10年ぶりにクリント・イーストウッドが監督・主演俳優を務めた『運び屋』の感想記事です!
試写会で鑑賞したので褒め重視で、この記事ではネタバレなしで見所を語っていこうかな
カエルくん(以下カエル)
「やっぱりイーストウッドが監督だけでなく主演も果たすと注目度は上がるよねぇ!
こちらはアメリカでも1億ドルを超える大ヒットになっています!」
主
「イーストウッドといえども、1億ドルを超える作品はわずかに6作のみ。
挙げていくと……
- 許されざる者
- ミリオンダラーベイビー
- グラン・トリノ
- アメリカンスナイパー
- ハドソン川の奇跡
そして、今作を含めての6作品だ」
カエル「……どれもイーストウッドを代表する作品たちばかりだね。
近年は監督としてのイーストウッドの評価が固まっているとはいえ、1億ドルを突破するというのは大変なことなんだね」
主「つまり、アメリカの興行収入では、すでにイーストウッド晩年の傑作という評価が固まりつつある。
ちなみに大手レビューサイトのロッテントマトでも批評家表、一般観客評ともに満足度70パーセントほどと、まずまずの成績を残している。
これから語るけれど、この作品でこの評価はかなり高いと言っていいかもしれないな」
カエル「もちろん、みんなイーストウッドが演じるのを観るのが大好き! ってことかもしれないけれどね。
それでは、ネタバレ抜きで今作の見どころなどについて語っていきましょうか!」
主「ネタバレ込みの力を入れて語った考察記事はこちらを読んでください!」
作品紹介・あらすじ
アメリカを代表する巨匠にして、大スターでもあるクリント・イーストウッドが『グラン・トリノ』以来10年ぶりに監督・主演を務めた作品。自身の監督作で主演を果たすことはない、と語っていたものの、今作にて復帰したことで話題となる。
脚本は『グラン・トリノ』でもタッグを組んだニック・シェンクが担当し、実際にあった報道記事を基にした物語を作り上げる。
主演のクリント・イーストウッドのほか『アメリカン・スナイパー』で主演を果たしたブラットリー・クーパ、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシア、マイケル・ペーニャなどの豪華共演陣も注目だが、イーストウッドの実の娘であるアリソン・イーストウッドが作中でも娘の役を演じることが話題に。
仕事一筋で生きてきた90歳の白人男性アール・ストーン(クリント・イーストウッド)は百合の栽培で品評会でも高い評価を受けていた。しかし、お金がなくなってしまい家も農園も差し押さえられてしまうことに。
ある時、車の運転をしているだけでお金がもらえるという仕事を持ちかけらたあーるは、それを引き受けたのだが実態はメキシコ麻薬カルテルの薬を運搬する『運び屋』の仕事だった。
前科も交通違反もなく、高齢の白人ということもあり、警察にも運び屋と疑われないためにカルテルにも重用されていくのだが……
感想
では、いつものようにTwitterの短評からスタートです!
#運び屋
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年2月22日
イーストウッドはどこまで走り続けるのか?
実在した高齢の麻薬の運び屋に着想を得て10年ぶりに監督、主演を果たした本作は今のアメリカ社会、日本社会にも重要な一作!
さらに自らの生き様を描ききり、終盤には鳥肌が止まらなかった
アメリカで1億ドル越えのヒットも納得、オススメです! pic.twitter.com/XULiBTdm4X
間違いなく晩年のイーストウッド作品の代表作にして、2019年の洋画を語るのに外せない作品でしょう!
カエル「お! 大絶賛じゃないですか!」
主「もちろん、試写会での鑑賞なので否定的な意見を言いませんが、今作に関しては不満は一切ありません!
間違いなく面白いし、近年社会的にも重要なことを描いてきたイーストウッドならではのメッセージ性も多く含まれており、これまで長年にわたり彼を追いかけてきた洋画ファン、イーストウッドファンならば必見の1作!
だけれど、本作はあまり映画を見ない人にも届きやすい作品になっていて……だからこそアメリカでも1億ドルの大台を突破したとも言える」
カエル「もちろんイーストウッドの評価は揺るぎないものがあるとはいえ、すべての作品が1億ドルに達するわけではないしね。それだけ、一般の観客にも届いている作品とも言えるわけで……」
主「これから詳しく見どころを紹介していくけれど、もしかしたら予告を見て『シリアスな作品だな』と思って劇場に向かった日本人はあっけにとられるかもしれない。
その理由は……ネタバレにはならない範囲で、これから詳しく語っていきます」
本作の見どころ紹介!
見どころ① 予想を裏切る!? 実はこの映画は〇〇〇〇だった!
じゃあ、ネタバレにならない程度に見どころを紹介するけれど、まず1つ目は何になるの?
この映画って、予告を見た人の予想を裏切る作品になっているんだよ!
カエル「それが先ほどからあげている”一般の観客にも届きやすい”という部分だね」
主「先に挙げた1億ドルを突破したイーストウッド作品を見ても、またそのイメージからしてもこの作品、相当シリアスで重い作品なんだろうな、って思いがみんなあると思うんだよ」
カエル「予告も重々しいし、しかも『人はいつまでも走れない』でしょ?
イーストウッドの年齢を考えると、それは結構気になってしまうというか……」
主「でも、本作はコメディなんです」
カエル「……え? コメディなの?」
主「コメディです。
めっちゃ軽いし、イーストウッドのイメージではいかつい顔して銃を撃つものがあるけれど、そのイメージで観に行くと肩透かしを食らうくらいのコメディです。
でも、本来はそのような面も持っている俳優でもあるし、近年の作品を見ても……本当にすごいなぁ、と思うけれど『インビクタス』や『ジャージー・ボーイズ』などは結構気軽に見れる映画でもある。
さすがハリウッドの娯楽性を何十年も見続けた男だけあって、軽快な映画も撮れるけれど、本作はまさしくそれです」
カエル「……ということは『イーストウッドだから気合い入れて、体調を整えてどんな展開が来てもいいように……』という心構えなどは必要ないの?」
主「一切必要なし!
むしろ、そんなものは邪魔になるだけかもしれない。
もう『今日は運び屋みにいこーっと!』って感じで、ノリノリルンルンで行ってくれていい。なんなら……さすがに子供連れのファミリーは無理だろうけれど、恋人を連れて行ってもいいよ。
それくらい多くの人に届きやすい物語になっている」
見どころ② テンポの良さ
ここ最近は短い映画を作っていたけれど、今作も約2時間ほどと普通の映画の長さなんだね
見ていて驚愕だったのが編集スキルやテンポの良さなんだよ
カエル「最近は大作になってくると2時間を大きく超えるような映画も珍しくなってきていて、それが面白ければ問題ないけれど、ちょっと退屈に感じてしまうシーンなんかもあったりするもんね……」
主「それらの大作には運び屋のテンポの良さを見習ってほしい!
イーストウッドは早撮りで有名な監督でもあるけれど、今作も必要最低限のシーンをつなげていこうとする意思を感じる。だから2時間ぐらいに収まっているけれど、普通の監督だったらあと10分や20分は伸びている。
この2時間以内に収めるというのも、今作のエンタメ性やコメディ性を支えている要因の1つなんだ」
カエル「ふむふむ……無駄なシーンは描かないで有名な監督だもんね」
主「だから見ていると『え、このシーンの間がカットになるの!?』と驚愕することもあるんだけれど、でもそのジャンプが心地いいんだよ。改めて思い返すと、その間のシーンはいらなかったことに気がつかされれる。
映画について熟知した監督だからこその編集が見られて、そこも面白いポイントだね」
見どころ③ イーストウッドを知っていると発見もいっぱい
ここまでは初見さんにも見やすいという話だけれど、イーストウッドファンにはどんな作品なの?
もちろん、とても深い物語になっているよ
カエル「今作では娘のアリソン・イーストウッドが出演していることでも話題だよね。最近は息子や娘など、血縁を起用するも多いけれど……」
主「そのあたりは監督特権でもあるし、身内贔屓かもしれないけれどイーストウッドだったらアリだよね。
しかもさ、10年ぶりの主演作って聞いたら、もう誰もがイーストウッドを代表するクールな男の演技をすると思ったら、別にそうでもない。
その割り切り方も素晴らしいんだけれど、本当に面白いのはイーストウッドの作品や人生を象徴するような物語になっているんだ」
カエル「知っていると面白い部分だね」
主「ここ数年は黒人の方々をはじめとした有色人種やマイノリティ、あるいは女性の社会進出を描いたハリウッド大作が非常に多い。もちろん、それはそれでいいんだけれど、イーストウッドは衰退していく白人を描いてきた歴史のある人でもある。
そしてその実人生も波乱万丈であって、女性問題をはじめとして様々なスキャンダルもあったけれど、それを屁とも思っていないから面白いけれど……それに対する言及のようにも受け取れる描写もたくさんあるんだ」
カエル「その象徴が娘のアリソンなんだろうなぁ」
主「本作は実際に存在した90歳の運び屋のお話なんだけれど、見ればみるほどイーストウッドのお話にも見えてくるし、なぜ引退宣言を撤回してこの映画を撮ったのか? ということも理解出来る物語になっているんだ」
見どころ④ 強烈なメッセージ性
そして、今作を高く評価するのはこのメッセージ性の部分です!
さすがはイーストウッドですよ!
カエル「もちろんそのメッセージ性の中身に関してはまだ語りませんが……これはみんながどのような反応をするのか、非常に楽しみだよね」
主「それこそ受け取り方は多種多様だろうし、イーストウッドへの愛の有無、またはその問題に対するスタンスによってメッセージが大きく変わるだろう。
例えば……『グラン・トリノ』って結構差別的な発言も多いお話だったじゃない?
今作も攻めた表現や発言が多いのに、ロッテントマトでもそれなりの評価を得ているというのは、自分はもっと注目していいと思う」
カエル「近年の作品は『アメリカン・スナイパー』も賛否両論だったけれど、決してハリウッドの多数派が描くような政治性を宿した映画を撮る監督ではないよね」
主「イーストウッドはハリウッドでは珍しく共和党支持者なんです。
そして先の大統領選でもトランプを支持した……とは言っても、熱烈な支持というよりも、ヒラリーよりもマシ、というニュアンスも含まれていたようだけれどね」
カエル「日本からすると大したことなさそうだけれど、これってとても大きなことだよね……」
主「アカデミー賞などを見ても融和を描いた民主党的な価値観を描いた作品がたくさんあるけれど、本作はそれらの作品とは根底ではスタンスが異なる。
むしろ、今作が描いた現実を描けていない映画だってたくさんある。
アカデミー賞やスピーチを見るとトランプを悪の大統領とする作品や識者も多いけれど、でも問題はそんなに単純なんですかね? と自分は語りたくなる」
カエル「その辺りは様々な価値観があるでしょうが、本当にトランプがただの悪党であれば正規の方法で大統領にはなっていないわけだしねぇ」
主「そういった、共和党支持者の視点からのアメリカの現状と理想を描いている。
だけれど、決して現代に不必要な価値観を……例えば差別主義などを描いているわけではない。
むしろ、そのメッセージはとても重く、現代に響くものである。
もちろん、これはアメリカだけではない。日本人もイーストウッドファンは多いけれど、このメッセージに共感する方は多いのではないかな?」
カエル「それがどのようなものなのかは、観てからのお楽しみにしていてください!」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- イーストウッドの最新作は予想に反してコミカルな作風!
- 特に編集がよく、テンポよく楽しむことができる娯楽作!
- イーストウッドを知っていると楽しめる要素も盛りだたくさん!
- 今作のメッセージは現代にとても重要なもの!
期待を裏切らない監督です
カエル「では、うちがどのような受け取り方をしたのか、という点に関しては公開日にアップする予定です。
と言っても、まだ1文字も書いていないのでどれくらいの分量になるかわかりませんが……相当伸びるようであれば、やっぱり分割しようかなぁ」
主「今作に関しては語りたいことも山ほどあるし、やっぱり似たような要素の非常に多い『グリーンブック』との比較は重要だろう。
そしてイーストウッドが何を考えているのか……そこも含めて、考察していくことにしようかな」