今回はテレビアニメ・総集編とへていよいよ劇場版が公開された『メイドインアビス 深き魂の黎明』の感想記事です!
1月公開のアニメ映画では1番の期待作!
カエルくん(以下カエル)
「テレビシリーズの超クオリティも凄かったけれど、劇場版になってどのような映像表現が飛び出すのか、期待大だよね!」
主
「総集編なのに映画館で見ても一切違和感がなく、特に後編は1作の映画としても楽しむことができた驚愕の作品だったな」
カエル「そんなメイドインアビスの新作はどのような作品だったのか、それでは記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
つくしあきひとが原作を務める同名の作品『メイドインアビス』の劇場版公開作品。テレビシリーズ・総集編の先の物語を描き出す。
監督は小島正幸、脚本は倉田英之、キャラクターデザインに黄瀬和哉、生物デザインに吉成鋼、音楽ケビン・ペイキンなどのテレビシリーズでも手腕を発揮したメンバーが引き続き物語を手掛ける。
キャストには富田美憂、伊勢茉莉也、井澤詩織、坂本真綾などの他、今作の鍵を握るボンドルドに森川智之、マルシュカに水瀬いのりが声を当てている。
人類最後の秘境と呼ばれるアビス。底の見えない大穴の下には多くの奇怪な生物が存在し、人類の想像も及ばない世界と、遺物と呼ばれる不思議な力を持つ品々が眠るという。アビスの麓のにある街、オースで育ったリコはかつて母が潜ったアビスの最奥を目指して謎の少年、レグと旅の途中で出会った少女ナナチと共に冒険を続けていた。
第5層にたどり着いたリコたちはそこで先に進むために研究を続けるボンドルドと、その娘のプルシュカと出会う。かつてナナチに非道の実験を行ったボンドルドに対して
警戒するのだが、すでに魔の手はすぐそこまで迫っていた……
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#miabyss
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年1月17日
高い期待値をすんなりと超えてくるアビスクオリティを堪能
美しい世界に潜む脅威、それに立ち向かう大人の狂気、翻弄される子供たちの思いに観客も翻弄され、鳥肌と涙腺を刺激する連続
挑戦に満ちた意欲的な表現の数々も目を惹き“冒険“の楽しさと辛さを描き抜いた志に大いに拍手を送りたい pic.twitter.com/Hgq4prIeda
高い期待値を大いに超えてくる映画となっています!
カエル「テレビアニメ版からすでに高い映像クオリティは話題だったし、総集編でも修正などはあるのだろうけれど、しっかりと映画館で見てもなんの違和感もない作品になっていたのが驚愕だったね。
そして今作は、1から劇場版で作られたけれど……いやいや、これは新年早々途轍もない作品が来たなぁ、と鳥肌の連続でした!」
主「流石にテレビシリーズが総集編は必須な作品となっており、初見さんにオススメできる作品ではありませんが……それでもぜひ見て欲しい作品だね。
日本のアニメの魅力もたくさんあるし、映像表現に関しては早くも2020年の中でも屈指のものになるのは間違いない。
また、音楽なども非常に凝っており……原作に対してできる限りの物語を提示することができたのではないだろうか?」
なお、本作はR15に指定されてしまったことも話題ですが……その辺りはどうだった?
う〜ん……とても難しいけれど、仕方ない判断だと思う。
主「観た印象からすると、純粋に描写そのものではR15にするのは過敏な印象もある。確かにかなりドギツイ、バイオレンスな描写もあるけれど、それが大人の自分としてはR15にするほど過酷なものには思えなかった。
ただ、状況というか……物語の流れからしたら、確かにこれは子供の頃に見たらトラウマになるかもしれない」
カエル「描写力が確かで丁寧だからこその配慮、なのかもね……」
主「アビスの魅力の1つだけれど、キャラクターデザインなどが非常に可愛らしくて、子供も見に行きたい! と思う可能性がある見た目となっている。だけれど、何も知らない家族づれが来てしまったらと思うと……確かに今回の措置というのは、自分は妥当な気もしている。
それくらい……なんというか、精神にズシンとくる重さを持つ作品だし、もしかしたら何も知らないと嫌悪感がある人も出てくるかもしれないけれど、でもそこだけを売りにせずしっかりとした物語を提示したのではないだろうか?」
”冒険”を重ねる映像美に拍手を
今作の注目ポイントはどこになるの?
やっぱり”冒険”が1つのテーマになるのではないだろうか?
カエル「作者自ら”ワクワクする自殺”と称しているのも納得だよね。アビスという危険な場所に挑む者たちの、ある種の狂気とも言える思いを汲み取った作品でもあるし……」
主「毎年この時期って賞レースの話が多いんだけれどさ、その度に思うのは今作のような作品を評価する賞があまりにも少ないよなぁ……ということでさ。
もっと一般性があると思われている作品たちは多くの賞レースのアニメ部門でノミネートされているけれど、今作のような作品は評価される場すら用意されていない。
だけれど、日本のアニメって今作のような深夜アニメや一部のファン向けと思われる作品たちがリードしてきた部分もあるし、何よりもこれだけ創意工夫に満ちた映像美をもっと大々的に評価してもいいんじゃないの? って思いもある」
カエル「そういう思いが湧くほどの映像美だったんだね。
荒々しい鉛筆画のようなタッチから、美麗な一枚絵のイラスト、他にも目を見張るような映像が次々と流れてきて、挑戦する姿勢を感じる作品です」
作品そのものが”冒険”の苦しさと楽しさを提示しているよね
主「今作の映像からはヨーロッパのアニメーションのような手法そのものへの挑戦という意気込みも感じさせつつ、あくまでもエンタメとして発揮しており、そのバランスも見事。
また、本作に限らずテレビシリーズでも評価したいのが、アビスに生きる生物たちの造形と生態の描写。クリーチャーのような気持ち悪さだったり、生き物が生きるための強かな恐ろしさなどを描きぬいている。
近年では背景や文化の書き込み量が多いファンタジー世界作品が増えている印象だけれど……『ハクメイとミコチ』などね。
その独特のルールや文化の上に成り立つ世界の描写などがしっかりと、そしてリッチに描きこまれているからこそ成り立つ世界の描き方も見事という他ない。
本当に褒めるポイントばかりの作品です」
以下ネタバレあり
作品考察
序盤でアビスの物語を語りきる手腕
では、ここからはネタバレありで物語について語っていきましょう!
何よりも序盤がすごくうまかった
カエル「先ほど『テレビシリーズの鑑賞が必須』という話もありましたが、実はそうでもないのかもしれない……という思いがあるのもまた事実なんだよね。
なんでかというと、この序盤の描き方が非常にうまかったからです!」
主「ここで彼らが挑むアビスという世界の過酷さなどを描写し、この物語を端的に描きぬいていた。
母の好きだった美しい花畑(美しい思い出)、そこに潜む脅威と恐ろしい生物、それらを焼き払ってしまう人間……これらだけで本作品のテーマや、これから語られることが伝わってくるようにできている。
アビスにはたくさんの様々な遺物などもあるけれど、それは一筋縄では行かないことを示していた」
カエル「ここだけでもどんな映画なのか、映像的に理解できるね」
主「この手の工夫もきちんと凝らされており、あくまでもテレビシリーズや総集編を鑑賞していることが前提ではあるものの、メイドインアビスという作品がどのような作品なのか伝わるようになっている。
いい作品は序盤でその作品のテーマなどを端的に語っているものだけれど、本作も例外ではないね」
親子関係で描かれるアビスの物語
ここまでのアビスの物語って、親子関係や師弟関係、家族関係で物語が紡がれてきていたね
簡単にまとめると以下のようになる
- リコと孤児院の大人たち(特にハボルグ)
- オーゼンとマルルク
- ナナチとミーティ
- ボンドルドとブルシュカ
カエル「そして、特徴としてはどの関係性も血の縁ではなくて、義理の家族関係という部分だよね……」
主「階層が深くなるたびに関係性も深く、身近な関係になっていくのも注目だろう。
最初は育ての親である孤児院の関係からスタートするけれど、言葉はあれだけれど、多くの子供と共同体の中の保護者であり他人に近い存在だ。
次にオーゼンとマルルクは師弟関係。ナナチとミーティは姉妹隣、今作では義理の親子関係となる。徐々に関係性が深くなるものの、その分絶望感が増していく話にもなる」
カエル「……ということは、最後に母親であるライザが待つというのも、色々な可能性が思い浮かんで見たいような見たくないような気分になるね……」
主「リコとライザの関係性に関しては、この先大きな展開が待つかもしれない。この語り方だと、そうならない方が不思議かもしれないな……」
ボンドルドへの個人的な不思議な思い
この作品の悪役に該当するボンドルドは最低な男だったね……2020年早くも最低のクズ男が決定した印象もあるよ
……たださ、すごく不思議な感覚でもあったんだよ
カエル「え、不思議な感覚って何?」
主「いや……ボンドルドって、本当にプルシュカを愛していたのではないか? という思いだ」
カエル「……あれだけ大変なことをしでかしたのに!?」
主「逆なんじゃないかなぁ。
今回で明らかになる白笛の設定もそうだけれど、今作において階層を深くすればするほど、人間として大事なものを失っていくような人が多い。決定的にズレていたけれど、でもボンドルドはプルシュカを実験材料として見ているのと同時に、どこかしらで愛を持っていたのではないか? という思いを抱いてしょうがない。
特に、後半の盛り上がりの回想シーンでは……あれは彼なりの愛だったのかもしれない」
カエル「でも、それならばあんな行動がなぜ……」
主「だから、そこが徹底的にズレているんだよ。
もちろん、愛がこの先に進むのに必要というのもあっただろう。だけれど、愛を手に入れるのであれば例え偽物だとしても、それをプルシュカに与える必要があった。
じゃあ、その偽物の愛が本当に偽物だったのか? というと……それはわからない。ただ、1つ確実に言えるのは偽物の愛だとしてもそこから生まれたプルシュカの思いは、本物の愛だったということだろう」
リコたちが”子供”だからこそ進めるアビスの世界
……なんか、とても難しい話になってきたような
それでいうとさ、リコたちが”子供”というのもとても大きいと思う
カエル「それこそ、Twitterで挙げた文言で語ると『世界に潜む脅威、それに立ち向かう大人の狂気、翻弄される子供たちの思い』という部分かな」
主「あのアビスの世界を進めば進むほど過酷になっていく旅路、そして生きて帰ることができる保証がない。その中で大人たちは狂気に取り憑かれていく。
オーゼンは比較的上層にいることもあるのだろうけれど、まだ人間性は残しているようにも思える。ただ、それはあくまでも比較的であり、常識的な人間ではない。
なんかさ、それって感覚としては理解できるんだよ。
なんでもそうだけれど、その世界のTOPクラスの人たちって……求道者の風格というか、浮世のことを捨ててしまい狂気のようにのめり込むことで、その地位を手に入れているようにも思える。
アビスのように愛を捨てなければいけない状況の時、それができる人間だけが白笛を手にすることができる。
ハボルグなどは腕は一級品なのだろうけれど、それができなかったからこそ黒笛のままなのだろう。最も、ハボルグの方が真っ当な人間ではあるだろうけれど」
だけれど、リコたちは”子供”だからこそ先に進むことができる、と
なんていうんだろうね……純粋ということかな
主「大人たちは先に進むために狂気に身を委ねなければいけなかった。だけれど、リコたちは純粋な思いで先に進んでいる。
今作に登場する子供たちは基本的に素直なんだよ。
さらにキャラクターデザインも幼さを強調しており、とても可愛らしく大人たちの狂気と対照的だ。
多分、白笛の大人も最初は好奇心だったけれど、それがいつの間にか狂気に変わっていた。
だけれど、子供たちは純粋に好奇心を残している。だからこそ先に進むことができる。
これは他のことでも言えると思うけれど、純粋な思いがあるからこそ熱中し、その先で途轍もないところにいくこともあるだろう。そういった目的に対するアプローチの仕方を、大人と子供の違いを重点的に描いた作品……それが『メイドインアビス』なんじゃないかな」
そして、あのラストに繋がるわけだね……
カエル「結局、この作品ってハッピーエンドなのかなぁ?」
主「そんな簡単に割り切ることはできない。だけれど、プルシュカの願いである『お父さんと仲直りして』という言葉は、半分は叶った。もちろん、リコたちはボンドルドと一緒に冒険することはできないだろう。
それでも、プルシュカの純粋な思いが新たな道を示し、そしてボンドルドとの……和解、とまでは言えないかもしれないけれど一時的な融和は迎えることができた。
それがこの地獄のような重いアビスの中で、わずかな光になったのではないかな?」
最後に
それでは、この記事を終わりにしましょう!
なんか、最後の方はうまくまとまらなかったなぁ……
カエル「すごく哲学的な要素もあるから、語り口が多くてとても難しいよね……」
主「近年のアニメ作品と比べても独特で、レベルが高い作品だから、本当に多くの人に観て欲しいんだよなぁ。
こういう作品こそが日本アニメの強みだと思うけれど、注目されないのは悔しいなぁ、という個人的な思いを語って、この記事は終了です」