カエルくん(以下カエル)
「さて、傷物語3部作の第2部作、『熱血篇』が公開されたね」
亀爺(以下亀)
「そうじゃの、大人気シリーズの続編ということもあって、映画館も中々の人混みじゃったの」
カエル「化物語シリーズの人気もあるし、制作会社は尖った作風で注目を集めるシャフトでもあるし、さらにドラマ化などの映像化が続く、大人気作家の西尾維新原作ということもあって、注目度は高いよね」
亀「こう言ってはなんじゃが、もはや成功は約束されたようなものじゃからな。あれだけの作画クオリティと製作日数でコストもかかっておるじゃろうが、毎週変わる劇場プレゼントにDVD,BDの販売を合わせると、相当の儲けは出るじゃろう」
カエル「3部作にしてビジネス面では正解だろうね。あの長さの小説を1つの映画として、約2時間にまとめるのは難しいだろうし、それで展開とかが早くなってしまうなら、3部作にすることも仕方ないのかなぁ。
あとさ、個人的には『熱血<篇>』っていうのがなぁ」
亀「? そこの何が問題なんじゃ?」
カエル「普通は『熱血<編>』じゃない? みんなそう検索するからさ、今回は間違えなかったけれど、正式名称を間違える原因にもなるし、検索結果も変わってくるからねぇ」
亀「……すごく個人的にな事情じゃな。それではここから『傷物語Ⅱ熱血篇』の感想を始めようかの」
全体感想
カエル「それじゃあ全体感想だけど……また語るのが難しい作品だよねぇ」
亀「元々3部作の2作目というのは、結構難しいものでな。スタートから1つの区切りまで一気に描くことのできる第1作目、そして物語のラストを締める3作目というのは、やはり物語のカタルシスを得やすい。
じゃが、2作目となると前回のお話を踏まえながら、1つの物語としてある程度面白くして、その次へのバトンを渡さねばならないからの。それなりに作るのも難しい作品となる」
カエル「特に傷物語は、元々一気読みが前提の小説だから余計かもね」
亀「今回の3分割のポイントなどは、決しておかしいとはわしは思わん。制作側からお前が3分割しろと言われたら、わしも同じような選択をするじゃろう。
じゃが、先ほども話したように、原作は一気に読みきることが前提の作品じゃから、このように分割されても大丈夫な作りになっているかというと、まあ、なっておらんわな」
カエル「特に今回は、前作のおさらいみたいなものが一切なかったことも響いているよね。ファンムービーだからさ、確かに1作目を見ていないで今作を見ようとする人は少ないかもしれないけれど、前作から8ヶ月過ぎているわけだからね……」
亀「流れも忘れている観客もおるじゃろうし、みんながみんな、原作を読んでいたり、DVDや BDを見返すような観客ばかりではないからの。そこは振り返りが少し欲しかったよな気もするの」
カエル「あとは……やっぱり鉄血篇同様、作画のクオリティはすごかったよね」
亀「今作品の公開が延びた1番の理由じゃからな、やはりそこは素晴らしいの。詳しくは後ほど語っていくとするか……」
以下ネタバレあり
脚本について
カエル「う〜ん……正直さ、脚本がいいかと問われると……ね」
亀「他の映画のように、脚本が悪いという意味は脚本家の作り方が下手という意味ではないと、先に言っておこうかの。
この3部作に分けた場合の1作として効果的な脚本構成かと問われると、少し疑問があるという意味じゃ。つまり、『熱血篇』単体として鑑賞した場合、効果的に面白い脚本ができているかと言われると、のぉ」
カエル「さっきも言った通り唐突に物語が始まるわけでさ、最近ではこういう分割公開ってOVA作品を筆頭に色々あるわけじゃない? そもそもテレビアニメ自体が1つの大きな物語を分割しているわけでさ。そこはおかしくはないんだけど……」
亀「一本の映画として面白くなっているかと問われると、難しいところじゃの。導入から唐突であって、おそらく『鉄血篇』から続けて鑑賞した場合においては違和感なく作品世界に入り込むことができるのかもしれん。
テレビアニメであればこの作りは普通かもしれんが、それは毎週放送されるものじゃから、映画とは少し意味合いが変わる。
これは映画じゃからな。わざわざ1500円なりを支払って、この『熱血篇』を見に行くわけじゃから、観客としてはそれなりの完成度を期待していくと思うが……」
カエル「最初に言った通り、『3部作のつなぎとしての2部作目』でしかなくて、『2部作目単体で見ても面白い!』とはなっていないんだよね」
亀「どうにも『熱血篇』全体に流れる雰囲気が同一のように感じられたの。映画における2部作目は言うなれば『起承転結』で言うところの『承から転』の部分じゃ。いや、今作は転まで行っておらんかの? メリハリがないというか……
そう考えると、実は承のパートを延々と見せられるようなものじゃから、ドラマ性は弱くなるの」
キャラクターについて
カエル「物語シリーズといえば大事なのは個性的なキャラクターだけど、実は傷物語においてはここはハンデだよね」
亀「本作品において主要登場人物というと、主人公の暦、ヒロイン……と言っていいのかは微妙な羽川翼と、師匠格の忍野メメ、そして後々の相棒となるキスショットぐらいじゃな。
他にも色々な敵が登場するが、それはこの先もあまり活躍……しないといえば語弊があるが、まあ主要ではないの」
カエル「だからさ、3部作、約3時間を劇場で見せる割には登場人物が少ないんだよね。まあ、テレビアニメ版も必ずしも多いわけではないけれどさ」
亀「特にこの作品では暦と羽川の交流がメインとなっており、メメは時々ふらりと現れては助言をして立ち去るのみで、交流はない。そしてキスショットは今回に関してはほぼ寝ていたりと、これもまた交流がない。
そうなるとの、結局暦と羽川の会話でキャラクターの交流シーンは進行していくことになるの」
カエル「さすがに少しクドイよね。あとさ……やっぱりあのシーンはドン引きだよ」
亀「う〜む……確かに思春期男子に対しては妄想の塊とも思えるアイテムを渡すわけじゃが、あれはさすがにないの。原作通りじゃったような気もするが、あれを見てしまうと『ああ、羽川さんもただエキセントリックな人なんだなぁ』と、共感性を一気に失ってしまったように思うの」
カエル「ただ、成長していくキスショットは可愛いよね。個人的には幼児、少女、大学生くらいと変化していく中では、やっぱり大学生くらいが1番好きかな?」
亀「それぞれの違う魅力があったの」
作画面に関して
カエル「ここはまた『鉄血篇』に続いて、すごく良かったよね」
亀「そうじゃの。水の流れや穂の動きなど、非常にリアルになっておった。また羽川の動きなども一部、ロトスコープなどを使っていて、なめらかな動きもあったの」
カエル「ここに関しては文句はないよね。『鉄血篇』はいきなり事前知識が予告編ぐらいしかない中で、これだけの作画カロリーの高い作品だったから驚いたり、見づらいなぁと思ったりもしらけれど、あらかじめ予測できていればそこまでの見辛さは感じなかったかなぁ」
亀「わしなどは前回でハードルを上げすぎたからの。今作において、前作を超えるような驚きはなかったのが少し残念じゃが、それはまた次に期待するとしよう。何せ、完結編じゃからな。トンデモナイ作画でくるはずじゃ」
再び全体の感想
カエル「というわけで、また細かい部分の感想を書いた後の全体の印象だけど……」
亀「やはりの、2部作目は難しい。
特に、物語シリーズというのは西尾維新の独特の言葉使いが受けている作品でもあるからの、それを映像化となるとやはり同じ物語シリーズとしても向き、不向きな話があると思う。
傷物語は不向きな作品じゃな。
特に今作は戦闘を3つ描き、先に対する伏線も描かねばならない上に、登場人物も限られるからの。色々とバランスの悪い部分を映画化せざるを得なかったんじゃなぁ、と思っておる」
カエル「少しグロ描写もあったけれど、傷物語はそれがもう作風になっているよね」
亀「これはこれで良かったのではないか? 独特の作風にアクセントを加えられておるし、アニメだからかまだグロテスクも見やすいレベルじゃったな」
カエル「音楽の演出も面白いは面白いけれどね……」
亀「どちらかというと娯楽作品を見に行ったというよりも、壮大な実験アニメーションを見に行ったような感覚に近いかの。
シャフトの光る演出もあったし、面白いは面白いが、万人に受ける作品にはなってない印象じゃの。これは、まあ傷物語という作品の性質上仕方ないかもしれんか」
最後に
カエル「さて、これで残すは『傷物語Ⅲ 冷血篇』だけだね。2017年1月6日公開と決まっているし、どう締めてくるのかな?」
亀「傷物語は結局この冷血篇の部分が見どころであって、それ以外は伏線だったり、キャラクターの深堀という意味では大事かもしれんが、わしは原作を読んでおってもそこまでワクワクはしなかった。
ラストいうこともあり、あの展開は面白いからの。最後の期待度は高いの」
カエル「とりあえず3部作の2作目だから、まだまだ最終評価はしづらいよね」
亀「冷血篇を見てから、本作は成功だったのか失敗だったのかを考えねばならんの」
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