議するために、女性たちが黒いドレスを着る運動があったけれど、これに反して煌びやかな衣装をまとった女優に疑問を指摘する声もあり、これはこれで怖いものがあるよね。
表現の自由や、思想の自由って? という疑問も生じてくる」
カエル「言っていることは絶対的に正しいけれど、その正しさを強要をしてしまうと言論封殺になってしまうよねぇ」
亀「トランプ以降の政治情勢ということもあってさらにこの差別を許さない問いう風潮は強まっておる。
これはもちろん、いいことじゃ。
そしてそれまで大好きなマーベルヒーローが白人主導だったことに、若干の違和感を抱いていた黒人の少年たちが『僕たちのヒーローだ!』と喜ぶのであれば、それはそれで大きな出来事である」
カエル「最初に挙げたように『ワンダーウーマン』と同じ流れだよね……
もちろんDCとマーベルの違いなどがあるから全く同じようには語れない部分もあるけれど、女性や黒人をうまく描くことが重要だということがよく分かる話でもある」
亀「わしはその流れにも若干の疑問があるがの。
今のアメリカ社会が抱える問題は黒人よりも、イスラム教徒やアラブ系、そしてメキシコ人への偏見の方が重要だと思っておる。
今更黒人差別が悪いということは誰が聞いても同意するが、イスラム教徒やメキシコ人の流入にはテロや治安の悪化の可能性なども含めてセンシティブな問題があるように思うがの」
カエル「日本でいうと最近もあったように在日外国人……特に北朝鮮国籍の人に対する警戒を呼びかけている人もいたりして、それが話題になっていたよね。
まあ、アカデミー賞でメキシコ系のデルトロが作品賞と監督賞を獲得するなど、かなり意識したことを伝わってきたけれど……」
亀「もちろん黒人差別も重要なのじゃろうが、本当に目を向けなければいけないことは違うようにも思うのは日本にいるからかの?
どうにもこの辺りが……最強の戦士が女性ということも含めて、ポリコレに配慮しているだけであり、ひいてはビジネスのための表現のような気がしてしまうというのは、まあ捻くれすぎなのかもしれんが……
そう考えると若き黒人監督がこの映画を担当したというのも、色々な思惑を感じることもあるかの」
以下ネタバレあり
2 気になったポイント
カエル「えっとさ……その気になったポイントってどこなの?」
亀「これはアメリカ映画のあるあるかもしれんが、命の価値があまりにも違いすぎる点にある。
カーレースのシーンなどにおいて敵の部下を簡単に車で轢いてしまう。しかもそれを妹に疑問に思われた時に『気にするな』と非常に軽く、コミカルな調子すら漂わせながら簡単に命を奪っているかのような描写がある。
しかし、一方では世界平和や命の尊さを説き、味方に大きな害があれば泣いて悲しむという……このあべこべさがとても気になったの」
カエル「敵の命は軽く扱い簡単に奪うことに対して、味方の命はとても尊いもののように扱うことが正義だとしたら、まあアメリカらしい正義と言えるのかもしれないね」
亀「これがデットプールであればその描写も納得がいくのじゃがな、本作は『ヒーロー』の物語であり『正しい者』の映画である。
それがこのような描写をしてしまうということに愕然とした思いがあったのも事実じゃな。
極めて独善的な正義と悪の価値観によって命の値段を決めていることが、根底に感じられた作品でもある」
カエル「日本の漫画に慣れていると余計にそう思うのかもしれないかなぁ。
日本の作品ではテロリストの正義や為政者の罪、そしてかつて加害者となってしまったものの責任、暴力からいかに逃れるか? ということを描いているものをあるし……」
亀「これは日本のアニメや漫画が……見方によれば過度なほどの反戦描写によって培われた描写をたくさん見てきた者の戯言かもしれんがの」
この2人の関係性を考えると魅力的なのはキルモンガーでは?
(C)Marvel Studios 2017
本作の描き方の危うさ
カエル「えっと……他に突っ込みどころがあるの?」
亀「今作が描いている政治劇というのは、わしは非常に恐ろしいもののように感じている。
これはわしの思いであるのじゃが……日本は政治的にはかなりまともな国であるように思っておる」
カエル「政治的な発言には気をつけてください」
亀「いや、別に自民党賞賛でも安倍政権支持という意味でまない。どこの誰が政権を取っても、わしは日本の政治システムもある程度はまともな状態にあると思っておる。
なぜならば、現状の政権に対する批判的な言動ができるからである。
もちろん、中には個人的政治信条からマスコミの態度が許せないという人もいるじゃろうが……わしから見たらそれぞれのメディアの色はあるにしろ、日本全体が右と左の意見がどちらも知ることができる状況にあると思っておる。
これはアメリカも同じであり、今はトランプ政権への批判が非常に根強いが、逆に言えば自由に活発な議論ができる環境にあるということじゃな」
カエル「確かに中国や北朝鮮のような政権批判ができない国に比べたら、言論の自由は守られていると言えるのかな」
亀「これはわしの信条かもしれんが……ワカンダという国であったり、ティチャラという国王は非常に危うい国であるように感じた。
国王にカリスマ性がありすぎるからじゃな。
これが日本のように象徴的なものであるのであれば、むしろカリスマ性がある方がいいかもしれん。しかし、実権を握るのではあればそのカリスマ性は却って問題のあるものになりやすいと思っておる」
カエル「それはどういうこと?」
亀「誰もかれもが国王を信じすぎてしまうからの。
政治というのは微妙な判断を求められるケースが非常に多く、誰かを優遇すれば誰かが爪弾きになる可能性がある。場合によっては生死に直結するかもしれん。それでも選ばねなばならない……それが政治じゃ。
そんな中で誰かが反対意見を述べたり、異なった政治信条を持つ者がそれなりの力を持つならばバランスがとれるのじゃが、カリスマ性が強すぎるとそんな人物が爪弾きにされたり、あるいは誰もが盲信してしまいかねない。
そこが非常に危うい国であるとも感じられての……民主主義を信仰するアメリカが作った映画とは、少し信じられないものでもあった」
このシーンなどはスターウォーズを連想してしまった……
本作の描いた政権交代
カエル「危険性? そんなに危ない話だった?」
亀「わしにとってみらばの。
本作のヴィランであるキルモンガーはあの選び方がどうであれ、正当な手順で選ばれた国家元首である。
もちろん、あの状況では正確には結論が決まっていないという描き方をしておるが……まあ、あの首輪をかけられた時点で政権交代じゃな。
今作における重要な味方である最強の戦士、オコエは最初は玉座に仕えるようなことを語っておったのに、結局はティ・チャラの方へとついてしまった……
軍事クーデターじゃな」
カエル「今回では敵のように描かれてしまったけれど、あそこで王の命令に従った兵達の方が軍人としては正しいよね」
亀「例えばトランプがいかに気にくわなかろうと、米軍が強制的に排除するような行為は非難されるべきじゃろう。
日本だってそれは同じである。
この映画は現政権が気にくわないからと、クーデターを起こすことを肯定的に描いている映画だということもできるわけじゃな。
確かにルールはおかしいかもしれん。ここで選ばれたキルモンガーの政治信条は危ういものであるかもしれん。しかし、それは正当な手順で選ばれた者であるならば、それを尊重するべきである。
これがティ・チャラが独自に動いてキルモンガーと決闘をして勝った部分だけを見るならば問題はないが……軍事クーデターを描いてしまったからの」
カエル「穿ち過ぎだとは思うけれどね」
亀「もちろん、それはそうじゃ。そこにこの映画の本質はないことはわかりきっておる。
じゃがな、わしは恐ろしいんじゃよ……あれほどの超技術を持つ国が開国し、しかも専制君主国家であり、その君主の選び方のルールもおかしいもののように見える。これは例えば世界で唯一北朝鮮が核ミサイルを持ったら……というような恐怖と全く同じものである。
そんな存在が正義の味方として描かれている……それが少しばかり信じられんし、受け入れることはできんの」
魅力的な悪役
カエル「実際、今作で1番魅力的だったのはどちらかといえばキルモンガーの方だったようにも思うんだよ。
だってさ、悲しい過去を背負いながら、しかもほぼ孤独に近い状態から大きな国家に立ち向かおうとしているわけで……ダークヒーロー寄りではあるけれど、キルモンガーの方が主人公体質だったようには思うかな。
しかも、恋人まで失ってでも止まらない復讐劇という、面白い物語性を内包しているわけだし」
亀「あの恋人のあっさりとした描き方もかなりの不満ではあるのじゃがの。
わしが今作で1番気に入ったのはクロウじゃの。他の作品でも登場しておるようではあるが、彼が最も悪役らしい悪役でもあった。
まあ、黒人に対して牙を剥く白人というポジションでもあったこともあるがの……それもあっさりと退場になってしまったことは、わしには残念でならん。もっといい活かし方もあったのではないかの?
他にも序盤で韓国で白人を見つけた時に『アメリカ人を見つけたわ』といったのが気になった。単なる白人じゃろ? なぜアメリカ人だとわかったのか……
細かいようではあるが、そのような疑問点が積み重なってしまった作品でもある」
最後に
カエル「では最後になるけれど……どうにも酷評のようになってしまったね」
亀「……このような記事を書きたいわけではないのじゃがな。
どうにも面白さがわからん作品に思ってしまったの。アメリカでの高評価もあったりして、苦手なヒーロー映画を楽しめるかと思ったのじゃが……どうにもそれが受け入れ難い作品でもあったの」
カエル「本当は褒めたいんだけれどね。人気のあるシリーズだからこそ、あまり悪くは言いたくないけれど、本作はどうにも魅力があまりよくわからない作品だったかなぁ」
亀「……これは次のマーベル映画も鑑賞するか考えなければいけないのかもしれんの」