カエルくん(以下カエル)
「アニメ作品の快進撃が止まらないね! 君の名は。なんて、興収100億円がほぼ決定的、さらに成績を伸ばしてくるんでしょ!?」
ブログ主(以下主)
「……正直、ここまで伸びるとは全く思っていなかったな。しかも、聲の形も興収2位で、アニメブームの到来って感じだな」
カエル「しかもさ、聲の形に至っては『怒り』や『BFG』の……1/3ちょっとくらいの公開館数なわけじゃない? それで2位ってなかなかすごいよね!」
主「何がすごいって、同じアニメとして大ブームを巻き起こしている『君の名は。』と客層がぶつかっているはずなのに、この成績だもんな」
カエル「その『君の名は。』だって、公開4週目なのにまだまだ伸びているんだから、社会現象化しているというのもわかるよね!」
主「この様子だと映画の歴代興収TOP10入り≒150億円も行くかもしれんね。これは『この世界の片隅に』次第では、本格的なアニメブームが来るかもしれないな」
カエル「今回はこう言った現象を紐解きながら、なぜアニメがここまで流行ったかを分析してみるんでしょ?」
主「そうね。スタジオジブリ以降のアニメ業界ってものを、少し考えてみようかな」
1 アニメに親しみのある世代
カエル「まずはなんといっても、アニメというものに対する認識が大手メディアや偉い大人たちと若者の間で違いがあるかもね」
主「かつて、『オタク』という言葉はある種の蔑称だったわけだ。それこそイメージされるのは宮﨑勤だったり、宅八郎みたいなオタクでさ、今だにメディアがオタクをドラマとかで出すときは、そういうステレオタイプのオタク像だったりするわけだけど……多分、オタクという言葉にそんなイメージを持つのって、30代以上なんじゃないかな?」
カエル「今となってはオタクであることはある種、普通であるみたいなところがあるね。今やクラスに1人ってレベルじゃないでしょ? 一つのグループになるくらいいるし」
主「やっぱり、2000年代中盤のオタクブームが大きかったと思うんだよね。あの時代からオタクというものの認識が徐々に変わり始めた。そしてハルヒブーム以降から続く、深夜アニメブームが来るわけだ。
そのハルヒから10年になるわけだけど……青春時代にハルヒやらアニメを見ていた世代が今や成長して20代になっているわけだ」
カエル「そうだろうねぇ。『小学生の時ハルヒを見ていた』って話も時々聞くけれど、それって小学生が深夜アニメを見ていた……もしかしたら現在進行形で、見ているかもしれないってことだもんね」
主「だから、今の若い層にはアニメって、偉い人たちが考える以上に親しみがある表現なんだよ。
ちょっと前の……多分10年前くらいかなぁ? ハリウッド作品は除くとしても『踊る大捜査線』とか、あとは『世界の中心で、愛をさけぶ』みたいな、テレビ主導の映画だったり、イケメンや美女がたくさん出てくる映画が人気だったわけだ。
それは今でも変わらないで、その需要はあるんだけど、それ以上に潜在的需要として伸びているのが『アニメ』なんだよね」
日本人はアニメが好き?
カエル「やっぱり、ジブリが……というよりも宮崎駿がいなくなってからのアニメ映画界ってのも、このヒットを考えると大きいのかな?」
主「……個人的に思うのはさ、日本人ってアニメが結構好きなんだよ。それこそ毎週のようになんらかのアニメ映画も公開されているし、テレビをつければ毎日アニメがやっているでしょ?
しかも、昔からキャラクター系のアニメ……ドラえもんとか、クレヨンしんちゃんとかコナンとかは一定の客を集めてきたわけだ。それはもちろん、いわゆるファンムービーで、キャラクター人気もあったわけだし、そのキャラクターありきのアニメであることは間違いないけれど……それがアニメ文化を親しみやすくする土壌になったわけだな」
カエル「でもオリジナルのアニメ映画というとジブリ一強だったわけじゃない? 押井守や今敏とかもいたけれど、決して一般向きではないしさ」
主「そうね。その意味では、オリジナルアニメ映画って住み分けがきっちりとしていたよ。
大衆向けのアニメとして、スタジオジブリ。
オタク向けアニメとして、押井守や今敏といった具合にね。
そして、この大衆向けの……というと語弊があるなら、ファンタジー混じりで一般人に愛されるようなオリジナルアニメを作ろうという監督はスタジオジブリ以外なかったんじゃないかなぁ? もちろん、小劇場とかを含めると話は変わるけれど、どんなにいい映画も公開館数が少なかったら、観られることもないしね」
カエル「確かに、ディズニーとかピクサーがあって、さらにジブリもあってと考えると、勝負しようって気にはならないかな?」
主「あとは作っても認知されずに消えていった作品も多いかもね。もちろん中には『あらしのよるに』みたいに、一般受けしたアニメもあるよ」
2 宮崎駿引退後の日本アニメ
カエル「そしてここで宮崎駿が引退した後の日本アニメ界の話になるわけだね」
主「宮崎駿が引退した後のアニメ界というのは、スタジオジブリが後継者を育てることに失敗したこともあって、その穴を求めるようになるわけだ。
いや、アニメ界というよりもメディア界というべきかな?
俗に言う『ポスト宮崎駿』ってやつだよね。
宮崎駿が抜けた後の穴に埋まったのが結果的に細田守であり、新海誠だったわけだけど……新海誠は本来、オタクが好む、一般受けはしないはずの作家だったわけじゃない?
だけどそれほどまでに受けたということが、それだけで大きな事件だよね」
カエル「だけど、なんで新海誠や細田守や、山田尚子がここまで受けたんだろうね?」
主「たぶんそれはさ『監督』について語る文化が、依然アニメ界には根強いんだよね」
カエル「……監督について語る文化?」
監督について語る文化
主「そう。例えば、かつてジブリ映画を宣伝するときも『スタジオジブリの最新作』とかさ『宮崎駿の最新作』って宣伝方法がとられたわけじゃない? 押井守もそうかな。
それは今でも続いていて、例えば『細田守の最新作』とかってテレビで普通に宣伝されるわけだ。そして今作の新海誠もメディア露出度が結構高めで『新海誠の最新作が大ヒット!!』みたいな扱いを受けることもある。
さらに京アニもさ、京アニってアニメオタクからは強烈な支持を集めていたから、今期のアニメ一覧とかを見て『京アニの新作? みよう!』ってアニメオタクが結構多かったわけじゃない?」
カエル「あの京アニが制作だからクオリティが高いっていう人も多かったよね」
主「そう。じゃあ、これを実写映画で考えてみると……例えば同じ公開日の『怒り』の監督である李 相日の作品ということをアピールしているかというと、そうではない。
むしろ、渡辺謙とか宮崎あおいなどのキャストを売りにしているよね?
カエル「悪人と同じスタッフであることはアピールしているけれどね」
主「でもさ、一般的に邦画を語る際に『今回の制作会社がどこだからクオリティに期待』って見方をしている人は少ないでしょ? 是枝裕和とかはさすがに知名度も高いから、是枝作品の新作として大きく売り出すけれどさ、じゃあ今週の映画興行ランキングに入っていた……『四月は君の嘘』だったり『超高速参勤交代』の監督が誰か言える人ってそんなに多くないと思うわけよ」
カエル「その2作品を見に行く理由の中に、監督の大ファンだからって意見はあまり聞かないかなぁ?」
主「だけど、新海誠の最新作だから、京アニの新作だから見に行くっていうファンはそれなりに多いわけだ。そしてそれは、大手メディアが目をつけていないブランドなんだと思う。
もちろん、みんながみんな監督や制作会社に明るい濃いオタクであるわけではないよ。監督の名前も、制作会社も知らない人もたくさん観に行っているし。
だけど、新海誠や細田守の名前や、京アニという会社というのが、若い人の中で……特にこの情報化社会の中で、より一般的に語られる名前になっている。そしてそれは実写映画の監督よりも、格段に親しみがあり、ブランドとしてある種、確立されていたんじゃないかな?
これはテレビなどの大手メディアが主導ではないのに、この手の作品が大ヒットした理由の一つだと思うね」
カエル「アニメの持つ強み、かもね。この作家性を打ち出せる文化って」
公開館数の少なさ
カエル「結果論だけど、公開館数の少なさもこの大ヒットに貢献しているような気もするなぁ」
主「そうね。どこの映画館も売り切れ続出、その日のお昼にいったら、鑑賞するだけでも4時間後、まともな席で観ようとしたらどの回もダメってことがありうるわけじゃない? しかも安い日だったら、朝に完売するレベルでもあるわけだ。
だけど、予約をすれば普通に見られるという手軽さも併せている。それが余計に君の名は。と聲の形の話題性を高めているよね。SNSとかで『売り切れて見れない』って流れたら『そこまでいいなら見てみよう』ってなるし」
カエル「もちろん作品クオリティの高さもあるけれど、クオリティが高い作品=売れる作品ではないしね」
主「そうね。今回、この2作に関しては東宝も松竹も結構勝負したと思うんだよね。
新海誠だってアニメオタクから注目を浴びていたとはいえ、売上で見ると小劇場とまではいかないけれど、そこまで多いわけでもないしさ。京アニと山田尚子も原作はあるけれど、テレビで放送したわけじゃないアニメということもあって、未知数だったわけじゃない?
君の名は。が300以上、聲の形が100以上という結構な公開館数を割いたけれど、それでも足りなかったというのは、嬉しい誤算だろうね。
まあ、いろいろなゴタゴタは……特に聲の形に関してはあるけれどさ」
カエル「でも、主は少し心配なんでしょ?」
主「そうね。特に新海誠に関しては本人も語っているけれど、少し売れすぎたような気がする。
100億の超えの作品の監督という看板は重いからさ。
個人的には次はリアル路線の50分くらいの短編をまた作って欲しかったけれど、状況がそれを許さないだろうしなぁ……」
カエル「スタジオジブリみたいな、しっかりとした制作体制を確立しているわけではないしね」
主「やっぱりジブリって制作体制が確立していたことも大きかったと思うよ。新海誠の場合、結局は小規模スケールでやっていて、今回組んだメンバーがすごかったけれど、次回作もそうなるとは限らない……というか、このメンバーが集まるのはもう無理だろうからさ。
次回作は不安だろうねぇ。
『シン・ゴジラ』の庵野秀明とかだったら、大ヒットに慣れているから屁でもないと思うかもしれないけれど、あれほどのある種の図太さは感じられないしなぁ……」
3 原恵一と次に続く監督
カエル「でも、細田守とか新海誠とかが注目を集めるけれど、他に人がいたとも思うけれどね……例えば、原恵一とか」
主「そうなんだよね……個人的には原恵一の評価というか、認知度って低すぎると思うよ。
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 』という認知度の高い名作も手がけ、オリジナルでは『カラフル』も『河童のクゥと夏休み』という良作を作っているし、もっと知名度があってもいいと思う。
……ただ、もしかしたらと思うのは、子供向けすぎたのかなぁ」
カエル「確かに細田守や新海誠作品に比べると、対象年齢は低い気がするね」
主「細田作品とか新海作品って、大人になっても見に行きたいと思わせる作品なんだよ。大人が見ても恥ずかしくないというか……大人も対象に入っているというか。
原恵一作品は子供向けすぎて、いい歳した大人が入りづらい雰囲気があるのかもね。あと、大きいのはコンスタントに作れていないこと。この10年でアニメは3つで、百日紅は一般向けとは微妙に言いにくいしね。
もしかしたら、コンスタントに作れていたら『東宝の細田(新海)松竹の原』になっていたかもね。まあ、売るために作っているわけではないだろうけれどさ」
カエル「ちなみに、この流れはしばらく続くと思う?」
主「それこそ『この世界の片隅に』次第なところはあるけれど、続く可能性は高いと思うよ。
細田守だって引退したわけじゃないし、ガンダムが終わった後にどうするかわからないけれど長井龍雪もいるし、制作会社でいうとシャフトやIGもあるわけだし。傷物語ではなく、オリジナルで娯楽大作を作る体力はあるんじゃないかな? シャフトが一般受けするかはわからないけれど。
その意味では新海誠よりも、制作体制がしっかりしている京アニの方が、この先もしっかりといいものを作り続けるかもね」
カエル「候補者などもたくさんいるんだね」
主「もしかしたら、邦画業界ではあまり注目を集めなかったアニメが一気に台頭するかもね。それがアニメ業界の……アニメーターとかの待遇改善に繋がったら最高だけど、さて、それはどうなるかな?」
最後に
カエル「今回は聲の形と君の名は。について語ってみたけれど、どうだった?」
主「……すっごい疲れた」
カエル「……だよねぇ。これを読む人には関係ない話だけど、舞台裏を少しだけ明かすと、結構大変な記事だったからねぇ」
主「まず、普通に書き終えてアップしたら、中途ハンパな下書き状態だったわけだ。 『あれ? 書き上げたはずだぞ?』と思って調べたら、なんでかわからないけれど、保存されていなかったっていうね……」
カエル「そこからまた書き直しだからねぇ……」
主「だから1日休みました。さすがに気力が落ちました」
カエル「連続更新も1ヶ月に迫る勢いだったからねぇ。少し残念というか、なんというか……まあ、切り替えてさ。これからも書いていこうか」
主「よし!! 次はクリント・イーストウッドの最新作だ!! それに向けて頑張るぞ!!」
カエル「……切り替え早いな」
- 作者: 新海誠,コミックス・ウェーブ・フィルム,東宝,東京ウォーカー編集部
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川マガジンズ
- 発売日: 2016/08/26
- メディア: ムック
- この商品を含むブログ (3件) を見る
新海誠、その作品と人。 2016年 10 月号 [雑誌]: EYE SCREAM(アイスクリーム) 増刊
- 出版社/メーカー: スペースシャワーネットワーク
- 発売日: 2016/08/26
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログ (1件) を見る
新海誠美術作品集 空の記憶~The sky of the longing for memories~
- 作者: 新海誠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/04/24
- メディア: 単行本
- 購入: 17人 クリック: 348回
- この商品を含むブログ (43件) を見る