物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『ほしのこえ』感想と評論 新海誠が詰まった作品!

カエルくん(以下カエル)

「新海誠の最新作の公開が間近だね!」

亀爺(以下亀)

「主は新海誠のファンじゃから、初日に観に行くのじゃろうな」

 

カエル「それに合わせてこれまでの新海作品の感想を書いていくんだね!」

亀「すでに秒速5センチメートルなどは書いておるが、全作品というわけではないからの。これから公開前まで全作品の感想を書きたいところじゃの」

カエル「新海作品となるとやっぱり秒速と『言の葉の庭』は多く語られるけれど、その他はあまりないのかな? ほしのこえは語られることも多い気がするけれど……」

亀「その意味では感想としても珍しいものになるかもしれんの」

 

 

 

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 1 新海誠のデビュー作

 

カエル「彼女と彼女の猫でアニメーション界に知る人ぞ知るアニメ作家となった新海誠だけど、結果的に、実質商業デビュー作はやっぱりこの作品ということになるよね」

亀「そうじゃの。2002年にたった一人でCGや脚本、作画を含めて非常に多くのことをこなしていたらから、業界にも大きな驚きを持って受け入れられたの。ここから新海誠は始まった」

カエル「そういう意味では他のアニメの監督とはまた違うよね。アマチュアイベントで話題になって、そのまま商業アニメの道に行かないで劇場アニメで商業的に監督をする道を進んだ人って他には浮かばないけれど」

 

亀「普通のアニメ監督はどこかのスタジオに入り、作画や演出、制作進行で少しずつ腕と名を上げながらいつかは監督に抜擢してもらうのを待つのがよく聞く話じゃろう。調べればポン、と出世した例はあるじゃろうが、フリーランスのアニメ監督が後に劇場アニメの監督を務めるというのは中々異例の事態じゃな。

 その意味で、ほしのこえという作品はその作品自体もさることながら、その発表のされ方じゃったり、一人で作り上げたという創作過程の方にも大きな価値を持つ。デジタル社会の可能性を大きく示したということじゃの

 

カエル「でも、その後に続く作家がなかなか現れないよね。そのいうやり方でヒットした人を考えると、『イヴの時間』の吉浦監督くらいかなぁ?」

亀「調べればもっとおるのかもしれんが、せっかくの流れがあの一時期で止まってしまったように思うの。新海誠も吉浦康裕も、アニメ界の中では独特の地位を築き上げておるから潜在的に優れたアニメ監督候補はたくさん眠っておると思うのじゃが……

カエル「ニコニコ動画なんかでも自作アニメを発表したりする人もいるけれど、せいぜいアーティストのPVで終わっちゃって、そこから大きくアニメ作品を作る作家になったって人は聞かないよね」

亀「これだけのネット社会になると、非常に大きな可能性を感じるのじゃがな。漫画、小説、歌手はいくらでもネット出身がおるのに、アニメや映画となるとやはりコストの問題もあるのかの……」

 

 

2 新海誠の全てが詰まった作品

 

カエル「じゃあ、ここから感想として書いていくけれど……」

亀「2002年に公開された作品じゃが、当たり前じゃが、やはり今見ると古さを感じてしかたないの

カエル「そこはね……今見直すと当時のCG技術としては相当すごいのかもしれないし、しかも個人てこれができるんだって意味でも驚きではあるけれど、飛躍的に成長している分野だからこそ違和感はどうしてもあるよね」

 

亀「例えばCGを用いたロボットアニメとして『ゼーガペイン』が2006年に作られておるが、ほしのこえから4年経った商業作品であっても、あまり動かないようなCGとなってしまっているものがある。こればかりは仕方ないが、やはり14年も過ぎると見ていて少し辛いものがあるの。

 あの当時でこのクオリティだったら絶賛されたのかもしれんが……」

カエル「特に人物は難しいよね。明らかにおかしいところもあるけれど、CGでアニメ的なキャラクター像を作るって、今でも結構難しいとされていてセルルックなどの試行錯誤を繰り返しているもんね」

 

亀「それから宇宙を旅するその壮大さと裏腹に、あまりにも個人の関係に注目しすぎているという批判もあるの。俗に言う、『セカイ系』の代表作としてもよく名前が挙がる。わしなどは邪推する人間じゃから、登場人物もそこまで出せない上に25分に収めるために他の登場人物や大きな設定はカットした結果じゃと思うが、そういう考え方をしない人には余計にそう感じるのかもしれんの」

カエル「声優がふたりしか出てこないもんね。個人的には新海監督の朴訥とした声質、結構好きだけどなぁ。そりゃ、演技力となると本職には負けちゃうけれどさ」

 

亀「じゃが、何と言ってもこの先の新海作品を語る上では欠かせない要素がたくさん詰まっておるの。ポエム調の話し方じゃったり、電車と踏切、雨の音、遠距離恋愛の切なさというものだったり、その他の空気感や世界観の作り方というのがこの作品に全て凝縮されておる。

 作家のデビュー作には全てが詰まっているとよく言われるが、新海作品で言えばこの作品と彼女と彼女の猫には本当にそれが当てはまるの」

 

 

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様々なオマージュ

 

カエル「途中でマクロスだったり、エヴァみたいな雰囲気がある場面もあったよね

亀「もう一人の自己との対話、そしてジャンプカット……と言っていいのかの? 一秒にも満たない短いカットを連続していれることによって、その作品の世界を構築しておる。ここがいかにもエヴァ的であり、わしの記憶通りであれば、当時もエヴァとの比較で語られた評論も多かったように思うの

 

カエル「他にも全体的に村上春樹の影響があるのは間違い無いだろうし、新海監督が読んでいるかはわからないけれど『最終兵器彼女』のような雰囲気も感じるよね」

亀「まだエヴァの影響が強く残っている時代で、さらに2000年代当初のちょっとマイナーなアニメが与えたサブカル的というか、そういう文化が与えた影響を考察するにもよく使われるのもわかるの。

 なぜこの時代の後にネットや個人制作から登場するアニメ作家があまり生まれていないのかも含めて、考えてみたい気もするの」

 

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3 作品内容について

 

カエル「ここまでは作品の外側に関する話だけど、作品内容としてはどうかな。切ないラブストーリーが展開されているけれどさ……」

亀「……う〜む、非常に評価が難しいの。まず、演出面じゃが2046年という設定のわりにはそこまでSF要素を感じないというのがあるの。確かにロボットや宇宙戦は未来感はあるものの、その他があまりにも現代的すぎる

 

カエル「そこは難しいよね、例えば携帯メールでやりとりしているけれど、現代なら間違い無くスマホだし」

亀「これはSF的な未来の想像のさらに上を現実がいってしまった例じゃな。この作品で非常に重要な役割を果たす、携帯メールというアイテムがまさか時代遅れを象徴することになってしまうとはの……

 この作品に漂うノスタルジックな雰囲気を活かすためにも、あまりにも現代とかけ離れてしまうとその雰囲気も出すことはできなくなる。そう考えるとこの時代感というのは妥当ではあるが……だからこそ、少し違和感のあるものとなってしまっておるな」

 

カエル「あとは……雰囲気はわかるけれど細かい部分がよくわからないよね

亀「結局主人公たちもただ宇宙の別の生命体を追っかけてきただけだから、なぜ戦っているのかもよくわからんの。あれは一体なんなのか、どういう存在でどういう風にコンタクトをとる予定だったのか、一切わからん。それが本作がよりわかりづらくなってしまったいる要因じゃな。

 じゃから、先ほども述べた通りの本作は雰囲気を楽しむためのものであり、その空気感を楽しめればそれで良い。元々個人制作の作品じゃ、一般商業作品と比べることもおかしいと言われればその通りなのかもしれんの」

カエル「まあ、今は他の一般商業作品と扱いが変わらないから難しいところだよね」

 

 

最後に

 

カエル「というわけで、まずは新海誠のほしのこえをまとめたけれど、次は時系列通りに『雲のむこう、約束の場所』になるのかな?」

亀「今のところはそうする予定じゃな。ただ、あの作品も相当難しい作品じゃからな……改めて見直してみて、どうなるかというのがまるで見当もつかんわい」

カエル「そこはねぇ……新海誠って現代劇は素晴らしいけれど、SFやファンタジーとなると少し、ね……」

亀「新海誠のノスタルジックで詩的な世界観との相性が悪いのかもしれんな……」

 

カエル「よし! じゃあこれからお盆だし、バリバリ更新していこうか!! 最近サボりも多かったし!」

亀「……ほどほどにしていきたいものじゃな、あんまり頑張るとバテるぞい」

カエル「ここで一気に行かないでいつ行くんだよ!! 次の長期連休は一般化しているか怪しいシルバーウィークか、さらに4か月も先のお正月だよ!! ここで頑張らないでいつ頑張るのさ!」

亀「……老人はもっと労わってほしいものじゃな」

 

 

 

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 ※ほしのこえのノベライズって、佐原ミズだったんだ……鉄楽レトラ好きだったなぁ

 

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