物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『がっこうぐらし!』ネタバレ感想&評価! 実写映画化成功! 出演するラストアイドル達の成長する過程も楽しめる作品でもある!?

 

なぜだか、公開前から何も悪いことをしていないのに炎上している作品の登場です

 

 

 

 

せめて映画の話で炎上してほしいよなぁ

 

 

カエルくん(以下カエル)

「実写化発表で揉め、ポスターで揉め、そしてキャベツで炎上するという……わけがわからないよ」

 

「冒頭の2つはまだしも、キャベツなんてどうでもいいわ!

 ネット上のキャベツで料理描写の作画力を測るという風潮があることも影響しているんだろうけれどさ。

 ちなみに話題になった画像は前日譚の描写の模様。

 映画本編では問題なしだったのを確認しています

 

カエル「ちなみに、原作やアニメは見ているの?」

主「1話だけ見た気がするかなぁ……

 話題になっていたこともあったけれど、ホラーが苦手なのと、その時他にも色々見ていたからスルーしていた気がする。

 この作品が一番話題になった時に鑑賞して以来だけれど、楽しみにしているよ」

カエル「では、記事を始めましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

感想

 

では、Twitterの短評からスタートです!

 

 

確かに粗もあるし批判もあるだろうが、自分は大好きな1作です!

 

カエル「やっぱり、元々アニメの1話があれだけ話題を読んで大ヒットした作品じゃない?

 その設定が知れ渡っている中で、どのような作品になっているのか気になるところでもあったけれど、今作はそんな不利なんてものともしないような映画に仕上がっていたね!

主「くだらないことでもめていたのがもったいないと感じるよ……本当に」

 

カエル「たぶん、この映画を観に行く人ではどんな作品か全く知らないでふらりと行く人はいないと思うし、苦手な人には徹底的にダメなジャンルだから”何も知らないで劇場へ向かって!”とはちょっと言い難いところもあるけれど

 ……でも、できれば何も知らないで欲しいという思いもやっぱりあるよねぇ

主「近年、漫画実写化映画は酷評の嵐が巻き起こっているけれど、必ずしもひどい作品ばかりという訳ではない。

 2018年だって若手の俳優を多く使った漫画原作作品では『ミスミソウ』など、ちゃんとした作品だって多くあるんだよ。

 そして今作もそれを証明するような作品になったのではないかな?」

 

 

キャストについて

 

ちょっといつもより早いですが、あまりネタバレをしたくないということもあり、キャストのお話になります

 

アイドルが多いのかな? 初々しい演技の役者が多かったかな

 

カエル「正直、演技自体はお世辞にもうまいとは言えないところもあるけれど……」

主「まあ、ある程度は目をつむりますよって言い方になってしまうかな。

 ただ、本作って冒頭から順を追って物語を撮っていく、いわゆる順撮りだったという話だけれど、それもなんとなく納得した。

 確かに、序盤は目を覆いたくなるような演技もあったけれど、後半は結構マシになったというか……もちろん、見所のあるシーンが多いということもあるだろうけれど、1作の間に成長していることがとてもよくわかったんだよね。

 元々完成された役者たちの作品とは違って、これから成長していく役者を見守る作品特有の楽しみ方かもしれない

 

カエル「これからに期待したいというお話になるのかな?」

主「それに、本作自体がどうしてもB級ホラー感であったり、コスプレ感がある作品になってしまっている。さらに元々漫画原作で、アニメの印象も強くて、それを再現しようとしているから……どうしても違和感はあるという擁護もするかな。

 だからと言って褒める出来ではないという、ちょっと釘をさすような言い方になってしまうけれどね

 

カエル「ちなみにMVPを決めるとしたら?」

主「それは……おのののかを含めての主要5人ということになるんじゃないの?

 アクション描写も攻めていたし、誰が良かったという話にはならないと思う。

 全員が目立って、全員が同時にダメだった部分もあるかな」

 

以下 予告編レベルのネタバレあり

 

 

 

 

作品紹介・感想②

 

どうしても作品性質上、ネタバレしないと語れない作品だよねぇ

 

そもそもホラーでゾンビものだということすら、知らずに見てほしいという思いもあるんだよなぁ

 

カエル「もうポスターや予告で誰でも知っているような物語ではあるけれど、一応知らない方が楽しめるような作品でもあります」

主「できれば”のほほんとした日常系のアイドルが主演している映画”くらいの気持ちで見ていただいて、開始10分くらいから始まる”ドキ♡ ゾンビだらけの学園生活サバイバル〜グチャモグもあるよ!”を楽しんでほしいんだよねぇ」

 

カエル「ノリが軽い!

 でも、予告やポスターで本当にそのノリで見に来て、あまりの想定の範囲外で涙目になってしまうお客さんもいるだろうから、最初にネタバラシをするのは理解はするんだけれどね……

 やっぱり、あれは30分で一度切ることができるテレビアニメなどだからできる作り方で何だろうなぁ。

 炎上しなかったのもそこで本当に無理な人たちは視聴を止めるであろうという配慮もあったからなんだろうね」

 

主「特にこれも『メイドインアビス』の記事でも語ったように、基本的には可愛らしい少女たちの物語である。そもそも『まんがタイムきららフォーワード』で連載されていたけれど、きらら系って日常的な四コマ漫画が多い印象だったじゃない。

 それこそ『ひだまりスケッチ』とか、あとは『あっちこっち』とかさ。

 『まどかマギカ』も蒼樹うめがキャラクターデザインで、奇襲に成功したという意味では同じくくりで語れるかもしれない。

 あの日常系ブームがあってそれにちょっと飽き始めていた頃に、また同じような作品が出てきたか……と思ったら実は! という作品で、そこがアニメを見慣れたオタクとしても新鮮だったし、ある種の批評性が生まれた作品でもある」

カエル「”日常と非日常の境目”を扱った作品とも言えるからねぇ」

 

 

 

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あの映画と真逆ながらもリンクする?

 

ここで語るあの映画とは、2018年に大ヒットを果たした『カメラを止めるな!』です

 

同じゾンビものとして語りたいところはある

 

カエル「本作も、本来はカメ止めと同じく『何のネタバレもしないで見てほしい!』というタイプの作品だよね。

 ただしカメ止めが……これもカメ止めのネタバレが含まれてしまうけれど、最初に特徴的な作りがあって、中盤以降でどんでん返しがあるという形になっていて、本作とは真逆だけれど」

主「ただ、共通するある種の安さというか、B級の雰囲気などもあるし、細かいところで粗はあるけれどドラマとして評価されているという点でも同じかもしれない。

 あとさ”2つの顔を持つゾンビ映画”という点で語りたいんだよ」

 

カエル「カメ止めの前半と中盤以降の全く違う展開と、本作の幸せな描写と過酷な現実だね」

主「この描き方が対比効果としてとてもうまく行っていたのではないか? と指摘する。つまり、カメ止めの場合は『(安っぽい)恐怖→笑い』だったのに対して、本作は『ほっこり日常→恐怖』だったわけじゃない。

 この緩急の使い方が見事!

 単なる恐怖だけではなく、かといってほっこりだけでもないということで、ドラマとしての波がわかりやすく作れていた」

カエル「ふむふむ……」

 

主「あとはこれはホラー映画では重要な視点だけれど、カメ止めってわずかながらエロいんだよね。

 秋山ゆずきがホットパンツを履いて、序盤でお尻をアップするシーンがあるけれど、あれが緩急の緩みにつながっている。ホラー映画でおなじみの”美女がシャワーシーンで襲われる”というのは、エロでぐっと引き込む緩みと、そのあとの厳しい描写の急の波がうまくできているわけ。カメ止めの場合は笑いが緩みにつながっているけれど。

 そして本作もそれは同じで、アイドル達の可愛らしさやちょっと仕草、大きな胸などがエロとして機能している。

 スカートなんてすごくない!?

 あれだけ動き回っているのに鉄壁だからね! 関心したわぁ」

 

カエル「えっと、真面目に語ってる?」

主「真面目も真面目、大真面目ですよ。

 コスプレ感がありながらも彼女達の可愛らしい幸せな日常や思い出を描く緩みと、そのあとの急がうまくいっている。

 これが女優だと作り込み過ぎて緩みが足りなかった可能性もある。

 ただし、苦言としては急のシーンでも棒読みのような箇所もあって、それが物語のノイズになってしまったことはあるけれど……ここはアイドル映画として痛し痒しってところかな」

 

 

 

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欠点として

 

じゃあさ、役者の演技以外での欠点って何かあるの?

 

それは細かいことを言い出したらキリがない

 

カエル「どうしても予算が限られていることもうかがえる作品だしねぇ」

主「例えば、食料備蓄庫の種類や物があまりにも多すぎる問題とかね。

 これはいろいろな裏設定があるようだけれど、映画だけでは疑問が解決しない。

 また、備蓄庫に大量のガソリンがあったけれど、あれって平時でも大丈夫なのかね? 危険物取締法あたりに抵触しそうだけれど。

 それに、よく後半であの展開になった時に、被害があの程度で済んだよなぁ……という思いもある

 

カエル「そこは……まあ、学校だし防災に優れているんでしょう」

主「あとはどうしても出てくるのはバリケードの作り方が雑だし、あれをゾンビが突破できないというのは疑問がある。それに、明らかにもうどうしようもない状況で生き残っている描写もあって、そこも違和感としてあった。

 そういった小さなものが積み重なっていて、一応B級ホラー作品とはわかっているけれど、それがノイズとなってしまった形だな

 

カエル「だけれど、全体的な評価は高いんだよね?」

主「エモーショナルな快感を覚えるシーンも多いし、特に後半のあるシーンでは『傑作だ!』と思わず叫びたくなるような場面もあった。

 だけれど、全体的な評価としては……やっぱり良作から佳作という評価になるのかな。

 それでも、この限られた条件下で、しかもアニメや漫画の影響もあり、一般性もない中でこれだけの作品を作り上げたことは驚きだし、間違いなく語られて見られるべき作品に仕上がっていると思うけれどね」

 

以下、物語後半につながるネタバレあり

 

 

 

 

作品考察

 

2つの視点から映画を読み解く

 

それでは、ここからは本当に物語の後半につながるネタバレが出てきます

 

この映画を語る際に注目したいのが2つの視点だ

 

カエル「その2つの視点とは以下のとおりです」

 

  • 音楽が指し示す物語
  • ゾンビとは何か?

 

主「もちろん、これ以外でも”現実と妄想、あるいは過酷な状況からの逃避行動としての幻想”という視点もあるけれど、長くなるので今は語りません」

カエル「まず、音楽が示す物語ということだけれど、運動会などでもおなじみの『天国と地獄』が流れていたね」

 

主「さすがに天国と地獄の有名なパートが含まれている歌劇『地獄のオルフェ』の影響があるとは言わないけれど、この”天国と地獄”というワードそのものがこの作品を示すものになっている。

 そして、1番注目して欲しいのは挿入歌である『大切なもの』という合唱曲だ。

 正直、自分は知らなかったけれどこれがまたすごくいい曲なんだよね」

カエル「歌詞を直接載せることはしませんが、作詞作曲した山崎朋子先生の思いが伝わってきそうな楽曲で、卒業式などでも人気があるようです」

 

主「この曲が見事にこの作品に合致しているし、何ならば全てのエッセンスが入っていると言っても過言ではないほど!

 そして作中で出てくるまくら投げやポラロイドカメラなどの写真が、また彼女達のかけがいのない安息の日々として伝わってくるようになっている。

 自分は青春映画で最も重要なのは、イケメンや美少女達の可愛らしい恋愛模様などではないと思っている。もちろん、それはそれで重要なんだけれど、1番大事なのは”青春をカメラに捉えること”だ。

 そしてそれは作中の登場人物たちの境遇と、演じる人物の境遇が一致するとなお素晴らしい」

 

カエル「例えば『ちはやふる』シリーズで本当に3年間かけて撮影されてきた軌跡が、劇中の登場人物たちの3年間の奮闘とリンクして、作品としてカメラに収められているということだね」

主「あのポラロイドカメラのシーンや、まくら投げのシーンは彼女達の素の表情もあったと思う。

 役者としては未熟な少女達をカメラで捉えることによって、まぎれもない”青春映画としての強度”を獲得したと言えるのではないかな

 

 

 

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ゾンビ描写について

 

いつもうちでは”ゾンビの意味とは何か?”ということを考えているけれど……

 

今作はそれがしっかりしていた印象があったね

 

カエル「そのゾンビの意味ってなんなの?」

主「これは『コクソン』の記事でも書いたけれど、改めて聖書の記述を引用しよう」

 

 

『5:25まことに、まことに、あなたがたに告げます。死人が神の子の声を聞く時が来ます。今がその時です。そして、聞く者は生きるのです。
 5:26それは、父がご自分のうちにいのちを持っておられるように、子にも、自分のうちにいのちを持つようにしてくださったからです。
 5:27また、父はさばきを行なう権を子に与えられました。子は人の子だからです。
 5:28このことに驚いてはなりません。墓の中にいる者がみな、子の声を聞いて出て来る時が来ます。
 5:29善を行なった者は、よみがえっていのちを受け、悪を行なった者は、よみがえってさばきを受けるのです
 

 新約聖書 『ヨハネの福音書』より 

 

 

カエル「これは亡くなった人が神の裁きの前に生き返り、キリストによって天国と地獄行きのどちらかに分けられるという話だよね」

主「この記述が元となり、ゾンビに対するイメージが固まっていく。

 つまり、亡くなった人がゾンビとして復活するのは”神の審判を受けるため”であるんだ。

 それでいうと、本作はそのキリスト教の教えを守っている作品でもある」

 

 カエル「それこそ、ある登場人物が実は宗教上で大切なものであったということとかね」

主「終盤の展開で涙を流したけれど、一応ぼかして語るとある登場人物が決死の覚悟を固めるシーンがある。もう状況的に助からないから、なるべく他の人が生き残るようにするシーンだ。

 ここで彼女は十字架のロザリオを身につけていた。

 まあ、日本人の感覚だと単なるお洒落だったかもしれないけれど、彼女は神やキリストと共にいたということになる。

 そして、善なる行いをして蘇ることになり、最後の最後にも感動するポイントがある」 

 

カエル「結構わかりづらく濁していますが、この映画の肝なのでご了承ください」

主「他のゾンビたちは描写にもよるけれど、燃えて黒く炭化した者も多い。これはキリスト教やイスラム教などではタブーとされており、死後の復活を遂げることができないからだ。

 以前にもそのような事件があったけれど、なぜゾンビたちにあのような仕打ちをしたのか、というと、この最後の審判を受けさせないためと考えることもできる

 

カエル「……でも、あの人はそういう最期ではなかったよね?」

主「やはり善なる行動をした人間だからこそ、天国に行ったと捉えるのが妥当なのではないかな?

 あのシーンは……とても変な話かもしれないけれど、ゾンビなのにとても美しかったんだよ。本来ならばグロテスクなはずなのにね。

 そのあたりの美的感覚なども独特なものがありつつも、ホラーとしてとても大事なことだ。

 もしかしたら、怖いよりも美しいことの方がホラーでは大事かもしれないな」 

 

 

まとめ 

 

この記事のまとめです 

 

  • B級でもあり、役者陣の演技も癖があるものの全体的に良作!
  • ゾンビ映画と日常系映画としての両面性を見事に描いていた!
  • 宗教的な思いも伝わる作品であり、ゾンビである意義もあったのでは?

 

 

これは気になる方は是非劇場に向かってほしい作品です! 

 

カエル「本当に、あの炎上騒ぎで見ないと決めている人は本当にもったいないと言いたい作品です!」

主「かといって期待値やハードルを上げすぎて欲しくはないという思いもあるしなぁ。

 その辺りは難しいバランスもあるよなぁ。

 でもいい作品なので、ぜひ鑑賞をお願いします!」