物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』ネタバレ感想&評価! 現代の女児アニメを象徴する傑作アニメ映画!

 

今年も登場、秋のプリキュアの記事になります!

 

 

 

昨年の『HUGプリ』の映画は年間ランキング1位に選ぶほどの大傑作だったから、今作も期待だよ!

 

 

 

カエルくん(以下カエル)

「昨年は全話見ていたけれど、今回の『スタプリ』は、全くと言っていいほど見ていないねぇ……」

 

「別に何が悪いということもなく、1話を鑑賞して以降テレビシリーズは追えてないな」

 

 

カエル「前回の『HUGプリ』とはやっぱり違う印象なの?」

主「1話の段階で……これは少女向け作品としては正しいと思うけれど、そのハイテンションなノリが自分にはついていけないかな、って気分になっただけ。

 でもHUGがかなり大人を意識して、ポリコレ要素も満載すぎた面もあるから子供向け作品としては正しい揺り戻しだと思う。

 まあ、そのままずっと見ていけば当然色々な発見があるだろうし、面白い作品なのだろうけれど……」

 

カエル「1年間同じ作品を見るには『毎週欠かさずに見るぞ!』というよりも『数週間空いたとしても今週は見よう!』というのが大事なのかもね。

 というわけで、テレビシリーズはほぼ未見ですが、映画版は鑑賞しましたのでその感想に行ってみよう!」

 

 

 

 

 

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作品紹介・あらすじ

 

 国民的人気作品『プリキュアシリーズ』の最新作である『スター☆トウィンクルプリキュア』の劇場版作品。今作で通算27作品目となり、宇宙をテーマにした物語が展開されている。

 監督は『映画魔法使いプリキュア 奇跡の変身! キュアモフルン!』も担当した田中裕太、同作の脚本も務めた田中仁が今作も脚本を担当する。

 成瀬瑛美、小原好美、安野希世乃、小松未可子、上坂すみれなどのおなじみのメンバーのほかに片桐仁、濱津隆之などが声を当てる。

 

 いつものようにプリキュアとして活動しているひかるたちは、星型の不思議な生物と出会う。言葉も通じず、振り回されがちな2人であったが生物がもつワープの力を使い世界中を旅するうちに、仲を深めていく。 未確認生物UMAからユーマと名付けられたその生物は実は宇宙生物であり、その希少価値を狙うハンターたちが襲来することになる……

 果たしてプリキュアたちはユーマを守ることができるのか?

 そしてユーマの正体は?

 


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感想

 

では、Twitterの短評からスタートです!

 

 

2019年トップクラスの傑作アニメ映画です!

 

 

カエル「お! 2年連続で秋のプリキュア映画が高い評価をつけたね!

主「予告の段階から名作オーラがプンプンしたいけれど、それに間違いはなかった!

 実は春のプリキュア映画を見たとき、その出来がイマイチに感じられて『やっぱりHUGが好きなだけだったのかなぁ』と思っていた部分もあるけれど、本作は紛れもなく1作の映画として高い魅力を備えた、最高の女児向けアニメ映画であることは疑いようがない。

 個人的には……アニメオタク向けだった『Fate』などの作品と並ぶ満足度だったよ」

 

カエル「原作にあたるテレビシリーズを見ていないのにその評価ってすごいことだよね……」

主「自分はテレビアニメを見ることなくても理解できたのは映画をそれなりに見ているから、ってこともあるだろうけれど、この映画の作りがそれだけ万人に受けるようになっているからだと思う。

 しかも子供向けの一面と、大人向けの一面の両方を兼ね備えた映画でもあり、どちらでも楽しめることは間違いない

 

カエル「ディズニー/ピクサーも2重構造というか、世代によって作品の捉え方が異なる作りをしているけれど、今作もそのようなことをやっているんだね」

主「もしかしたら小さい子供には難しいかな? という思いもあるけれど、ある程度成長した後に見返してみて『こんなにいい作品だったんだ!』と驚愕すること間違いなし!

 個人的には2019年ベスト日本アニメ映画と言いたいくらいの作品だね

 

 

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本作の魅力

 

どんなところが魅力的なの?

 

まあ、ほぼ全部なんだけれど……近年の女児向けアニメの人気要素が多く入りながら、うまくまとまっていることかな

 

カエル「あんまりネタバレになるとあれだけれど、プリキュアといえばダンス! って思う人もいると思うんだけれど、今作はさらに変身シーンに歌まで付いていて、より子供達が楽しめそうな作品になっているよね」

主「子供向けアニメでも歌やダンスを取り入れた作品は大人気だし、それこそ今はアイドルアニメ全盛期の時代とも言える。

 今作もそこを重点的に描いていて、歌が重要なモチーフになるんだけれど……それが感動的ですらあるんだよね。最後にノルマだから入れました! ってパターンが多かったと思うけれど、そうじゃなくて物語に必要だからきっちりと入れている。

 子供は単純に歌とダンスで楽しみ、大人はその意味を考えるとより感動するんじゃないかなぁ

 

カエル「それから、本作にはロードムービー要素もあるけれど、世界中の”不思議”を探しに行く描写がよかったね

主「映画としては取り立てて話が動く部分ではないんだけれど、その映像の圧巻の美しさに魅了されたね。あれはアニメだからこそできる映像でもあり、背景を魅せるという意味では新海誠にも劣らないとすら思ったほど。

 他にも陰影の付け方で……ちょっと重くなるシーンがあるんだけれど、そこの暗さの演出もしっかりと味があって良かったし、良いメリハリになっていた。

 あの映像を見るだけでも劇場に足を運ぶ価値があります!

 

 

 

 

 

スタプリが描いてきたテーマ

 

ちょっとだけ突っ込んだ話をすると、スタプリのテーマは”多様性”って言われているよね

 

この描き方がいいバランスなんだよ

 

カエル「近年ではハリウッドを中心に世界中で重要視されている傾向ではありますが、日本でも多様性重視の流れは確実に浸透してきています。

 それにチャレンジした作品の1つとなっているけれど、スタプリの特徴はどのあたりになるの?」

 

主「やっぱり”宇宙”をテーマにしたところではないかな?

 多様性を描くときに大人が考えるのは人種や国籍、文化、宗教などの問題だろうけれど、もちろん、作風によるとは思うけれどそれを直接描くのは子供向けアニメとしては芸がないとも言える。

 そのため、ディズニーでは『ズートピア』だったり、あるいは2019年秋にテレビアニメもスタートした『BEASTARS』のように動物を描くことで、多様性の問題を描くのも1つの手だろう。

 この2作は単なる多様性の重視を描くだけでなく、理解し合うことの難しさも描いており意欲的な作品だよね。

 スタプリの場合は宇宙って誰にもわからない場所をテーマにして描くことで、”知る””理解しようとする”ことの重要性を描いているわけだ」

 

ズートピア (吹替版)

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カエル「それが映画版でもしっかりと描かれていたね」

主「特に邦画の場合、大人向け映画の方が重要な問題をそのまま描いたりとか、あるいは単調で予定調和に描いたりと工夫がなかったりする。

 子供向けアニメは重要な問題を子供達にわかりやすく、楽しんでもらうように作り、工夫が凝らされている作品も多い。

 この辺りは大人向け作品を見ている人たちにも参考にしてほしい、見事なバランス感覚を堪能することができたね」

 

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少しだけ苦言を

 

それだけ褒めていても、手放しに絶賛というわけではないんだね

 

尺が限られているのもわかるけれど”スタプリ”の映画というよりはひかるとララの映画になってしまっている

 

カエル「この映画を見た限りでは上級生組はバランスが良すぎて、この作品の場合は便利すぎるから少し外に出てもらいましたって感じなのかな?

 でも70分で全員を活躍させるのは難しいから、それはそれで英断だと思うけれど……

主「ここはバランスの問題だし、スタッフの判断がミスだったということはないけれど、あくまでもスタプリの映画だからなぁ、という意味ではちょっとだけ違和感があった。

 あとは……ここは趣味の問題かもしれないけれど、戦闘シーンがね

 

カエル「2019年は『ワンピース スタンピード』などの戦闘シーンが素晴らしい作品も相次いでいるから、ちょっと感覚が麻痺している部分もあるかもね。

 全員に見せ場があるように作られており、また新コスチュームもお披露目されるなどサービス精神は満点だけれど……」

主「まあ、プリキュアはワンピースやドラゴンボールに比べると対象年齢が少し下がるコンテンツだとは思うし、その意味では刺激が強すぎずにバランスが良かった。作画も動いていたしね。

 それでも……もうちょっと、戦闘の個性が見えてきたりとかしたら文句もつけようがない作品だったのではないでしょうか?

 

カエル「とは言っても、メインターゲット層である子供達が満足が1番だし、刺激という意味でもいいバランスだったと思うけれどなぁ」

主「去年が良すぎたから、ハードル爆上がりってのはあるかも。

 去年は戦闘シーンだけでも感涙ものだったからね」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

作品考察

 

本作を見ながら連想した作品

 

では、ここからはネタバレありで語っていきます!

 

この作品を見ながら連想したのは、やっぱりこの作品だよねぇ

 

 

超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか

 

ご存知の方も多いでしょう『超時空要塞マクロス』だ!

 

カエル「スタプリって『うる星やつら』とかの名作SFアニメのオマージュが多いという話も聞いているけれど、今作は明確にマクロスだったね!

 戦闘でどうにかして敵を倒してハッピーエンドではなくて、歌で……文化の力でお互いの理解を促すという面でも全く一緒だよね

主「プリキュアでマクロスを選択したことは最適解だとすら思うね。

 マクロス以前のSFアニメって、特に戦闘する作品は敵を武器で倒しておしまい! ハッピーエンド(……とは言えない作品もある)となっているものが多かった印象だけれど、マクロスはそのようなことをやめたわけだ」

 

カエル「恋愛劇をメインにしたりと、色々とロボットアニメの定石を壊す部分が目立つ作品だよね」

主「そこで歌を使って融和を描く、と言うのがマクロスの今後の基本コンセプトにもなっていく。

 特に現代は先ほども述べたようにアイドルアニメが全盛の時代であり、劇場でもう歌うシーンやダンスシーンが目玉の作品だって珍しくなくなってきた。

 技術力、作品の意義、テーマ性などを考えてもマクロスは現代でも……むしろ現代の方が通用する作品だし、そこに目をつけたのは大正解だったのではないだろうか?

 

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本作の2つの視点

 

 

本作にはいくつもの視点があると言うことだけれど、子供向けにはどんなテーマがあるの?

 

単純に”友達や未知の存在に対して優しくしよう”という視点だ

 

カエル「子供向けアニメ映画ではよくあるテーマのようにも思うけれど、とても大事でわかりやすい話だよね」

主「ユーマとの関係性を通して”生き物には優しくしよう”というメッセージを伝えると共に、さらに言えば”多様性を重視しよう”ということもできる。

 例えば、ユーマを外国からきた子供、とすることだってできる。

 また障害があって喋れない子供とか、色々な立場や境遇の子供達を含んでいるわけだ」

 

カエル「もしかしたら大人よりも子供の方が言葉が通じないリスクというのは少ないのかもしれないね。相手の言っている意味がわからなくても、なんとなく通じ合えるものがあるというか……お互いに少しずつ学べるというかさ」

主「宇宙やユーマというキャラクターに対して、色々な意味を見いだすことだってできる。

 これは宇宙をテーマにした本作の劇場版では、良い視点だよね。

 言ってしまえばこの映画のためだけのキャラクターではあるんだけれど、しっかりと印象に残る活躍を果たし、本編には影響を与えないラストまでの設定も良かったねぇ」

 

 

 

 

大人向けの視点

 

じゃあ、大人向けの視点の話だとどうになるの?

 

先にも言った”多様性”と”環境問題”だろう

 

カエル「特に環境問題は最近小泉大臣が就任したことによって、注目度が上がっている印象だよね。一時期は原発問題の影に隠れてしまった印象もあるけれど……いや、確かに広い意味では原発問題も環境問題ではあるけれどさ」

主「この映画の中で敵であるハンターが語った『結局は人がやることだ』みたいなセリフがあったけれど、これは環境問題をそのまま語っている描写だよね。

『ユーマの正体である星の子供は影響を受けやすい』というのは人間の行動1つ1つによって地球環境は激変してしまう、ということを語っている。

 僕たちの行動で地球環境は変わる、もしかしたら美しい自然を残すこともできるかもしれないけれど、それを滅ぼす可能性だってあるわけだ

 

カエル「……ついこの間も話題になったスピーチみたいだね」

主「だから、この映画において世界中を旅するシーンが非常に美しく、叙情的に描かれているのは、そこが核になる描写だからだ。ここでおざなりな表現にしてしまうと、このテーマは一切の意味がなくなってしまう。

 だって”美しくない地球”を大事にしようっていうことになりかねない。

 だから本作は物語が直接動かない描写を丁寧に描いている。

 上級生組の修学旅行だって”沖縄にワープする”ということが大事だったから行かせたようなものじゃないかな? その辺りはちょっと割りを食った形かもね」

 

このメッセージは大人も子供も大事にしなければいけないよね

 

自分はこの語り方が大好きだなぁ

 

主「ちょっとだけ政治的な話をするけれど、自分は小泉大臣の『セクシー』発言は意図としてはアリだと思っている。確かに、中身がないとか、言葉に品がないなどの批判には自分も同意するよ。

 でも環境問題ってどうしても経済問題だとかと同列に語られてしまい、環境カルトなんて言われてしまう。

 だけれど、かっこよく語り、煽らずに経済と環境の両方採りの方法を探すことだってできるのではないだろうか?

 そのためには技術革新や予算などの様々な問題があるとは思うけれど……対立を煽るように怒りを込めて語った先に、豊かな地球があるとは思えない

 

カエル「様々な意見があるとは思うけれどね」

主「色々な人たちがいて、色々な考えがある。

 中にはこの作品のハンターのように自分勝手な人もいる。

 それは残念ながら本当のことだし、見方を変えれば自分だってハンターのようなものかもしれない。

 でもさ、お互いの主張を認めながらも一歩を踏み出して妥協点を探す……それが多様性だと思うわけ。

 だから、女児向けアニメにおいてララとユーマの関係性の先の多様性の尊重と相互理解を描き、環境問題を描いたことを自分は高く評価したい。

 未来を明るく語り、子供達に優しく融和を啓蒙する。

 子供向けアニメに最も重要なものが、この映画にはあったのではないだろうか?

 

 

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです!

 

  • 2019年のアニメ映画の中でもトップクラスに評価したい作品!
  • 世界中の情景を美しく描き、戦闘シーンは激しく動かす!
  • マクロスを意識したような歌とダンスを中心とした物語に満足度も高い!
  • 社会性のあるテーマを暗喩を込めて語り、子供向けアニメとして完成されている!

 

大人にもオススメしたい作品です!

 

カエル「ミラクルライトはもらえませんが、心の中で激しく振りたくなること間違いない作品です!」

主「どうしても子供向けアニメだから映画好きにはあまり評価されずらいのは理解できるけれど、自分はこういった作品や語り口の方が好きだなぁ。

 この映画クラスの作品はそうそうないです。

 ぜひ劇場で、できれば満員の子供達のミラクルライトの海の中で見たい作品です!」