いやー……今回は言葉に困る記事だよねぇ
小規模映画に加えて、いつも以上にネタバレに気をつけなければいけないの
カエルくん(以下カエル)
「しかもさ、多くの映画評論家や関係者、そしてブログやTwitterでも絶賛の嵐なんだよね」
亀爺(以下亀)
「この盛り上がりは『この世界の片隅に』を思い出すものがあるの」
カエル「あとは『バーブバリ』とか? それよりも規模は小さいよね。とりあえず、東京近郊にお住いの方で気になる方は、早めに行った方がいいです。
今作はあんまりネタバレされると、面白みが半減するので」
亀「この記事でもその点に気を使いながら語っていくとするかの。
ちなみに、この記事は日本で唯一になるであろう、否定的な感想じゃ。それを意識した上で読んでほしい」
カエル「ちなみに、これがどれだけ勇気のいることかというと……『マッドマックス4』や『バーフバリ』に否定的な感想を述べるようなものです」
亀「では、感想記事の始まりじゃ」
注!
この感想は全国2館でしか公開していなかった時のものであり、ネタバレをしないように配慮している記事です
100館以上で公開されるなど、公開直後と大きく状況が異なっています。
感想
えー……重ねて言いますが、これから観る人はここから先は読まないことを推奨します!
……小規模映画のレビュー記事としてはひどい出だしじゃな
カエル「いや、もちろんネタバレガンガンしますよ! ってわけじゃないけれどさ……なんていうか、何がこの映画の面白さを除外するのかわからない怖さがあるんだよねぇ」
亀「基本的には大絶賛、むしろこの映画が合わないという人は……もしかしたら日本中で1人もいないのではないか? と思うほどの熱狂ぶりじゃからの。
その中で、この記事は少し否定的な論調になってしまう。
……その意味ではとても稀有な記事になることは間違いない。
カエル「そもそも、ワークショップで作られた小規模映画で褒めない記事を書くという行為自体が、賛否分かれそうな行為だし……」
亀「これだけ話題になっているのじゃから別に構わんのかもしれんがの。
ちなみに、最初に語っておくとこの映画に技術面に関してはとても高く評価しておる。
もちろん、予算や経験のあるスタッフが集まった大規模公開商業映画と比べると……と思う部分もないわけではない。
しかし、この規模で限られた状況下において、これだけの作品を作り上げたこと……それは驚異的なことである。
さらにいえば、本作を応援したくなる気持ちというのもよく分かるし、それはそれで映画ファンとして真っ当なことじゃからな」
(C)ENBUゼミナール
ワークショップの映画
カエル「本作の特徴の1つが『ワークショップで作られた映画』ということだよね。
もちろん、それ自体は珍しいことではないけれど……ここまで話題になるというのはあまり聞いたことがないかも……」
亀「普通は9割方が一般層に知られることもなく、ひっそりと終えていく映画じゃからの。予算も経験もない中で、様々な工夫を凝らしながら作られる映画たち……
玉石混交とはいうが、この手の映画は……そうじゃな玉石石石石石石石石石石混交くらいでもまだ優しいかもしれん」
カエル「それはそうだよねぇ。
例えるならば本屋さんに並んでいる出版社を通した小説がみんながよく知る商業用作品だとしたら、どこの誰が書いたかもわからないネット小説や同人誌みたいというと愚かなぁ……」
亀「一応色々と学んでいる分だけネットの小説などよりはマシじゃろうが……しかし、多くの一般の観客は商業作品を中心に観賞しておるじゃろうから、原石を探し出すような感覚で臨まないと面を食らうかもしれん。
そして……それが本作の魅力を一段と盛り上げているのは間違いないのじゃが……いかんせん、それがかえってわしらが楽しむことを邪魔してしまった印象もあるかの」
最近、映画を作るコメディ作品が増えている印象も……
観るならば劇場で!
この映画を語るときに誰もが口にするのが『ネタバレ厳禁!』ということだけれど……
しかも、普通の作品とはレベルの違うネタバレ厳禁! じゃな
カエル「確かにラストがびっくり! という映画もあるけれど……ラストだけじゃなくて、色々と情報をシャットダウンして観に行った方がいいです。
その方が絶対楽しめます。
なので、興味がある人、鑑賞しようとしている人はこの項目で引き返してください。いや、これ以降も内容を詳しくネタバレするつもりはないけれど……
下手すると、モヤモヤ感を抱いて帰ることになってしまいかねないので」
亀「1つだけ言っておくとするならば『劇場で見ることに意義がある作品』と言えるじゃろう。もちろん、公開規模が小さすぎてそれは難しいという意見も重々承知、気になるけれど見に行けない! という意見もあるじゃろう。
その場合はニコニコ動画で配信しておったものを観るのもいいじゃろうが……本当の意味で楽しむならば、やはり劇場をオススメする。
あとは……家で見る場合も友人や家族などの、できるだけ大勢で観ることじゃな。
それが出来て初めてこの映画の真の魅力が発揮されるじゃろう」
カエル「ということで、なるべく……公開規模も少なくて毎日売れ切れているけれど、なるべく劇場で観てください!
では……ここから先はネタバレ解禁パートになります。
なぜこの映画にノレなかったのか? を解説する上で、ど〜しても内容に触れなければいけないので、最低限のネタバレに留めますけれど……しつこいですけれど、興味がある人はこの先読まないで劇場へ行ってください」
亀「……レビューの意味ってなんじゃろうな」
以下ネタバレあり
作品の構造
知りすぎてしまった情報
では、ここからはある程度のネタバレ解禁パートです
最初に『どれだけ知って劇場に行ったのか』ということから説明するかの
カエル「えっとさ、いつもは監督や脚本家を調べて、予告編を観るくらいのことはするかもしれないけれど、それ以上の知識は入れないじゃない? 特にこの手の小規模映画って、ぶっちゃけスタッフもキャストも1人も知らないことも多いけれど……
どこまで知ったの?」
亀「多くの映画評論家、ヒナタカさんなどのライター、それから『モンキー的映画のススメ』のモンキーさんや『ヤガンEX』のいわのふみやさんのオススメもあって知った情報が以下の通りじゃな」
- 本作は傑作である
- ゾンビモノ
- 映画への愛に溢れている
- 小規模公開のワークショップで作られた映画
- コメディ
カエル「……え? これだけ? あらすじとかは?」
亀「な〜〜〜〜んも知らん。
せいぜい『ゾンビが出てくる映画だよ』くらいじゃな。
しかし、これだけの情報でもネタバレとして十分以上に機能してしまった部分がある」
お二方の『カメラを止めるな!』 の絶賛評はこちら
映画の見方について
カエル「えっと……このブログもそれなりに長く運営しているけれど、長く読んでいただいている方にはどういうブログがご存知かもしれませんが、一応説明します。
映画ブログを大雑把に大別すると、以下のようになります。
- 個人の感想を述べる『感想系ブログ』
- キャストやスタッフを紹介しながらレビューする『紹介系ブログ』
- 独自の視点から考察する『考察系ブログ』
- 面白ネタ系に走る『ネタ系ブログ』
カエル「映画ブログって色々な形態があって、例えば先にあげたモンキーさんはキャスト、スタッフを詳細に解説し、自分の感想を載せるタイプのブログです。 このタイプでいうと『Machinakaの映画夢日記』や、アクション洋画に強いのが『しーまんの映画から学ぶ人生』など、多くのブログがこのタイプに入るのかな?
『ヤガンEX』はいわのさんの目線での感想を述べていくタイプ。
モンキーさんとヤガンさんは辛口の点数をつけることが特徴かな。
あとは……『ナガの映画の果てまで』などは考察系ブログに該当すると思います。もちろん、単純に分け切れるものでもないけれど」
『Machinakaの映画夢日記』のカメラを止めるな! 評はこちら
亀「あとは……あまり褒められない所では、あらすじを最後まで書ききる『ネタバレ系ブログ』などもあるが、そちらは今回除外するとしよう」
カエル「それで、じゃあ『物語る亀』は? というと『考察系ブログ』に入ると思います。もちろん、全記事ではないけれど……
『なぜこの描写をしたのか?』
『この伏線の意味は?』
『このキャラクターのこの言葉の意味は?』
『監督や脚本家の意図はどこにあるのだろうか?』
ということを邪推していくブログです。もちろん、監督や脚本家は本当のテーマや隠されたことなんてあまり語らないだろうから、それを邪推していきます」
その見方が今回仇になった形なんだよ!
カエル「おお!? 急に来た!?」
主「いいよ、こっからは自分で説明するよ!
なんでこの映画がダメだったのか、洗いざらい話してやるよ、チクショー!」
カエル「……よく分からない荒れ方をしている」
合わなかった理由について
特徴的な撮影方法
序盤はとても驚くような撮り方をしているけれど……ここでどう思ったの?
……この段階で悲劇が始まっていたんだ
カエル「え〜っと……この映画のスタートはゾンビ映画の撮影をしているシーンから始まるけれど、それが結構独特なんだよね」
主「この場面において、わざと少し下手なように撮っている。これがワークショップの映画であれば『ただの下手くそな映画か』で終わるかもね。
しかし、この映画は多くの目の肥えたファンが『傑作!』と言っていて……ということはどういうこと?
つまり、これは伏線でしょ?」
カエル「……あ〜、邪推しちゃった」
主「つまり、監督やスタッフはわざと下手な風に撮っている。
そして、ところどころ謎なシーンが出てくるけれど……それも伏線だということが想像できてしまう。
このあたりは何も知らずに見に行った方がいいよね。
『あ〜……また変な映画か』と思いきや……という意外性が楽しめるからさ。
そして本作はコメディということは、だいたいこの手のパターンで言えばこうくるのかなぁ……というのが想像できる。
しかも、劇場内ではリピーターの客がシリアスなシーンでもゲラゲラ笑っていて……ということは、このシーンは何らかのコメディが裏で発生しているということなんだよ」
カエル「……うわ、つまんない映画の見方」
主「もちろん、37分間にわたりあの手法で撮りきったチャレンジ精神は本当に素晴らしいし、高く評価するべきものだ。
だから、これは観客の問題です!
問題だけれど……いかんせん、この先の展開を予想しながらだと、ある程度の予想の範疇ではあったかなぁ」
鑑賞直後のツイートはこちら
例の作品に関して
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年6月26日
泣きました
自分は何も言いません
気になる方は劇場へ向かってください
……こんなことを言いながらも大いに語ってます
序盤のつまづき
カエル「そもそもさ、なんでそんなにノレなかったの?」
主「まず、スタートで監督が『お前の人生嘘ばっかだからだよ!』と怒鳴るシーンがある。
ここで一気に冷めてしまった。
この映画は『虚構内の虚構』を扱った作品である。そもそも、この監督の登場人物だってゾンビ作品を撮ろうという人間じゃない?
それが『嘘ばっかりなんだよ! 本当を出せよ!』というのは、どうかと思ってしまった。
その虚構を愛するからこそ、ゾンビ映画を撮ろうとしているし、よりメタな視点であれば、今作の上田監督は物語映画を撮ろうとしているんじゃないの? ドキュメンタリーを撮ろうとしてこの映画になったわけじゃないでしょ?
この映画そのものは嘘でしょ?
自分は『物語は嘘だから面白いし、嘘だから描ける真実がある』と思っているから、そこで一気につまづいてしまった。
じゃあ、監督はドキュメンタリーを撮れよ! と。
いや、ドキュメンタリーだって面白いし、特に貶める意図はないとは一応言っておきますけれど」
カエル「う〜ん……特に今年は『虚構への愛』を語った映画が話題になったばかりだしねぇ」
主「まあ、最後まで観るとちゃんと映画(虚構)への愛があるんだけれどね。
そこでグッと冷めてしまった上に、今作はなかなかグロテスクなシーンがある。しっかりとゾンビ映画としてみせるシーンはみせるけれど……こちらはコメディの心持ちで行っているから、普通にドン引きしてしまった」
カエル「グロ映像が苦手だもんねぇ。いつもは覚悟していくけれど……こればっかりは相性があるかもねぇ」
しっかりとしたゾンビ映画でもあります
一部シーンは結構グロいかも……
(C)ENBUゼミナール
コメディパートについて
でもさ、コメディパートは結構笑い声が劇場中に響いていたじゃない!
……あのコメディパートも色々考えてしまったなぁ
主「これは本当に相性の問題だし、そこまででノレなかったこともあるだろうけれど……問題は2つあってさ。
……結局、本作って楽屋ネタなんだよね」
カエル「ゾンビ映画を作る映画のコメディだからね」
主「楽屋ネタは共有する人間は楽しいが、外部の人間はそこまで楽しめないということもある。映画評論家やワークショップの映画を観る人は、そりゃ楽屋内だよ。それから、この小規模映画を観に行こう! とする熱心なファンも楽屋内じゃなくても理解はできるかもね」
カエル「いや、それでいったら映画ブロガーも熱心なファンに入るだろうし、本作は多くの人に届くコメディだったんじゃないの?」
主「まあ、そうなんだけれどさ……どうにも笑うに笑えないんだよね。
例えば熱意があるキャラクターが空回りするシーンなどもあるんだけれど、そのシーンは心底同情してしまったし、ロメロに影響されていそうな熱心な役者が諭されるシーンは、まるで自分を見ているかのようだった」
カエル「……あ、あれだ。
ドリフとかの修学旅行のコントで『いかりや先生の苦労わかるよ……志村みたいなイタズラ小僧の相手って大変だよね』って思って笑えないやつだ」
主「その手の人物を監督目線で見ているから、ウザい人のように描いているけれど、でもさ、実際はその人なりにより良い作品にしようとしているんだよ。だからこそ口を出す。
その方向性がずれている行為を、笑って良いのだろうか?
それって……自分が好きな笑いじゃないかなぁ」
カエル「好きだからこそ空回りしてしまう人はどこにでもいるしねぇ」
主「結局それで笑うに笑えず……
それで少し面白い『お、これはクスリとくるな』というシーンもあるにはある。
だけれどさ、唐突に有名作品のパロディがあるんだよ。
それで一気に冷めちゃった。
『え? なんで急にここでぶっ込んできた? そんな前振り一切なかったじゃん』って」
カエル「う〜ん……既存作品のパロディネタという意味では、やっていることは福田雄一監督の『銀魂』とかと同じなんだけれどね」
撮影方法が特徴的でオススメしたいコメディ映画はこちら!
劇場で映画を観る理由
カエル「でもさ、劇場内は爆笑の渦だったじゃない!」
主「……なんで映画は映画館で見るべきか、説明できる?」
カエル「え? やっぱり大きいスクリーンで、綺麗な音響で物語世界に没入するためで……」
主「もちろん、それもある。でも、大事なのは『ライブ感』なんだよ。
応援上映もそうだけれど、同じ作品を観てみんなで共有しているというライブ感、それがものすごく大事。
例えば音楽でもCD音声でいいや、ライブは無意味! とはならないでしょ?
そりゃいい環境で何度も撮り直して、しかも修正もできる録音された音の方が聞き応えはあるかもしれないけれど、ライブの一体感や盛り上がりは現地でしか楽しめない。
今作もそれと同じで……笑いが広がっていく瞬間は、本当にアゲアゲになるんだよ」
カエル「……? じゃあ絶賛じゃない?」
主「たださ……ライブ中にノレなかった人は地獄だよね。
『なんで自分はこの場にいるんだろ?』と考えてしまい、しかもみんなはノリノリになっている。ひとりだけ冷めてそこでつまんなそうに座っている……
大都会の人混みの中で『自分は孤独だ』と感じたようなものだよ。しかも、同じものを観ているのにさ。それが一層虚しくさせた……しかも、その後にSNSや評判を見ても、他の映画好きはみんな『大好き!』を連呼している。
あの瞬間、このブログをやめようかと考えました。
まあ、10秒で『知るか! 関係ねぇ!』ってなったけれど」
カエル「なんか……本当に個人的なところだね。
でも監督も『0点か200点をめざした』と語っているけれど、200点の人の中に囲まれたら、例えば60点の人でも疎外感は抱くかも……」
主「だから上映直後の『泣きました』はこの波にのれないことを痛感した時の涙です。
『カメラを止めるな』は”カメを止めました”って、それだけのつまんないオチですよ」
より詳しくネタバレありで知りたい方は、以下の記事を参照にしてください
まとめ
……え〜、では、ここでまとめです
- ワークショップから生まれた大傑作作品!
- 劇場内は笑いの渦に巻き込まれる!
- とてつもない工夫と挑戦精神のこもった作品!
- ……ただし、ノレないとかなり寂しい気持ちになるかも
色々語ったが『うまい映画』であることは間違いないしの
カエル「あれ、あの人は帰って行ったの?」
亀「セブンイレブンで売っている葛きりを食べながら家でゆっくりするらしいの」
カエル「また? アイスの食べ過ぎで糖尿一直線なのに……
それで話を戻すけれど、この手のワークショップということも逆手に取った映画だし、誰もが褒めてオススメするのがよくわかるよ」
亀「安さや経験のなさを逆手に取った、見事な脚本じゃな。
しかもほぼ同じロケーションで撮られている。その点も工夫されておるの」
カエル「そう考えると、本当に応援したい作品なんだよねぇ……ちょっと色々語ったけれど、でも多くの人に受け入れられやすい作品なんじゃないかな?」
亀「監督の次の作品も気になる。
まさしく2018年を代表する1作になるんじゃろうな」
カエル「……まあ、1人の観客の言うことなんて気にしないで、みんな映画館へ向かってください!」
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