今回は新千歳空港国際アニメーション映画祭で上映された、長編コンペディション作品についてのお話です
悔しい思いもしたからなぁ
カエルくん(以下カエル)
「今回上映された作品は以下のとおりです」
- FUNAN 2018年のアヌシー国際映画祭でクリスタル賞(グランプリ)を受賞
- The Breadwinner(生きのびるために) アヌシー国際映画祭にて観客賞、審査員書受賞
- On Happiness Road(幸福路上) 東京アニメフェスティバル2018(TAAF2018)にてグランプリを受賞
- This Magnificent Cake! オタワ国際アニメーションフェスティバルにて長編グランプリを受賞
- 少年ハリウッド HOLLY STAGE FOR YOU-完全版-
主
「一般の方ではあまり知らないor観る機会がない作品ばかりかもね」
カエル「たぶん、一般的にアニメが好きな人が知っているとなると、テレビアニメも放送されていた『少年ハリウッド』だけなのかなぁ。
どの作品も海外アニメーションの動向に興味がある人ならば知っていてもおかしくはないけれど、そうでない人にとってはよく知らないだろうしね」
主「今回は……残念ながら自分の眼の前で席が満席になってしまい、鑑賞できなかった『FUNAN』以外の4作品は、簡単に感想などを書いていきます。
うわー、今回注目していたFUNANがギリギリダメっぽい!
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年11月3日
やっぱり30分前には並ばないとキツイか…
ライブを途中抜けしたのに見れなかったら泣く
しかしすごい人だなぁ
目の前で終了…
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年11月3日
最悪ダァ、この作品を観るために新千歳空港まで来たようなものだったのに…
秒速五センチメートルは行けそうなのでそちらに
あとは月曜日のアワード上映でワンチャン狙うかなぁ
なお『The Breadwinner(生きのびるために)』はNetflixにも配信されているので、ぜひそちらでも鑑賞してください」
カエル「では記事のスタートです!」
The Breadwinner - OFFICIAL TRAILER HD
感想の前に
では、まずは感想を語る前に大事なことがあるということだけれど……
今回、映画祭に向かった理由を説明しようか
カエル「なぜ新千歳空港まで行って、長編コンペディション作品を見に行ったのか? ということだね」
主「本来、アニメーション映画祭の主役は短編アニメーションだけれど、自分はどちらかというと商業や長編アニメーションの方に興味がある。それに、短編は全く詳しくないというのもあるんだけれど……
残念ながら、日本はアニメ大国でありながら、ここで紹介されるような長編アニメーションに関しては、そこまで需要がないと言わざるをえない」
カエル「『生きのびるために』はNetflix限定だし、ここで上がっている作品が劇場公開するか? と問われると、ちょっと首をかしげてしまうのかなぁ」
主「今回、グランプリを受賞した『This Magnificent Cake!』は、自分の予想では、おそらく日本公開されない可能性が高いのではないかな?。
なぜならば、本作は約45分ほどの中編作品であり、劇場もスケジュールを立てにくいだろう」
カエル「公開しても東京を中心に全国数館の可能性もあるのかなぁ」
主「紹介している作品たちは国際的にも高い評価を受けているし、世界でも最先端のアニメであるけれど、日本ではこの機会以外は鑑賞ができない可能性もある。
なので、この記事で興味を持たれた方がいても、もしかしたら観ることができないという難しい状況になるかもしれません」
カエル「だからこそ、こういう場に出向かないといけないんだね……」
グランプリ作品 『This Magnificent Cake!』
作品紹介・あらすじ
監督 Marc James Roels 共同監督 Emma De Swaef
マーク・ジェイムス・ロエルズは、過去に受賞を重ねた短編作品『Mompelaar』(2007)と『A Gentle Creature』(2010)を制作した実写監督。エマ・ドゥ・スワーフはウールやフェルト、テキスタイルといった素材を好み、コマ撮りと人形作りを専門としている。二人は2012年に『オー、ウィリー』を共同で監督。この作品はカートゥーン・ドールの最優秀ヨーロッパ短編賞、セザール賞ノミネートなど、80を超える国際的な映画祭で賞を獲得した。ベルギーのアントワープが活動の拠点。本作は二人の最新作である。
19世紀後半、植民地時代のアフリカを舞台にしたアンソロジー作品。5人の異なるキャラクターーー問題点のある王様、高級ホテルで働く中年のピグミー、遠征に失敗したビジネスマン、彷徨う荷配人、若い脱走兵たちの物語。
(第5回新千歳空港国際アニメーション映画祭公式ホームページより)
公式トレーラーはこちらから
TRAILER: This Magnificent Cake! (Ce Magnifique Gâteau) Stop Motion - YouTube
感想
This Magnificent Cake!
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年11月4日
新千歳空港国際アニメーション映画祭にて鑑賞
うーむ、自分がこの映画を掴みきれておらず、知識が足りずに意図を読み取ることが難しい
外国人は笑うシーンも自分は真面目に観てしまった
メイキングを聴いてから「なるほど!」と膝を打つこともあったので改めて鑑賞したい pic.twitter.com/zDrUjCvBs1
まずはグランプリ作品からだけれど、本作はパペットを使ったストップモーションアニメーションです
正直、自分はこの作品の真価をあまり理解できていないです
カエル「コマどりアニメーションらしく、ウールなどの素材を活かした表現が多かったよね。
そしてパペットたちの表情なども工夫されて表現されていたし。
そして、内容はとても重い作品なのですが、それをコミカルに描いており、外国人を中心に笑い声が巻き凝っていました」
主「本作は19世紀のアフリカを舞台にしており『This Magnificent Cake!』というのはケーキを分けるかのように、欧州の強国たちがアフリカをいいように区切って分断していったことを揶揄している。
つまり、本作はヨーロッパが抱える植民地支配と、黒人に対する人権を一切無視した行いに対する糾弾の色が強い作品なんだ」
カエル「だから白人たちに比べると黒人の命がとても軽いような描写が多くて、黒人の死も描いているけれど、とてもコミカルで軽いもののようにも受け取れるというか……その時代の黒人たちの命が白人にとっては非常に軽く、それを揶揄するような描写に満ちているよね。
ちなみに、監督のティーチインイベントにも参加しましたが、この作品では黒人が亡くなる瞬間を描きながらも、それは事故のように見せており、白人が殺害する描写は描かないように気をつけたそうです」
主「黒人の命が軽かったことを事故が多いということで、代用の効く消耗品のように描いたということだろうな」
カエル「では、うちの感想としては?」
主「う〜ん……正直、自分は本作の真価をあまり理解できていない。
というのも、事前知識なしで映画祭に向かったんだけれど……あらすじを見てもわかるように、5人の異なるキャラクターのオムニバス形式で物語は進む。自分は”誰が主人公か?”ということに注目をしていたから、そこで面食らった思いもある」
カエル「事前知識があったほうがいいのか、ないほうがいいのかは難しい問題だよね……」
主「それに、当時のアフリカの状況についてはあまり詳しくないこともあって、本作が描いていることの革新性もわからず、また外国人がケラケラと笑うシーンでも、自分はかなり真面目に見てしまったので、コメディとしてもわからなかった。
画面も暗いシーンが多くて……なんだか、ちょっと退屈な映画に思えてしまったかな」
カエル「2度目以降だとまた印象は変わるかもしれないけれどね」
主「本作がグランプリに輝いたのも、海外の、特に欧米系のクリエイターが審査員を務めたというのもあるだろう。それだけ欧米の人たちには……馴染みがあるというか、心を痛める問題であり、そこを逃げずに描いている。
技術的にもとても高いものだと思うし、現代の世界のアニメーションのトップに立つにふさわしい作品だと思うからこそ、次の機会があれば是非鑑賞したいね」
『On Happiness Road(幸福路上)』
作品紹介・あらすじ
監督 SUNG Hsin-Yin
ソン・シンインは台北に生まれる。京都大学で映画理論を学び、後にシカゴのコロンビア大学で映画研究の修士号を取得する。ジャーナリスト、ライター、京都のカラオケ店員、写真家を経て、映画監督となる。 彼女は映画監督として、異なる映像ジャンルを使用して人々の普遍的な関係を探求することに興味がある。また、音楽の作曲や編集を通して映画のテンポを見つけることにも特別関心がある。『The Red Shoes』や『Single Waltz』といった彼女の短編アニメーションは、数多くの国際映画祭で上映されている。そのうち初監督作品は、2013年の台北映画祭で最優秀アニメーション賞を獲得。『On Happiness Road』は彼女の初の長編アニメーション作品であり、現在は初の実写長編『Love is a Bitch』の制作に取り組んでいる。
チーは台湾で必死に勉強し、アメリカに渡って成功を収める。祖母の死をきっかけに台湾・幸福路に暮らす家族の元へ戻ると、幼年期に懐かしさを感じはじめ、「人生」そして「家族」の意味を考えはじめる。幸せとは何だろうか? 彼女は自分の幸せを見つけることができるだろうか?
(第5回新千歳空港国際アニメーション映画祭公式ホームページより)
公式トレーラーはこちら
On Happiness Road - Teaser Trailer (ENG) - YouTube
感想
次は『On Happiness Road』の感想です
実は新千歳では見ておらず、以前に池袋で開催されたTAAFで観た感想になるね
カエル「新千歳の時は裏で1番注目していた『リズと青い鳥』の山田尚子監督のトークイベントがあったり、あとは面白そうな短編ミュージックコンペティションもあったりしたのもあります」
主「あとは最大の誤算は、最後に行われるアワード上映で長編は上映されなかったことかなぁ……
正直、自分は『On Happiness Road』はかなり有力な候補としていたからね」
カエル「本作ってどんなお話なの?」
主「自分は一言で表すならば”台湾版この世界の片隅に”だと語っている」
カエル「……台湾版?」
主「本作って言ってしまえば台湾に暮らす1人の女性の、子供時代から大人となった後までの成長を描いた作品なのね。
そして、台湾という国が辿ってきた歴史を描いている。
間違いなく台湾でないとできない作品であり、とても高い技術が同居していて……今回のコンペティションで日本人には1番響く作品になっていると思う」
カエル「特に台湾の問題には関心がある方も多そうだしね」
主「『この世界の片隅に』もその意味では同じでさ、あれは1945年前後の日本、そして広島だからこそできた、日本人のための作品であり、ある種のドキュメンタリーの要素を持っている。
本作も歴史を寓話的に描きながら、そこでこれからの台湾のあり方を模索している作品であり、強く応援したいと気持ちにさせられる作品なんだ」
カエル「特に”台湾”を描くために、中国資本のスポンサーを一切入れなかったという徹底ぶりだもんね」
主「いろいろなメタファーや、直接的な言及に溢れていて、日本のおなじみのアニメや漫画の影響もしっかりと描いているんだよ。それを見ると”台湾は日本の文化に影響を受けている国なんだな”ってはっきりとわかる。
他にもアメリカの関わり方や、もともと台湾に暮らしていた本省人と、中国からやってきた外省人の対立と融和などをユーモアを交えながら描いている。
特に東アジアの方、もちろん日本人には強くオススメしたい作品だね」
少年ハリウッド HOLLY STAGE FOR YOU-完全版-
作品紹介・あらすじ
監督 安良井澄子、黒柳トシマサ
原作・脚本・シリーズ構成・作詞: 橋口いくよ
黒柳トシマサ
1980年愛知県出身。アニメーション演出家・アニメーター。監督作に「少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR 49-」「『英雄』解体」「舟を編む」等。「舟を編む」にて第21回メディア芸術祭アニメーション部門新人賞を受賞。
原宿にある劇場、ハリウッド東京でライブ活動するアイドルグループ、少年ハリウッド。メンバーはカケル、マッキー、キラ、トミー、シュンの5人組。12/24のクリスマスイブは、少年ハリウッドにとって特別な1日。開演からアンコールまで、少年ハリウッドの魅力がたっぷり詰まったライブをお届けします。
(第5回新千歳空港国際アニメーション映画祭公式ホームページより)
完全版ではなく、26話のダイジェストになりますがこちらが参考になります
#26「HOLLY STAGE FOR YOU」ダイジェスト - YouTube
感想
#少年ハリウッド
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年11月4日
新千歳空港国際アニメーション映画祭、日本代表作品
長編コンペの中で浮きまくりだなぁ、なんて思っていたけれど日本のアニメの良さと流れが詰まっている
それは「アイドル(歌と作画の融合)」と「応援上映」
本作に込められた執念と情熱に思わず拍手を送っていた
それでは、日本代表でありながらもコンペティションから浮いている感もある作品です
これはこれで面白い試みだし、ありだと思うけれどね
カエル「まず、今回のコンペティションで少年ハリウッドがなぜ選ばれたのか? ということについては、こちらをごらんください」
主「上映前に橋口いくよが登壇して語ってけれど、確かに日本のアイドル文化の良さが詰まった作品だった。
近年、アイドルを描いたアニメ作品は非常に多くて、人気も集めているし劇場でもよくかかっているんだよね。
音楽と絵の融合という意味でもレベルが高いことをしているし、本作に限って言えば『手が合っていない、リズムを取れていないなどの不完全さが日本のアイドルの魅力なので、それを楽しんでほしい』という橋口いくよのコメントにもあるように、確かにそこがいい味になっていたよ」
カエル「ごめんなさい、テレビアニメの少年ハリウッドは一切見ていなくて、正直何も知らなかったんだけれど……でも音楽なども少し古い懐かしの歌謡曲を思わせるものもあったりして、アイドル文化の良いところを詰め込んだ印象だよね」
主「長編コンペ向きの作品ではないというのはわかるけれど、例えば『キンプリ』とか自分は今年トップクラスに評価している『映画Hugっとプリキュア』などもそうで、応援上映というのが日本では一般的になりつつある。
普通は映画に対して観客が合間を見て応援していく形だけれど、上記の2作品などは応援する間や時間を設けたりして、それを物語の中に取り入れている。
それは海外の作品にはない面白さであり『劇場のライブ感、一体感』を楽しむ上では日本独自の進化としてもっとフューチャーされてもいいのかな」
カエル「その試み自体は評価しつつも、作品としては?」
主「あくまでも”アイドルアニメとして悪くない”という評価の域は出ないかなぁ……
というのも、どうしてもこの手の作品は内向きになってしまう部分もあって、初見の自分はキャラクターの掛け合いなどについていけない部分もあった。
あとはファンを応援させる空間にどのように自然に作り上げるかなどの工夫も必要で……とても力がこもっているいる一方で、まだまだ改善の余地は大いに残されている作品に感じたかなぁ」
最後に
では、この記事を閉めましょうか
FUNANショックは大きかった……
カエル「これは次いつ見れるかわからないもんね……」
主「ちなみに、自分がつけるならば1番好きなのは『On Happiness Road』で1番楽しかったのは『少年ハリウッド』かなぁ。
後の2作は真面目で意義も大きいけれど、ちょっと自分には合わなかった部分もあったというか……真面目すぎるというか……」
カエル「やっぱりエンタメ寄りが好きってことなのかな?」
主「でも、これだけのラインナップが見れること自体が感激なので、そこは素直にありがとうございました! という気分です。
それだけにFUNANショックが今でも尾を引いていて……次は予約しよう」
カエル「もっと事前に色々と調べて、スケージュルも組む必要性があるねぇ……」