カエルくん(以下カエル)
「では、今回はこちらのアニメ映画2作品のレビューといきましょう!」
主
「どちらもテレビアニメシリーズの劇場版作品ということもあって、ファン向け要素が強い作品でもあるな」
カエル「ちなみにテレビシリーズは観たの?」
主「どちらも全部は観ていないかなぁ……
数話だけ見て、それで止まっている。だけれど文ストは漫画をチラッと読んだことはあるし、ガッチャマンも内容はなんとなく知っているから全くの知らないというわけではないけれど……ほぼ初見に近いと言えるかもね」
カエル「どちらも新鮮な気持ちで映画館に向かうことになるんだね。
では感想記事のスタートです!」
文豪ストレイドッグス DEAD APPLE
作品紹介・あらすじ
日本を代表する文豪たちをモチーフにしたキャラクターたちが、それぞれの異能力を用いて探偵事務所の職員として奮闘する姿を描いたテレビアニメシリーズの劇場映画化作品であり、本作は原作者朝霧カフカ書き下ろしのオリジナルストーリーとなっている。
監督は『劇場版 金色のガッシュベル』などの五十嵐卓哉、脚本は『少女革命ウテナ』などを手がけた榎戸洋司の『STAR DRIVER 輝きのタクト』のコンビがタッグを組む。
ヨコハマで発生した『龍頭抗争』から6年後、世界各地で霧によって自分の異能力で命を絶つ事件が発生していた。その事件では澁澤龍彦が関与していると睨んだ探偵の面々だったが、やがてその霧はヨコハマでも発生することになる。
自分たちの異能力と対峙することになり手を焼く面々。そしてその霧が発生し始めた頃、太宰が消息を絶ち消えてしまった……
映画「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)」本予告
感想
カエル「では、いつものようにTwitterでの短評から始めます」
文豪ストレイドッグス
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年3月3日
久々に観たけど、やっぱりなんか違う……
これさ、文豪である必要性が皆無なんだよね……本当名前だけ
政府に仕える坂口安吾なんて見たくない
完全に一見さんお断り&作画も悪くはないけれど……な作品
完全にファン向けかなぁ
主「これは言ったらおしまいかもしれないけれど、そもそも文豪ストレイドッグスという作品自体が文豪である必要性が皆無な作品なんだよね。
なのに、それで文豪要素を取り入れて成立させようとしているから、余計に意味がわからなくなる。
自分は専門家というほどではないけれど、ちょっとはこの作品に登場する文豪たちの作品や人となりを知っているから、余計に違和感があるんですよ」
カエル「確かに坂口安吾が政府側の人間って言われても、実際の安居は権力側につくことはありえない人だもんね。
これをお笑い芸人で同じことをやるとしたら……そうだなぁ、北野武が警察庁長官を務めているようなワケのわからなさがあるかも……
それ、真逆じゃない? って思ってしまうようなさ……」
主「あくまでもモチーフですから、と言われたらそれはそれでいい。
だけれど、中途半端に史実に忠実にしようとするから余計に意味がわからなくなる。
確かに太宰、坂口安吾、織田作之助は親友同士で同じ無頼派だよ?
でもその設定だけを持ってくることによって、余計な違和感がより多くなってしまうのはいただけないよね。
太宰なんて相当最近の作家だから……しかも芥川が太宰に憧れているって、普通逆でしょ? このあたりがアベコベなんだよなぁ」
カエル「泉鏡花なんて性別まで変更させられているしね」
主「……あ、それはいいかな、別に」
カエル「なんでさ! これは大きな改変じゃん!」
主「ほら、泉鏡花って名前を聞いた時に『女性かな?』と思う作家ランキング不動の1位だしさ(決めつけ)
何より可愛いし、それで万事OKってことで……」
カエル「……結局キャラ萌えじゃん」
ファン向け作品として
主「そう、本作はあくまでも『文豪をネタにしたキャラ萌え作品』なんだよね。そこに文豪の人間性とか、そういうものは特に表現する気がない。
自分の上記の発言は『え? 何この作品にマジになっているんですか?』と言われても仕方ないようなことを語っています」
カエル「まあ、でもさ。この作品がスタートで文豪の作品に触れていき、普段は手に触れないような古典的な名作に興味を持つ人が出てくればそれはそれで万々歳なワケで……
幾つかの文学館を回った時も、コラボレーションだったりこの作品の宣伝がされていたし、それで古典的名作のカバーが文スト仕様になってまた売れたりと、文学界にとっては悪いことばかりではないわけじゃない?」
主「今の小説界はジリ貧でさ、スマホの爆発的普及によって空き時間に本を読む人は減っていき、スマホゲームやネットサーフィンをする人が増えていった。
紙の本なんて10年後になくなるかもしれないし、小説家もネットを中心に活躍して、本を売るのではなくて広告料で収入を稼ぐ時代が来ると思っているけれど……そんな話はどうでもよくて、それでも紙の本や出版業界を残すためにどうするのか? ということを考えて場合、この試みは確かに評価しないといけない」
カエル「このアニメ映画もそうだけれど、結局は『若者向けのエンタメ作品』であって、文豪の紹介漫画ではないからね。
ラノベ的な厨二設定も多いし、文学が好きな人には違和感があるかもしれないけれどさ、そういう作品だと割り切る必要性はあるよ」
主「ちなみに、本作は全く文ストを知らない人にはオススメすることができない作品になっていますので、そこはご注意ください。
完全にファン向けの作品です」
中島淳、泉鏡花、芥川龍之介に太宰が重要な登場人物になります
何も知らない人はわけがわからんよなぁ
作画について
カエル「ただ、じゃあ劇場アニメ映画としてどうでしたか? と問われると……これもまた苦しいよねぇ」
主「近年のアニメ映画のクオリティの高さはとんでもないレベルにあって、例えば同日公開の『ドラえもん のび太の宝島』に関しても『動きの快楽性』が非常に高かった。
はっきり言ってしまえば自分は原作もアニメ版も知らないで劇場アニメを観に行き、その映像のクオリティや音楽に撃ち抜かれた作品なんてたくさんある。
じゃあ、本作はどうでしたか? と問われると、残念ながらそのような『動きの魅力』に満ちた部分も少なかったと言わざるをえない」
カエル「それって深夜アニメの映画化に求めるレベルが高すぎるんじゃなくて?」
主「いやいやいや!
ここ最近の深夜アニメの映画化のレベルの高さはトンデモナイものでさ、例えば似たような人気キャラクターを中心としたファン映画でも『黒執事』だとか『ノーゲームノーライフゼロ』のように、決して大規模公開を目指したとは言い難いファン向け映画であっても、見せ場や動きの快楽性の高い作画はできている。
では、本作の中で印象に残るシーンはあったのか? と問われると……残念ながらそれはあまりない、と自分は言ってしまう。ただし、これはアニメーターの力不足などではないと思うけれどね。
少なくとも、深夜テレビアニメだったら普通に面白く鑑賞できるレベルにはあるし、近年のアニメ映画が異常だと考えることもできるけれど……」
テレビアニメシリーズでもOP,EDを手がけた両グループがそのまま主題歌を担当
脚本について
カエル「ちなみに脚本については?」
主「う〜ん……抑えるところは抑えつつも、文ストらしさは出ていると思う。
ただ、やはり盛り上がりが少ない印象はあるかなぁ……見せ場がそんなにないのと、キャラクター数が多すぎる。
これは劇場版だからみんな出してあげたいという思いもあっただろうけれど……谷崎とか途中から完全にフェードアウトしていたじゃん。
久々に小見川千明の癖になる声をたくさん聞きたかったのに!」
カエル「……自分の好きなキャラが出ないからの不満?」
主「でもさ、これだけ多くのキャラクター数を出してしまって、それである程度まとめているのはさすがというべきなのかもしれないけれど、一方でいらない子や魅力が伝わらないキャラクターがたくさん出てしまった。
本作は90分と映画としては非常に短くて、これはテレビアニメシリーズで4話分に相当するけれど……正直、そのまま2期に持ってきた方が良かったんじゃない? という思いが抜けない。
結局、敵の澁澤龍彦の掘り下げも……なんか甘いなぁという印象が拭えないし、キャラクターがたくさんワチャワチャして、みんなに見せ場がある割には映画として注目すべき点が作れていない。
ピックアップするキャラクターを絞ってはいるけれど、もっとそのキャラクターに焦点を絞った方が良かったよねぇ」
カエル「そこも含めてファン向け映画ってことなのかなぁ……この世界を愛している人限定に向けられた作品ということでさ」
主「それは間違いではないだろうし、今の深夜アニメ映画は1人の観客が何回もリピートすることで成立していることを考えても、この路線自体は否定できない。どうせ一見さんは見に行かないし。
でもさ、いつも言うけれど勿体ないよね。
せっかくの劇場版だから、ここから入ってくるお客さんもいることだし……1作の映画として完結してほしい! というのはわがままなのかね?」
劇場版 Infini-T Force ガッチャマンさらば友よ
作品紹介・あらすじ
タツノコプロを代表する作品である「科学忍者隊ガッチャマン」「宇宙の騎士テッカマン」「破裏拳ポリマー」「新造人間キャシャーン」の4作品が同じ舞台に降り立ち、世界の平和を守るために奮闘する姿を描いた『Infini-T Force』の劇場版作品。
テレビシリーズに引き続いてキャストは続投するほか、今作の敵となる南部博士役に船越英一郎が参加、ベテランの凄みを見せつける。
本来は別々の世界にいるはずの4人のヒーローたちは時空を超えて笑という少女の元へと集合し、世界を救うことに成功する。その後、一度は元の時空へと戻ったのだが、再び彼らが飛ばされてきたのがガッチャマンたち科学忍者隊が守ってきた世界だった。
その世界の南部博士は再び訪れようとする世界の危機に対抗するための自衛手段を考案するのだが……
「劇場版 Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ」本予告
感想
カエル「続きましてガッチャマンの感想ですが……こちらもTwitterの短評はこのようになっています」
インフィニティフォース鑑賞
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年2月25日
序盤のあまりにあんまりな内容に不安感マックスだったが後半は盛り返すも……よくわからなかったというのが本音か
ガッチャマン以外いる?
特にキャシャーン……
カエル「う〜ん……これは厳しい評価になっても仕方ないのかなぁ」
主「序盤があまりにも酷すぎた。
確かに総集編なんだけれど……それがあまりにも駆け足過ぎる上に、物語としての体裁になっていない。何のカタルシスもなければ、単なる説明で終わってしまった。
+しかも、それが『ここまでの物語の説明』とかさ、回想形式ならばまた話は変わるかもしれないけれど、急に始まってぬるりと終わるわけじゃない?
しかも総集編パートがそこそこ長い!
これが本編だと勘違いする人だって続出するよ」
カエル「こう言ってはなんだけれど、元々大ヒット深夜アニメの劇場版ではないだけに、この作品を『ガッチャマン系の新作なんだ……』と観にくる人もそれなりにいると思うんだよ。
もちろん、そういう人に向けてテレビでやったことの説明は必要だろうけれど……本作は擁護できないかなぁ」
主「ここはテレビシリーズの劇場版の難しさが出てしまった。
もっと言えばなぜこの作品をそれなりの公開館数で上映してしまったのか? という疑問もあるわけで……
いや、確かにタツノコプロとしてはレジェンドかもしれないけれど、本作に登場するガッチャマン、キャシャーンなんて今の若い子は興味もないし、名前以外知らないよ」
カエル「『ポリマーって誰?』という声もあるし、ここにテッカマンが入ってくることも違和感あるよねぇ」
主「おじさん向けコンテンツかもしれないけれどさ、狙っている層が狭すぎる印象もあって……多分、自分もこのブログを立ち上げていなかったさすがに見に行かなったかもしれない」
この4人をすべて知っている人って結構コアな人のような気も……
CG作画とお話について
カエル「今作の3DCGの作画についてだけれど……これもなぁ」
主「確かにヒロインは可愛いけれどさ、でもやはり硬質的な印象は拭えない。それにガッチャマンたちのキャラクターも魅力的とは思えなかった。
さらに言ってしまえば……これはこの手の3DCG作品全体に言えるかもしれないけれど、動きの快楽性がまだまだ乏しい印象かなぁ。
爆発シーンやアクション、メカニックなどはCGが得意とする分野だからそこまで違和感がないけれど、物語ってそういうシーンだけで構成されているわけではない。単なる会話であったり、日常的なパートもあるわけで、すべてのシーンで戦うわけにはいかないことを考えるとこの手のパートが非常に重要になってくる」
カエル「でもさ、それが魅力的ではないんだよねぇ」
主「作画、演出としてあまり面白くないんだよ。
本作では演説のシーンもあるけれど、やはりぬめっとした印象がある。全体的にのっぺりしているとでもいうのかなぁ……ともかく、面白くない。
物語に対するメリハリが出来ているとはとても思えなくて……はっきり言ってしまえば残念な作品と言わざるを得ない」
カエル「ここがカバーできている日本の3DCGアニメ映画ってほとんどないよね……やっぱりリアルな頭身などもあって難しいのかなぁ?」
主「それもあると思うけれど、やっぱりどれも同じような作品になってしまうのも問題かもしれない。戦闘シーンはすごい、爆発の迫力がある、メカがかっこいい……ここから脱する必要性があるんじゃないのかなぁ? という思いがあるね」
カエル「最後にお話についてだけれど……ここも特に賞賛することはできないかなぁ。明らかに何人かいらない子になっていて、それこそガッチャマンともう1人くらいで十分だった印象かなぁ」
主「元々テレビシリーズがあったこともあってしょうがないけれどさ、ガッチャマンとヒロインと南部博士の物語に終始してしまった。それ自体は悪いことではないけれど、そのせいでせっかく宣伝に使われている他のキャラクターがあまり活躍しない。
やっぱりこの手のクロスオーバー作品はそれぞれの味が出てきてこその物語であって……」
カエル「活躍にムラがあるのは、さすがにどうかという思いもあるよねぇ」
主「特にそれぞれのキャラクターの味もちゃんとあるにはあるけれど、それが薄味というか……あまり感じることはできなかったかなぁ。
あの設定だとなんでもありじゃん! という印象もあって、もっと深みや見所がないとせっかくの南部博士関連のテーマも浮いているように見えてしまたのが痛いところだな」
最後に
カエル「う〜ん……ちょっと厳しい意見になってしまった2作だったね」
主「テレビシリーズの劇場映画作品の難しさを感じた両作品でもあるかな。
特にファン向けにするのか、初見さんをどこまで取り込むのか? という問題もあるし……それを差し引いても1作の物語として面白い作品にはなっていないように感じた。
でも根強いファンも多いであろう2作だけに、このような作品になったのかな?」
カエル「ファンの人が喜んでくれればそれでいいけれど……果たしてどうなんだろうなぁ」
主「特にガッチャマンはシビアな評価になってしまう作品だったのが残念だったね。
ここ最近、ガッチャマンはいい話が少ないな。さすがにもう時代が時代というのもあるんだろうけれどさ」
カエル「また大ヒットするようなコンテンツとまでは思えないっていうのが正直なところでもあるよね……」