カエルくん(以下カエル)
「この3人の映画がこんなに早く公開するとはねぇ」
亀爺(以下亀)
「これだけのスピーディな対応は少々驚きでもあるの」
カエル「昔は東京オリンピックのメインパーソナリティや、開会式のセレモニー登場確定だと思っていたもんなぁ……多分、日本のアーティストで幅広い世代から知名度と指示を集める人たちって、SMAP以上の人はいないと思うんだよね」
亀「パラリンピックも積極的に盛り上げようとしておる。数々の問題があったにせよ、それにくじけることなく幾度も復活してきた実績もある市の」
カエル「それがまさかこんなことになるなんてね……」
亀「それでも精力的に活動しようとする姿は見ていて清々しさもある。
では、そんな彼らの再スタートとなる映画の感想といってみるかの」
作品紹介・あらすじ
ジャニーズ事務所から独立した3人が織りなす短編オムニバス映画。
3作品でそれぞれが主演を務めて、4作目でそれらをまとめる作品となる連続短編方式。
監督には園子温などの映画監督に加えて、今回草彅剛主演の短編を担当する爆笑問題の太田光も話題に。
またキャストには浅野忠信、満島真之介、でんでんなど、個性豊かな面々が脇を固める。
1 感想
カエル「では、いつものようにTwitterの短評から始めるとしましょう!」
クソ野郎鑑賞
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年4月7日
まあ、オムニバスだし撮影経緯からして奇作だとおもったが悪くはないです
ただ園子温と絶望的に相性が悪いのでそこはきつい……
一方太田光は良かった!
こちらは相性が良くてゲラゲラ笑ってしまう場面も……
4話は王道ながら魅せるねぇ
カエル「なんていうかさ、4つの短編で構築されている映画なんだけれど、全部大絶賛という人は少ない印象かな。
でも、どれかは良かった! という人もいて、中には全部ダメだったという人もいて……面白いのが、人によって何が好きでどれが嫌いかってはっきり意見が分かれるんだよね」
亀「それぞれ別の味がある上に、作家性が強く反映された作品もあるからの。
その独特の味がダメだったという人も言えば、逆にそれが良かったという人もいるということじゃろうな」
映画全体として
カエル「まあ、それぞれ良し悪しがあるのは当たり前の話なんだろうけれどね……それで、映画として全体の感想はどうだったの?」
亀「う〜む……奇作の範疇は超えない作品ではあるかの。
元々、あの騒動があって色々動いていたとはいえ、独立してからまだ1年は過ぎておらんはずじゃ。それを考えると……練り込む時間は少ないの。
このオムニバス形式も2時間の映画1作撮る時間などはないが、旬なうちに動きたいという思いから、短編4つを作って同時進行で製作しただけにしかおもえん。
それはそれで面白い試みじゃが、完成度の高さを求めるのは酷かもしれんの」
カエル「特殊な形態というのもあるだろうしね」
亀「特にスタートで新しい地図の動画が流れるのじゃが、独立した時点で流れた時ネットを中心に大きな話題を呼んだのは良かった。
しかし、それを劇場でいきなり挿入されてしまうと、唐突に何か始まったような違和感を生じさせることになると思うがの。
少なくとも、OPとしての効果を発揮することができていない。映画泥棒の後、何かワンクッションあってからの、あの動画であればまた違ったかもしれんが……」
カエル「それを考えるとあの映画を始まった時の制作会社や配給会社のロゴって意味があるのかもね……」
亀「わしは本についておる、表紙を捲って1枚目にある、何も書かれていない白紙の遊び紙の役割じゃと思っておる。
何の意味もないものと思うかもしれんが、物語が始まるワンクッションがあり、そこからぐっと客を掴むOPがある。
落語におけるお囃子などのように、これから始まるぞ! というようなものじゃな。
それがあるのとないのとではまた違うということを見せつけられたような気分じゃったの」
各話の感想
1話『ピアニストを撃つな!』について
カエル「では、各お話について触れていくけれど……この園子温の1話目はどうだった?」
亀「まあ、まったくダメじゃった。
これは作品云々もあるじゃろうが、元々園子温との相性がとても悪いために何とも言えんところがあり……そもそも、そんなに語りたい監督でもないかの」
カエル「伝説的傑作『冷たい熱帯魚』と『愛のむきだし』の2作品があるけれど、どちらも趣味ではないよね。あんまりグログロ作品とか好きじゃないっていうのもあるだろうけれど……」
亀「そもそも映像としての特徴や癖が強すぎるから、間違いなく人は選ぶ。わしは苦手な部類じゃな。
はっきり言ってしまえば見所は無い。この4作品の中でも1番つまらなかったとは思うが……園子温が好きな人にとってみれば、その評価は覆るかもしれんの」
カエル「えっと……もっと具体的にダメだったところを上げていくと、どういうところが?」
亀「全てじゃな。とりあえず適当としか思えない脚本に……近年の園子温はどれも適当にしか見えんがの。意味があるのかないのかわからない映像や色彩の洪水など、ほぼ全てがきつかった。これが映画といえるのだろうか? という疑問が生じたの。
壮大な映像実験でしかないようにも思えたかの」
カエル「……『映画とは何か?』という絶対荒れる問題だから難しいけれど、そこまでダメだったかぁ」
亀「褒めている人もいるので、こればかりは相性じゃな。
仮に2時間の映画であった場合、最初の15分で帰ったくらいの作品でもある」
独特なキャラクターが多く登場する人間ドラマ
2話『慎吾ちゃんと唄食いの巻』
カエル「次に2話だけど、山内ケンジ監督は初めましてで、調べたら舞台やCMを多く手がけて、たまに映画も監督しているみたいだね」
亀「それを聞いて納得する部分もあるかの。
本作を鑑賞中に思ったのが『まるでテレビドラマのようだ』というものでの。
たまに深夜のテレビドラマなどにある、特徴的な設定でぶっ飛んでいる、前衛的な作品があるじゃろ? それと同じような匂いがしたの」
カエル「よく言えば詩的な世界観だよね。
そして今の元SMAPの状況に合わせたメッセージ性の1番強い作品になっていたのかな?」
亀「唄を奪われた男性、というのはそのまんま香取慎吾を始めとするスマップの面々であり、さらに独創的な絵画のセンスや名前などからも、この作品は『香取慎吾が演じる』のではなく『香取慎吾を撮る』ということに注目しておった。
まあ、色々と面白い試みはあった上に、中島セナも魅力あふれる女の子ではあったが……辛い評価にならざるを得ないかの」
カエル「歌い出しの本当に1文字だけでもその歌が何かわかるということで、日本中でスマップがどれだけ浸透していたのか? ってはっきりとわかるけれどね。
衝撃的な設定もあり、独特な物語だから人を選ぶのは仕方ないのかなぁ……」
亀「今の香取慎吾の状況を見事に表した作品であるのはわかるのじゃがな……
時々短編映画を見に行くと当たるタイプの作品で、奇抜なことをしておるのじゃが、それがハマっておらんように見えてしまったかの」
特に中島セナが目を引いたかなぁ……
3話『光へ、航る』
カエル「いよいよ太田光の監督作品である本作だけれど……これは意外とよかったのかな?」
亀「わしは1番好きだった。
この4作品の中で1番映画をしておったし、絵としての美しさもあった。その分短編としてのとんでもない魅力というのはなくて、まあ優等生を目指しましたというか『映画』を撮ろうという意識が大きかった。これは既に作品を発表しておる他の監督と違って、慣れないからこそ『映画らしい映画を』という意識によってつくられたものかもしれんの」
カエル「お! じゃあ大絶賛なの!?」
亀「残念ながらそこまでではない。
物語としても見所が多くて、草彅剛という『いい人、朴訥とした人』のイメージが強い芸能人を荒々しいチンピラ設定にしたこと、またスタートでガッとつかむような描写を入れたことは非常に高く評価をしていいじゃろう。
まさか、草彅剛にああいう役がハマるとは思っておらんかったからの。これは新しい一面が見れた。また細かいポイント1つ1つでギャグを挟んでおり、わしはそれが面白く、笑ってしまった」
カエル「特に野球好きならばクスリとくるところがあったけれど……それを説明したらダメだよね……まあ、説明しなかったら劇場にいる8割の人がポカンで、一部の人だけ大爆笑という構図が見えるけれど」
亀「元々太田光の笑いは結構好きじゃからの。
時事ネタも含んできたりと、色々と工夫はしておったし、映像の工夫や演出もされており、中々見所はあるにはあるのじゃが……いかんせん退屈なシーンやナンセンスな展開もあり、ノリはしなかったというところかの。
しかし監督作品でこの出来であればある程度の評価されるとは思うが、だからと言って大絶賛というものでもない。
ただし、物語としては短篇としてそれなりにキチっとハマっておりおる点は評価するべきだとも思うがの」
草彅剛のこの演技は結構良かった!
一番映画らしい作品だったかな?
4話 『新しい詩』
カエル「そして全てのオチとなる4話だけれど……」
亀「まあ、妥当な作品じゃった。
あのメンツならば、これはやるだろうなと思っておったし、映画としての締めるには最適な答えだったようにも思う」
カエル「やっぱり彼らはああいう姿が1番良かったよねぇ」
亀「それにしても少し思うところがないわけではないがの。
もっとこう……なんというか、3人をうまくまとめ上げても良かったのではないか? という思いもある。
せっかくの3人だから、揃っているところを見たかったの」
カエル「どんな作品なのかは劇場でのお楽しみで!
まあ、でも劇場で見る意義がある作品だったことは間違いないです!」
亀「あとは……やはりラストの締め方がまあ強引じゃな。
この短編オムニバス形式というのは、古今東西小説なども含めて色々あるが、基本的にはそこまでうまいラストになることはない。それぞれの作家が好き勝手に、派手に暴れ放題するわけじゃからな。それを纏めるのは難しい。
本作も……悪いとは言わんが、そこまで大絶賛! というようなラストではなかったかの」
カエル「難しいからねぇ……この手の作品って」
3 総評として
カエル「では、改めて1作1作を語った後に総評を語っていきましょう!」
亀「う〜む……やはり本作は元SAMPというのがどういう存在なのか、そしてこれから先どのようになりたいのか? ということを示した作品だということができるかの。
決していい作品ではないが、その思いというのはよく伝わってきた。
本作のタイトルでもある『クソ野郎』であるが、作中に登場するのもクソ野郎が多い。色々なタイプはあるがの。これは元SMAPの面々が自虐的に自分たちを称していることもあるのかもしれんが、そのようなクソ野郎達を称える作品でもあったと言える」
カエル「最後の話とかは特にそうだよね。クソ野郎ばかりが登場するけれど、それらを集めて祭りを開く、という内容だからさ」
亀「それは悪くはなかったが、わしが1番強く感じたのが『SMAPは5人揃って真価を発揮する』というものじゃった。
1人1人は決してスーパーな存在ではない。歌ももっと上手いアーティストはいくらでもいる、演技も本作を見て思ったが特別上手いわけでもない。もっと上を見ればいくらでもいる。
しかし、5人揃ってSMAPとなった瞬間、他の誰にも負けないスーパースターになる。国民的なアイドル……偶像的アイコンになるわけじゃな。
これは他の誰でもない、SMAPの最大の特徴かもしれん」
カエル「今回欠けちゃったからこそ、改めてわかったことかもしれないねぇ」
作中でも重要な楽曲
いつ聞いても名曲です
本作に隠されたメッセージ?
カエル「えっと……気になることがあるって話だったけれど、それはどこ?」
亀「特に2話の作中で尾崎紀世彦の『また会う日まで』を熱唱する、架空のタレントがいるのじゃが……なぜこの曲だったのか? ということが気になった。
まあ、歌詞を見れば一目瞭然かもしれんの」
カエル「あんまり直接言及すると怒られてしまうけれど、簡単に言えば『また会う日まで別れた理由は言わない。2人で出て行ってね』という曲だよね……」
亀「特にサビの歌詞である『2人で』という部分じゃの。
誰と誰がドアを閉めるのか、誰と誰が名前を消すのか……それはどういう意味を持つのか? さて考えてみれば意味深な話じゃの」
カエル「まあ、誰がどう考えてもあの2人に言及しているようにしか思えないよね……」
亀「さらに2話のラストで7つのアイテムがあったのじゃが、なぜ7個なのか? ということが気になった。
5個ならばSMAPじゃろう、6個ならばそこに森くんを加えたと思っていい。しかし7個じゃろう? まさか件の引き金になったマネージャーを入れるとは思えん。
ここは解釈が分かれるじゃろうが、わしはファンも入れた7つと考えたが……それだと安直すぎるかもしれん」
カエル「新しい地図というのも『new smap』と『News map』を掛けているという話題もあったし、色々な意味深なメッセージも発してきたから絶対何かありそうだよね」
亀「ここは詳しいSMAPファンの解釈次第じゃろう。わしの出る幕ではないが……かなり気になる作品でもあったの」
最後に
カエル「では、最後だけれど……新しい出だしとしてはまあまあなスタートだったんじゃないかな? 少なくとも、映画には出演できるし、その意思もあることを示したわけだしね」
亀「それだけの資金を集める力もあることは示したということもあるじゃろう。
ネットでの活躍を見てジャニーズも思ったのか、ネット上で使えなかったタレントの画像を解禁しておる。これは大きな前進であるが、その裏ではこの騒動で新しい活躍を果たす3人の姿があるのも明白じゃの」
カエル「プラスの理由なのか、マイナスの理由なのかはわからないけれど、でも変化をもたらしたのは事実だしね……」
亀「あれだけの知名度があっても厳しいネットでは厳しいことは証明されておる。特にYouTubeなどはそんなに甘くないというのも、その再生数ではっきりとわかった。
その中でどのような結果を残していくのか……これからも注視したい面々ではあるの」