今回は『ゴブリンスレイヤー』の記事となりますが……
ファンの方は読まない方がいいと思います
カエルくん(以下カエル)
「あ、やっぱりこの流れになるのね」
主
「先に何度も言っておきます。
ゴブスレファンの方は読まない方がいいと思います。
『ファン向けアニメに何文句言っているのwww』という反応が来ることを理解していますが、自分がこの手の作品の何が苦手なのか、ということをつらつらと語るだけの記事となっています」
カエル「……色々な意見もあるとは思いますが、あくまでも”こういった作品が苦手な人間の意見”として受け止めてください」
主「というわけで、記事を始めます!」
『ゴブリンスレイヤー -GOBLIN’S CROWN-』本予告
感想
では、まずはTwitterの短評からスタートです
今の自分が見るべきじゃなかったなぁ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年2月1日
作品そのものに向いてない
これが好きなファン向け作品にケチをつけるのもなんだけど、全部が全部安易に見える
使い古されたゲームのようなファンタジー設定とグロとエロを抜いたら何が残るのか?
売れるために過剰なもんを過剰に見せて客を釣るだけの作品に嫌気 pic.twitter.com/lB0KT2T5tz
……この作品のファンではないので、こういう評価になったかな
カエル「まずは、自分の好き嫌いは別として”作品としての評価”はどうなの?」
主「……普通か、ちょっと悪いかな。
映像や音響などはそこまで悪いとは思わなかった。アクションの動きもバリバリと動いて、見応えはある。
ただ”劇場版”を名乗り、1400円の特別料金を頂戴するとなると、少し辛い評価になるかもしれない。
決して悪くはないけれど、特段語りたくなるほど良くもない。
近年のアニメ映画は大作はもちろん、小さな公開規模の作品ですらもそれぞれの”売り”を出して、物語として魅力的なものを提示している。そういった作品と比較しても……残念ながらファン以外には1年も持たずに忘れ去られたり、あるいは語られることのない作品という印象かな」
カエル「ということは、テレビシリーズ並のクオリティは期待してもいいんだよね?」
主「それはもちろん。
ただ、逆に言えば”テレビシリーズ並のクオリティ”のように見えるということだ。それは尺も1時間くらいとを考えると、テレビシリーズの……OP,EDを抜いて3話くらいかな、それをまとめた作品と言える。
そして近年はテレビシリーズのクオリティも上がっている。劇場版である今作よりもレベルの高い作品というのもある。
まあ、2期を作るための資金稼ぎの面もあるのかもしれないけれど……それ以上のものはないということになるのかなぁ」
ネットで流行する作品の傾向に対する違和感
本作は異世界ファンタジーとグロとエロ以外で語ることはあるのか?
じゃあ、ここからは『ゴブリンスレイヤー』が苦手だということの説明になっていきますが……
ネットで話題になるコンテンツって、この手の作品が多いよなぁという印象がある
カエル「まあ、うちはちょっとグロテスク・バイオレンス描写に対しては厳しいようなところがあるので、その影響もあるのかもしれませんが……
園子温とかも苦手な監督と言っているしね」
主「全てのバイオレンス描写が悪いとは言わない。
だけれど、そこには……例えば男の矜持だとか、あるいはなんらかの美的感覚が欲しくなる。
だけれど……これはネットで話題になるコンテンツに共通していることだと思うけれど、極端でわかりやすい物語を提示しすぎなんだよ」
カエル「つまり、恋愛作品においては病気・突然の死とか、あるいは今作でいうとバイオレンスや女性に対する暴力的な描写のことだね」
主「本作に関しては、冒頭でそのような描写が入ることで”ゴブリンが単なる弱者ではなく、搾取する者として恐ろしい存在”として描く。この作品もその描写で話題になった面もある。
だけれどさ、そのエログロって単なる反射なんだよ」
反射……つまり暴力描写やエロ描写があれば、人は誰でもドギマギするし、印象に強く残ってしまうということだね
それは劇薬だからこそ、やり方を考えなければいけない
主「この手の描写っていうのは、極端な話だけれどISが一時期公開していたスナッフビデオや、あるいは暴力描写をそのまま描いた裏AVみたいなものでさ。それを直接見せて、観客に提示して釣るという行為は、むしろ『創作者として芸がないですよ』って喧伝しているようなものではないの?
そりゃ誰だって胸糞悪くなりますよ。
だけれど、表現って単なる反射でいいわけ? って思いが強い」
今作でも落とされた首を持つゴブリンであったり、女性に乱暴をするシーンが何度も使われていたけれど、じゃあ何か美しいものや、特筆すべきものがありましたか? ということがあるかというと……難しいかも
あんなの、悪趣味の塊でしかないじゃん。
主「じゃあ、エログロ描写の先にあるもの……例えば美的感覚とか、社会性だったり、人間の本質に迫るような何か……そういったものがあるの? って話。そんなの皆無なんじゃない?
自分は『Fate』とか『メイドインアビス』は高く評価しているけれど、これらの作品は”バイオレンスやエロティックがないと描けない感情や美的感覚”が備わっているから、強く推している。今作はそういったものが何も伝わってこなかったことが、とても残念だったな」
匿名の”記号的”なキャラクターたちで作られた物語
今作は流行している”おれつえー”系作品でもありますが……
いや、ただ弱者を虐殺しているだけじゃん
カエル「一応、ゴブリンは村を襲い、人を傷つける存在としても描かれているけれど……」
主「そんなの、ただの記号だよ。
そこには人格とか、人間性というものは一切存在していない。そんなのがあると非常に困るからね。モブに毛が生えただけ。ゲームならばそれでいいよ、スライム1体1体に個性はないのはよくわかるし、それこそ経験値やお金のための敵だから。
味方もすごく記号的なキャラクターでさ、今作のゲストキャラクターである女騎士などは、自分のミスから酷い目に遭って大きな被害を出してしまう。そしてゴブリンを恨むけれど、それもまたお決まりな流れ。
言うなれば彼女の失敗は『撤退を選べなかったこと』だろうけれど、今作では撤退を選択できるゴブリンスレイヤーとの差を描くことはできたけれど、女騎士の成長などが描けているとは思えない。
圧倒的な強さを持つ主人公も成長をするキャラクターではない。
今作はゴブリンスレイヤーが弱者であるゴブリンを虐殺していく……それしかないように見える。
そこに違和感しかない。
これが逆ならよくわかるよ、圧倒的な弱者が戦力差のある強者に知恵をこらして戦っていくならば……でも、今作はそんな作品ではないわけだ」
ゴブリンをいかに捉えるのか
ゲーム的な描写としてはわかりやすいものではあるけれど……
だから、ゴブリンでなければいけない理由は特にない
- ゴブリン→殺してもいい敵
- 冒険者たち→ゴブリン達を殺す正義の味方
この作品を楽しむためには、その記号の前提の共有が絶対必要なの。
だけれど、自分にはそうは見えなかった」
カエル「はぁ……」
主「”女性に対して欲情するのが一般的なゴブリンの生態”として描かれている。
でも、人間の場合は熊や猿に欲情しないし、熊や猿も女性を襲わない。食べることはあっても、性的な行為はない。
つまり、ゴブリンというのは人間に欲情するものとして描かれている。
ということは、人間に近いんじゃないの?
自分はゴブリンは”悪党”ではなく、未開の部族のような”文化・文明の違う人間”のように見えた。そして、それらを正義の名のもとに虐殺する姿は、まるで中世の世界史を見ているような気分で、嫌な気持ちになるんだよ」
カエル「……ゴブリンをいかに捉えるのかって話で、そんな解釈もあるんだね」
主「ゴブリンである必要性は『ゲームなどでよく使われている表現だから』っていうものだけ。それ以上のものはない。
だけれど、自分に言わせて貰えばゴブリンがやっていることと、冒険者達がやっていることって何が違うんだよ?
なんで冒険者達の行動が正義のように語られるのか?
お互いが根絶やしになるまで殺し合って、残虐な行為をやりあって、恨みに恨みを積み重ねて……それでおしまいなわけ?
そこになんの爽快感があるの?
『おれはゴブリンを滅ぼす!』なんていうけれど、それとゴブリン達の行動の何が違う?」
……うちは喜怒哀楽でいうところの”怒”が根底にある作品が苦手、ということが大きい気がするね
ゴブリンって中途半端に獣性も人間性もある存在だからこそ、この違和感が大きくなるのかもなぁ。
カエル「これが……例えば熊とかドラゴンとか、あるいは軍隊アリのような昆虫などであれば、また違って見えるんだろうけれどね」
主「自分には”子供を正義の名の元に虐殺する大人達”にしか見えなかった。
もちろん、これが全てダメとは言わない。例えば18禁のゲームだったり、あるいはネットの片隅で連載されているこういう作品が好きな人たちが描いた小さいコミュニティの中ならば、納得できる。
だけれど、ある程度大きく展開されている物語がこれか……と頭を抱えたくなった」
結論
結論としては……やっぱり”安易”ってことなんだろうな
カエル「この作品を作るために命かけている人がいるのもわかるけれどね……」
主「自分は悪役に感情移入をすることが多いからこそ、”なぜその悪を滅ぼすのか?”という点に注目してきたつもりだ。だけれど、この作品はそこに対して一切の言及がない。
だから、最初に語ったように”ファンタジー世界””バイオレンス””エロ”以外で語ることあるのか? ってことに行き着く。
少なくとも自分はそれが見当たらないし、『この作品はエロとグロ以外ない!』と言われても、なんの反論もできないし、僕は擁護できないよって話です!
以上!」