物語る亀

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物語愛好者の雑文

2017年のアニメ映画たちを振り返る〜興収面では報われなかった傑作たちも紹介!〜

カエルくん(以下カエル)

「あれ? 今週は細田守特集じゃなかったっけ?」

 

ブログ主(以下主)

「そういえば、2017年のアニメ映画が『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』で終了したのにも関わらず、まだ総評を書いていないことを思い出したんだよ」

 

カエル「しかも書き方もいつも通りに戻すんだね

主「……この前の記事の『時をかける少女』の記事を書いている時にさ、無意識のうちに『カエル』とかって書こうとしている自分がいて、ああもうこの書き方が染み付いちゃっているんだなぁ……と思い知ったわけ。

 なので、またこの書き方に戻します」

カエル「……細田守特集はどうするのよ?

 早くしないと新作公開しちゃうよ?」

 

主「いや、そう遠くないうちに書きますから……具体的には……明日とか?」

カエル「そうやって後延ばしにして公開しなかった記事がどれだけあることか、わかっているの? 書きかけで放り投げたから『あの時どういう意味でこれを書いたんだっけ?』って後々意味がわからないってことも多々有るじゃない!」

主「いや、まあね……

 でも、ほらさ! 

 質はともかくとして、2017年に公開されたアニメ映画について語ってきた数だったらこのブログって相当多い方だと思うんだよね。

 じゃあ、アニメ映画について語っておこう! というのも、まあ大事なことなんじゃないかな?」

 

カエル「それっぽいこと言って誤魔化しているでしょう?」

主「では、記事の方へ行ってみよう!」

(文字リンクをクリックすると該当作品の感想記事へと飛びます)

 

 

  

 

 

blog.monogatarukame.net

 昨年の記事はこちら

 

1 2017年のアニメ映画に望んでいたこと

 

カエル「まずは2017年のアニメ映画にどのようなことを望んでいたのか? ということから語り始めましょうか」

主「誰もが口を揃えて言うだろうけれど2016年のアニメ映画は大豊作の1年だった。

 史上最高の豊作の1年だったと言っても過言ではないだろうし、オリジナル映画や話題になった作品だけではなくて、海外の……それこそディズニー映画や、インスペンデンスの小さな映画、それに日本のおなじみのシリーズ映画に至るまでに素晴らしい作品が相次いだ1年だと言える。

 では、その流れを受けて2017年はどうだったのか? と問われると……残念ながら寡作の1年という印象が強いだろう

 

カエル「新作映画の年間ベスト10を決めるTweetなども流れ始めてきたけれど、アニメは少ないよね。

 入ったとしても『SING シング』や、あとは『夜明け告げるルーのうた』などの湯浅政明作品、11月に公開した『KUBO クボ 二本の弦の秘密』とかばっかりな印象があるかな」

  

SING/シング【通常版】(吹替版)

 

主「そしてイルミネーションが制作した大作だったSINGは今年を代表するほどの大ヒットを記録したけれど、ルーもKUBOも残念ながらそのクオリティと比較すると、ヒットしたとは言いがたい状況である。

 2017年のアニメ映画を振り返った時、やはり印象に多く残るのは海外のアニメ映画であり、逆に言えばどんな状況であろうともディズニーやピクサーであれば、安定して売れる、結局は作品の力よりもブランド力がものをいうということを証明したのではないだろうか?

カエル「当たり前と言えば当たり前なことかもしれないけれどね」

 

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期待した3作品

 

カエル「2017年に公開した作品で特に注目していた作品を3つあげるとなると、どれになる?」

主「もちろん注目の仕方はいろいろあるけれど……

 

ひるね姫

メアリと魔女の花

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

 

 の3作品に関してはかなり注目をしていた。極端なことを話せば、この3作品の結果次第で今後のアニメ映画界の流れが決まってくるとまで思っていたね」

 

ひるね姫 ?知らないワタシの物語?

 

カエル「特にこの3作である理由は何?」

主「簡単にいえばオリジナルの大作アニメだから。

 正確には『打ち上げ花火〜』はドラマ原作だから、オリジナルとまでは言い難いけれど、でも原作とは大きく改変してきたこともあって、かなりオリジナルの設定が多く組み込まれている作品でもあった。

 極端だけれど、ドラえもんやコナンがどれほど売れても、それはアニメ映画の流れというよりはここまで成長してきた、コンテンツの人気である。

 もちろん、そこまで成長させたこと、そしてここから先の持続性も含めてクオリティはとても大事なのは当然だけれど……でも、コナンという名前とお馴染みのキャラクターが出てくれば、どんな内容であってもお客は入るというのもまた道理でしょ?」

 

カエル「そこまで育て上げた先人の苦労などは当然あるけれど、さっきも述べたように既にブランド力を確立した作品だからね」

主「だけれど、この3作品はそのブランド力が一般にはほぼない状態から……というと、また難しいんだけれど、でも知名度が低い状態のオリジナル作品です。

 もちろん、メアリはジブリの影響下にあって観客もジブリと勘違いして観に行ったことは否定しないし、シャフトや神山健治は元々オタク層に根強いファンがいることも否定しないけれど……

 一般層にはそこまで知名度のないスタジオやスタッフが、200、300という大規模上映をほぼオリジナルの作品で行うということは、とても重要なことだった

 

 

 

 

 

2 残念だったアニメ映画の苦戦

 

カエル「でも、結論から述べると『メアリ』は457館で32,9億円、東宝側は合格点と言っているけれど、少し肩すかしな感はあるかな。

 もちろん、他の競合で『カーズ クロスロード(カーズ3)』』や『怪盗グルーのミニオン大脱走』や、実写でも『銀魂』などがあったことは差し引いて考えると、擁護の余地はあるだろうけれど……

 他にも『打ち上げ花失火』が約16億円で目標の20億円には届かす、スタートの勢いは完全に失われて失速、大ヒット基準の15億は超えたけれど ……まあ、やっぱり物足りない。

 そして『ひるね姫』に関しては初週の興行収入で9位と大きく出遅れて、結局そこまでヒットとはいかなかった」

 

主「もちろん、興収だけが全てではないけれど……この結果はかなり残念なものだ。

 昨年の『君の名は。』大ヒットの時に『ジブリや細田守によって夏のアニメ映画を受け入れる下地がある』ということは言われていた。

 それは間違いとまでは言わない。確かに『メアリ』はジブリの下地があって30億というスタジオ立ち上げから考えたら十分以上の合格点を叩き出したし『打ち上げ花火』の勢いもすごかった。

 だけれど……それが続かなかったことが残念だね

 

カエル「作品クオリティも賛否がはっきりと分かれてしまったからね……絶賛意見は隠れてしまった印象もあるし」

主「改めてはっきりと言うけれど『打ち上げ花火』は傑作です!

 多分、うちは日本で1番最初に大絶賛したブログだと思うし、粗や受け入れられ辛い要素は多々あるけれど、でもそのクオリティは馬鹿にされたものではなく、意義もちゃんとあった!

 それからメアリは作品自体はちょっとあれかもしれないけれど、でもジブリとの決別と継承というある種の矛盾したことをどのように表現していくのか? という、テーマ性や志はしっかりとあった作品です」

 

カエル「でも一般的にはそうは思われてないよね」

主「……まあ、賛否が割れているのは確かですね……ひるね姫は自分も厳しい論調になってしまったし……」

 

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映画業界におけるアニメ映画の立ち位置

 

カエル「ただし、大事なのはアニメ映画が売れていないというわけではないこと!

 2017年の映画興収ランキングを見ると、1位が美女と野獣、2位以下には昨年公開の『ファンタスティック・ビースト』や『ローグワン』などもあるけれど、アニメ映画だけでならば『怪盗グルー』『コナン』『モアナ』『ドラえもん』などがTOP10にランクインしています」

 

主「相変わらず映画業界におけるアニメはやはり重要なコンテンツであることは変わらない。

 ただし、前年の『君の名は。』などに始まるアニメ映画のブームを、ブームに終わらせずに定着させるほどの作品は生まれなかった。

 その意味でも上記の3作品の重要性ってそこにあって……ここでオリジナルのアニメ映画が、オタク層やアニメ映画を好きな層以外にも受け入れられたならば、さらに発展する可能性はあった。

 だけど、重ねて言うけれどその勢いは失速してしまったというのが残念だよね。

 まあ、まだ細田守に新海誠の興収次第なところはあるけれど……日本のアニメ映画業界もオリジナルで勝負できる! ということを証明するには物足りない結果になってしまった

 

カエル「ブームをブームで終わらせないために……と思ってきたけれど、結局はブームで終わってしまった印象もあるのかなぁ」

主「そしてその流れを変える力が2018年の映画に……例えば『さよならの朝に約束の花をかざろう』などに求めるのは酷な話だ。

 岡田麿里の初監督作品だし。

 もちろん『リズと青い鳥』などの大注目作もあるけれど、多分こちらはオタク層中心のヒットになりそうだしなぁ」

カエル「今のところ、オリジナル作品で一般層にも広く受け入れられそうな作品は細田守の最新作が公開されるであろう8月まで待たないといけないのかなぁ

 

 

 

 

3 傑作続きのアニメ映画たち

 

カエル「ここまで語ってきたのは一般層向けの大作アニメ映画の話であって、じゃあオタク向けのアニメ映画はどうだったのか? という話だけれど……」

主「もちろん、今年も傑作続出ですよ!

 ほぼ毎週のように何らかのアニメ映画が公開されて、その中でも傑作が月に1作はあった。はっきり言うけれど、面白かった確率は……打率に関して洋画や邦画よりも高かったのは変わらない

カエル「もちろん、アニメ好きの意見になります」

 

主「まず2月に公開された『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』はその圧倒的なスケール感や豪華な作画、そして音楽によって観客を魅了した。海外でも公開されて、日本で25億円以上、海外で8億……だったかな? 合計33億円突破の報道の後に、さらに中国で8億円以上売り上げて今の所、全世界で43億円の大ヒットを記録している。

 SAOの世界的な人気もあって、マスメディアなどで報道されない隠れた大ヒット作となっている。

 もちろん、クオリティや評価も非常に高くて、海外の映画批評サイトのロッテントマトではオタク映画とあって批評家評はないけれど、観客満足度は90パーセントを記録している」

 

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カエル「ファン向け映画であり、ブランド力が確立しているとはいえ、一般層への知名度がそこまで高くない作品でこの評価はすごいよね」

主「他にも忘れてはいけないのが『夜は短し歩けよ乙女』と『夜明け告げるルーの唄』の湯浅政明の2作品だね。

 元々国内のアニメファンを中心に根強い人気を獲得していたけれど、そのクオリティの高さを証明した形になった。

 興行的には苦しい思いもしたけれど、海外のアニメ映画映画祭であるアヌシーにて最高の賞であるクリスタルを受賞の快挙に加えて、『夜は短し〜』はオタワの国際アニメーション映画祭にてグランプリを受賞した。

 おそらく再来年のアカデミー賞でも注目を集めることが間違いない作品だろう」

 

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意外な傑作たち

 

カエル「そして個人的には事前評価がそこまで高くなかったけれど、鑑賞したら非常に面白かった作品もたくさんあったよね

主「まずは何と言っても『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』ですよ!

 原作もアニメも見ていないで、なんとなくアニメ映画だからという理由だけで観に行ったら、これがもう大傑作で!

 オタク向けやファン向けの要素もあるけれど『SAO』などには若干劣るかもしれないけれど、とても満足感の高い快楽性の高いアクションと音楽で魅了してくれた!

 そして何よりも、EDの最後の最後まで観客を引き込みつづけ、主題歌にも張り巡らされた工夫と、スタッフ・キャストの知恵が巡らされた作品でした

 

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カエル「そして8月には忘れてはいけない『きみの声をとどけたい』もありました。

 この作品は新人声優育成企画の一環として制作された作品であり、声を届ける声優という仕事と、同じく声を届けるラジオを組み合わせた作品であり、さらに舞台は鎌倉のみという日常系のお話でもあります」

主「こっちはオリジナルだけれど、予想外に響いた作品だったね。

 決して派手な物語ではないし、かなり日常に沿った作品であって、劇場で観る意義があるのだろうか? と思わされるところもあり、ちょっと下に見ながら劇場に向かったところもあるけえど、もうガツンときたね。

 音楽も素晴らしいし、キャラクターも多いけれどそれぞれにちゃんと見せ場もあって、かなり計算されている印象がある。

 残念ながら宣伝が少ないのと、公開館が少ないこともあって興収は伸び悩んだけれど、隠れた傑作としてもっと評価されてもいい作品だと思う。

 他にも『KUBO』やキッズ映画『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』や『 DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団』なども、かなり見所のある作品となっています」

 

映画『きみの声をとどけたい』オリジナルサウンドトラック「アクアマリンの思い出たち」

 

アニメを劇場で公開する意味

 

カエル「今年に限った話ではないけれど、全○作っていう続きものの公開も目立ったよね」

主「その連作ものの中でも多くの魅力を発揮したのが『劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel I. presage flower』と『ガールズ&パンツァー 最終章』の2作だろう。

 どちらも根強いファンがいるから、ということもあるけれど、圧倒的なクオリティの高さを、しっかりとした音響の映画館で魅せるということにこだわり抜いた作品だった。

 確かに映画としての評価はそこまで高くありません。事前知識や予習も必要だし、これで完結していないので、1作の物語としてはちょっと……と思うところもある。

 だけど、テレビアニメではなくて劇場で公開する意味に溢れた作品だったことも事実でしょう

 

【映画パンフレット】 ガールズ&パンツァー 最終章 第1話 

 

カエル「その意味でいうと、売れることもあってか、そこそこの作品が総集編であったり、OVA作品を映画館で公開しているけれど……じゃあ、その価値がある作品がどれだけありますか? と問われると、実はそこまで多くないんじゃないかな? と思うこともあって」

主「総集編映画であっても『劇場版 響け!ユーフォニアム 届けたいメロディ』などは圧巻の作品で、2期の後半のみに焦点を絞るという英断によって、1作の物語として過不足ない物語として再構築されていた。もちろん、音楽も素晴らしい。

 でも全てのアニメ映画やOVAの劇場作品がそのレベルにありますか? と言うと、そんなことはなかったのも事実。かなり厳しい論調になってしまう作品もあった」

 

『劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~』 オリジナルサウンドトラック「The only melody」

 

カエル「映画館で公開する作品が増えてきたからこそ、色々な工夫が求められるわけだね……」

主「ちょっと安易に総集編などの映画をやりすぎじゃない? 

 確かに続編製作のために手っ取り早く予算を回収できるし、ファンも大きな画面で見られる総集編などは嬉しいというのもあるだろうけれど……でも『映画館で公開する意義』が問われてくるだろう。

コードギアス 反逆のルルーシュI 興道』などのように再構成などに優れた作品があった一方で、粗が目立つ単なる総集編作品も目立ってきたな、という印象かな」

 

 

 

 

最後に

 

カエル「では、最後に締めの言葉と参ります」

主「上記の興収ランキングでも語ったように、今の日本の映画界においてアニメ作品、また漫画原作実写作品を無くして語るのは難しいほどに大きな影響力を獲得しています。

 だけれど、残念なことにアニメ映画の注目度は低い。映画好きの中でも無視されることも多いし『所詮アニメだろ?』と雑誌のランキングから除外されたりもしています。

 しかもアニメファンも細分化していて、海外アニメ映画もキッズアニメ映画もオタクアニメ映画も全部見るよ! という人はそこまで多くない。

 それ自体は仕方ないことだけれど……でも、日本が誇るアニメという文化に対する評価や社会の状況は、まだ高いとは言い難いのが現状です

 

カエル「世界に誇るべき! と誰もが口にしながらも、でも本当にそう思って行動しているのか? と思う時も……正直あるよね」

主「賃金的にも時間的にも予算的にも苦しい現状の中、アニメ業界のクリエイターは日々努力を重ねていい作品を作ろうと日々努力をして、向上心を持っている。

 全部みろよ! とは言いません。ただ、普段見に行かないタイプの映画がトンデモナイ大傑作で、一生の思い出に残ることもある。自分にとっては『ノゲノラ』や『キミコエ』がそうでした。このブログを書いていなければ、観に行かなかった。

 レンタルでもいいし、暇な時ちょっと時間空いたから……と思ってフラリと観る作品のリストの中に、アニメ映画も頭の片隅に入れてあげてください。

 打率の高さは自分が保証します。

 アニメ好きの意見ですが、本当に面白い作品が多いです」

 

カエル「来年も多くのアニメ映画をなるべく鑑賞しようと思いますので、ぜひよろしくお願いするとともに、絶賛記事や面白かった記事は拡散してくれると嬉しいです!」

主「打ち上げ花火の時は本当に悔しかったからなぁ……公開初日は世界中で絶賛しているのが自分だけだと思っていたから……それくらい酷評続きだったんで。

 それもわからないではないけれど、できれば絶賛記事で拡散されたいよね。

 というわけで……来年もよろしくお願いします!」

 

 

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