今回はいよいよ『おかあさんといっしょ』 の映画を見てきました!
さすがに、おかあさんといっしょ自体も何十年ぶりの鑑賞だなぁ……
カエルくん(以下カエル)
「実は一部で話題でもあったこの作品。
どのような作品に仕上がっているのか、気になります!
主
「平日の朝に行ったけれど、意外にも他にも大人だけのお客さんもいたりして、案外いるもんだなぁ……と思ったり。
物見遊山と言うよりは、真面目な様子だったら子供向け作品を手掛ける人だったのかもね」
カエル「それでは、感想記事のスタートです!」
賀来賢人“謎の仮面”になる? 「映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!」予告編が公開
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
おかあさんといっしょ 観た
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年2月25日
レベルたけぇ…!
物語が推進する要素を網羅しキャラクター、歌、ダンスや体操、なぞなぞで飽きさせない
(ブロッコリーはずるい!)
途中でマイルドながらも重いテーマも提示に心掴まれ、オチも好き…すりかえ仮面もそうだけど入れ替え仮面よ…!
全体的に満足度の高い良作 pic.twitter.com/lj2jGTMkGo
これは掘り出し物でしたね
カエル「ついにここに手を出したか……とも思ったけれど、実は一部では高評価が相次いでいる作品でもありました。
隠れた傑作というか、評価されづらいタイプのジャンルというか……」
主「この映画が年間ベストという人はいないかもしれない。また、児童・幼児向け作品の性質が強く、色々と大人の感覚すると違和感のあるシーンがあることも……それはニコニコと笑ってハイテンションな演技とか、そういう”児童向け作品あるある”だけれど、そういうのもある。
だけれど、それを補ってあまりあるほどの魅力に満ちているわけだ」
この映画がとても技術的に優れているという話もしているよね
物語を作ることに興味がある人は、この映画から学ぶことが多いだろうね
カエル「そんなに褒め称えるの?」
主「例えばさ『パラサイト』なんかは、さすがは世界が認めた作品とあって技術的に非常に優れている。だけれど、逆にいえば勉強するにしては”優れすぎている”面もあり、高度すぎて勉強になりづらい。
また、大人向け作品は……自分はあえて『甘えている』と称するけれど、大人向けだからこそ若干の甘えがある部分もある」
カエル「大人は退屈な映画でも我慢してくれるけれど、子供は『退屈! つまんない! 帰る!』ってわかりやすくグズったり、わがまま言うからね……」
主「だからこそ、この映画は”どうすれば面白い物語ができるのだろうか?”ということをしっかりと考えた上で、娯楽性・物語性・社会批評性などを磨き上げながらも、子供向けの作品として完成度を上げてきている。
物語の骨子がしっかりとしているから、これを流用するだけで面白い作品ができる。
しかも、何が上手いのかわかりやすい。
自分は物語の組み方を学びたい人は、本作を見ておくと特に勉強になるとオススメするよ。
それくらい、はっきりとわかりやすい”映画”だから」
自分は『ブンバボーン』の歌が頭から離れません……
以下ネタバレあり
本作の上手いポイント① メリハリのついた物語
まず、1つ目のポイントは”メリハリのついた物語”です!
これは大人向け映画でもおなじみの点だね
カエル「お客さんを飽きさせないための工夫という部分だよね。
特に、今作は強制応援上映とも言える形式なのも特徴です。
つまり、映画のスクリーンに向かって子供たちが叫んだり、一緒に歌ったりすることを許容しているわけだね」
主「それもまた1つのお客さんの引き込み方の1つだね。
今作は冒頭で軽く説明が入ってから、歌のお兄さんたちと一緒に歌う場面からスタートする。これは子供向けアニメ映画でもおなじみであり、アンパンマンシリーズなどもそのような導入の作品も多い」
子供たちを歌とダンスで物語の世界に引き込むわけだね
大人向けにやると『グレイテスト・ショーマン』などになるわけだ
主「つまり、最初に歌って踊って作品世界に引き込む。
もしくは……『ベイビードライバー』のように、アクションや1カットなどで魅力的な映像と音楽の融合を作りあげる。
その曲調がミュージカルか、あるいは童謡や子供向けの歌なのか? という点が違うだけで、やっていることは同じなわけだ。
他にも、飽きそうなタイミングで体操やなぞなぞを挟む、観客に向かって話しかける、アニメパートをいれる、大人も巻き込んで一緒に”映画を体験”していくなどの工夫が凝らされている」
この映画は”体験”する映画だから、その魅力が満載だよねぇ
大人向けにすると派手なアクションを入れたりとか、物語の鍵を握る伏線を貼るなどを、この映画もしっかりとしているわけだ
主「ちょっと飽きたかな? というタイミングで物語やパートが切り替わる。
それは大人が見ていても面白いよ」
カエル「ちなみに、作中のなぞなぞなどは大人が見ても『え?』となるほど、難易度が高いものでした!」
主「あれは悔しかったなぁ〜!
この映画に関しては大人を置き去りにしていないから、子供と大人が”一緒に”楽しむことができるんだよね。
そこも素晴らしい工夫だと思うし、テーマにも合致していると感じたなぁ」
本作の上手いポイント② キャラクターの性格つけと配置
次のポイントは”キャラクターの性格付けと配置”です
物語には3つの重要な要素がある
カエル「え〜っと……うちの言葉で語ると
- 世界観(設定)
- キャラクター
- 展開
だよね」
主「その中でも、重要視されるのが”キャラクター”だ。特に魅力的なキャラクターにファンがつきやすい。
そして、とてもわかりやすいながらも魅力的なキャラクター配置がされている」
カエル「簡単にまとめると」
- 歌のお兄さん……リーダータイプでみんなを引っ張る、正義感が強い
- 歌のお姉さん……おとぼけで食いしん坊など、コメディ役
- 体操のお兄さん……歌のお姉さんとは違うタイプの天然ボケの男
- 体操のお姉さん……しっかり者
主「大体ざっくりというとこんな感じなのね。
そこに敵役のすりかえかめんがやってくるけれど、彼のキャラクター性も非常に良い。
そしてすりかえかめんと歌のお兄さんが対決の場面になると、歌のお姉さんがボケるんだよ」
カエル「結構コメディとしても面白い作品だったよね」
主「キャラクターの魅力が増すとともに、衝突しそうになった際に、ボケで中和する役目がある。しかも、お姉さんのボケに対してツッコミもあるけれど、それが威圧感・暴力的な部分もなく、優しい笑いになっている。
これはとても難しい技術だろう。
また、体操のお兄さんもボケ役とすることで、男女の性差によるものではないとアピールしながら、しっかりとお兄さんの身体表現でかっこいいところもアピール、そのギャップも良い」
- 歌のお兄さんとお姉さんのバディ
- 体操のお兄さんとお姉さんのバディ
- すりかえかめんと、すりかえお嬢のバディ
この3つの組み合わせのバランスが非常によく、お互いの足りないところを補いあうわけだ
主「歌のバディと体操のバディはすりかえバディと対立するけれど、アニメ組の3人は対立関係にない。
だからこそ、アニメ組はすりかえお嬢に寄り添うことができるという展開にもなる。
そしてすりかえかめん達と仲間ながらも、別の役割を果たす入れ替え仮面の役割も重要だ」
本作の上手いポイント③ 批評性を内包した作品
この作品は幼児向けで、ただただ笑っておしまいなんじゃないの?
全然違うよ! しっかりとした批評性を内包している!
カエル「えっと……この映画でそんなことを語る人って他にいるのだろうか?」
主「今作で重要なのはすりかえかめんと、入れ替え仮面の対比だ。
この2人が果たす役割……それは『忘れられてしまうキャラクター』という重要なものだ」
カエル「作中では子供達に忘れられてしまうと消えてしまう、という設定が明かされます」
主「この手の児童・幼児向け作品の宿命でもあるけれど、どれほど愛したキャラクターであっても、いつかは忘れてしまうものだ。
おかあさんといっしょというタイトルなどは変わらずあるものの、中身は全く違うものになってしまう」
カエル「……確かに、僕も子供の頃に『おかあさんといっしょ』を見た記憶はあるけれど、キャラクターやお兄さんたちの名前は何も覚えたないなぁ」
それこそ成長と別れという『デジモンアドベンチャー ラストエヴォリューション 絆』と似たテーマと言えるかもしれない
主「つまり
- すりかえ仮面→忘れられてしまいそうな前番組
- 入れ替え仮面→もっと前に放送されていた番組達
という構図になっている。そして忘れれないように『思い出を作る』ということが語られることで、すりかえ仮面は消えることがなくなった。
だけれど、入れ替え仮面はその様子を満足して見つめながら、消えていくんだよね。
つまりさ、この手の番組の宿命に向き合いながらも、忘れられないキャラクターの喜び、忘れられてしまったキャラクターの喜び、その両方が対立しないものであると描いているわけだ」
忘れるって残念なことのようだけれど、この手の番組に関してはむしろ成長として喜ばしいことなのかなぁ
この批評性に感動した
主「まとめると本作のメッセージは以下の3点となる。
- 子供達に対して→友情の大切さを伝える道徳的メッセージ性
- 大人に対して→写真撮影や劇場体験を通して子供との『思い出』を共有するメッセージ性
- この手番組の宿命である”忘れ去られること”を肯定的に描くテーマ性
この3つのメッセージ・テーマが違和感なく組み込まれているわけですよ。
どうだよ、このレベルの高さ!
ほとんどの大人向けの物語ができているわけではないことを、様々な飽きさせない工夫を含みながら、さらっと描いているわけだから……自分の興奮が伝わるだろうか?」
子供向けながらも”子供騙し”にならない物語
これはいつも語ることだけれど、とても大事な部分だよね
一瞬たりとも”子供向け”を”子供騙し”と受け取られたら、作品は崩壊する
カエル「大人が見ても、子供が見ても面白い作品を目指すって実はとても難しいことだよね。しかも、ディズニー作品などよりもさらに低い年齢層がメインターゲットだろうし……」
主「この映画を見た後にさ、子供と感想を語りあう。
そして何年後かに写真が出てきたり、アルバムを見たときに、この映画の写真を見るかもしれない。
そのときに『あの頃はね……』なんて思い出を共有するかもしれない。その時、子供や大人の中ですりかえ仮面が再び復活するんだ」
カエル「……忘れられてしまうことを恐れる、つまり思い出がテーマである理由だね」
主「また、この手の映画の特性として”人生で初めての映画体験”の可能性がある。
それはもしかしたら子供も親も忘れてしまうことかもしれない……だけれど、それはそれでまた1つの成長だからさ、入れ替え仮面のように笑って終わらせることもできる。
そんな時に……『あんな子供騙しの映画』って思い出があったとしたら、それはそれは寂しいものだろう」
初めての映画体験だったら、とても面白くて作り込まれているものが良いよね……
だからこそ、子供向け映画に対して手を抜くことは許されないわけだ
主「先にも言った通り、子供は一瞬で飽きるよ。
我慢なんてしてくれない。その難しさがありながらも、もちろんエログロはだめ。あまり難しすぎる内容もダメだけれど、だからと言って簡単すぎてもダメ。できれば道徳的なメッセージも内包していると良いけれど、あんまり押し付けがましいのは辛い。
この難しいバランス感覚を要求される。
だからこそ、子供向け作品こそ全力で、魂を込めて作らなければいけない。
今作はその魂を感じたし、真剣に向き合った様子や工夫がはっきりと伝わってきた。1秒たりとも飽きさせないように、スタッフ・キャストが本気になっている。
だから面白い……考えてみれば当たり前のことだよ。
でも、それが1番難しい。
だから、自分はこういった作品は……できればもっと評価されて欲しいけれどねぇ」