今回は少し前に公開された作品について語りましょうか
だいぶ溜めちゃったなぁ
カエルくん(以下カエル)
「実写映画に関してもしっかりと見てはいるんですが、あんまり語れてないのは申し訳ありません」
主
「10月、11月以降はアニメ映画がさらに増えるから、そっち中心になるだろうしね」
カエル「色々と語りたいことがある映画もあるので、少しづつ消化していきたいと思います」
主「ちなみに、今回は酷評です。
ファンの方や、この映画が好きな方は読まないほうがいいと思います。
……結構、ファン熱が高い映画だから、少し期間を空けたというのもあります」
カエル「……少し怖いですが、記事のスタートです!
感想
それでは、Twitterの感想からスタートです!
#ミッドナイトスワン
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年10月13日
序盤(…なんかテンプレな展開ばっかだな)
中盤(…あぁ、なるほど。これは良さがわかる)
終盤(え、これを2020年にやるの?)
全体としては…悪いよりの微妙
娯楽としても社会派としても半端な出来になったという印象 pic.twitter.com/bsp2viSHab
正直にいうと、相当ガッカリしました
カエル「えっと……元々、評判がものすごく良かったんだよね。
各種の大手レビューサイトでも、あまり見ないほどの高評価。さらにTwitterの映画アカウントからも高い評価を獲得していたので、必然的に期待値が大きくなっていましたが……」
主「ぶっちゃけて言えば、全くの期待外れだった。
内田監督が『社会派はインテリ以外見ない』って発言がプチ炎上していたけれど……それに関しては自分も似たような思いはある。
あくまでも娯楽に徹するという意見は、とても尊重するし、自分も好きなスタンスだ。
だけれど、それを語る映画がこれっていうのは、本当にがっかりした」
カエル「……え、なんでそこまで言うの?」
主「全部が全部、納得がいかないんだよ。
確かに役者は好演したように見えるかもしれない。
社会に対してタブーに切り込んだかもしれない。
だけれど、この映画が描いたことってのは、自分に言わせてもらえれば"ケータイ小説的"なものなんだ」
……ケータイ小説的っていうとある種のご都合展開的ってこと?
しかも、悪意満載のケータイ小説
主「確かに1つ1つの物事はあり得るかもしれない。だけれど、あまりにも悪い方に進みすぎているよ。
物語というのは人が作る以上、作為的なものだ。
だけれど、今作の場合はあまりにも毎回悪い方に進む。しかも、ほぼ前振りもない。
結局、物語を動かすための脚本や展開になっているし、それがあまりにも悪意にあふれており、多くの物事に対して偏ったイメージから作っているよう思える。
もしも、そうじゃないとしたら……無意識的に善意で本作を作っているとしたら、そっちの方が問題だと思う。
それくらい、自分は相容れないし、好きじゃない」
カエル「え、映像演出とかはいいんじゃないの?」
主「良いよ。
映画として悪いとは言わない。むしろ、良い作品だろう。
だからこそ物語の粗がとても気になるんだよね。今回はそこを中心に語って行こうかなって思うわ」
褒めるポイント〜中盤のシーン〜
じゃあ、せめて褒めるポイントを先に挙げておきましょう!
ここはもちろん、中盤の公園での踊りのシーンだ
カエル「少しだけネタバレになりますが、本作は『ミッドナイトスワン』というタイトルが示すように、白鳥や鳥がとても重要なモチーフになります。
中盤には名作バレエをモチーフとしたシーンが出てきます」
主「ここは絶賛!
それまでのモヤモヤとした気持ちとかも全部ふき飛ばしたし、『これだったらみんなが褒めるのがよくわかる!』と称賛したい。
でも、だからこそそれ以降の展開には『なぜ?』という気持ちが強くなってしまった。
ここが手放しで絶賛したいからこそ、その後も手放しで絶賛させてほしかった……」
役者について
今作の役者である草彅剛についてですが……
ファンの方は、あまり読まない方がいいかとおもいます
カエル「ここもちょっと厳しい意見なんだね……」
主「役者っていくつも種類があると思うんだよ。
- 役が憑依して本人がいなくなるタイプ
- 溢れんばかりのスター性が出てしまい、役を食ってしまうタイプ
特にわかりやすいのはこの2つかな。
よく”演技がうまい”と言われるのは、たぶん前者の、どんな役でも演じることができて、役が憑依して本人がいなくなるタイプだと思うんだよ」
カエル「……どうだろう、松岡茉優とかがそのタイプかな。声優だと山寺宏一とかが、そのタイプなのかな?」
主「一方で後者は後者でとても大事。
例えば……それこそ同じSMAPだとキムタクが『何をしてもキムタク』と言われるけれど、これってとても大事なことだよ。つまり、本人が前面に出ているほどの激しいスター性があるってことだ。
三船敏郎とか、あるいは樹木希林なんかも何を演じてもその人になるんだけれど、見事に観客の目を惹きつける名演技ができる。
どちらが演技が上手い、下手というよりは、やり方の問題だと思う」
ふむふむ……で、つよぽんってどっちなの?
明確に後者だよね
主「というか、ジャニーズ出身の役者は自分が知る限りほとんどが後者。
でもそれでいいんだよ。だって、それだけの強い個性がないとアイドルとして一斉を風靡することができない。言葉は悪いようだけれど、みんなアイドルだったその人を見にきているし、だからこそ歳をとったときのイメージチェンジでみんな苦労する。
草彅剛の場合は、朴訥とした人の良さがはっきりと出ている。
好青年で、人がいいのが伝わってくるんだよね。
それは今作にしても一緒なんだけれど……だけれど、それが却って味わいをなくしている。
いい人以外の役が、かなり苦戦している印象だ」
カエル「じゃあ、草彅くんのベスト演技ってなんだと思う?」
主「意外と思われるかもしれないけれど、『クソ野郎と美しき世界』の中の1話である、太田光が監督した『光へ、航る』だと思う。チンピラの役なんだけれど、だからこそ本当は人の良さがにじみ出ていて、自分がいる世界に対する迷いが伝わってきた。
今作もそうだけれど、それまでのイメージを打破しようというのは伝わってくるし、この路線は間違ってない。同じ新しい地図のメンバーである、香取慎吾の『凪待ち』は大絶賛だよ、あれは新しい可能性を描き出した
そこまで言いながらも、今作はそこまで評価しないと?
不器用だなって印象かな
主「性同一性障害を演じるには、ちょっとそれっぽすぎるんだよ。
テンプレというかさ。
この映画に批判点でもあるんだけれど、全部それっ"ぽい"。
このそれっぽさって”リアル”って意味じゃなくて”イメージっぽい”って意味。作為的なそれっぽさ。
で、つよぽんはそれを助長しているんだよね」
カエル「今作では新人の服部樹咲もいるけれど……」
主「彼女の演技を支えてあげなければいけないんだけれど、この映画ってそうなっていない印象なんだよなぁ。演技合戦になっていないというか、お互いがお互いを演じるのが精一杯というか。
近年はジャニーズの子や、イケメン男子がBLや性同一性障害を演じることが増えてきたけれど、その中でも特筆できるものは感じなかった、というのが正直なところだろうか」
以下ネタバレあり
作品考察
全てにおいてマイナス方向へと進む物語
では、ここからはネタバレ有りで語っていきます
なんかさ、本当に悪い意味でお約束通りの映画だよね
カエル「えっと……社会的な弱者だったり、そういった人々を救おうとする意図は感じたんじゃないの?」
主「いやいや、偏見を打破する目的が仮にある映画なのだとしたら、それが偏見混じりだというのは、本当にやっちゃダメでしょ。
例えば、一果は児童虐待を受けている女の子ではあるけれど、それがあまりにもテンプレート通りだよね。母親がネグレクトで酒で酔って暴力を振るう……何十年も見てきた描写だ。
また凪沙も性同一性障害というか、お姉であるけれど、その演技の方向性やキャラクター性が既存のオネエ演技の範疇に収まるもののように思えた。もちろん、実際にオネエの人々を起用したのは良いことだと思うし、本当にああいう世界なのかもしれないけれど、それにしてはテンプレ通りすぎるし、しかも暗い世界のように描きすぎている」
カエル「もっと色々な生き方があるはずだ、と……」
主「そうそう。
それは性風俗産業を描く時もそうでさ、確かにそこが苦界だと思う人もいるかもしれないけれど、中には誇りを持って働いている人もいるはずだろう。
自分はパンプキンシザーズって漫画が好きだけれど、その中で主人公の母親は娼婦だった過去が出てくる。だけれど、娼婦であることに誇りを持っている。ただし、『合う合わないが致命的な仕事だ』と語るけれどね。
それはあくまでも一例だけれど、こういった描き方も偏見を打破するのに大事なはずなんだよ」
それこそ、AVの世界からは紗倉まなのような人だって出てきているわけで……
夜のお仕事のイメージを良化することに対する是非はあるだろうが、少なくとも物語を作るときに固定化されたイメージばかりというのは、かなり違和感がある
主「ましてやそれが、弱者に寄り添う映画であるならば尚更だ。
それはもう、いろんなところから感じられて……そもそも、転校先で仲良くなった女の子が個撮現場に通っている可能性ってどれだけだろう? という思いもあるけれど、そこにいる大人が、典型的なオタクばかりだったじゃない。
もちろん、それは本当に取材した結果そうなのかもしれない。だけれど、これも偏見まみれだなって印象だよ。しかも、もう古い偏見だろって。
そして逮捕の流れを2回繰り返す……2人が似たもの同士であることを描きたいのだろうが、同じことを繰り返しても、芸がないように思ってしまうかな」
なんの意味もない強烈な展開
えっと……この記事、アップしない方が良いのでは?
自分でもそう思うよ
カエル「えっと、その怒りが頂点に達したのはどの辺り?」
主「後半かな。
ここでは……流石に直接のネタバレは避けるけれど、親友の女の子がある大きな行動に出る。その意味はわかるんだよ。二人のシンクロと、そして飛べない白鳥と飛んだ白鳥の対比ということ。
だけれど、それが一切物語に……主人公にも一果にも影響を与えない。
確かに、あの状況では誰もどうなったのか教えなかったのかもしれない。
でもさでもさ、同じバレー教室に通っていて、学校も同じなんだよ?
それで知らないってこともありえないし、影響を受けないってことは絶対にありえない、あってはいけない」
カエル「う〜ん……」
主「こういう描写をみると、本当に場当たり的なものでしか作ってないのではないか? と思う時もある。
本作は多くの場面で唐突に大きな事件が始まり、唐突に巻き込まれていく部分がある。しかもそれが悪意に満ちた結果になる。
これって、ケータイ小説と何が違うの?
読者や観客が驚くような要素を入れて、それで強烈な展開を作っている。ケータイ小説で言えば妊娠、エイズ、レイプ、恋人の死、不治の病……まあ、こんなところか。今作では性の不一致、ネグレクト、犯罪の被害者、衝撃の展開、そしてラスト……同じようなものじゃない。
こうやって衝撃のことを入れていき、しかも特に大きなつながりもない作品は、自分はあんまり評価しないかな」
終盤の展開への怒り
……ここは、結構賛否われている印象だね
結局は、先に述べたことと同じなんだよ
カエル「あんまり直接的には言えませんが、2020年にこれをやるのか……と、少しびっくりしたくらいの展開になります」
主「性同一性障害に対しての理解のなさ。せめて、一人くらいは『まあまあ……』と言いながら、理解がある風の偏見を描くならば変わるんだけれど、それもない。
そのまま、あのラストにつながっていくけれど……なんだろうなって思っちゃう」
カエル「……相性が悪い映画の場合、そうなりがちなのかな」
主「僕自身は娯楽主義というか、自分が娯楽のつもりで作っていますというのは、すごく好感が持てる意見だ。
だけれど、これを娯楽として描いているのは……ちょっと、自分の感覚としては、考えられない。
ここまで社会って悪意があるかな?
ここまで人が生きる物語って悪意がないと作れない?
なんかさ、この手の偏見を打破するような、弱者に寄り添うような作品で『かわいそう』って思わせて泣くとしたら、それはすでに打破することができてないと思うんだよね
……その辺りが、少し悲しいね」