物語る亀

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物語愛好者の雑文

『フミコの告白』から『ペンギンハイウェイ』まで〜石田祐康監督の歩んだ道は? トークショーまとめ〜

 

今回は新千歳空港国際アニメーション映画祭で行われた、トークショーの模様をお伝えします

 

まずは文量も多くなるであろう『ペンギンハイウェイ』の石田祐康監督のトークショーの模様からです

 

カエル「なお、今回は発言をノートにまとめていますが、録音もできないため、一部抜粋しています。

 原文ママではなく、あくまでも監督の発言をカメ自身が解釈したものであるということはご承知おきください

主「もちろん、恣意的に改変するようなことは絶対にしませんが、もしかしたら言葉の解釈違いがある可能性もあります。

 監督にこの記事を確認してもらうわけにもいきませんので、ご了承ください」

カエル「それではインタビュー記事のスタートです!」

 

 

 

 

トークショーの様子のレポート

 

開場前〜2作品上映について

 

今回は映画祭自体が人の入りが多かったけれど、土曜日に比べると若干マシだったのかなぁ

 

どうしても入りたかったので泣く泣く『少年ハリウッド』のエンドロールを泣く泣く切り上げ、開場30分ほど前に列に並びました

 

カエル「その時点ではまだ3人ほどで、ラッキーって気分だったね。

 そしたら少年ハリウッドが終わったあたりから一気に人が増え始めて、結果的にはほぼ満席に

 やはり注目度の高い監督であることが伺えたね

主「そして最前列の石田監督の目の前という最高の席で鑑賞させていただきました。

 一応自分のポリシーで、講演会やトークショー、勉強会などはなるべく前の方に座るということにしているので、これは嬉しかったなぁ」

 

カエル「トークショー入場中には監督が今回のレジュメをパソコンで確認している最中だったようで『あれが石田監督かぁ』と思いながら席に着くことに。

 見た目としては細身で、ヒゲもあったから一見するとアニメ映画監督とはわかりづらいかも?

 低姿勢でスタッフの方と話していたりして、穏やかな性格なのが伝わってきたね

 そのままトークショーの前に『rain town』『陽なたのアオシグレ』の上映がスタートです。

 ちなみに、久々に見た感想は?」

 

主「もともとrein townは大好きだけれど、劇場で見るとやっぱりいいね。

 音が自然に入り込んでくるし、映像の静かな力強さがすごく伝わってくる。

 『陽なたのアオシグレ』は、劇場で初めて鑑賞した当初は苦手だったんだけれど、改めて鑑賞するとそこまで嫌うほどでもないなって印象。

 でも、自分の趣味として小学生男子があそこまで女の子に執着する姿と、ラッキースケベ的な展開はそういうお色気系の漫画やアニメならばともかく、あのような作画でやられてしまうと自分は引いてしまうかな。

 それでもやっぱり活劇のシーンなどの迫力もあり、劇場映えする作品だということは再確認しました」

 

 

 

石田監督登壇

 

では、ここからは石田監督とアニメジャーナリストの数士直志さんによるトークイベントの模様を伝えてきます。

 

石田監督はだいぶ緊張している様子で、結構早口だったな

 

 

 

ー久々に2作品を見た感想を問われて

 

石田『目をつぶっていました。なるべく見ないようにしていました。というのも、強く入り込んでしまうし、なんども制作中に見直しているために、大体音を聞けばわかるんです。

 若気の至りじゃないですけれど、恥ずかしくなってきますね』

 

 

ーまずは京都精華大学のアニメーション科になぜ進んだのか?

 

石田『京都精華大学のアニメーションコースの2回生なんですけれど……(ここでスタジオコロリドのホームページにある自分のプロフィール画像を見せる)

 このプロフフォール画像に映っているのは自分の過去の作品のモチーフばかり。

 女の子もののパンツは『フミコの告白』(会場に笑い)

 ロボットは『rain town』白鳥は『陽なたのアオシグレ』などで……本来はまだ制作発表前だったけれど、ペンギンもいますね。

 京都精華大学の経験などが、今の自分の立ち位置に繋がっています

 

 

ーあの当時はまだ出来たばかりで、特にブランドなどもなかった

 

石田『僕は愛知県出身なのですが、元々は東京の大学へ進もうとしていました。

 というのも、自分は美術の方向を学びたかったんですよ

(行きたい大学として東京の有名な美大を挙げる)

 もちろん、昔からアニメや漫画は好きでしたが「いつまでもガンダムやドラゴンボールじゃなぁ」という思いもあって……

 それで色々と調べているうちに、京都精華大学のアニメーション科を知って。そこの講師の先生が有名な人ばかりで、杉井キザブロー監督などがいたんですよ

 

杉井ギサブロー……『銀河鉄道の夜』『あらしのよるに』などの芸術的な作品から、テレビアニメ作品まで幅広く監督などを務めるアニメ監督

 

 

ー講師で選んだんですね

 

石田『あとは京都での生活に憧れもあって。

 それで、実は最初に描きたかったのはrain townの方で、こちらは4年間かけてもいいと思いながら作っていました

 

 

発表の時系列ではフミコ→rain townですが、もともとの構想はrain townの方が先だった?

 

石田「友人が四畳半のアパートにやってきて、フミコを作ろうと説得されて作りました。女の子のパンツとか、俗物な面が多くて(笑い)

 rain townは自分が本来表現したいアートスティックなものであり、その反動というか、情動みたいなものが爆発したのがフミコの方で、それを発展させたのが陽なたのアオシグレになります

 

 

ーでも繋がってますね。雨の描写とか。ご自身では自分の本質はどこにあると思いますか?

 

石田『本質ですか? う〜ん……それはわからないですね』

 

 

 

海外の賞レースについて

 

 

ーそこで製作した作品が賞レースを勝ち抜いて高く評価されました。その感想は?

 

石田『それが全てではないでしょうが、やっぱり評価されたい気持ちはありますよね。

 これをいうと角が立つかもしれませんが……(言葉を濁しながら)コンペに出しているような日本の短編アニメーションは、世界の作品に比べると少し甘いのかな、という思いはあります。

 アヌシーとかに出ている海外の作品のレベルの高さは認めつつも、負けたくないじゃないですか。

 若気の至りもありますが、そういった海外の作品をある種の仮想敵に設定しつつ、いいと思ったところはどんどん模倣していきました

 

 

ー私もそれは思っていて、日本の作品はクオリティが高いものの、驚きが少ない印象がある

 

石田『見栄や意地が大事なんですよね。だけれど、変なプライド……例えば”自分らしさ”などは持たずに、盗むものは盗む。技術を真似するという姿勢が大事なのではないでしょうか

 

自身のスタジオ設立へ

 

 

ー卒業後について伺います。例えば、アニメスタジオに入って研鑽を積むのが一般的じゃないですか?

 なぜスタジオコロリドを設立したのですか? 賞も受賞して引く手数多だと思いますが……

 

石田『もともと個人作品を作るための作家になろうとは思っていないんですよ。なんとなく大学院にすすんでいたところ、そこでお世話になった先生に勧められて、プロの世界にアルバイトで足を踏み入れたんですよ』

 

 

ーそれが杉井ギサブロー監督の『グスコーブドリの伝記』だったんですね

 

石田『そこでアルバイトで入って、あれよあれよといううちに作画スタッフの一員になって。

 そこでプロとしてやっていく人たちの覚悟と熱量にやられちゃった面もあります。

 そんな時にコロリドの話が自分のところに来て、それに乗ったんです。で、ジブリにいた新井くん(新井陽次郎、ペンギンハイウェイの作画監督)や、学生時代の仲間を半ば無理矢理連れてきたんですよ。

 このあたりも盗めるものは盗むではないですけれど、使えるものは使うといいますか、それだけ欲しい人材だったんですよ

 

 

 

コロリドでの活躍

 

 

ーそしてコロリドでアオシグレの製作が始まります

 

石田『自分は基本的にオーダーがある方が好きなんですよね。

 そして求められたのがフミコの告白だったので、それを発展させてアオシグレを製作しました。最初は作画スタッフもpixivで集めたりしましたね。

 そういった若い熱量を持ちながらも、商業でやろうという思いがありました』

 

 

ーなぜペンギンハイウェイという原作ものを受けたのですか?

 

石田『原作ものをやりたかったという思いはあります。

 というのも、自分には2つの気持ちのバランスがあって、作品が評価されることによって片方は自惚れている自分がいて、もう片方でそれを諌めている自分がいる。

 それで冷静に考えた時、長編は初挑戦ということもあって、演出など様々なことも含めて勉強の必要があったんです。

 それと、自分が描いてきた作品に共通しますが、子供を描きたいという思いにも合致した作品でした

 

 

ーペンギンは小説なのでデザインなどは1から作る必要がありますが、それは不安などはなかったのですか?

 

石田『不安はありました。小説の空白の部分を、絵を描いて解消していきました。

 例えばこの絵がありますが(ペンギンハイウェイの絵。中盤のアオヤマ君たち3人が草原で"海"を眺めているシーン)これなどは比較的早くに決まりましたね。

 このようなイメージボードをたくさん書くことで、不安を解消していました。

 文章を読んで強くイメージしたシーンを中心に描いていましたね』

 

 

ーここからシーンなどの取捨選択などもあったと思いますが、それはどうやって?

 

石田『もちろん、原作通りに、イメージボードを元に作ると3〜4時間ほどになってしまいます。そのために、自分は”ミニコンテ”を作っていました。

(紙面の上部に脚本、下部に絵コンテのように、小さなコマがたくさん並んでいる。一番盛り上がる「右、左、進め!」のペンギン行進のシーンが描かれている)

 これは絵コンテよりもやりやすいんですよ。

 ここでコンテを組み替えたりして、お話の取捨選択を行なっていました

 

 

ーそれでは、次回作について質問です。ズバリ、次は原作ものですか、オリジナルですか?

 

石田『次回作についてはまだ何も決まってませんが……自分は次は原作、ないしは原案がある作品を手がけたいです。

 オリジナルは少し置いておきたい。

 というのも”盗めるだけ盗め”ではないですけれど、自分の中にストックが欲しい。

 それを積み上げるために、まずは原作や原案がある作品に挑戦したいという気持ちがありますね』

 

 

質疑応答の時間へ

 

質問①

ペンギンハイウェイを製作するときに使えたもの、使えなかったものなどはありますか?

 

石田『多分、もっとはっちゃけたものを作ると思われていたのかな、と考えています。ペンギンは品のある大人な作品を目指していて、ペンギンパレードなど2割くらいははっちゃけた部分も出しましたが、残りの8割は落ち着いたものを目指しました。

 だから、フミコなどのような活劇の要素は少なめになりましたね』

 

質問②

ニコニコ動画に『フミコの告白』などをアップされていましたが、どのような反応をもらいましたか?

 

石田『最初はコメントがついて、とても面白いかったんですが……ニコニコ動画の初期の頃ということもあって……荒らしではないでしょうが、近いような行為を受けました。

 というのも、その当時フミコの告白を逆再生すると面白いというのが流行って、それが本家の動画にもコメントで似た流れになってきて……盛り上がるシーンでの弾幕というよりは、ずっと激しくコメントが流れていて、画面が見えないほどになってしまったのが、印象に残っています』

 

質問③(カメの質問)

批評的にも世間の評判も高く評価されており、作品としては成功したと思います。この公開規模での興業収入についてはどう思いますか?

 

石田『実は監督だからといって興行収入について詳しく聞かされるわけではないんですよ。だからなんとも言いづらい部分はありますが、先ほどから語るように自分の中の自惚れる部分と、それを諌める部分があります。

 その意味では自惚れもありつつも、それを諌めることができる適度なレベルだったと思います。

 僕としてはアオヤマ君やお姉さんを好きな人がいて、それを楽しんでくれる人がいるというだけで、それで十分なんですよ』

 

 

 

トークショーを終えて

 

という訳で、トークショーの感想です

 

不躾な質問、失礼しました

 

カエル「本来は監督について興業について聞くのは、失礼な行為でもあるよね」

主「失礼な質問にもきちんと回答してくださり、ありがとうございます」

 

カエル「では、トークショーを終えて思うところは?」

主「まず、石田監督の言葉からは嘘などは一切感じなかったんだよね。

 もちろん、意識的に嘘をつこうという人はそんなに多くないだろうけれど、どうしても見栄とかが出てくるものじゃない?

 特に自分が主役のトークショーだからさ。

 だけれど、思っていることを全力で伝えようとしている姿に感銘を受けた」

 

カエル「それから、本当に伝えたいことも伝えられたしね」

主「自分の質問の際に『石田監督は年齢を考えてもこれからのアニメ界をひっぱていく存在だ』って伝えたけれど、それは偽りない本音です。

 今30代の監督や、もっと若い作画監督クラスのアニメーターが次々と台頭してきている。

 自分は『ペンギンハイウェイ』は細田守監督でいうところの『時をかける少女』のような、数年過ぎてようやく一般層に高く評価される作品だと思っています。

 特に芸術的なアニメの視野と、商業的なエンタメアニメの視野の両方を持ち合わせているし、どちらでも結果を残した監督として今後も大きな力を発揮していくと信じています」

 

カエル「あとは監督は二つの面を持ち合わせていて、とてもバランスを意識しているね」

主「ペンギンなんかはお姉さんい対する、ある種の性的な眼差しもありながらも、落ち着いていたからこそ、アオシグレなどに感じた嫌悪感が一切なくて、可愛らしい少年に見えたというのもあるのかな。

 それでもアニメとしての快感は一切損なっていなくて……素晴らしいよね」

 

カエル「という訳で、石田監督のトークショーの模様をお伝えしました」

 

 

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