今回は小規模映画の紹介です!
最初に語りますが、この作品は大傑作です!
カエルくん(以下カエル)
「観たい映画も多いので、最近は映画館でおこなれる特別企画にまではなかなか足を運べない中で、今作は好評だったという話は聞こえてきたからね」
主
「こういう傑作作品はもっともっと注目されてほしいなぁ」
カエル「しかも、中国でも若手の監督や役者、低予算映画を応援する映画賞で評価されていて、これで低予算映画か……とちょっと愕然とする部分もあるかも……」
主「そこそこ予算はかかっているように見えるんだよなぁ。
日本が貧しいのか、中国がお金持ちなのか……あるいはその両方か。
そんな思いも抱きながら、記事を始めていきます!」
作品紹介・あらすじ
中国の伝統的な民族音楽を学ぶ少女たちが、同じ学校内の西洋音楽部との対立しながらも、友情や奮闘を描いた青春音楽映画。
低予算映画の活性化と若手育成を目的とした上海国際映画祭メディア大賞で、最優秀賞の他、主演女優賞などの主要5部門を受賞した。また日本のアニメや漫画、中島美嘉が中国語楽曲を提供するなど、日本文化を用いた演出も話題に。
高校の伝統音楽部に所属するジンは、西洋音楽部でピアノを弾くイケメンのワン先輩に恋をするが、全く相手にされない。ワン先輩に伝統音楽の魅力を伝えるべくバンドを組もうとするが、メンバーになってくれる生徒はなかなか見つからなかった。
部活仲間のヨウと考えた結果、寮のある一室に暮らす女の子たちの存在を思い出す。学校でも異端視されているコスプレイヤー集団と共に伝統音楽のバンド”2,5次元”を結成したのだが……
感想
ではTwitterの短評からです
#閃光少女
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年9月16日
キターーー!
傑作傑作大傑作!!
笑い、泣き、胸を熱くし、ほっこりし、最後にまた笑わせる完璧なエンタメ青春音楽恋愛オタク映画!
アニメを強く意識した演出やキャラデザの強烈な個性が眼につくが、肝心の音楽が最高だからフワフワせずに駆け抜ける!
サントラがめっちゃ欲しい! pic.twitter.com/jTmyOjZVce
今年最高峰の青春映画の1つですよ!
カエル「上海国際映画祭メディア大賞という、低予算映画や若手育成を目的とした上海の映画賞で、最優秀作品賞、新人監督賞、新人女優賞、 助演女優賞、脚本賞の主要5部門を受賞したというのも納得の作品だったね!」
主「これは日本でリメイクされるんじゃないかな? と思うほどで、今回は新宿にあるシネマカリテという映画館で行われてカリコレというイベントでの上映だけになっているけれど、それが本当にもったいない!
これほどエンタメ性に満ちていて、多くの人を楽しませることができるであろう作品は、全国100館クラスで公開されるべきだよ!」
カエル「面白いポイントもとてもわかりやすいしね。
基本的な物語は高校の2つの音楽科の対立を描いていて、主人公の所属する中国古来の音楽を演奏する伝統音楽部は、学校や世間からも下に見られている部分がある。
学校側が優遇するのは西洋のクラシック音楽を演奏する西洋音楽部で、この2つの部の対立と対決を軸に物語は作られています」
主「この手の明るい青春映画に求めるもの、全てが入っている映画だよ。
胸を熱くする対決、友情、恋、そして何よりも最高の音楽!
もちろん音楽映画なので最も大事なのは演奏シーンだけれど、その音楽がとても良いからこそ、本作は傑作になっている! 見終わった後、すぐにサントラが欲しくなったけれど、日本では売ってなさそうなんだよねぇ……」
閃光少女では挿入歌もたくさん!
幾つかはITunesで配信中です
サントラは……日本版はないのかなぁ
アニメなどの日本のオタク文化を取り入れた作品
本作は日本のアニメなどの要素が取り入れられているよね
中にはアニメをモチーフとした演出もあり、日本の作品かと勘違いするような演出もあります
カエル「この作品もオタク賛歌であり、かなりアニメ的な部分が多い作品だよね。
特に、主要キャラクターの1人であり、オタクたちのリーダー的存在であるシャオマイが好きな作品などは、非常に有名な日本でもアニメ映画が公開されるほど人気の漫画です。
ちょっとアニメが好きな人であれば『あれ? もしかして……』と、シャオマイがなんのキャラクターのコスプレをしているか気がつく人もいるんじゃないかな?」
主「他にもポスターなどは日本でも馴染みがある作品が多いんだよね。
そして今作で流れる伝統的な楽器を用いたバンドの音は、和楽器バンドなどに似ていて、その投稿したサイトはニコニコ動画のようでもあり、かなり既視感がある。
他にもアイドルを応援する様などもオタク要素が満載で、日本人からしたら『本当に中国(香港)の作品なの?』と少し疑問に思うかもしれないほどだ」
カエル「オタク文化ってどこの国でも変わらないんだなぁって痛感するよねぇ」
各キャラクターの個性も抜群!
(C)2017 Edko Films Ltd. All Rights Reserved.
アニメへの深い模倣
カエル「本作を絶賛するのは、そのオタク描写が秀逸だから、というだけではなありません。
なんていうか……物語全体がとてもアニメの良さを取り入れているんだよね」
主「もちろん、日本でもアニメ文化を参考にした実写作品は多くある。近年では話題になった作品だとテレビドラマの『逃げるは恥だが役に立つ』は漫画原作ということもあるだろうけれど、あの作品は非常にアニメ的、特にギャルゲーやエロゲーの物語に近いと感じている。
モテナイ男の元に住み着く美少女、EDで踊って魅了する、アニメへのオマージュも盛りだくさんというのは、近年のアニメで多く見られる演出だ。
こういったアニメ的な演出が一般的になる一方で、オタク文化をモチーフとした物語は、そこまでアニメ的でない場合が多い」
カエル「表面的にはオタク文化寄りだけれど、実際は普通の恋愛スイーツ映画と物語自体は変わらないとか、よくあるよね」
主「でも、本作はそうではない。
例えば”助けてくれる変わり者集団はオタクだったが、実は超天才だった”というのはアニメでもよく見られるものだろう。
他にも”メガネを外したらイケメンor美少女”であったり、”舐めていた人が実は……”だったり、また直接的なネタバレになるから細かくは言及しないけれど、後半の展開なんて『あ、あの大ヒットアニメだな』と思う展開もあるんだよ」
カエル「結構既視感のある展開は多いよね」
主「なぜそれを評価するのかというと、単なるモノマネで終わっていないから。
そのようなオマージュは言い換えれば”王道の面白さ”に繋がるんだ。その展開の1つ1つがドラマを盛り上げるためのいくつもの要素となり、全体で見た時にカタルシスを生む。
残念ながら日本の実写作品は表面的にオタク文化を描きながらも、アニメや漫画の良い部分は模倣せずに終わってしまい、本来の魅力である面白さが発揮されないケースも散見される。
だけれど、本作はそのような笑いや熱さ、ある種の萌え文化もしっかりと描かれるから、物語全体としての満足度は非常に高くなるんだ」
端的に語ると
じゃあ、ネタバレなしで本作を簡単にまとめるとどういう作品なの?
アニメ好きには『響け! ユーフォニアム』+『ガールズ&パンツァー』といえば伝わりやすいかな
カエル「どちらも近年のアニメ界を代表する傑作だね」
主「どちらにも共通するのは”好きな物(音楽や戦車)に懸ける情熱が見所!”ということだよね。
一見すると可愛らしい女の子がいっぱい出てくる、典型的な萌えアニメにも見える。でも蓋を開けてみれば、最高の青春物語でもあり、数々の苦難を個人の情熱と仲間との絆で乗り越えていく、というものだ。
また、映画好きに伝わるように例えるならば『シングストリート』+『のだめカンタービレ』にオタク要素を足したような、そんな最高の青春映画に仕上がっています!」
カエル「そう考えると、アニメ好きな人にはもちろん響きやすい物語と言えるだろうし、アニメに詳しく無い人でも音楽などの良さを軸に伝わるんじゃ無いかな?」
主「特にコメディ描写も多くて、結構笑えるものがあります。
学校の校則をいかにくぐり抜けて、色々と悪さを……と言っても可愛らしい校則違反だけれど、その様子なども面白い。
あと、EDにも中国映画らしいクスリと笑えるシーンもあるし、何よりも演じている女の子たちがとても愛らしくて……と考えると、隙がない最強の青春エンタメアイドル音楽映画です!
本当、小規模上映がもったいないなぁ……」
以下ネタバレあり
骨太な物語
ここからは過度なネタバレは避けつつ、作中の描写を引用しながら語っていきます
本作は”オタク”と”伝統音楽”が重要な意味を持つんだ
カエル「この手の映画のオタク描写って、言葉は悪いけれど『キャッチーでオタクなお客さんを釣るための演出』ってイメージもあるけれど……」
主「そんな軽いオタク文化の描写だけではない。
本作の1つの肝が”オタクと伝統文化の同一視”という点にある。
やっぱり、どこに行ってもオタクはオタクで奇異の目で見られるし、天才であり学校の成績がどれほどのものであっても、オタクであるというだけで家族や社会からは色物扱いされてしまうという現実もしっかりと描いている。
”好きなものを貫くのはいいことだ”なんていう人も多いけれど、実際にそれを貫いた結果が、少し差別的な態度を受けてしまうことにつながる」
カエル「それまで不遜な態度で、ちょっと反感を抱きがちだったオタクバンドのメンバーたちが、なぜ彼女たちがここまで仲間以外に敵愾心を抱くのか、はっきりとわかる描写だよね……」
主「本作が抜群に上手いのは、その状況を伝統音楽と結びつけていること。
これは日本でも三味線やお琴、和太鼓などの伝統楽器に置き換えてみるとわかるけれど、どれだけ好きだと言ってもそれで食べていけるとは思わない。むしろ、子供が『三味線で食べていく!』と言ったら、反対する親が多いのではないか?
一方でピアノやバイオリンなどのクラシック音楽などは、まだ食べていく道がるし、世間的にも印象がとても良い。もちろん伝統音楽が悪いとは言わないけれど、でもやっぱり地味というか、ちょっと下に見ているところはあるじゃない?」
カエル「それこそ”和楽器バンド”や”吉田兄弟”などもいるとはいえ、それで食べていくのはとても大変な道のりだよね……」
主「オタクにはビンビン突き刺さるものがある。
その状況、つまり”オタク”と”伝統音楽”というどうしても下に見られがちな文化を、スクールカーストと共に描くことにより、主人公たちが弱者、下位者から成り上がる青春物語として機能するように描いている点が、本作の工夫された魅力の1つだ」
主演2人のコミカルな演技も魅力の1つ!
(C)2017 Edko Films Ltd. All Rights Reserved.
楽器のルーツは同じ
カエル「作中でも言及されているけれど、主人公のジンが演奏する揚琴と、ピアノはその楽器としてのルーツは同じなんだよね。元々はダルシマーという楽器があり、それがヨーロッパではピアノなどに発展しています。
ダルシマーが中国に渡り揚琴となるけれど、作中ではその扱いに差があるのは、多分現実でも同じなんだろうね」
主「本来はピアノと揚琴、そして西洋音楽と中国伝統音楽というのは対立するものではないはずなんだ。
だけれど、実際問題としてはある目線では対立関係にあるし、それはなんとなく日本人でもわかるものがある。
やっぱり、日本に置き換えて和楽器で比べても、ピアノやバイオリンを比べると、演奏家の人口や育成環境なども含めて色々と差があるのは事実だろう」
カエル「だけれど、この作品はその壁を強く意識させながらも、その先の世界を見せてくれるわけで……」
主「先進的とされる西洋の文化の象徴としての西洋音楽があり、自分たちの伝統の象徴として伝統音楽がある。
この2つの対立は言うなれば社会が辿った対立でもある。
これは日本も中国もそうだろうけれど、急激な近代化、西洋化によって家族や社会構造というものは大きく変化している。その中で、伝統的な価値観というのはあまり重視されないようになってきた。
だけれど、この2つの文化の価値観というのは決して両立や融和ができないものではない。
それを見事に音楽で示すのが、この映画の素晴らしいポイントなんです」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 青春映画としても、音楽映画としても優れた傑作!
- 派手な演出が多くエンタメとして楽しめる作品!
- 中国文化と西洋文化の対立とその先を音楽で表現!
もっと語りたいこともあるけれど、ネタバレしすぎるのもあれなのでこの辺りで!
カエル「他にもアイドル映画としても完成度が高くて、俳優陣の魅力もとても伝わって来るんだよね!
主演のジウを演じたシュー・ルウのコメディとシリアスの表情の変わり方や、ジウの良き相棒役の男の子でありヨウを演じたポン・ユィチャンも普段はコミカルなんだけれど、締めるところはしっかりとしてかっこよくて!
ライバルの西洋音楽部のメンバーもプライドが高いけれど、でもそれに裏打ちされた実力もあり、嫌いになりきれないというのもポイントで!」
主「多くの役者陣が絶賛されたというのも納得だよ。
数年後、その時に人気役者を使って日本でリメイクされるんじゃないかな?
見る機会は相当限られてしまうかもしれませんが、その機会があれば是非鑑賞してほしい作品です!」