それでは、草なぎ剛が主演を務めるアニメ作品の感想です
これはなかなか……語りづらいんだよねぇ
カエルくん(以下カエル)
「結局4日間くらいかかったもんね」
主
「まあ、詳しくはこれから語るけれど、そもそもムタフカズってどんな意味なの? って思いもあるし」
カエル「マザーファッカーを意味する造語らしいけれど、タイトルもちょっと覚えにくいかなぁ」
主「まあ、そんな与太話は置いておいて、記事を始めるとしましょうか」
感想
ではTwitterでの短評からスタートです!
#ムタフカズ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年10月15日
これぞスタジオ4℃!
ノリノリで汚らしいスラム街を描き、キャラクターデザインもシンプルながら面白い!
ただし脚本は理解が難しいが、これもまた一つの味か
草彅剛の演技は一部シーン(独白モノローグ)はいいが違和感があるのは惜しいなぁ pic.twitter.com/eJTALMssHt
いかにもスタジオ4℃らしい作品だよね
カエル「やっぱりアニメとしての映像などのクオリティは非常に高いし、キャラクターデザインも含めて、すごく面白いよね。
なんていうか、アニメの”動きの魅力”に満ちている作品だし」
主「ただし、それも万人向けかと言われると少し首をかしげるかな。
面白いけれど、それが多くの人に響く作品ではない。かなり特徴があるからこそ、響く人には今年最高級の傑作! と思われるかもしれないし、中にはなんだか意味がわからないで終わってしまったなぁ……となる可能性もある」
カエル「賛否がはっきりと分かれるタイプの作品なんだね」
主「それはそれで悪くないし、作品の魅力には大きくつながっていた。
自分は本作はスタジオ4℃が制作した作品として見に行った部分もあったから、納得したし楽しんだ部分もあったけれど、でも何も知らない人が観た時にどう思うかは……ちょっとわからないかな」
カエル「結構独特なお話だしね」
主「あんまりベラベラとセリフなどで説明することがないので、途中の展開などは疑問符が浮かんでしまうシーンもあったかな。
それと結構バイオレンスなシーンも多いので、暴力描写が苦手な人には受け入れらづらい作品かもしれません」
カエル「良くも悪くも人を選ぶ作品です」
スタジオ4℃の作品について
今回制作を務めたスタジオ4℃について、少し語りましょうか
映画の代表作としてあげると以下の作品が思い浮かぶかな
- アリーテ姫
- マインドゲーム
- 鉄コン筋クリート
- ハーモニー
カエル「特に先に挙げた3作品は2000年代の作品ですが、世界的に高く評価されており、日本国内の知名度以上に日本アニメ界を語る上では欠かせない作品たちばかりになっています」
主「フランスの漫画文化である”バンドシネマ”の作品である”MUTAFUKAZ”を原作としていることからも、日本のアニメ業界とは少し距離があるというか、全く違うことをしていることがうかがえる。
特に『マインドゲーム』や『鉄コン筋クリート』が世界に与えた衝撃は非常に大きいと言われている」
カエル「それは今作からも伝わってくるよね。日本のアニメの良さも取り入れつつ、だけれどよくある日本のアニメのようにはなっていないし……」
主「これだけの作家性を強く感じさせてくれる作品になっているのは素直に賞賛すべきだし、そのようなスタジオであることをもっとアピールしてもいいでしょう。
あんまり日本での売れ線ではないし、今作も興行的には苦しい思いもするかもしれないけれど、でも世界では日本のよくあるアニメ作品よりも受け入れられる要素が多い作品といえるだろうね」
声優について
今作は草なぎ剛をはじめとした、多くの芸能人が声優を勤めています
悪くはないと思いつつも……
カエル「まずは主人公を演じた草なぎ剛はどうだった?」
主「う〜ん……残念ながら、今作ではノイズになってしまった面が多かったかもしれない。
もともと草なぎ剛って演技が上手いと言われているけれど、役を選ぶタイプだと思うんだよね。朴訥とした青年の役はいいけれど、今作のような暴れん坊な面も持つ若者は向いているとは思えない。
本作もモノローグで色々語る分には合っているな、と思いつつも、会話になると途端に棒演技に聞こえてしまったのは残念だったね」
カエル「結構手厳しい意見だね……」
主「柄本時生、満島真之介は悪くないと思う。
今作は本職の声優が少ないというのもあるだろうけれど、役にも合っていたし、自分はノイズに感じなかった。本職の声優である上坂すみれも、そこまで出番が多いわけではないし。
それと……やっぱり、プロレスラーを演じた格闘家たちはノイズになってしまったなぁ」
カエル「たまにスポーツ選手や格闘家が吹き替えなどに挑戦することがあるけれど、正直あんまりいい印象はないかなぁ。もちろん、人によるところはあるんだろうけれど……」
主「桜庭和志や所英男にどこまで演技力を求めるのか? というのもあるだろうけれどね……
まあ、出番が多いわけではないからいいっちゃいいんだけれど。
その点でいうと、スタジオ4℃らしい声優陣の起用であるとは思うけれど、それが見事に合致していたか? というと、それはまた別の話。
本職の声優を使わないという判断はわかるけれど、せっかくの作品世界観のノイズになってしまったね」
以下ネタバレあり
作品考察
脚本について
では、ここからはネタバレありになります!
まずはストーリーについて語っていこうか
カエル「基本的な物語自体は非常に単純なものだよね。謎の組織に追われるから逃げ回るうちに、内にひめた力がはっきして……というもので、他の作品でも見られる形かな」
主「この手の作品で難しいのは
- なぜ追われているのか
- 何に追われているの
という基本的な状況を示すことができないことだ。つまり、ただただ逃げ回ることになってしまい、物語の終着点、目的地があまりはっきりしないことが多い。
これは良し悪しでもあるけれど、本作もそこは同じかな」
カエル「物語自体は単純だけれど、人間関係は結構複雑だもんね……地元のギャング団なんかも絡んでくるし、結局あのプロレスラーたちはなんだったんだろう? って疑問も残るかなぁ」
主「多分、設定はきっちりとあると思う。プロレスラーの名前を言っていたから、もともと知り合いだったんだとは思うけれどさ……それが理解できるかというと、ちょっと不親切な設計でもある。
でも、そこを親切設計にしたらより魅力的になりますか? と問われると、そんなことはない。
先に挙げた過去のスタジオ4℃の作品だって、そこまで脚本的に優れているとは思わないけれど、でも圧倒的な映像のセンスで物語を魅了している。
映像を見せることが大事なわけだから、それでいいんじゃないですかね?」
バイオレンスな描写について
今作は結構目を背けたくなるようなバイオレンスな描写も多いよね
その汚さがいい味わいなんじゃないの?
カエル「ゴキブリを武器にしたり、あるいはネズミを踏み潰したり、人を銃で撃つシーンもたくさん出てきて、目を覆いたくなるようなシーンが多かったかな。もちろん、アニメとしてデフォルメされているから、実写の作品ほどおどろおどろしさはなかったけれど……」
主「本作のタイトルである『ムタフカズ』はマザーファッカーを意味する造語らしいけれど、そのタイトルが示すように綺麗な物語ではない。出てくるのはスラム街の住人ばかりだし、いわばゴミだめの中の人物だ。
ここを綺麗な物語にしてしまうと、本作の味が大きく損なわれることになるだろうね」
カエル「う〜ん……今回は、なんか語ることがあんまりないかなぁ」
主「悪い作品でもないし、力もあると思う。
スタジオ4℃の仕事で活躍している西見監督の初長編監督しての味もある程度はしっかりと出ていたし、何よりもそのスタジオらしさが出ている。
だけれど、やっぱり全体的にはまだまだ粗さがあるかな……1人1人のキャラクター性もしっかりとしているし、魅力もあるけれど、あと1つ何かが欲しい。
それはバイオレンスなどではなくて……なんだろうね、これは本当に難しい問題だと思う」
カエル「悪くないんだけれど、引き込まれないというか、鑑賞中にちょっと壁を感じてしまうというか……」
主「3幕構成になっている……と思うけれど、それもうまく機能したとは言えないんだよねぇ。キャラクターも一部が生きていない気もした。
でもさ、そこを改善したらいい作品になるというものでもなくて、これでないと楽しめない味わいもあるから……いや、本当に難しいなぁ……」
まとめ
では短いですがこの記事のまとめです
- スタジオ4℃らしさに溢れたアニメーション!
- 声優陣は少し思うところも……
- 悪くはないが、あと一味欲しい! でもそのあと一味が何かはわからない……
良くも悪くも独特な作品ですよ
カエル「この作品を語る際に『AKIRA』をあげる人はやっぱり多いけれど、90年代らしさがあるってことなのかな?」
主「スラム描写などがそう見えるのかもしれないけれど、自分はそこまでAKIRA要素は感じなかった……というか、そこまでAKIRAに思い入れもないし。
キャラクター設定や動きなどに面白さがあるから、アニメとしては間違いなく見所がるんだけれどね。
ここまで初見時に掴みどころが見つからない思いがしたのは……それこそ『マインドゲーム』以来かも」
カエル「もしかしたら5年後とかに高い評価を受ける作品かもね」