今回は大人向けルパン三世シリーズの最新作である『峰不二子の嘘』のレビュー記事になります!
ほぼ年1くらいのペースになるのかね
カエルくん(以下カエル)
「『次元大介の墓標』『血煙の石川五エ門』もハードボイルドで原作準拠のルパン三世が見れてよかったよねぇ。
特に『血煙の〜』に関してはゴア表現もあったけれど、それが生々しくて眼を覆いたくなるようなシーンでもあって、近年のファミリー層向けのルパン三世のイメージが強いと面食らうような作品になっていたね」
主
「最初にルパンシリーズという作品について軽く語ってしまうけれど、宮崎駿の影響が強いシリーズでもある。それはハードボイルドな第1シリーズもそうだし、今のルパンの人気を確固たるものとした第2シリーズ、そして『カリオストロの城』などもある。
もちろん自分のルパン入門もファミリー層向けルパンだし、そういう人が9割だろう。
だけれどそれは原作を大きく改変したものであり、コアな……特に原作のルパン三世を愛する人には苦々しい気持ちだってあった」
カエル「それこそ原作と大きく改変されて人気がでたシリーズ作品として真っ先に連想する部分もあるよねぇ」
主「それはモンキーパンチ先生の懐の深さで許されてきたけれど、このような作品も生まれている一方で、ファミリー向けのルパンも継続する。
良いバランスが取れているシリーズだよね。
声優交代もうまく行ったし、今後何十年も愛されるシリーズになる土台ができている。
その中で本作がどのような”新しくも懐かしいルパン三世像”を生み出すことができ流のか注目していきたい」
カエル「ファミリー向けルパンのイメージからすると新しいけれど、むしろ原作を知るとこちらの方が懐かしいとなる珍しいシリーズだね。
それでは、感想記事のスタートです!」
宮野真守が敵キャラに!『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』予告編
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#ルパン三世 #峰不二子の嘘
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年5月31日
大人向けルパンとして短いながらも魅了される本シリーズ屈指の神回!
表現力モンスター沢城みゆきの妖艶な快演もあり背筋がゾクゾクするほどの不二子の妖しさが伝わるし彼女の"嘘"とはなんだったのか考察できる
盗み、銃、刀のプロと比べても1番怖いのはやっぱり女だわ… pic.twitter.com/FeAWGchK8P
このシリーズの中でも屈指の神回! これは絶対にオススメしたい作品です!
カエル「もちろん30分枠のテレビアニメを2話放送したような形式だから他の映画とは単純に比べることができませんが、今年のアニメ映画のみならず、一般の映画と比べてもかなりテンションが上がる作品でした!」
主「正直、同日公開で大好きなゴジラのハリウッド版続編が素晴らしすぎて『この衝撃を消したくないから見るのを迷う!』という思いもどこかにあったけれど、そんな不安も消し飛んでいくほどの作品だった。
ぶっちゃけ、このまま眠って二度と起き上がらなくても満足して成仏しそうなほど、満足感がある日だったなぁ」
カエル「……まあ、こうやって生きて感想記事を書いているんですけれどね。
その大きな見所はどこになるの?」
主「峰不二子というキャラクターが長年ファムファタル像の代表的存在であることの理由を証明するような作品である。
近年は女性に対して性的な視線を向けるのはやめようという動きもあるけれど、それと真逆を行くような、いわば”古いタイプ”の女性像でもある。原作が何十年も前だし、女の色香でのし上がるというのは、現代ではあまり描きにくいタイプだろう。
だけれど、彼女の魅力が……そしてそれは女性でないと出せないものとなっており、妖艶な色気が画面から溢れんばかりの映画であった。
そして何よりも大事なのは不二子がカッコいいんです!
ただの男に従属する存在として女を売るのではなく、男を出し抜き自分らしく生きるために最大の武器である色香と卓越した知能を最大限活かす姿に震えるね」
カエル「どうしてもアニメの萌え表現って……言葉は悪いけれど男を知らないような純粋な少女が可愛らしく媚を売るようなものを連想するかもしれないけれど、今作はその真逆を行くようなものだもんね」
主「先にあげた”自分らしく生きる”というのはこのシリーズ肝になるところかもしれないな。
ガンマン、侍として(男として)自分らしく生きることを描いた前2作に対して、本作は”女として自分らしく生きる”ということをテーマにしており……この姿には多くの女性が共感や憧れを抱くのではないだろうか?」
峰不二子を描く難しさ
今回は峰不二子が主役だけれど、その難しさがあるの?
単純にアクションという大きな売りがある存在ではないからね
カエル「確かにガンマンや侍ならばド派手なアクションが売りになるけれど、不二子の場合は人間離れした技術があるわけではないからね」
主「本作はルパン一味に襲いかかる暗殺者たちを次々と撃退するという内容であり、特に『血煙の〜』はアクションとゴア表現も含めた大人の世界がしっかりと描かれていた。
それでは不二子はどのように描いていけばいいのか?
不二子はサブキャラクターだからこそ輝く存在であり、彼女をメインに添えることは少し難しい部分もある。
その答えを本作は最大限に示している」
カエル「それが”女という武器”の活用とそれが使えない子供が弱点という視点なんだね」
主「今作はアクション描写もあり、サブミッションも活用して戦う姿がとても美しく見応えがある。
特に美しい女性が体術を持って戦うというのは美学すら感じる部分があり、これらはゴア表現に満ちた前作とはまた違う魅力を示していた。
しっかりと差別化を果たしながらも……画面から漂う”女の色香”というというものにクラクラするのもであったし、それが銃や刀に比べても劣らない……むしろより怖い武器であることが描かれている」
カエル「銃や刀のような暴力的なものではないからこそ、絡め取られている怖さがあるというか、よく言われるけれど『男は永遠に女に勝てない』という言葉の意味もわかるよねぇ。
あんな色気の女を前にして裏の顔を知っているとはいえ、平常心でいられる次元がすごいなぁ」
主「だけれどただ色っぽいだけれではなく、その奥に何を考えているのかわからない神秘の謎がある。
『女は秘密で美しくなる』なんて自分が言ったら笑い話だけれど……本作の中にある”峰不二子の嘘”というものが一体どんなものなのか、そこを読み解く楽しみもあるし、その深さこそが女性の魅力として輝いているな」
沢城みゆきの表現力に圧倒される
今更語るまでもないですが、今作は沢城みゆきの演技が素晴らしいです!
彼女の演技があったからこそ、ここまでの作品になったのは間違いない
カエル「現代屈指の実力を誇る女性声優であり、妖艶な演技から少年役など様々な演技を披露されていますが、今作では彼女の魅力が120パーセント発揮されています!」
主「もちろん代表作多数であり、もはや語るまでもない声優の歴史に残る大女優となる存在なのは誰もが疑わないだろうけれど、その表現力の底知れなさに恐れ入った。
表現力モンスターという言葉すら生ぬるい、彼女は表現力怪獣だよ!」
カエル「……え〜、ゴジラで熱狂した直後なので暖かい目で見てください」
主「今作では複数の複雑な演技をしている。
子供を騙す詐欺師じみた女の顔、子供に情が移った母性の感じる顔のせめぎあいもある。そして怒りをぶつけたり、あるいは彼女が目的を果たそうとする場面での葛藤すらも感じさせる。
それだけじゃない、不二子らしい淫靡な雰囲気すらも漂わせる芝居に、その裏に潜む毒のある声……ここだけでもゾクゾクしてくる」
カエル「なんていうか……沢城みゆきの名刺がわりとなる代表作が生まれたのではないか? という思いがあるね」
主「もちろん本作は映像が素晴らしいし、過去作でも不二子のセーター姿……俗称で童貞を殺す服なんて言われているけれど、その妖艶な色気は発揮されていた。その映像の、アニメーターたちの演技に声の演技が加わることによって、かつてないアニメ界屈指のファムファタルが誕生した。
上半期ベストヒロイン候補の1人です。
これには参った……映画作品としてカウントするべきか迷うけれど、他の多くの女優陣にも劣らないどころか、格の違いすらも見せつけた作品だったよ」
以下ネタバレあり
作品考察
部屋の広さと心情表現
では、ここからはネタバレ込みで語っていきましょう!
映像で気になったのは画角やアングルについてかな
カエル「画角やアングルというと、カメラを置く角度などのこと?」
主「本作って冒頭からかなり攻めていた印象を受けた。というのは、部屋の写し方が少し独特だったんだよね。
言葉では説明しずらいけれど……斜めというか、真正面から撮っていなかった。
これが面白いなぁと思って、今回はその画面の角度とかに注目していたら、ある面白い演出が見受けられた。
それが”部屋の広さ”なんだ」
カエル「……部屋の広さ?」
主「今作は人物の距離感や心情の演出で部屋の広さが多く使われていると感じた。
例えばジーン少年が一人でホテルの部屋に取り残されるシーンが顕著だけれど、豪奢な部屋の中でだだっ広い中で一人でいる。少年が大きな部屋の中でいるだけで空間が非常に目立つけれど、これは孤独感の演出がとても良くできていると感じた。
またそれと対になるのが敵であるビンカムが閉じ込められている部屋だ。彼は狭い部屋に閉じ込めらており、殺風景な中で一人でいるけれど、これは彼の状況そのものを示していると感じられる」
カエル「豪華な部屋は”お金はあるけれど孤独の少年”であり、ビンカムの部屋は”何もまたない少年のような男”という対比にも受け取れられるって話だね」
主「一方でルパン達はボロボロの車に乗っている。
後編の中盤くらいかな、ルパンと次元がタバコを分け合うシーンがあるけれど、ここが本当に素晴らしいんだよ!
というのは、狭い車内だけれど信頼できる相棒との2人でいる。
そしてタバコを分け合うことで友情を演出しているようにも思えて、ある種の少年ぽさもあった。
今作の男達の対比として、この”空間と人物の見せ方”ということが発揮されていたのではないだろうか?」
峰不二子の”嘘”とは何か?
峰不二子の”嘘”ってなんだったんだろうね?
……実はここを語ることにちょっとだけためらいもあるんだよね
カエル「ためらい?」
主「自分の中では以下の2つの点において悩むポイントがある」
- 峰不二子というキャラクター性の問題
- 女性の秘密を暴くことの問題
カエル「まず、不二子のキャラクター性の問題から行こうか」
主「自分の考察というのは……不二子は本当に金を持っていたのだろうか? というものだ。
おそらく、不二子というキャラクター性からすると金は持ち出している。
これはほぼ確定的とすら思えるのだけれど……今作では最大の武器である”女の色香”を使うことができない相手がいた。そしてそれは母性という、ある種最大の弱点をつくことでもあった」
カエル「終盤は明らかに情が移っているようにも見えたもんね……それがどこまで不二子の罠なのかが読めないのが面白いけれど」
主「もちろん、カバンの中にお金を詰め込んでいるからそのお金で手術をしたとも考えられる。捉え方はいくらでもあるけれど……どこまで本当でどこまで嘘なのかがまるで見えない。それが本作の魅力でもあり、好きなポイントでもある」
カエル「そしてもう1つのポイントは?」
主「単純に”秘密を暴くことになんらかの意味があるのか?”って話でさ。
やっぱり不二子ってその底しれなさ、嘘に塗れた人生と物言いが最大の魅力のキャラクターだと思うんだよね。
何が嘘で何が本当か、一切感じさせないように今作は作られているし、明らかにそこは隠している。だからこそこれだけ魅力的な作品となった。
だから真実と嘘は不二子のみが知る……これでいいのではないかな?」
まとめ
それでは、この記事のまとめになります!
- ルパンシリーズ、そして峰不二子の魅力が詰まった傑作!
- 沢城みゆきの妖艶な演技に惹かれてしまい虜になる!
- 空間を用いた演出やアクションパート、色気のあるシーンに惚れ惚れ❤️
- 峰不二子の”嘘”とは何か……それは暴く意味がない
続編にも注目した作品です!
カエル「いよいよルパンシリーズも次は銭形警部の順番になると思いますが……コミカルな刑事さんとなってしまっている銭形警部の本当の魅力が発揮される作品になるのではないでしょうか?」
主「実は1番ハードボイルドな存在が銭形のとっつぁんだからな。
あと今回でラスボスがなんとなく見えてきた……いや、前々から言われてきたけれど、やっぱりルパンの宿敵とも言える〇〇ーだったりするのかな?」
カエル「そのあたりも含めて楽しみだよね!
このペースだと次も1年以上は待ちそうだけれど、このクオリティならじっくりと待ちましょう!」
モンキーパンチ先生のご冥福をお祈りします