カエルくん(以下カエル)
「いや〜!! 『君の名は』すっごく面白かったよね!!」
ブログ主(以下主)
「…………」
カエル「なんというかさ! これまでの新海誠の全てが詰まった、集大成みたいな作品だよね!!」
主「…………」
カエル「……あ、これシン・ゴジラの時と同じで、一気に爆発するパターンかな?」
主「フフフ……フフフフフフ。
だから言っただろう? 『君の名は』は新海誠の代表作になる、日本アニメ至上屈指の名作になるってさ。いや、わかっていたよ? これだけ愛情深く、新海誠に注目してきたファンとしては、まあ当然の結果だよねぇ」
カエル「……うわぁ、マジで気持ち悪いわ」
主「まあ、なんていうの? 新海誠の才能と、ここ最近のCMなどの作品を見れば、これだけの作品ができるっていうことは……」
カエル「はい、感想スタート!!
ちなみに、感想は言っていくけれど、今回は予告編以上のネタバレはありません!!」
『君の名は』の公開前に書いた記事です
ネタバレありのガッツリ評論がいい方はこちら
1 全体の感想
カエル「それじゃあ、改めて聞くけれど、全体の感想としてはどうだった?」
主「新海誠の集大成であり、これから先、代表作といわれる作品だよね。
今までの作品は秒速にしろ、言の葉にしろいい作品だけど、人を選ぶところがあったじゃない? 『童貞くさい』とかさ『男が女々しい』とか、『感情移入できない』とか、『女がステレオタイプ』とかさ。絶賛する人はするけれど、その人にとって魅力と思われたところが、人によっては全然ダメだったりするわけだ」
カエル「賛否の分かれる監督だったからね」
主「だけど今作に限ってはそんなことなくて、大人から子供も、男も女も関係なく楽しめるエンタメになっている。
予告編でもあるけれど、今作は男と女が入れ替わるんだよね。今までの作品も男と女の話だったけれど、今回はどちらかに感情移入したり、気に入れば大丈夫。どちらのキャラクターもアニメ的だし、そこまで大きな違和感はないし」
カエル「新海監督特有のポエム調のセリフは?」
主「全くの0じゃないけれど、だいぶ抑えられている。というか、全体のテイストが明るめでドラマ的だから、そんなにポエムも目立たない。
今回はギャグパートもしっかりと入っているし、笑い声も聞こえるような作品に仕上がっている。
これで新海誠は一躍トップアニメ監督になるかもしれないね。
あ、あとRADファンも必見の出来だね。RADの PVという意見が出るほどに、重要な扱いをされているから」
2 監督 新海誠について
カエル「まずは何よりも新海誠について説明しないとね」
主「……実際、新海誠の知名度ってどんなものだったんだろうな?
前作の『言の葉の庭』では、興行収入が2億円と言われていて、マイナー映画監督の扱いだったけれど……これは公開館数が30館もいかないような小劇場で、しかも他の映画とは違う売り方をしていたんだよ」
カエル「違う売り方?」
主「公開初日にはもう、劇場限定でDVDを売っていたのね。だからさ、リピーターがほとんどいない。アニメ映画って……特に『オタク層』向けのアニメ映画って、リピーターがすごく多いのね。2回、3回どころか、10回見たという人もいるくらい。
だけど、この新海誠監督に至ってはDVDで売っているから……興行収入では測れないところがある。
そして賞レースでも話題ではあるけれど、ジブリだったり、細田守のように一般でも知れ渡った監督や、原恵一、今敏などのような目の肥えたファン向けの映画監督もいたから、あまり評価されなかった節もある。前に書いたように、人を選ぶ作品も多かったしね」
カエル「どちらかというと玄人受けよりも、分かりやすい売りがあるから、一般受けしやすい映画監督になるのかな?」
主「どっちつかずの評価になって『アニメファンなら知っている』というレベルに落ち着いたのかもしれないなぁ……
それが君の名は。で爆発した」
特殊な経歴
カエル「まず、新海監督を語る際に重要なのは『ひとりでアニメを作り上げた』という点だよね」
主「CGアニメのレベルが上がっている時だったけれど、そこでひとりで『ほしのこえ』という作品を作り上げて、そのレベルの……あくまでも個人製作の、という注釈付きではあるけれど、そのレベルの異常な高さに驚愕と賞賛を持って迎え入れられたわけだ」
カエル「結果論になるけれど、これ以降個人でアニメを作って話題になった人はいないしね……」
主「普通はアニメ監督になるのは、アニメ制作会社に入って、少しずつ演出とかをして経歴を積んで……というのが常道だけど、新海監督はそういうタイプではない。
むしろ、昔からアニメが作りたくてしょうがない! というタイプでもなかった。パソコンで趣味で作っていたアニメを発表したら、これが案外おもしろくてハマった、というタイプ。
だからロボットアニメとか、そういう……いわゆる『オタク向けアニメ』はあまり見ていなかったみたい。それが独特の世界観や感性に繋がっていくわけだね」
3 新海誠の長所
圧倒的な映像美
カエル「まず、新海監督の長所というとここだよね。ほしのこえのみならず、秒速5センチメートルとかもこの映像美が評価されたわけだし」
主「元々CGで作画をしていた人だから、光の使い方なども非常にうまいわけだ。新海誠の最大の武器は『背景が物語を語る』という部分にある。
どういうことかというと『秒速5センチメートル』において、主人公の男が夜の都会の雪の中で空を眺めるシーンがあるけれど、ここで彼の抱える孤独などが、本能的に訴えかけてくるわけ。
これはもちろん、君の名は。でも際立っている部分であって……それこそ空の色、彗星、それから田舎の街並みと都会の全く方向性の違う美もある」
カエル「なんで新海監督はそんなに綺麗な映像が作れるの?」
主「技術的なことを言うと『光源が2つある』ということを意識しているらしい。つまり、それによって光の取り入れ方を調整して、実写以上に美しい景色を撮るわけだね。CGアニメの強みだね
あとは……新海監督の経歴を考えると、元々絵本作家を目指していたというのもあるだろうな」
カエル「……絵本作家?」
主「そう。新海監督は絵本作家を目指していたけれど、絵が描きたいということでゲームメーカーに入社して、そこから趣味でアニメを作った……という経歴の持ち主でさ。こう言っちゃなんだけど、実家も父親が会社社長だから、それなりに裕福なわけ。
だから会社をすっぱりと辞めて、アニメを作ることができるわけだ。
そして、その絵本作家を目指していた時代に……背景としての絵を追求した結果が高い美意識になったんだろうね」
カエル「ああ、あの」
主「そうね。そこで培われて技術や感性がアニメに影響していると思うよ」
音楽との融合
カエル「これはすごく新海監督の代名詞とも言われているよね」
主「『秒速5センチメートル』にしても『言の葉の庭』にしても、音楽との融和がすごく大きい。これは結構難しい技術でさ、センスとしか言いようがない。
ここの影響が大きいからこそ『MV(ミュージックビデオ)のようだ』とも言われるけれど……この感性は圧巻の一言だよ」
カエル「音楽がいいし、絵も美しいもんね」
主「新海監督の世界観ってどちらかというと『詩』などに近いものが多い。理屈や頭で考えるのではなく、感性で『感じる』部分が非常に大きいと思うんだよね。
だから、美しい絵と美しい音楽が融合した時の快感は……非常に大きい。
元々アニメってミュージカルとか、そういう『絵と音の融合による快感』がすごく大きいメディアで、最近は『』とか『ラブライブ』などのアイドルアニメが非常に多くて、ヒットもしている。
これは音と絵が融合した時の感動が非常に大きいからだね」
カエル「もっと一般的なところでは『アナと雪の女王』などのディズニーアニメでは必ず音楽と絵の融合シーンがあるもんね」
主「ここを最大限に扱ったのが、新海節だね」
叙情的な語り口
カエル「……これは?」
主「これはさ、賛否が分かれるところだけど……新海作品ってかなり、独り言のような……ポエムが多いわけだ。人によってはここが受け入れられないということがある。
だけど、このセリフのチョイスとか……実は抜群にうまいんだよね」
カエル「へぇ……それってやっぱり新海監督が大好きな村上春樹の影響なのかな?」
主「もちろんそれはあるよ。新海作品の中では村上作品を読む場面が出てくるし。
だけど、それはやっぱりひとりでアニメを作るという経験からきているという指摘もあるんだ」
カエル「……それって関係あるの?」
主「ひとりでアニメを作ると口パクが作りづらい。それを作ると動画枚数が余分に増えるからね。だから、独り言のようなモノローグを入れることによって、動画枚数を減らすということを意図しているわけ。
だからデビュー作に前に作った『彼女と彼女の猫』という作品は主人公が猫なの。猫なら口パクがいらないでしょ? それに彼女の姿もほとんど出てこないし」
カエル「それが独特の味を出しているわけだね」
主「新海監督のすごいところって『逆転の発想』にあると思っている。普通は表現したいことに拘るから、できないことでも詰め込もうとするけれど……詰め込むことをせずに、逆にそれをカバーしながら表現しちゃう凄さがあるんだよね」
4 新海誠の欠点
人物の弱さ
カエル「これは……よく主も初期作について指摘していることだね」
主「新海作品はこれまでの作品て、どれも似た様な人間像だったんだよね。
男はナヨナヨして、自分の世界観に閉じこもった文学青年。これは新海誠自身だと言われている。
女性は大人の女性だと疲れたOLで、少女だと黒髪ロングの文学少女か、悩めるショートカット系女子。どちらにしろ自分の世界に閉じこもりの人間を描いてきた」
カエル「リアルといえばリアルだけど、引き出しが少なよね……」
主「これは後述するけれど、元々の経験の少なさが影響していると思う。
そして新海監督は……言葉は悪いけれど『物語の構成は弱い』監督でもある」
物語性の弱さ
カエル「これはどういうこと?」
主「普通は起承転結とか、序破急などの4段構成、3段構成と呼ばれる構成法を使って表現する。
だけど新海監督はそういった、構成方法をあまり考えていない。描きたいことがあるから、それを表現するための……物語の辻褄合わせとかってあまりしないタイプ。
そのかわり、絵にたくさん詰め込むんだよ。二本ある歯ブラシとか、本棚に入っている本とかで、その人の生活様式とか家族構成とか趣味って、なんとなくわかるでしょ?
そういう……わかりやすい『物語性』は放棄して、絵の細やかなところで察してもらう叙情性を強調しているわけだ」
カエル「主なんかはそれがハマって『秒速5センチメートル』を絶賛したけれど、そこの物語性が弱いから誰にでもハマる作品ではないよね」
主「童貞的とかさ、そういうことは言われて当然だと思うよ。なぜなら……童貞というと言葉は悪いけれど『女性関係に対してピュア』ということがこの監督の最大の特徴だから。
君の名は。でいえば、瀧も三葉も異性との交際経験はないだろうし、その高校生の純粋さが受ける部分でもあるし。
そういう……ピュアの叙情性がこの監督の最大の特徴だけど、だからこそ物語性はなくなっているわけ」
特殊な経歴ゆえに……
カエル「結局はこういう弱点てどこから来ているの?」
主「ひとりで作ってきて、小スタジオで原作から脚本、監督、作画に至るまで自分の指示でやっていたことに由来するだろうね。
これが大手のスタジオでテレビアニメを作りながらやっていたら、いろいろな人に物語性だったり、キャラクターの作り方などを教わると思うけれど……新海監督はそれを教わる機会がなかったわけでしょ?
だから、どうしても……言葉は悪いけれど『ものまね』で試行錯誤するしかなかったと思う。それが最大限に出てしまったのが『星を追うこども』で。
いや、試行錯誤自体はむしろ褒めるべきことだよ? だけど、その都度発表することになっちゃったからね」
カエル「その話がよく出ているのが『ほしのこえ』の製作秘話だよね」
主「それまで新海監督はそこまでロボットアニメに興味がなかったけれど、自分の表現したい……人間の内面的な世界観を、エンタメとして広く見てもらうためにキャッチーなロボットとかSFに手を出した。
でもロボットの動かし方がわからなから、必死に勉強したんだって。だからほしのこえってEVAとかマクロスのような要素が入っている。
自分は初めて見た時『ロボットものが好きなのかな?』と思ったけれど、そうじゃない。むしろ逆なんだよ。嫌いではなく、興味がないから……そのモノマネになってしまった」
カエル「それが試行錯誤の結果なんだね」
主「でも、モノマネをしないと身につかないというのも本当だから、叩くことではないけれどね。
よく新海監督はセカイ系と言われるし、それも間違っていないけれど、本人がやりたいのはあくまでも『人間の内面や成長について』であって、世界がうんたらとか SFはむしろ、観客に対するサービス精神なんだよね。
それが受けて、結局『セカイ系の作り手』になったけれど
欠点が解消された『君の名は。』
カエル「君の名は。はどうなの?」
主「今までの欠点がすべて解消されたよ!
弱かった人物や物語性に関しては、キャラクターデザインに田中将賀という近年大ヒットアニメを手掛けた人を連れてきたし、作画監督には安藤雅司というジブリ出身の人を連れてきたわけだ。
さらに……後述するけれど大物アニメーターを連れてきている。
だからキャラクター性については完璧! 動きも含めて文句のないデザインになっているよ!」
カエル「物語については?」
主「いろいろな人が手を加えているから、起承転結だったり、物語の展開だったりということがしっかりしている。
元々物語性が弱い監督だったけれど『言の葉の庭』やCMの『Z会 クロスロード』でしっかりとした構成とか試行錯誤ができたから、期待はしていたけれど……一気に化けたね」
カエル「やっぱりCM の試行錯誤が良かったのかな?」
主「それはあるかもね。結構新海作品のCMも好きで見ているけれど、進化した部分が多くて、この作品にも影響があるよ」
5 他のスタッフについて
プロデューサー 川村元気について
主「今回プロデューサーで川村元気という人がいるんだけど、この人がまあやり手でさ。『電車男』とか、『告白』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』の企画やプロデュースをしてきた人なわけ。これから公開の作品も『怒り』をプロデュースしているし、まあすごいヒット作連発をしている人なわけだ。
さらに自分で小説を書いて『世界から猫が消えたなら』を4年で累計100万部売って、映画化もしちゃったような人」
カエル「テレビアニメだと『血界戦線』もヒットさせたよね」
主「……これに関しては原作ファンだから、むしろ熱血系の原作をオシャレにしたという点において非難したいんだけど、とにかくヒットさせることに関しては天才的な嗅覚を持つ人でもある。上記の映画作品の評価自体もそんなに悪くない、まあ経歴と実績がのせいで嫉妬しかないけれど。
今作においても監督が『RADのファンです』って言ったら、その場ですぐに交渉して、起用することになったというくらい行動力のある人だよね」
カエル「そんな人がプロデュースをしているから、大きく外すことはないだろうってことだね」
作画監督 安藤雅司について
主「本作の作画監督は安藤雅司なんだけど、この人の名前は知らなくても作画監督作品の代表作を聞けば誰もがわかるすごい人」
カエル「へえ、何を作った人?」
主「『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』とかの作画監督。原画ならまだまだ出てくるよ。『イノセンス』とか『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』とか。
作画監督の仕事は作画部門のトップだからさ、野球でいったらコーチでもリーダー格だから、ヘッドコーチかな? 一般には目立たないけれど相当大切なポジション」
カエル「え!? どれも日本を代表する作品じゃない!!」
主「そうよ。『星を追う子ども』がジブリっぽいというけれど、今回は本当にジブリを背負った人が作画監督をしているわけ。だから、作画面に関しては相当レベルの高いことをしている」
キャラクターデザイン 田中将賀
主「で、このキャラクターデザイン田中将賀も相当にすごい人でね、こちらも代表作をあげていこうか?」
カエル「代表作を聞かないとわからないからね」
主「分かりやすいところでは『とらドラ!』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』とか。これらは長井龍雪と岡田麿里のトリオとして有名で、キャラクターデザインと総作画監督をしている。
オタク的に注目するのは『交響詩篇エウレカセブン』『蟲師』とか『甲鉄城のカバネリ』の作画監督をしていた人。特に作画がすごいと褒められた作品だよね」
カエル「……こっちもまたすごい代表作ばかりだね」
主「ここ最近ヒットしたアニメの作画ばかりだし、間違いない腕を持つ人だよね。もしかしたら、『ここさけっぽいな』という印象を持つかもしれないけれど、キャラクターデザインが同じ人だから、当然といえば当然。
ここまでは事前にクレジットされていたことだけど、今回エンドクレジットを見たら、さらにすごい発見があったんだよ」
アニメーターがすごい!
カエル「アニメーターってそんなに馴染みがないけれど、そんなにすごい人がいるの?」
主「自分もそんなに詳しい方ではないけれど、それでも知っているレベルの人がいるわけよ。
例えば、作画監督に黄瀬和哉がいた。エヴァのTV版、映画版とか『機動警察パトレイバー 劇場版 』の1、2両方、『イノセンス』も作画監督も務めた大ベテラン。押井さんの懐刀の一人だよね。
そんな人が作画監督にいたのよ。だから、宮崎駿のジブリテイストもあれば、押井守のIGテイストもあるというと、すごさがわかりやすいかな?」
カエル「え!? そんなにすごい人たちが集まっているの!?」
主「さらにいうと、原画に沖浦啓之という……一般の人には馴染みがないけれど『人狼 JIN-ROH』と言う作画クオリティが高い作品の監督をして、『イノセンス』などで大事なシーンを任された日本でもトップクラスのアニメーターが参加している。
沖浦さんって人間の重心をしっかりと取った、ネチっこいとも称されるキャラクターの動きを描く人だけど……もうとんでもないレベルでさ。
沖浦監督作品はこちら
他にも765メンバーのアイドルマスターのアニメ(通称アニマス)の監督を務めた錦織敦史がいてさ、流れるスタッフロールを見ただけだから、もっとすごい人を見逃しているかもしれない。
レビューを見ると業界内評価の非常に高いベテランの松本憲生、『ルパン三世 カリオストロの城』にてルパン大跳躍を描いた田中敦子も参加していたという話もある。
宮崎駿やジブリイズムがあり、押井守の懐刀がいて、近年の深夜アニメの名作画を監督した人がいる。
まさにオールスターなわけだ」
6 キャストについて
カエル「じゃあ、ここで濃いスタッフの話は一度置いて、声優の話に入ろうか。まずは主演の神木隆之介についてはどうだった?」
主「多分、なんだかんだ言われるだろうけれど、悪くないよ。今回は難しい役どころだと思うんだよね、何せ男でありながら女も演じなければいけないっていうさ。しかも、オカマ演技になっちゃいけないんだよ、中身は女の子だから。
そういう難しい部分もしっかりとこなしていたし、個人的にはあんまり文句ないかな? あと、声質が新海監督の好きそうな朴訥とした感じで良かったよ」
カエル「相手役の上白石萌音はどうだった?」
主「よかったよ。こっちも色々と言われると思うけれど、今回オーディションで選ばれたと聞いたけれど、声質がいいなぁって思った。
この子って映画の『ちはやふる』に奏役で出ていた子でしょ? その思いがあったのか、所々茅野愛衣みたいな声質だなぁって思いながら観ていたね。
じゃあ茅野愛衣でいいじゃんって言いたくなるのもわかるけれど、経験を積めばすごくいい声優になるんじゃないかな?」
カエル「そして長澤まさみだけど……」
主「すごくよかったよ。セクシーで影のあるお姉さんだったし、声質が透明感があって本当に綺麗でさ、いわゆる『アニメ声優』の演技ではないけれど、それがまた独特の美しさを醸し出していたね。
あれ、長澤まさみってこんなにうまかったの? と思っちゃったぐらい良かった」
カエル「他の声優陣は?」
主「今回、個性的なベテラン声優って……いないんだよね。『雲のむこう、約束の場所』のレビューの時も書いたけれど、芸能人声優の中に石塚運昇がいてさ、プロの声優の中でも個性的な声質で、うまい役者じゃない? そんな人と並べられたら、そりゃ浮くし、下手に聞こえるよってのはある。
だけど、今回は若手中心で声質も独特な人も少なかったし、演技も自然だったから芸能人声優と本職の声優での差がそこまでなかったように思う。いい采配だね」
カエル「その中でも目立ったのは……やっぱり悠木碧かなぁ?」
主「出ずっぱりと言うほど出番があるわけでもないんだけど、やっぱり悠木碧はうまいなぁって感心した。25歳以下では早見沙織と並んでトップクラスだと思う。この世代はやっぱりすごい上手い人ばかりで驚くよ。
あとは特に大きく演技で印象に残る人はいないかなぁ……そうそう、子役の谷花音も良かったよ。個人的に子役は嫌いだけど、そこまで気にならなかったかなぁ。まだ小学生でしょ? この歳でこれだけできればすごいよね」
7 見所紹介
カエル「じゃあ、ネタバレにならない程度に見所などの感想をあげていこうか。やっぱり絵の美しさはあるよね」
主「それもあるんだけど、今回は人物の動きに注目してほしいかな。特に、入れ替わった後の男の子(瀧)の動き。
骨格やキャラデザは男なのに、動きが女の子という難しいところをしっかりと描けているんだよね。
特にベットで寝転がる、話としては何でもないシーンがあるんだけど、そこの体の動かし方……特に足の動かし方がすごく柔らかくて、良かったよ」
カエル「今回はリアルテイストの動きというよりも、『キャラクター』という動きになっていたんじゃないかなぁ?」
主「顔の崩し方だったり、表情表現というものが素晴らしかったね。今までの新海作品が苦手という人にも受け入れられるかもしれない。
逆に、あのリアルテイストを望んだら『あれ?』ってなるかも。個人的にはどっちでもいいけれどね」
カエル「絵というと、やっぱり風景描写が良かった。新宿とかの都会表現と、あの田舎の山の表現が別の美しさを持っていたね」
主「見慣れた都会もここまで美しく描くかぁと驚いたけれど、山などの木々の美しさも良かったよ。さすがは新海誠って印象がある。
あと、腰抜かすような表現をしている部分があるから、そこは見て欲しい」
音楽と絵の融合
カエル「ここは新海誠がすごく上手い部分だよね」
主「先述したけれど、元々アニメは音楽と絵が合わさった時に、大きな快感が生まれるものなんだよね。
映画「けいおん!」とか『劇場版 響け!ユーフォニアム』とか、『アイドルマスター シンデレラガールズ』などのアイマス系や『ラブライブ!』に、『心が叫びたがってるんだ。』なんかを見ても、歌と絵が合わさった時の感動というのがどれだけ大きいか解る。
演奏シーンやダンスシーンがなくても、バッチリと音楽と絵が合わさるとそういう感動があるもんでさ」
カエル「そういえば、過去の新海作品も『秒速』と言い『言の葉』と言い、ラストで音楽と絵があった時の相乗効果で一気に感動したね」
主「そう。『音楽が名曲なだけ』という人もいるけれど、その名曲に負けないような映像を作ることができているというわけだ。
新海誠はそれがうまいから、今回も心配しなくていい。それが好き嫌いはあるにしろ、RADと組み合わさることで相乗効果は大きいよ」
脚本について
主「これに関してはネタバレが大きくなりそうだから難しいなぁ」
カエル「じゃあ、簡単に語ってみようか」
主「詳しくはネタバレありの記事で書くとして……過去の新海作品と比べて、すごく大きく成長したなって思わせてくれるし、誰にでも届くものになったと思う。
突っ込みどころもだいぶ無くなったね。秒速とかは致命的な欠点があったわけじゃない、どことは言わないけれど。それがなくなったから、だいぶ面白いよ」
カエル「じゃあ、この先はネタバレありの評論記事にしようか」
ネタバレありの評論記事はこちら
(上にあげたのと同じです)
最後に
カエル「さて、これでネタバレなしの感想記事を書き上げたわけだけど……どうだろうね? レビューにはなったかな?」
主「この記事は試写会を見たあとに書いているんだよね。さすがに公開前には上げることができないから、少し時間を置いてから書いているけれど、多分見終わった直後に書いていたらもっと熱量がこもったと思う。
良くも悪くも冷却期間ができて良かったね。試写会で見たけれど、当然のように映画館でも見に行くよ」
カエル「さて、それじゃあ、次はネタバレありの評論記事だよね。この感想記事も相当に長いけれど、評論記事はもっと長くなるだろなぁ」
主「語りたいことが多すぎるんだよ。これまでの新海誠と、これからの新海誠の分岐点になる作品だからさ、どうしても長くなる」
カエル「そちらもこの後(夕方6時くらい)に公開予定なので、楽しみにしていてね!」
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新海誠の他作品のレビューはここにまとめています
ユリイカ 2016年9月号 特集=新海誠 ―『ほしのこえ』から『君の名は。』へ
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- 出版社/メーカー: 青土社
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