ついにキムタクと嵐メンバーが一緒に出演する時代がきたね!
わしは言われるまで共演していないことに気がつかなかったがの
カエルくん(以下カエル)
「同じ事務所なのに、そんな政治関係があったなんて昔は知らなかったなぁ」
亀爺(以下亀)
「ジャニーズファンにしてみれば、革新的なお話なのかもしれんの。
特別ジャニーズに対して思い入れのないわしにしてみれば、芸能界の政治関係を思わせるキャスティングにも……」
カエル「やめなさい!
映画が面白ければそれでいいんだからさ!」
亀「そんな映画が面白かったのか?
記事の始まりじゃ」
感想
では、いつものようにTwitterの短評からスタートです
悪くはないんじゃがな
カエル「う~ん……やっぱり分厚い小説の映画化で、2時間に収めるのは難しかったのかなぁ、という印象が強いなぁ」
亀「本作は123分に収まってはいるものの、本来であれば……そうじゃな、140分は軽く超えるような文章量の映画じゃろう。
わしは原作を読んではいないが、この映画は多くの変更をしたと聴いておる。それはそれで当然じゃが、いかんせん変更点に悪い意味で泣かされた形かの」
カエル「もちろん、悪い映画ではないです!
特に役者の演技はとても良くて、ニノとキムタクの代表作の1つになったんじゃないかな? と思うほどの作品だけれど……でもね」
亀「演出が足を引っ張ってしまったかの。
特に序盤はまるで『シン・ゴジラ』を観ているような印象もあった。それだけ早口で様々な専門用語が飛び交いながら物語が進行していくからの。
それによってグイグイと物語に引き込まれた、と思う人もいれば、逆に話についていけなかったり、つまらないと思う人もいるかもしれんの」
カエル「なんていうか、専門用語が飛び交う物語だと今年では『名探偵コナン』を思い出したけれど、それに匹敵するわけのわからなさだったかも」
亀「単純に情報量が多すぎるからの。
それについていけるか、いけないかが本作の評価を決めるポイントじゃろう」
キムタクとニノの初共演も話題に!
演出のバタバタ感
カエル「なんていうかさ……なんでここまでバタバタした作品になったの? って疑問もあって……序盤から役者のアップが多いのは、この手の作品の特徴だからわかるんだけれど、カットが本当に多いんだよ。
できれば抜群の演技合戦なんだから、ロングカットとまではいわななくても、じっくりと視線のやり取りや、にらみ合いを観たかったんだけれど……」
亀「残念ながら、約2時間の尺に合わせるための工夫だったのかもしれんの。
特に序盤から中盤まではタメがほぼなく、お互いにベラベラと話し合って終わるシーンも多かった。
おそらく、役者の間などの部分をカットしていった結果なのではないか? と邪推する。
カットがコロコロと変わるわりには、カメラ自体はすぐに元のカットに戻ったりしておったから、特別な意味はないように思えるの」
カエル「う~ん……映像作品としての演出面は、どうなの?」
亀「少なくともわしには何もわからなかった。
この映画は、例えばカメラを机の周りをグルグル回したり、あるいは机を支点としてカメラを一周させる際に、座っている登場人物が変化するなどの演出もあり、それはそれで見応えがある。
しかし、全体的にバタついてしまったせいで、それが目立つこともなく、一体何がやりたかったのか、わしは読み取ることができなくなってしまった。
色々な実験はあったのじゃろうが、やはりバタバタした印象じゃな。編集が下手なのではないか? とも思ったが、この尺に収めるには仕方ないのかもしれんの」
今作のメッセージ性について
正義VS正義というのが今作の売りみたいだけれど……
残念ながら、メッセージ性も強いとはどうにも思えん
カエル「う~ん……悪くないと思うんだけれどね」
亀「今作と勝負する作品としては、最近の作品では是枝裕和監督の法廷劇を描いた『三度目の殺人』であったり、あるいは海外映画でいえば正義と真実を求めるという意味では『スリービルボード』であったり、あるいは法では捌けない悪に対してどう向き合うかという意味では『女は二度決断する』になるかもしれん。
また、正義VS正義という面では、ハリウッド映画の『インフィニティ・ウォー』なども考えさせられる話であったの。
それらに比べると、若干見劣りするのも否めん」
カエル「やりたいことはわかるんだけれど、でも色々な要素を入れすぎたせいでぼやけてしまったのかなぁ」
亀「少し原作の流れを見てしまったのじゃが、どう考えてもそっちの方が魅力があり、面白くなりそうじゃった。
無論、時間の問題もあるんじゃろうが……この改変もうまく行ったとは思えないの」
役者について~ジャニーズは辛いよ?~
続いては役者についてですが……あんまり過激なことは言わないように!
もちろん、ジャニーズファンをあまり刺激しないように気をつけるぞ
カエル「そういうことを言わない!
特に、割と最近でも主はニノの話を職場の後輩としていて……
後輩「ニノは演技うまいですよね! ほら『硫黄島からの手紙』とか!」
主「……いや、あれはクリント・イーストウッド監督だから、あれくらいは最低限やってくれないと……」
なんて言って怒らせているんだからね!?」
亀「映画ファンとして、イーストウッドファンとしての血が騒いでしまったのかもしれんの。
しかし、ジャニーズの役者の演技はあまり評価されづらい印象もあるかの」
カエル「言葉を選んでね?」
亀「いやいや、彼らの最大の長所は『かっこいいこと』である。
そして最大の短所もまた『かっこいいこと』なんじゃよ」
カエル「……え? かっこいいとダメなの?」
亀「少なくとも、わしはそう思う。例えばキムタクにしろ、ニノにしろかっこつけるような演技が多い。
これはジャニーズの役者の多くに共通するのじゃが、まあ、かっこいい演技というのはある種パターン化されてしまうわけじゃな」
カエル「今作は熱血漢であり、典型的にかっこいい役だったかなぁ」
亀「わしが思うに、ジャニーズから大泉洋や小日向文世、リリーフランキー、今作でいえば松重豊のようななんでもできる役者は出てこない。
松倉のようなモンスターや、小田島のような情けなさもあるような演技は、彼らのイメージを壊す。まあ『ヒメアノ〜ル』の森田剛などもおるがの。
役者というのは、時に禿げたおっさんやコメディ担当、あるいはさえない脇役、気持ち悪いおじさんのような演技を求められる時もあるじゃろうが、彼らはかっこいいイメージもあってそういう役はやりづらいところがある。
だから似たような役や、いわゆる『ジャニーズ演技』ばかりになってしまうじゃろうな」
カエル「今なら福山雅治とかも同じかも……かっこいいからこそ、役幅制限されるというか……」
亀「その点、こういう人たちは2枚目の役を演じさせれば映えるから、主役向きの役者もとも言える。残念ながら、一般的に注目を集めるのは主役じゃが、難しいのは脇役だったりするからの。
かっこいい役ばかりだと、演技が一辺倒になってしまい、なかなか評価されづらいものがあるかもしれんが……彼らはかっこいいことが主役じゃから、難しい話じゃな」
いい演技を披露するも……
でも、本作のニノとキムタクの演技は本当に素晴らしかったじゃない!
……まあ、いいはいいのじゃがな
カエル「何、まだ文句あるの!?
あんなに頑張っていたし、声を張り上げるシーンではしっかりと演技していたじゃない!」
亀「……うがった見方をしてしまうと、あの騒動の後だからこそ、これはキムタクへの事務所のご褒……」
カエル「そこには触れない! 触れちゃいけないの!」
亀「それは冗談としても……いや、本当に冗談じゃよ?
今作では食事シーンが多く登場し、それが意味があるようにも見えるのじゃが、残念ながら本作の主役級の3人、キムタク、ニノ、そして吉高由里子はほとんど口にしない。
口にしてもビールを口に含んだんだかわからん程度じゃ。まあ、アルコールは顔が赤くなるなどもあり、撮影に影響があるからかもしれんが……
これはわしはいつもいうが、食事シーンで食事をしないというのは、ラブシーンでキスをしないのと同義である。
もちろん事務所のNGや体型維持もあるんじゃろうが、それを見るたびに冷めていく。
日本の役者、特に若手のアイドル役者は体型維持に務めているんじゃろうが、同席している人たちがバクバク、ゴクゴクと飲み食いしているなか、食べないでいいと思っているのか?
それが違和感につながると思わないのか、わしは不思議でしょうがない」
カエル「そんなところに注目している人はほとんどいないからじゃない?」
亀「もちろんテイクを重ねるたびに食事をしていたら、大変なのは良くわかるが、わしなどは若干冷めてしまうところがあるの。
運動のシーンは汗をかきなさい、顔を赤くしなさい、食事のシーンはちゃんと食べなさい、というのは当たり前のことだと思うのじゃがな。
別に歯を抜け、とか言っているわけじゃないからの」
他の役者について
カエル「では、主役級以外の役者についても語っていきましょう!」
亀「世間では松倉役の酒向芳を推す声も多く、それに大いに同意するが、本作のMVPは松重豊じゃな。
スタートから独特の存在感で画面をグイグイと引っ張っていき、それにつられてみんな演技合戦をしていったようにも見えたの」
カエル「色々な側面を持つ登場人物であり、また『私は忠実なポチになります』などの文句が本当に心に残ったよね」
亀「わしは『諏訪部は神様の闇商売も行なっています』が特に好きじゃな。
この映画の名シーンはとても多いが、その中でも諏訪部や松重豊が残した衝撃は非常に大きい」
カエル「ああいうキャラクターが好きなのもあるんだろうけれどね。
あとは、吉高由里子は本当に綺麗だったし!」
亀「ほぼ紅一点でありながらも、画面に見事な花を添えておったの。
もちろん酒向の演技も絶賛、色々語ったがキムタクもニノの演技も見応えがあった。役者の演技を楽しむための映画と考えると、今年の邦画でも『孤狼の血』などと並ぶ屈指の作品じゃったの」
以下ネタバレあり
作品考察
……結局、この作品って
では、ここからはネタバレありで語っていきます!
わしが1つ疑問なのじゃが……今作、沖野は一体何をした?
カエル「え? 事件の謎を暴こうと動き回ったり、色々と活躍していたじゃない」
亀「う~む
……どうにもわしには沖野がこの物語にあまり絡んでいないような気がしたんじゃな。
例えば、調書を取るシーンなどもとてもいい演技をしておったが、しかし物語には大きな進展はなかったように思う。
いや、あの告白を引き出したのは確かに功績じゃが、その裏では最上の指示があったわけじゃしの」
カエル「いや、ほら、最後も裁判で勝とうとして色々と!」
亀「しかし、その努力はまっっっったく意味がなかった。
突然現れた証言者によって話がガランと変わってしまい、結局はあのラストに繋がっていく。沖野の情報が役に立ったわけではない。
じゃあ、結局の沖野は何をしたのか?
なんの功績もないのではないか?」
カエル「……う~ん、忘れているだけなのかなぁ?」
亀「そもそも最上も迂闊すぎたところがあるが、色々と行動をしておって主人公にふさわしい男であった。一方で、沖野も多くのシーンで出てきて、なんらかの行動は起こしているのじゃが、それが結果に結びついたシーンは、わしが覚えている限りでは一切なかった。
予告などでもそうじゃが、本作は最上VS沖野の正義がぶつかりあう作品なのに、沖野の正義があまりにも弱すぎる。
これが最大の欠点かもしれんの」
あの人は何がしたかったの?
カエル「それでいうと、吉高由里子演じる橘も何がしたかったのか、いまいちわからないんだよねぇ。
ジャーナリストとして潜入取材をして、セクハラやパワハラを暴く、というのはよくわかるんだよ。だけれど、その後がどうしたいのか、全くわからなくて……」
亀「あそこで目的がバレてしまったとしても、すでに証拠はいくらでも揃っているわけじゃ。さらに、松倉というとんでもない爆弾の話も手に入れている。
それを考えると、あの時点で既に勝利条件は整っているはずなんじゃがな」
カエル「う~ん……色々没収されたのかな?」
亀「それも疑問であるし、沖野とくっつくのは……まあわからんでもないとしても、急にペラペラと過去を説明しているのも気にかかる。
しかも、その後はなぜ沖野と行動を共にしたのか? ただ冤罪を晴らしたかったのだとしたら、元々の彼女の目的はどこ行ってしまったのか……
その辺りが一切わからなかったかの」
カエル「……映画を読み取れていないだけなのかな?」
亀「わしもその心配をしてしまうくらい、役者の演技と雰囲気だけで突っ走ってしまった印象のある作品じゃな」
詰め込みすぎた結果……
結局は、詰め込みすぎというのもあるのかもね
ごちゃごちゃしておったからの
カエル「あのダンスもすごく意味深だけれど、でも意味があるようには思えなかったんだよねぇ」
亀「宗教や政治の面から、この映画を描きたかった、正義を描きたかったというのもわかるが……流石にあれこれと入れすぎじゃろう。
別に歴史的事実を加えることはいいのじゃが、それがしっかりと生きていたか? というと疑問符しかないからの」
カエル「そもそも、最上が何をやりたかったのか全然わからないんだよ。
松倉に死刑判決を下させて、刑を執行したいというのはわかるんだけれど……だけどさ、そのほかにも色々な事情があったわけじゃない?
『俺の正義の剣を~』とかいっていたけれど、いやいや、自分で取り上げられるような行為をしておいて、政治的にも何をしたかったのか、何をしていたのかが全くわからずにヌルッと終わってしまったし……」
亀「そして、最後で松倉もあのようなことになってしまうが、まあ大作邦画の中途半端な勧善懲悪じゃな。
あの松倉の最後の展開は、1番やってはいけないことだっと思うし、しかもやり方が非常に雑じゃ。
ちなみに、チネチッタはよく行く映画館なので知っておるが、あの場所であのような事故が発生する可能性は極めて低い。車道からも離れており、しかも店もあり少しカーブをしているので、故意でない限りあんなことは起こらない。まあ、故意なんじゃが……違和感がありありじゃな。
それ自体は映画の嘘で片付けてられるし、どうでもいい指摘であるが……あの松倉の展開だけは、どう考えても納得することができなかったの」
正義と正義の対決……とは言いつつも
ちなみに、どっちの正義を支持するの?
わしは完全に最上じゃな
カエル「え? 松倉を逮捕するためにはあらゆる手を使う最上の方なの?」
亀「この話で語れば最上は酷い男じゃ。しかし、私情やゴタゴタがなく、被疑者を有罪にするために全力を尽くすというのは、検察として当然のことじゃろう。
沖野のように真実を明らかにする、というのは理想論でしかなく、少なくとも検察が行うべきことではないように思える」
カエル「この辺りは『三度目の殺人』と似たようなテーマなのかなぁ」
亀「そもそも、わしは警察や検察の『正義』を信用しておらん」
カエル「……出た、天邪鬼」
亀「いやいやいや、強大な力を持つ国家権力が正義を口にすること、これは非常に恐ろしいことじゃよ。
正義の名の下に様々な弾圧などもある。おそらく、ナチスドイツの将兵たちも自分たちの正義を盲信していたのではないかの?
最初に最上が語ったように、正義を口にし始めたら国家権力を任せておくのは、わしは非常に怖い。
それならば、むしろ仕事だからとドライに、システマチックに人を裁くほうがわしは信用できる。大体、法曹界の最前線で働くものが法を否定するような行為を働いたら世も末ではないかの?」
中盤の考えさせられたシーン
カエル「本作を見ていて1番考えてしまったのが、中盤のシーンでさ。
最上と検察の上層部が松倉の逮捕に向けて話し合っている最中に、その隣で女性検察官が性犯罪被害にあった被害者のために奮闘しているんだよね。だけれど、裁判にならないという理由で上司は起訴を嫌がっているわけで……」
亀「日本の刑事事件の裁判は90%以上の確率で有罪になるわけじゃが、これはそもそも有罪の可能性が高い事件しか起訴しないからである。
これに対してどのような反応をするのかは、人によるじゃろう」
カエル「刑事事件に起訴されただけで、たとえ無罪になったとしてもそれまでの生活は変わってしまうのは間違いないわけだしね……
かといって、本来は裁かれるべき犯罪が裁かれないというのも変な話で……」
亀「近年も性犯罪とされた事件に対して不起訴処分とされた際、法曹界や政治家も含めた批判の声が巻き起こる例もあり、非常にセンシティブな問題じゃ。
そういった、現代社会を考える上でとても重要ないいテーマを抱えている作品でもあっただけに、それが発揮されたなかったことに、とても残念な思いを抱えてしまったの」
まとめ
この記事のまとめです!
- 役者陣の好演ひかる!
- 演出、脚本は雑な面も……
- 特に後半は首をひねる展開が続きすぎ!?
役者を楽しむ映画レベルで収まるのは、本当に勿体無い
カエル「もっともっと社会的なテーマを深くえぐる作品にもできたし、ここまで専門用語の羅列をしているのだから、大人向けの難しい話として振り切ってしまえばよかったのにねぇ」
亀「評価する声が多いのもわかる一方で、もっと深くえぐってほしいという思いも出てしまうという、なんとも言い難い作品じゃったの」