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物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『超高速!参勤交代 リターンズ』感想 前作の期待を裏切らず、今回も笑えます!

亀爺(以下亀)

「いよいよ『超高速!参勤交代』の続編が公開されたの」

 

ブログ主(以下主)

……こういう映画を見ると、すごく悔しくなるんだよね

 

亀「悔しい? そんなに悔しく思うシーンなんてあったかの?」

主「……多分さ、いろいろと過去の名作時代劇のオマージュがたくさん含まれているんだろうけれどさ、それが殆どわからないんだよね……だから、この映画ってすごく、こうなんというか、見た目ほどコミカルなだけじゃなくて、それなりに深いことをやっているような気がするんだけど、その知識がないからなぁ

亀「主は黒澤明などの映画監督が撮った有名時代劇は少しは見ておるが、シリーズものや60年代前後に大量に作られた時代劇を殆ど知らんからな」

 

主「こう、時代劇あるあるを逆手に取ったということは『元になった時代劇』が存在すると思うんだよね。例えば予告でもあった『7人VS1000人!?』っていうのは『七人の侍』があっての、そのシリアスタッチを基にしたコメディなわけでさ、そういうことがわかれば、もっと面白く解説できたのになぁ」

亀「とりあえず、感想を始めるかの」

 

 

 

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 1 全体の感想をネタバレなしで

 

亀「基本的には前作と同じ流れじゃが、今回はアクションも前作より増えたような気がするの」

主「2作目となると結構クオリティが落ちる傾向にあるけれど、今作はどっちの方が面白いって話にはならないんじゃないかな? 1作目が面白いと思えたら、2作目も十分面白いと思うよ。逆に、1作目がダメだった人は2作目もダメだろうね」

亀「前作のヒットを受けての続編であったが、そのテイストは殆ど変えることなく、派手な戦や外連味を増しておったの」

主「爆発も多かったしね。一部『特撮かよ!』って突っ込みたく部分もあるけれど、それもまた受け入れられる出来だったし」

 

亀「今作は前作を見ていなくても大丈夫じゃな

主「直接的なつながりもあるけれど、大事な部分はしっかりと回想として描いてくれるしね。それもそこまでしつこくないから『これくらいならOKかな?』って気分になるし、ちょうど良いバランスだよね」

 

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役者陣について

 

亀「役者も満点じゃったな。もともと心配するような若手も殆どおらず、ベテランばかりから心配するのも変な話じゃが……」

主「特に感心したのはさ、前作もそうだけど、ちゃんとフンドシ姿になるんだよね。画面のあちこちにフンドシ姿の男衆が出てくる。最近の時代劇だとあまり見なかったし、ベテラン俳優陣がこんな格好をすることに、気概を感じるよね

亀「最近はこういう作品もあまりなかったからの。こうすることにより『わかっているなぁ』という思いと共に、現代で見るとクスリとする格好であるから笑いもうまくとることができるの」

 

主「それから、脱ぐシーンが多いけれど、見苦しい体の人がいないんだよね。もっと肉があってもいいんじゃない? とかは思うけれどさ、当時の栄養状況を考えたらこれでも十分なのかな? って考えたり」

亀「体つくりをしっかりとしてきたのがわかるの。ここも役者根性じゃな」

主「体作っているのかね? あとは……途中、あの人が抜けるじゃん? あれってやっぱり、フンドシ姿がNGだったのかね?」

亀「どうじゃろうな。女性からしたら、一番フンドシ姿が見たかったじゃろうに……」

 

 

2 コメディという『殻』

 

亀「今作もまたコメディとして優れた作品となっていたの

主「先にもあげた通り、時代劇は殆ど門外漢なんだけどさ、それでも『あるある』って部分から笑いを作り出すという、いい手法だったよね。

 例えば圧倒的に強くて、1対多数という対決でもあんなに勝てるはずないじゃない? 相手が素人の農民ならわかるけれど、戦闘の専門集団の中でもすごく強い人たち相手にさ、田舎侍が勝つって相当よ。

 だけどそこを突っ込んだら負けだよね。演出として突き抜けているし」

 

亀「『四月は君の嘘』で語ったリアルな演出か、アニメ的な演出かというやつじゃな」

主「そうだね。四月の場合は漫画原作だから『アニメ的』って言葉を使ったけれど、馬鹿馬鹿しさとか、外連味のあるって言い換えてもいい。

 時代劇って結構リアル志向が求められる映画ジャンルだと思うわけよ。だけどそこをコメディにして、馬鹿馬鹿しさを追求したからこそ、突き抜けた面白味を獲得したと思うね

 

亀「それは媒体との相性もあるのではないかの? アニメの方が外連味がつけやすいとか……」

主「もちろん、それはあるけれど。絶対にオススメしたい時代劇で『るろうに剣心 追憶編』ってアニメがあるのね。アニメオタクである程度以上詳しい人物だったら『あ、あれね』ってわかるような作品でさ。

 最近実写もなかなか興行成績も評判も良かったるろ剣けれど、この作品はアニメなのにリアル路線で突っ切っているんだよね。あまり時代劇を見ない人間がこういうと信用ならないかもしれないけれど、2000年代屈指の時代劇だよ。逆にこのクラスの時代劇がたくさんあったら、世間は間違いなく時代劇ブームになっていると確信している。

 やっぱり、突き抜けた演出って大事なんだよ

 

コメディの毒

 

亀「主は前作において『映画製作の無茶振りを笑い飛ばした』といっておったが、今作も同じかの?」

主「もともとさ、笑いの取り方っていっぱいあると思うけれど、『常識から考えてありえない選択』をした時に笑いが発生すると思うのね。

 その例がコントで、ファミレスのコントがあったとして、そこに来る異常なお客さんとか、異常な店員がいる。その常識とのギャップが笑えるわけだと思うのよ」

亀「そうじゃろうな。全員が全員わけわからんことしても怖いだけじゃし」

 

主「この映画で語ったコメディだと、古い監督になるけれどチャップリンとかビリー・ワイルダーってコメディとして本当に笑えるけれど、かなり強い毒があるわけじゃない? あとは最近だと『帰ってきたヒトラー』とかさ。笑いって毒が相当に含まれているケースが多いんだよね。

 それは今作も同じで、実は今作で笑えるところは邦画界の常識とかを笑っているわけだよ

亀「特徴的なのは……戦闘中のおしゃべりとかの」

 

主「そうそう。すごくシリアスな場面で1分1秒を争う場面でも

 

『君に伝えたいことがある』

『……待って、あなた、なんであの時にそれを』

『あの時は……俺はどうかしていたんだ。これから伝えることが本心で……』

 

なんてグダグダやっているわけだよ。その間に爆発とか、ギリギリで間に合わなくなったらどうすんの!? って思うけれど、これが多くの邦画……まあ、邦画だけじゃないけれどさ、映画に組み込まれているわけ。

 それをあえて脚本に組み込み、バカバカしく演出をすることによって毒のある笑いになっているわけだ

 

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安いからこそ輝く面白さ

 

主「そう考えるとさ、この映画の『安っぽさ』ってのもいいよねぇ

亀「そんなに安いかの? 時代劇ということを考えると、セットや衣装に相当お金もかかっておるじゃろうし……」

主「他の映画に比べるとお金がかかっていると思うよ。自分が言いたいのは『演出の安さ』なんだよね。

 この作品ってすごく演出が安っぽいシーンがあってさ。一部のCGもやっぱりCGってすぐわかる出来で、騙すつもりがあまりないような気がする。それは予算や演出の問題だけではなくて、技術的な問題もあるかもしれないけれど、それを逆手にとったいい演出だったよね」

 

亀「これで本気で作り込まれると、逆に笑えんかもしれないからの」

主「本気で作り込んだコメディもそれはそれでいいけれどさ、シリアスでこの安っぽさだったら興ざめだよね

 

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3 時代劇はファンタジーに?

 

亀「この副題はなんじゃ?」

主「……なんというかさ、2016年の代表的な時代劇を見ていると、結構コメディが多いじゃない? 『真田丸』とか『殿、利息でござる!』とか、シリアスに刀や合戦でやりあうような映画はあまりない気がしていてね」

亀「……そう言われると、今年時代劇のシリアスな大傑作という話はまだ聞いていない気がするの」

 

主「もちろん知らないところではあるのかもしれないけれどさ。時代も現代と大きく変わってしまって、もう江戸時代の名残なんてほとんどないわけじゃない? 東京に江戸の面影もほとんどないし、京都もなんとか頑張って残しているけれど、時代の波には逆らえないところもあるし」

亀「池波正太郎も『高度経済成長以降、年々江戸情緒が一気になくなっていく。時代劇作家としては最後のいい時代に生まれたものだ』みたいなことを書いておったからの」

 

主「これだけ時代が離れてしまうと、江戸時代ってもう遠い過去の世界で、ある意味では『空想でしか辿り着けない世界』なのかもしれないよね。

 その意味では全くの空想の世界であるファンタジーとか、SFとかとあまり変わりないのかもしれない。普通に生きていて江戸時代を感じる時って、ほとんどないじゃない?

 現代で時代劇を描くのは本当に難しいことかもしれないね」

亀「共感性が生みにくいからの」

主「だから分かりやすい勧善懲悪とか、家族の涙みたいな話にいくのかも。そっちのドラマ性で見せたほうが、現代人には伝わりやすいし。落語と同じだよね、江戸情緒を感じる話よりも、人間の変わらない部分を残した作品のほうが残るってのはさ」

亀「黄金餅なんかは当時の風情もわかって好きじゃがなぁ」

 

 

最後に

 

亀「さて、今回はほぼネタバレなしで語ることができたの」

主「ネタバレするほどの内容もないし、その下地になった作品もわからんからなぁ。それがわかればネタバレガンガンして、評論とか解説をしたかったけれど、こういうとき自分の無知を思い知るよね

亀「……とか言いながらも、これだけ書ける自分ってすごくない? とか思っているんじゃろう?」

主「いやいやいや、そんなことないよ。書ける書けないって要は慣れだから。自分の感情や感想に旗を立てて、なぜそこが引っ掛かったのかとか、そこを考え始めるのが大事なわけでさ。

 だいたいね、頭がいいとか悪いとか言うけれど、自分に言わせてももらえばそんなことはどうでもよくてね、大事なのは……」

亀「……その話、長くなるなら先に記事を終わらせるぞ」

 

 

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