今回は岡田麿里が脚本を務めたことでも話題になっている『キミモテ』の感想記事になります!
待機作も多かったのじゃろうが、この下半期に驚くほどに公開されているの
カエルくん(以下カエル)
「今作はそこまで公開館数は多くないけれど、アニメ映画ファンとしてはどのようなアプローチで女性向けのイケメンたちの恋愛を描くのか注目したいね!
多分、岡田麿里が手がけた作品でここまで明確な女性向けアニメって『黒執事』以来なんじゃないかな?
黒執事も恋愛作品ではないと考えると、女性向け恋愛アニメのシリーズ構成は初になるのかも?」
亀爺(以下亀)
「オリジナルアニメーションということで、どのような作品になるか分からん部分もあるがの。
まあ、うちはモテや恋愛に対して極端に興味が薄いので、相性はかなり悪い気がするの」
カエル「それでは、早速ですが感想記事をスタートします!」
作品紹介・あらすじ
秋元康が企画・原案を務め、人気脚本家の岡田麿里が脚本構成などを務めたオリジナルアニメーション映画。
監督は『牙狼<GARO>炎の刻印』などで助監督を務めた久藤瞬が務めるほか、岡田麿里が共同で脚本を担当しているほか「Honey Works」でもイラストレーターとして活躍するヤマコがキャラクターデザインを担当している。
キャストには斉藤壮馬、内山昂輝、富園力也、松岡禎丞、梅原裕一郎、石川由依、梶裕貴などの人気若手声優が担当する。
見た目は良いが中身が惜しい残念な男子高校生・時夫とアシモは、同じ学校の後藤田によって、お嬢様として知られるホリコこと堀ノ宮早紀子のもとへ連れて行かれる。ホリコは時夫たちを「モテメン甲子園」に出場させ、その賞金で借金を返済しようとしていたのだった。5人1組の学校代表メンバーに無理やり選出された時夫たちは、優勝を目指して奮闘する中で、周囲や自分自身の変化、そしてホリコへの恋心を自覚するようになるが……。(映画ドットコムより抜粋)
10/25(金)公開 『キミだけにモテたいんだ。』本予告 【公式】
感想
では、Twitterの短評からスタートです!
#キミだけにモテたいんだ。#キミモテ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年10月25日
自分がこの映画が設定したターゲット層から外れているのはわかりきっているが…合わなかったなぁ
女性向けの恋愛アニメ作品の悪いところが秋元康の原作の力によりパワーアップしてしまった印象も
ただ全部悪いわけではなく見所もあるのだが…うーん… pic.twitter.com/OneDEZkrkV
これはなかなか評価が厳しくならざるをえない作品かもしれんの
カエル「もちろん、うちがこの映画を見るのに想定されているであろう、コアなターゲット層ではないことは重々承知しているんだけれど……それにしても、ちょっと魅力が伝わってこないというか……」
亀「この手の女性向けのアニメ作品というのは近年増えておるが、では本作が持つ突出した魅力とは何か? ということを考えた場合に、それが見えてこない苦しさというものを感じられたの」
カエル「うちとしてはこの映画を”Honey Worksを起用した新作アニメ映画”という認識だったんだけれど、実際はキャラクターデザインだけで、そこまでハニワは深く関係してなさそうなんだよね。そう言ったある種の勘違いもあっての感想でもあるんだけれど……
でも、そういう問題ですらないような気もしてくるかなぁ」
亀「一方ですごくいいシーンもあるにはあるのじゃが、それもほんの1分あるかないかじゃからの……
作画そのものはデジタル作画なのじゃろうが、CGのようななめらかな動きと手書きのように見えるキャラクター像などもあって見所がないわけではない分、駄作と称するにはちょっと抵抗がある……まあ、その分印象に残りづらいとも言えるがの」
女性向けアイドル作品の悪さと秋元・岡田の癖が出てしまった
この作品の何が悪いって……結局、終始気持ち悪いんだよね……
そこに自覚的でありながらも払拭することができなかった印象じゃな
カエル「女性向けアイドル作品って……言葉が難しいけれど癖はどうしてもあると思うんだよ。やっぱり男性からすると『こんな男いないだろ!』という思いもあるけれど、それは男性向けアイドルアニメの女性キャラクターが理想であることと同じであるわけで、否定するほどではないんだけれど……その癖が悪い方向に発揮されてしまっているというかさ」
亀「最大の失敗は秋元康の企画・原案と岡田麿里の食い合わせの悪さかもしれんの」
カエル「どちらも賛否分かれる人物や作風であることは間違いないよね……」
亀「『顔はいいけれど内面が少し残念な男の子がアイドルに』という基本設定そのものは面白いと思う。
その基本コンセプトはAKBと同じもじゃろう。そのことについても様々な反応はあるじゃろうが、AKBが取り立てて悪いとはわしは思っておらん。隣の席の可愛い女の子がアイドルになる、というようなものであり、そこで選挙などを勝ち抜いてスターにのし上がっていくシステムは、この作品でも踏襲されておるの」
カエル「その設定がアニメ映画となるとこうも違和感があるものか……というのも感じたかなぁ」
亀「有名になり始めて半分ストーカーのように女子に囲まれる主人公たち、というギャグを含めた展開が出てくるが、これが男女逆であれば大問題シーンじゃろうな。
また極端に性的なものではないものの、岡田らしいギャグも感じさせる一部シーンがあるがそちらもこの設定の気持ち悪さに拍車をかけてしまっていた印象じゃ」
特に……あの中盤の大きな問題を引き起こす展開はドン引きだったなぁ
映画内でも否定されているが、それでも作品全体に影響を与えてしまったの
カエル「コンテストの審査内容が悪趣味なものが登場するけれど、そこが本当に気持ち悪くて……いや、それに対して否定的な意見を述べているキャラクターもちゃんと存在するけれど、もはやコンテストとして存在してはいけないレベルの大失態だよね……」
亀「そこで生まれてしまった違和感や気持ち悪さを払拭することは完全にはできず、すでにわしは”このコンテスト(映画)はヤバイ”という感覚に囚われてしまった。その後のキャラクターたちの恋物語を応援するという気分にもなれず……
ここは脚本の問題もあるじゃろうが、企画者などの影響もあったのではないかの。
座組みの悪さが発揮されてしまった格好じゃな」
カエル「……すごく邪推だけれど、結局この映画ってアニメ業界に進出している秋元康が『AKB0048』で組んだ岡田麿里を引き込んで、『好きになるその瞬間を。〜告白実行員会〜』のEDも乃木坂が起用されているから、その縁で起用したという政治的なものが見えてくるというか……」
亀「あくまで邪推であるがの。
近年アニメ業界に進出しておるし、秋元康の野心も感じてしまうの」
物語の粗さについて
そして……オリジナル映画なのに展開がダイジェスト的なのもいただけないよねぇ
そもそも物語そのものが非常に粗すぎるの
カエル「でもさ、それも仕方ないとは思うんだよ。
だって50分台の作品で男子高校生5人をピックアップするわけでしょ?
そんなの、どうやったらうまくいくんだろう? って疑問もあるよ……」
亀「少しネタバレになってしまうが、この作品で彼らがコンテストに参加する理由が『お嬢様の借金を返済するため』というトンデモないものである。しかも、500万円というお金持ちの借金としては微妙な金額なのもツッコミづらい部分もあるが……その返済計画に彼らは結果的に載るわけじゃな。
ということは最初の目的はお金であったわけじゃが、途中から物語は恋物語にシフトしておる。
だったら、最初から彼らはお嬢様に惚れてしまい、接触するためにコンテストに参加する、などでも良かった気がするの」
カエル「お金はあくまできっかけにすぎず、”そういう作品だから”というのはわかるんだけれど、各キャラクターの目的のブレが気になったということだね。目標設定がきちんと定まっていないというか、そういう作品だからそうなってます、というご都合展開というか……」
亀「それと一次予選では課題に対してそれぞれのキャラクターがどのように突破するのか? ということもあるのじゃが、半分ギャグなのもわかるのじゃが、映像で表現することができていない。
その諸々が積み重なった結果、単なるダイジェスト感が増しており、オリジナルアニメなのにキャラクターの魅力が一切伝わらないダイジェスト映画になってしまっておる」
う〜ん……でもさ、ハニワっぽい展開もあったわけじゃない?
この辺りがわしが混乱してしまった原因の1つかもしれんの
カエル「うちも詳しいわけではないけれど、ハニワってボーカロイドなどを使用して動画投稿サイトで人気を集めたわけで、その音楽や物語が切ない恋物語が多いってことで話題になったんだよね。
過去に映画を見たり、あるいは一部作品に触れたりしていたけれど……この映画の中盤以降の恋物語も結構ハニワっぽさがあるかな、って印象だったんだけれど……」
亀「ハニワっぽさについては置いておくとしても、悪く言えば予定調和のお約束感があるがの。
この物語の恋路を綺麗に収めるには、そういう展開になるのもわかるのではあるが……この手の映画の新しさというものはあまりなかったし、物語の発端となった迷惑メールの内容云々もどのように絡んだのか、よくわからなかったの」
役者について
えっと……声優陣についてもやっぱり苦言があるの?
う〜む……この手の映画作品に対するものになるかもしれん
亀「もしかしたらわしが興味が薄いためかもしれんが……やっぱりわしは、この手の作品の声優の演技がどれを見ても同じものに見えてしまうんじゃな」
カエル「う〜ん……男性向けアイドルアニメも似たようなもんだよ! って批判が来るかもしれないけれど……」
亀「彼らの演技そのものが悪いとは言わんが、またこのキャストか……という思いもあるし、演技も過去にあった作品と同じようなものに感じてしまう。そういう型があり、それが人気なのかもしれんが、余計に本作が没個性的な印象を受けてしまった要因かもしれん。
これは声優陣の責任というよりはこの手の作品が増えることによって、差別化が出来づらく演技の幅も一定に見えてしまうという、ジャンルが抱えている問題かもしれんがの
また、石川由依も演技自体はいいのじゃが……彼女の女性キャラクターも見慣れたもになってしまった」
カエル「そこまで個性的にしてはいけない役というのもあるだろうけれどね」
亀「オリジナルアニメだからこその個性や強みというものをしっかりと見せて欲しかったのじゃが……
それはスタッフだけでなく、キャストにも求めるのは酷な話なのかの?」
まとめ
それでは、この記事のまとめです……
- 一部いいシーンもあるけれど個性を感じない映画に……
- 秋元康と岡田麿里の食い合わせの悪さが、より癖の強さを強調するように…
- 物語も粗が気になり、オリジナルなのにダイジェスト感が拭えず…
どうしても辛口のようになってしまうの
カエル「いや、なんていうか……頑張ったとは思います!
でも観客からの頑張ったよ! って褒め言葉じゃないよね、って話でさ……」
亀「この先の展開もあるのかわからんが……次があれば見るかと問われるとかなり疑問があるの……」