物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『海獣の子供』ネタバレ感想&考察 スタジオ4℃が描いた世界最先端の映像表現と、物語が示す本作の哲学的なメッセージとは?

 

今回は6月公開のアニメ映画ラッシュの中でもとりわけ評価の高い『海獣の子供』の記事になります!

 

 

 

 

試写会組の評判が異常にいいんだよな

 

 

 

カエルくん(以下カエル)

マスコミの方や評論家、アニメライターも含めて多くの方が絶賛しているよね。

 こういう映画の時はハズレがない印象でもあるけれど……」

 

「最近だと『若おかみは小学生』『この世界の片隅に』が試写会組に異常と言えるくらい大絶賛されていて、蓋を開けてみたら納得のクオリティだったな。

 もちろん、個人個人の合う合わないがあるだろうけれど、少なくとも変な作品ではないのだろう」

 

カエル「目の肥えた人たちが絶賛するということは、そういうことなんだろうねぇ。

 自ずと期待値は上がりますが、そのハードルを軽々と超えてきそうなことは予告編からも伝わってきます」

主「ちなみに、今回は迷った上で原作は未読で鑑賞します。

 原作に引っ張られることなく、この映画の……特に映像表現をしっかりと味わっていきます。

 では、記事のスタート!」

 

 

 

 

 

作品紹介・あらすじ

 

 『リトル・フォレスト』『魔女』などで知られる五十嵐大介の同名漫画をアニメ映画化した作品。制作は『マインド・ゲーム』『鉄コン筋クリート』などの類を見ない特徴的なアニメを製作することで知られるスタジオ4℃が担当する。

 監督はドラえもんシリーズに長く関わり続け『のび太の結婚前夜』などの監督を務めたのち『宇宙兄弟#0』などで活躍する渡辺歩が担当。キャラクターデザイン・総作画監督・演出には『かぐや姫の物語』などで多くの作品で作画監督を務めた小西賢一、音楽には宮崎駿作品でも多く担当してきた久石譲。

 キャストには芦田愛菜が主人公の琉花を演じるほか『リメンバーミー』の吹き替えにて話題を呼んだ石橋彩陽が謎の少年、海を演じる。その他、浦上晟周、森崎ウィン、稲垣吾郎、蒼井優などの人気芸能人が声を当てる。

 

 中学生の琉花は夏休み初日となり部活動でも目を見張る働きをしていたが、ラフプレーをしてしまい部活動禁止の処分を下されてしまう。家にも学校にも居場所がなく、父の勤める水族館へと足を運ぶと、そこにはジュゴンに育てられたという謎の少年、海と知り合う。

 海には同じジュゴンに育てられた空という兄がおり、3人で行動する日も多くなる。しかし台風の日を境に海と空の様子に少しずつ変化が見られていくことになり……

 

 


【6.7公開】 『海獣の子供』 予告1(『Children of the Sea』 Official trailer 1 )

 

 

 

 

 

感想

 

では、Twitterの短評からスタートです!

 

 

映像エネルギーに関しては間違いなく今年屈指の作品でしょう!

 

 

カエル「誰もが語るでしょうが、作画・演出・撮影・音楽などのアニメーションを構成する画面の技というか、そういったアニメらしさはものすごく高い作品だよね!

 もしかしたら、この作品を超えるものは2019年でも登場しないのではないか? と思うほどでした!

主「後々振り返ると、おそらく2019年は世界のアニメーション業界で大きなブレイクスルーがあった年になるのだろう。

 アメリカでは『スパイダーマン スパイダーバース』がピクサー風のCGアニメ全盛の現代において新しい波を起こし、日本では『プロメア』が全く新しいアニメを見せてくれた。また、リアル志向でも『響け! ユーフォニアム』などの京アニも存在感を発揮しているし、オタク向けアニメ映画でも『Fate』がとてつもないクオリティで日本でしかできないアニメを提供している。

 これらには2016年の通称3Kアニメ……『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』の人気があり、そこで盛り上がったアニメ熱が一気にここにきて発揮されているけれど……おそらく、この作品も2019年を代表する作品になるだろう」

 

カエル「多くの作品と公開時期がかぶってしまったけれど、2013年に制作を開始したという今作がこのタイミングで公開というのも、なんかの縁なのかなぁ……」

主「本作はものすごく観念的なお話でもあるので、万人向けではない。

 今作に関しては”考えるな、感じろ”という作品であるのはほぼ間違いないし、この作品について言葉で色々と語るのは無粋だと思う。まあ、それをやるのが自分の役割でもあるので、しっかりと言葉にさせてもらうのですが……

 だからうちはしていないけれど”この映画は〇〇点です!”というような評価はできない作品だと思っている

 

カエル「唯一無二の映画だもんね……」

主「自分はよく”完璧な映画”という評価で語るけれど、それは何らかの既存の価値観があってそこに当てはまめて100点満点中100点、というような評価だろう。

 だけれど、全く新規の表現が生まれたときにそういう評価はできない。

 そして本作はアニメ表現において全く未知の分野に足を踏み込もうとしている作品だけに……評価することが非常に難しい作品と言えるだろう

 

 

 

スタジオ4℃について

 

本作を製作した制作会社スタジオ4℃について語りましょうか

 

ここのスタジオの作風を知らないと面食らうかもしれないな

 

カエル「もともとは田中栄子とアニメーターの森本晃司が設立し、MVやテレビアニメも手がけながら2001年には『この世界の片隅に』を手がけることになる片渕須直が監督した『アリーテ姫』を制作します。

 2004年に湯浅政明『マインド・ゲーム』が世界に大きな衝撃を与え、その後も2006年に『鉄コン筋クリート』や、近年では2018年に『ムタフカズ』を制作しているね」

 

主「スタジオ4℃は非常に独特のアニメを制作するスタジオとしても有名だ。

 普通だったら売れそうな要素……例えば萌える女の子キャラクターとかさ、カッコイイ男の子、ロボットや爆発などの外連味たっぷりなアニメを制作すると思うじゃない。エンタメで興行の世界だしね。

 だけれど、このスタジオはそんなことは微塵も考えていないような表現が非常に多くて、極めて独特な作風だ。

 ただ原作の世界観を大事にするなど、アニメとして大切なことは一切外していない。その意味では最も個性的なスタジオの1つではあるけれど、アニメ制作スタジオとしては真っ当とも言える」

 

カエル「普段うちでもよく語るけれど『アニメ表現はもっと自由でいい』ということを実践するスタジオでもあるよね。

 マインドゲームとか初めて見た時独特すぎて、理解できなかったなぁ……『え、これが本当に世界で絶賛されたの?』って」

 

主「今ならばよく分かるよ、でも鑑賞当時は分からなかった。

 正直、このスタジオの作品は”考えるな、感じろ”が多すぎて理解することが難しい。言葉にすることもなかなかできないし、はっきりと言えば自分の好みに合っているかといえば微妙なところでもある。

 それはムタフカズも同じかなぁ……

 でも間違いなくアニメ表現の幅を大きくしているんだ。

 だからアニメ表現に興味がある人はスタジオ4℃作品はなるべく見ておいたほうがいいし、今作も同じことが言える作品になっているね

 

 

キャストについて

 

いつものように声優を務めたキャストについて語りましょうか

 

……これも評価が難しいんだよなぁ

 

カエル「今回はいわゆる本職の声優さん、アニメ声優がいないよね。主要キャラクターを始め、多くの芸能人声優が声を当てています」

主「上手いか下手かで言えば……多分、うまくはない。

 だけれどこれが本職のアニメ声優だと今作の味は生まれなかったことも事実だ。

 渡辺歩監督は『ボイスキャストの演技がキャラクター性の参考になった』という話をしていたけれど、それは伝わってきた。

 というのは……多分、この作品の声優がプロのアニメ声優だと、作ってきてしまうから全然違うものになってしまう可能性がある」

 

カエル「……作るのがダメなの?」

主「というかさ、主人公たちと同じような年頃の芦田愛菜などが声を当てるから意味があるんじゃないかなぁ。

 これらの演技が”リアルな演技”かというと、それは議論の余地があると思う。自分は黒沢ともよ、沢城みゆき、悠木碧などがやるような生っぽい演技が大好きだし、そっちの方がリアルだとは思う。

 だけれど、声を作り込まないからこそ、映像がより引き立つような気もしていて……芸能人声優が一概に悪いとは言えない作品になったのではないだろうか

 

カエル「これで一部キャストで本職の声優さんが出てくると、演技の差に愕然としてしまうところがあるけれど、今作は全員芸能人声優だから誰かが浮くということはなかったかもね」

主「あの喋り方はあれでクセになるものがあるんじゃないかな?

 でも、声から役者の顔はほとんど浮かばなかった。稲垣吾郎なんてすぐに浮かびそうなものだけれど、エンドロールを見るまで一切気がつかなかった。

 ただ、芸人の場合はなんか芸人ってわかるんだよなぁ……独特のクセがあるからかな?

 決してほめ称えはしないけれど……あ、田中泯は独特の声質が好きだから褒めるけれど、みんな作品と合っていたし、それがあの雰囲気を作りだす一因となっていたんじゃないかな?

 

 

 

 

作品解説の前に

 

今作を読み解くうえで強く影響を与えたと思うスタッフたちについて

 

またスタッフ語りになりますが、少しお付き合いください

 

今作では特に3人のスタッフの力が作品に多大な影響を与えていると感じた

 

カエル「ちなみに先ほどから語っているように今作のプロデューサーの田中栄子はジブリ作品のラインプロデューサーを手がけたこともあります。

 そして今作の作画監督を務めた小西賢一ですが『かぐや姫の物語』などでも作画監督を務めるほか、今敏監督の『東京ゴットファーザーズ』などでも作画監督、その前には『海がきこえる』『耳をすませば』『もののけ姫』などでも原画を担当しています。

 なお、スタジオジブリの研修第1期生ということなので、ジブリを支え続けたアニメーターの1人でもあります」

 

主「今作はもちろん渡辺歩監督の手腕が最大限発揮されており評価されるべきたけれど、同様に語らなければいけないのは総作画監督などを務めた小西賢一、美術監督を務めた木村真二、音楽の久石譲の影響がとてつもなく大きいことがうかがえる。

 もちろん、それ以外の……CGI監督の秋本賢一郎、あとは6月注目の海をテーマとしてアニメ映画『きみと、波にのれたら』でも音響演出を務める笠松広司などをはじめとした多くのスタッフの成果である。それはあのエンドクレジットの膨大なアニメーターの数でもわかる。

 でもここでとりわけ語るのは、上記の小西、木村、久石の3人だね」

 

カエル「まず木村真二は今作以外では『鉄コン筋クリート』『ムタフカズ』のような、ある種の雑然とした街並みの美術を描いています。テレビアニメだと『血界戦線』などが多くの人に伝わりやすいかな?」

主「今作はあくまでも上記の作品で描かれていたような都会ではないものの、その雑然としたリアルな空気感というのが画面いっぱいに広がっていた。

 特に海の中のシーンなどは1枚の絵画として美しく、画面設計のすべてが安心感を与えてくれるようだった。

 どこを切り取ってもうっとりとしてしまうようなシーンに溢れていたよ」

 

背景だけでもアート作品として高い完成度を誇っています

 

あの名監督たちの影響も

 

ここで語る名監督とは、当然のことながらスタジオジブリ、そして宮崎駿だよね?

 

音楽が久石譲というだけで宮崎駿を連想しがちだけれどね

 

主「この映画を見て『ジブリっぽい』と思う人は、おそらく音楽が久石譲だからだろう。絵柄やキャラクターデザインに関してはいわゆるジブリっぽさはなく、むしろそこからは大きく離れていると感じるだろう。

 ある種ファンタジーアニメでジブリの影響から逃れるのはかなり難しいけれど、本作はそのバランスよく描き上げた。

 そして同時に……他の監督の影響も見受けられる」

 

カエル「やっぱり、宮崎駿と共にジブリを象徴する高畑勲さんだよね

主「本作の特徴的で観念的なアニメーション技法というのは、かぐや姫などの映像とは方向性が全然違うけれど、新しいアニメーションを作るという意味では高畑イズムもあったのではないか? という思いがある。

 あとは……若干説教くさいところとか。まあ、今作はそこまでではあるけれど。

 それに……これは原作からそうなんだろうけれど、結果的には富野由悠季のような観念的であり、最後はオカルトで人生などを語りきってしまうようなところも感じられた。

 そんな風に、多くの名監督たちのエッセンスが結果的に混ざったような印象を受けたかな

 

カエル「その中でも宮崎駿リスペクトはかなり強いよね」

主「もしかしたら2014年ごろからスタートしたという制作時期からしてもジブリの後に続くもの、という意図もあったかもしれない。

 自分はジブリ、特に宮崎駿作品というのは日本国民にかかった呪いだと考えていて、オリジナルのファンタジーアニメ映画=ジブリという意識が根強くあるのではないか? という思いがある。

 その呪いからうまく距離感をとりつつも、表現としてオリジナリティと模倣を感じられる、いいバランスだったのではないだろうか

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

作品解説

 

今作が描いたものとは?〜今作を読み解くうえで参考にしたい2つの作品〜

 

では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!

 

結論から言えば、今作が描いたものは同時期の漫画などで描かれていたものでもある

 

カエル「今回は最初に結論から述べるんだね」

主「簡単に言えば2つ。

 

  • マクロな見方とミクロな見方を=で結ぶ
  • 少女の成長を不可思議な体験で描く

 

 これがこの映画が描いたことだろう」

 

カエル「えっと……まずはマクロな見方とってやつから考えていこうか」

主「今作を見ている時に連想したのはこの2作品だ。

 『プラネテス』と、そして『蟲師』である」

 

 

 

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カエル「プラネテスは以前にも語りましたが、テレビアニメ化もされている漫画作品です。宇宙開発の過程で出た宇宙のゴミ=スペースデブリを拾う主人公の成長と人生の葛藤を描いた作品です。

 蟲師もアニメ化・実写映画化もされており、蟲と呼ばれる妖精・お化け・精霊のような謎の存在との共生や対立を描きながら、人生について描いた作品でもあります。

 連載時期はちょっとだけずれるのかな?」

 

主「これらの作品でつながるものは”ミクロな視線とマクロな視線”だろう。

 どういうことかといえば、人間や自分というものを見つめ直した時に、そのミクロな視線が問題となる。

 つまり『人生の意味、自らの存在理由』などだろう。

 そこに生命の起源や宇宙、または海といったような観念的とも言えるマクロな視点が入り混じり、その2つが混じり合う、という物語だ。

 本作の場合はそこに”女の子の成長”を交えて、生命の起源やその終焉などを描きながらも壮大に語りきった作品と言えるだろう

 

 

 

今作と比較対象になる『ピノキオ』

 

え? ここでディズニーアニメのピノキオの話をするの?

 

今でもピノキオは通用するどころか、最高峰の作品の1つでもあるんだ

 

カエル「え、でもピノキオ自体は1940年に作られた作品だよね?」

主「だけれど、現代でも通用するんだよ。

 むしろ、現代にも続くディズニー、そしてアニメーションの原型を作った人々の熱意と執念を感じるし、参考にするものがない(技術を生み出した者)からこその……ある種のオーパーツのような作品となっている。

 今作でもその影響や参考にしたとも思われるシーンはあって、特に予告編でも使われている鯨のシーンはおそらくピノキオへの挑戦だろう

 

カエル「ピノキオの鯨の作画って何がすごいの?」

主「やっぱり波などの海の表現かなぁ……単純にうまい、綺麗というだけでなく、迫力もあり自然の恐ろしさ、畏れというものも感じさせる。

 しかも現代のようにデジタル作画ではないんだよ。今ではCGやデジタルで修正できるかもしれないけれど、そのようにできない限られた状況の中でもこのような作品を生み出してしまった恐ろしさがある。

 そして……ピノキオもそうだけれど”鯨”というモチーフが今作を語る上では重要なのではないだろうか

 

 

 

スタジオ4℃が描く鯨

 

鯨というとスタジオ4℃では『マインドゲーム』が後半は鯨の中のお話だよね

 

『白鯨』などもそうだけれど、多くの作品で使われてきたモチーフだ

 

カエル「それこそ『白鯨』などのような名作文学でもよく登場するモチーフだよね。

 多くが強大な敵、というものであり、人間が自由に行動できない海の中の王者という印象もあるかな

主「『白鯨』のモビー・ディックは神や悪魔、自然という大いなるものの象徴として描かれているとされている。またアメリカを代表する文学作品『老人と海』でも男が生涯をかけて戦うべき”人生”のメタファーでもあるとされている。

 ピノキオの鯨の描き方もこちらに近く、どちらかといえば恐怖の存在として描いている

 

カエル「一方で今作はそこまで恐怖心はなかったかなぁ……」

主「マインドゲームに話を戻すけれど、あの作品では鯨の中というのは『愛と生、死や人生を見つめ返す場所』という意味合いがあるされており、SEXをあそこまで官能的に描いたアニメは他にないとされている。

 今作でもその意味合いは同じで、鯨というのは畏怖の象徴であるものの、それは恐怖ではない。

 畏れや強大なもの、それこそ自然などと同じようなメタファーとなっている

 

カエル「ふむふむ……」

主「今作で空と口移しで隕石を与えるシーンがあるけれど、あれは子供を宿す、受精のモチーフでもある。

 そして鯨の中で起きる出来事は明らかに精子と卵子や細胞分裂を意識しており、輪廻転生と人間の成長を見つめ返す物語にもなっているんだ

 

 

 

”祭り”が示す意味合い

 

じゃあ、あの祭りって一体何だったの?

 

その言葉の通り”祝祭”だよ

 

主「特に日本では祭りは豊穣を祈るものとされていた。そして……まあ、これはどこでもってわけではないけれど、祭りの場では命の誕生を喜ぶなどという意味合いもあったらしい。

 かなり言葉は濁しているけれど、かつての日本は性的に相当奔放だったので、まあそういう行為も多々あったわけですよ」

カエル「ハァ……」

 

主「この映画の中では死が描かれている……それは深海魚もそうだし、空や海もそうだ。だけれど、その後にとても大事なことが描かれており、その生命の誕生こそが”祝祭”ということもできる。

 そのお話をさらに大きくして、宇宙の誕生や生命の誕生、そして少女の成長も合わせて描いたというのが、この作品なんだよ

 

 

うまく使われている対比表現について

 

ハァ……わかるようなわからないような

 

もっと単純に”少女が自分を見つめ直す物語”とすることもできる

 

主「最初に自分のモヤモヤとした気持ちをうまく表現できなくて怪我をさせてしまい、謝ることもできないシーンがあったけれど、あの気持ちは思春期ならば……というか、大人になってもよくわかるよ。自分が悪いとは思えない、だけれどそれに対して罪悪感がゼロというわけでもない、でも認めたくないという複雑な心境……その結果があの行動だろう。

 その後に走り出したシーンもあるけれど、それがものすごく不格好で下っていくシーンだった。

 だけれど、ラストではそこをうまく走れているんだよね。

 自分の中で気持ちの整理がついて、子供ではなく、自分の気持ちをしっかりと理解して他者と向き合える存在に成長したということを示す描写である

 

カエル「そう考えるとこの映画って多くのシーンで意味がありそうに描かれているよね。

 家の中が真っ暗でビールの空き缶がたくさんあって玄関が狭そうだったけれど、それがお父さんによって取り除かれて、わだかまりが消えるとか……」

 

主「この映画って全体的に海の映画なんだよ。

 序盤ですごくいいなぁ……と思ったのが凪の海とヨットの映像でね、ロングカットであるんだけれど、その穏やかさがとても美しい。

 だけれど同時に台風などの恐ろしい海の様相も描いている。

 これって人生も同じだと思うんだよね。

 穏やかな凪の時もあれば、激しい嵐の時もある。でもその両方を知り、対処法を知れば人生でもうまくやっていける……というのかな。

 他にも水族館の水槽のガラスを使った”海の世界と外の世界”の対比など、今作は対比表現が多く見られたから、映像で語るけれど、これでもちょっとわかりやすい物語になったと思うよ

 

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです

 

  • 映像表現では今年ベスト級間違いなしの意欲作!
  • スタジオ4℃やスタッフの作風が最大限発揮されている!
  • 考える余地が多くいろいろな受け取り方ができる作品

 

評価は割れるだろうけれど、世界で間違いなく評価されるでしょう!

 

カエル「アヌシー国際映画祭でも今年から新設されたContrechamp部門にノミネートされており、こちらも受賞の期待がかかります」

主「まだどんな賞なのかはよくわかっていないんだけれど、多分海外の方が受けると思う。

 今作は日本の”アニメ”よりは海外の”アニメーション”の文脈で語る方が理解されやすいだろう」

 

カエル「それだけとてつもない作品なのは、見るだけでわかるもんね」

主「だからこそヒットして欲しいけれど……この作風では難しいのかなぁ。

 米津効果にも期待大です!」

 

 

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