物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『アクセル・ワールド INFINITE∞BURST』 初見の感想とゲーム的世界観の考察 

カエル君(以下カエル)

「アクセルワールドの映画を見に行ってきたんだね」

 

ブログ主(以下主)

「本来は見るつもりはなかったけどな。そもそもアクセルワールドは3話ぐらいまで見たけれど、それ以降は全くノータッチだったし」

 

カエル「いつも言っているもんね。『最近のラノベはもうわからん』って」

主「というよりも、もう卒業する時が来たんだと思っているんだよ。本来、ラノベは中高生のためのものであって、いい歳した大人がゴチャゴチャ言うものじゃない。文学性がどうのとかさ、そういうものじゃないんだから」

カエル「まあ、それじゃただの老害って言われるだけだね」

 

主「まあ、ラノベ論は置いておくとしても、アクセルワールドを見た事がなかったけれど、そういう人間が見たらどう思うのかは大事だからさ、ファン以外の目線で今回は語ってみようと思う」

カエル「このブログはそれ、多いよね」

主「『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』とかね。実際、面白かったし。『ラーゼフォン』は劇場版から見たけれど、はまったしね。特に坂本真綾に対してだけど」

カエル「じゃあ、そろそろ感想いってみよう!

 ちなみに当ブログはネタバレありです!!

 

 

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 1 総集編らしい総集編

 

カエル「上映時間以外は何も情報を入れてなかったから、そもそも総集編ってことも知らなかったよね。始まってすぐに見たことのある場面が流れて、『丁寧に説明してくれるんだなぁ』と馬鹿みたいなこと思ってたよ

主「『 ガールズ&パンツァー 劇場版』が5分で説明してくれたからさ、これもそんなノリなのかなって思ったら、まさかの総集編だったってオチ。さすがに丁寧すぎるし、この場面見たことあるぞって気がつくまでに体感時間で3分くらいかかったかな?」

 

カエル「その意味では映画としての評価のしようがないよね。テレビアニメシリーズを60分くらいに縮めて、プラス新作カットを入れたものだから、テレビシリーズのファンは大満足かもしれないけれど」

主「続編を作るための資金集めってこともあるんだろうな。最近多いけれど、この商法は本当に勿体ないな、と思う

カエル「というと?」

主「今回何も知らずに見に行ったからよくわかったけれど、本来この手の総集編ってファン以外の人に向けて作って、鑑賞してもらうべきじゃない? 題材が深夜アニメだから仕方ない部分があるとはいえ、新規のお客さんを獲得するようにはなっていないよね

 

カエル「それこそ先にあげたユーフォニアムも同じだね」

主「そこで新規のお客さんを獲得できるようにしたらいいのにね」

カエル「例えば?」

主「パッと思いつくのは『抱き合わせ商法』で、男性向けアニメと女性向けアニメを同時上映するとか。時間は短くなってしまうかもしれないけれどさ。例えばうたプリとアイマスとかだったら男女問わず受けもいいコンテンツだし、ありだと思うけれど」

 

カエル「うたプリはともかく、サイドMとグリマスとか、まだアニメ化していない組み合わせで抱き合わせなら宣伝になるかもね」

主「あくまでも一例だけど、初見にもわかりやすい総集編としてまとめいるのに、ファン以外が見る可能性の低い作品なのは勿体ないよね。商売としてはファン狙いなのはわかるけれどさ」

 

 

総集編として徹していた

 

カエル「じゃあ、総集編として見た場合の評価はどうなの?」

主「そりゃ短縮しているから話自体も走っているし、細かいことはよくわからないってシーンも多い。キャラクターも少し紹介するだけだったし、関係性とかそういう描写は殆ど省かれていたね。その代わり、サービスカットはあったから少し謎な展開に見えた部分もあったけれど」

 

カエル「じゃあ、あんまり評価はできない?」

主「いや、個人的にはこれで良かったと思うよ。もちろん、うまく繋げて一本の物語として完成していることが一番の理想だけど、それは難しいよ。まどかマギカなんて前後篇にして、4時間近い時間をかけたからね、総集編だけで。それだけの時間があればできるかもしれないけれど。

 下手にチグハグに繋ぐよりは、細かいことはナレーションで説明しちゃって見所だけチャチャっと繋いじゃうっていうのは、いっそ清々しいよね。下手にやるよりもわかりやすいし」

カエル「その意味では新作部分にいくまでの、1時間くらいかけた紹介だったのかな」

 

新作部分について

 

カエル「新作カットもあったらしいけれど、そこはどうだった?」

主「いきなりタイトルが入ったからよくわからなかったけれど、そこからが新作パートだったのね。それは見終わってから調べて、ようやく気がついた。テレビの後半を丸々カットしないで見せてくれているのかと思ったよ」

 

カエル「時間にしてどれくらいだろ、30分は多分ないよね?」

主「テレビ1話分くらいな印象。OVAにするにも短いし、テレビで放送するにも特別枠をもらって放送するほどじゃないから、総集編とセットでってことなのかな? ただ、この展開は後々響いてきそうだなぁ、と思うような内容だった。原作を読んでいたり、ファンが見たら印象が違うのかもしれないけれどね」

 

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2 総集編だからわかる『魅力』

 

カエル「実際、まとめられてみるとテレビで見ていた時とは違う?」

主「だいぶ印象は違うね。こうして短くまとめられると、面白くなる構造をしていることがよくわかった。お話自体は割と王道といえば王道なんだよね。ただ、フォーマットが少し違うだけというか」

カエル「じゃあ、ひとつひとつ詳しくあげていこうか」

 

基本は騎士物語

 

主「この作品の基本は、誰もが羨望の眼差しを向ける姫を騎士が守るということで成り立っているように見えたね。その意味では王道な姫と騎士の物語とも言えるんだけど、ここをちょっと現代風にアレンジしている」

カエル「でも姫は姫だけど、その守られる対象の姫の方が強いっていう普通とは逆の関係性だよね」

 

主「だけどレベル9同士だと戦えないから、王同士の戦いにならないように守らなければならない。それが姫と騎士の物語っぽいな、と思う要因のひとつ。勇敢で強い騎士ではなくて、いじめられっ子で、チビでデブというところも現代風にアレンジしている。ギルドを組んで、何人もの騎士で姫を守るというのもそれっぽいな」

 

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領土戦という戦い方

 

主「ここもわかりやすい。三国志とか、戦国時代も領土戦の要素があるわけじゃん。勢力図がわかるし、勢いがあるとか、衰えてきているとかの現在の状況も地図を見せれば一目瞭然だからね。

 それから、この勝負に勝つと何がもらえて、負けると何を失うのかということもわかるし、景品として達成感も生まれる。ただ戦いました、敵を倒しました、だけではなくて領土を広げていくというのはいいアイディアじゃない?

 

ゲーム世界

 

カエル「最近、人気だよね。この作品のようなゲーム世界での戦いって、異世界転生ものに含まれるのかな?」

主「少なくともこれから先の言説では、今作のようなゲーム世界での戦いも異世界転生ものに含めていこう。ここが本作の特徴だし、ライトノベルやアニメ界における異世界転生ものが流行る火付け役になった作品と言っていいんじゃないか?

 SAOもそうだけど、河原作品の流行で一気に火がついたって印象がある

 

カエル「すべての作品を読んでいるわけではないけれど、『このライトノベルがすごい!』のランキングを見ると、2010年まではゲーム的な世界観だったり、異世界転生ものは少なさそうだね。一応『All You Need Is Kill』がそれに当てはまるかな?」

主「何度も生き返ってやり直すという意味ではそうだけど、今のラノベとは毛色がちがうからな。多分、今ならラノベとしてスーパーダッシュ文庫から刊行されているか怪しいだろう」

 

カエル「2011年にSAOが刊行されて、それ以降毎年ランク入り。ゲームものでいうとわかる範囲では『ノーゲーム・ノーライフ』とか異世界転生でいうと『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』が入ってくるね」

主「多分、2011年くらいから流行し始めたって認識でいいんじゃないか?

カエル「でも、その前からゲーム世界を扱った作品はあるじゃない? それとどう違うの?」

主「それは後で話そうか」

 

 

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この作品から『女の子』と『ゲーム』を抜くと?

 

主「結局、この作品から現代的とされる要素、つまり『女の子』と『ゲーム』を抜くと、能力系三国志や、能力系戦国時代ものになるんだよ

カエル「……え?」

主「トップの地位を目指して切磋琢磨して力をつけた王たちだが、皇帝になるにはその王たちで争わなければならない。それでは負けた時のリスクが大きいからと、みんな尻込みしていたらひとりが裏切る。しかし、すぐに鎮圧。その後は領土の奪い合いの小競り合いはするものの、停滞状態が続いていた……

 ほら、戦国時代っぽい」

 

カエル「あ〜そうだね」

主「そりゃ、面白いよな、男の子が大好きな戦国時代に、さらに男の子が好きな美少女とゲームが混じるんだから。しかもハーレムだし、人気が出るわけだ」

カエル「じゃあ、主がラノベものが苦手なわけは?」

主「こうして分析すると、単純にゲーム感と美少女がいらないという身も蓋もない話になる。じゃあ、ここからはその部分について話してみよう」

 

 短編小説やってます

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3 ゲーム的要素について

 

過去のゲーム(仮想)世界を扱った作品との違い

カエル「さっきの話に戻るけれど、過去にあったゲーム的、もしくはネットなどの仮想現実を扱った作品はあるわけじゃない? 古いところだと夢の世界だけど『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』やネット社会の先駆けの『攻殻機動隊』とか『.hack』『電脳コイル』とか。それと何が違うの?」

主「単純に言うと、肉体の有無と言おうかな

カエル「肉体の有無?」

 

主「例えば、先の例だと攻殻機動隊の場合は電脳世界で攻撃されると、それが現実の肉体にまで影響が出る。これは.hackもそうだし、電脳コイルも同じ。意識不明者が出ているからね。

 その世界での敗北は肉体に影響を与えるのだから、みんな仮想世界でも生き残るために必死なわけだよ。だけど、最近はやりのゲームものや、異世界転生ものの中には死んでも生き返ったり、やられても問題ない作品が多い。もちろん、すべてとは言わないよ。『灰と幻想のグリムガル』は回復魔法があるけれど、死ぬ時は死ぬから」

 

カエル「まあ、確かにアクセル・ワールドはやられてもまた復活するからね。傷も治っているし」

主「しかも街をいくら破壊しても擬似世界だから問題なし、という素晴らしい世界だよ。でも、個人的にはここが気に入らないんだと思う」

カエル「それはどうして?」

 

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ゲーム的世界観の欠点

 

主「欠点と小タイトルには書いたけれど、正確には欠点というよりも個人的に馴染めない部分と言ってもいい。だから全てに該当するわけじゃないんだけどさ、結局、物語(アニメや小説)においてゲーム世界でのやり取りを描くって、それはもう作中作と同じじゃん

カエル「……どういうこと?」

 

主「個人的な話だけど、実写、アニメを問わず映画や小説などを読んでいるときにさ、当然その登場人物の気持ちになりきって感動したり、興奮しているわけよ。だけど、どこかで一歩引いて『これってお話なんだよな、作り物なんだよな』と考えている自分がいる。そしてどこが面白いか、分析している自分がいるんだよ」

カエル「だからこういうブログを書いているわけだしね」

 

主「物語というものがすでに作り物(偽物)だけど、その中の生死には我々は感情移入している。

 例えば、『天元突破グレンラガン』において……一応名前は伏せておくけれど、あの重要キャラクターが死んだ時になぜ涙を流して感動するかといえば、擬似的とはいえ、その死は覆せないからなんだよね。

 つまり、偽物ではあるんだけど、その死は現実(真実)なんだよ。

 いくら物語だからといって、『よ、元気だったか!』なんて言いながら復活したら興ざめだよ。ダイの大冒険のアバン先生の比じゃない」

カエル「まあ、そうね。生き返っちゃねぇ」

 

主「でも、作中作のゲーム世界であればそれが普通に可能だ。その命のやり取りは肉体的な死を迎えるわけじゃない。

 これは上の言い方をすると偽物(物語)で描かれた偽物(ゲーム世界、作中作)って意識になるのかもね。まあ、最初から偽物なんだから、同じようなものじゃんと言われたらそうかもしれないけれどさ。

 そうなるとさ、じゃあ死をかけたやり取りはなんだったの? ってなるんじゃないかな。そこが受け入れられない人間には辛い」

 

カエル「……わかったようなわからなかったような」

主「ただし、お手軽に危機感を演出できることもあって、人気もあるんだと思う。あとは評論家みたいなことを言うと、永遠にその世界に浸っていたいという感情、つまり日常系の延長線上にある気がする。

 そう考えると文学性という意味でも、研究するには面白い題材かもしれないね。

 ただ、この場合大事なのは、あらかじめ作中作、もしくはゲーム世界であると明示すること。そうでないと『うみねこのなく頃に』みたいになるからね」

 

 

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ゲーム的世界の先にあるもの

 

主「これはこうして書いている今、わかったことだけど、このゲーム的世界の行く先がどこになるのかわかる?」

カエル「なんだろう……『涼宮ハルヒの憂鬱 エンドレスエイト』かな?」

主「いや、エンドレスエイトもそうかもしれないけれど、抜け出すからちょっと違う。その先を描いたのが『スカイ・クロラ』だと思う。永遠と繰り返すゲーム的世界での日常を描いた作品だよ」

カエル「……そこに繋がるんだ」

 

主「ゲーム的に生きるからこそ、その死に意味がなくなってくると必然的に生の充足感もなくなってくる。その世界ってのは、毎日のように繰り返す日常しか残らないわけだ。スカイ・クロラはその無気力な日常にも生きている意味を見出す物語なんだな。まあ、詳しくはいつかスカイ・クロラの記事を書く機会があればまた書くよ。

 もしかしたらこのゲーム的な日常や、それに対する憧れが現代の若者に蔓延しているのかもね

 

カエル「……これで満足した?」

主「大体は。なんだか大塚英志と東浩紀がやっていたことを、個人的に振り返っただけかもしれないけれど」

 

 

 

最後に(ちょっとした懸念)

 

カエル「じゃあ、これで閉めるけれど、さっき言っていた今後の展開への不安って何?」

主「簡単に言えば『目的がないこと』かな。

 あの王たちが仲良く戦っちゃったけれど、あれは戦国時代で言ったら織田、徳川、上杉、武田、北条、毛利が協力したようなものだよね? そこで潰し合わなきゃいけないのに、あの後どうするんだろ?

 結局、そこで潰し合わないから次々と新しい敵を出す事態になっているわけで、大きな目標があるのかないのか分かりづらいなぁ……

 

カエル「そこは原作を楽しみにしましょうってことでいいんじゃない?」

主「またアニメ化するのかね?」

カエル「そのためのお布施が必要だね。さあ、君も下に貼ってある商品を購入するんだ!! それがお布施になるぞ!!」

主「……商魂たくましいね」

 

 

 川原作品の代表作というとこちらもある! 素晴らしい作品でした!

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