それでは、新千歳空港で行われていた新千歳空港国際アニメーション映画祭の記事です!
今回、突発的に参加したけれどいい映画祭だね
カエルくん(以下カエル)
「ちなみに、無謀なことに当日に旅行券を買い、ホテルなどの予約もせずにホテルへ向かうという暴挙をおかしています」
主
「まあ、なんとかなるっしょ!
空港券も少しは高くなっているけれど、羽田ではなくて成田からいくことで、比較的安く買えたし。
ホテルも札幌まで出ればネカフェもあるし、どうにかなるよ。実際新千歳空港に併設している温泉施設が最高で、そこで宿泊費を安く抑えることもできたし」
カエル「……飛行機のチケットくらいは事前に買ってもよかったんじゃない?」
主「残念ながら、予定日だった金曜日にはどうしても行きたい試写会があってね……当選発表がギリギリだったから、それで航空券が買えなかったんだよね。結局落選したから、心置きなく新千歳にいったんだけれど。
でも突発的な旅行も楽しいし、快適だよ。
Twitterのフォロワーさんも何人か来ているようだし、アニメ(ーション)ファンに注目の高い行事というのがよくわかったよ」
カエル「……まあ、本人がそれでいいというならいいか。
というわけで、新千歳空港国際アニメーション映画祭の感想などを始めましょう!」
なぜそれほど注目を集めるのか?
そもそもだけれど、アニメーション映画祭はたくさんあるけれど、なんでそんなに注目度が高いの?
もちろん、いい作品が一度に揃うということがとても大きいよね
カエル「今回は5回目の数える映画祭ですが、歴史は決して長いわけではないです。空港で行われるという、とても面白い試みや話題性もある一方で、利便性もかなり良くて行きやすいのが最大の特徴かな?」
主「なんだかんだ言っても東京だと池袋とか、新宿などを連想しがちだけれど、地方の方にしてみれば東京駅や羽田、成田空港に行って、そこから乗り継ぎをして……と考えると大変だよね。
一方で空港だったら、遠い地方に住んでいても飛行機で行ってそのまま参加できる利便性もある。
それに、北海道出身の人に聞くと、北海道は広いから函館とか札幌よりもかえって利便性はいいかもしれない、という話だった」
カエル「そのまま北海道の観光に行ってもいいわけだしね。新千歳空港は食事処も多いし、ユニクロや温泉施設、ホテルもあるから色々と困らない場所だよね」
主「空港に目をつけたのは面白い発想だし、海外のアーティストやお客さんのことも考えるとかなり理にかなっているんじゃないかな?
もちろんフラリと入るのもありだし、北海道から来ているお客さんと地方から来ているお客さんが半々くらいの印象だね」
映画祭の主役、短編アニメーションについて
まずは映画祭の主役である短編アニメーションについて語りましょう!
自分はそれほど詳しくないけれど、とても強い意識が伝わってくるね
主「まず、前提として話しておかなければいけないのは、このようなコンペディションのあるアニメーションの映画祭と商業アニメーションの状況は違うということだ。
あくまでもアニメーション映画祭の主役は短編コンペディションである。ただ、日本はアニメ大国でありながらも、そのような短編アニメーションや芸術性の高い作品は発表の場が限られる現状もあって……正直に言えば、自分も苦手意識はあります。理解が難しい作品も多いし、眠くなってくることもある。
それでも商業アニメーションだけに偏らず、短編や世界を舞台に活躍するクリエイターの花舞台の1つとして存在を発揮することにより、ひいては日本のクリエイターの刺激にもなり、アニメーション界全体が活性化していくだろうね」
カエル「この映画祭では日本のクリエイターの短編作品の注目度を高めてもらおうとしており、日本の作家に限定したコンペティションも行われています。
ここは新千歳の大きな特徴の1つなんだよね」
主「どうしても日本では注目度は下がってしまいがちな印象もあるけれど、短編アニメーションの先進的な映像表現こそが、さらにアニメーション業界を豊かにしていく。
日本はアニメ=商業アニメなイメージがあるけれど、少しずつ注目度をましていくことで、多くのクリエイターが陽の目に当たって欲しいね」
長編コンペディションのラインナップがすごい!
うちの目当ての1つが、劇場公開されやすい長編コンペディションです
今回から始まったけれど、このラインナップは素晴らしいよ!
カエル「今回から始まった長編コンペディションですが、世界のアニメーション研究では今もっとも注目を集める研究家でもある土井信彰がフェスティバル・ディレクターを勤めています。
間違いなく世界最先端の作品ばかりであり、ちょっと贅沢すぎて戸惑うほど!」
主「この中からいくつかの作品は間違いなくアメリカで開催されるアカデミー賞長編アニメーション賞にもノミネートされるだろうし、グランプリをとってもおかしくない。
もちろん、世界各国のアニメーション賞でも高い注目を集める作品ばかりであり、すでに実績を残している作品も多くあります」
カエル「今回のラインナップを紹介すると……」
- FUNAN 2018年のアヌシー国際映画祭でクリスタル賞(グランプリ)を受賞
- The Breadwinner(生きのびるために) アヌシー国際映画祭にて観客賞、審査員書受賞
- On Happiness Road(幸福路上) 東京アニメフェスティバル2018(TAAF2018)にてグランプリを受賞
- This Magnificent Cake! オタワ国際アニメーションフェスティバルにて長編グランプリを受賞
- 少年ハリウッド HOLLY STAGE FOR YOU-完全版-
カエル「以上のようになっています。日本代表の少年ハリウッドはちょっと浮き気味だけれど、それ以外の作品は世界的にも評価の高い作品ばかりで、各映画祭の目玉となるような作品ばかり!
よくこれだけ集めたなぁ……という気分と同時に、夢の対決が見られる! という高揚感もあります!」
主「なんとなく評判を聞いていれば『あ、今年はこれがグランプリなんだろうな』ってわかったりするんだけれど、今回は本当に全くわからない。しかも、どの作品がとっても……個人的には『少年ハリウッド』がとったとしても、それはそれで面白い現象だなぁ、と思う。
まあ、映画祭の毛色からして相当難しいけれど、単なる色物として選んでいる訳ではなさそうだというのは、後述します」
カエル「これだけの作品が一堂に会するだけでも素晴らしいのに、まだ他にも素晴らしい点がこちらです!」
ゲストが超豪華! あの有名監督が次々と登場!
もう、今回の目玉企画だよね! 土曜日のお客さんが本当に多かった……
日本のアニメ好きにはたまらない監督たちの舞台挨拶などもあります!
カエル「何と言っても人が凄かったのが『リズと青い鳥』の山田尚子監督で、会場の30分前には人が並びすぎて大行列ができていたのが印象的だったなぁ。もしかしたら、今回1番人が多かったんじゃない?」
主「今回は『リズと青い鳥』の爆音上映にプラスして、監督の舞台挨拶込みだったので相当人気が高かったね。
自分は結果として最前列で、しかも山田監督の立つであろう中央の目の前に座るという、ある種ラッキーな席に座れたよ」
カエル「映画を見るにはあまりいい席ではないけれど、舞台挨拶には最高だよね。
これも何回も鑑賞しているからこそ、割り切れた形かな?」
主「他にも今年を代表する傑作『ペンギンハイウェイ』の石田監督のトークイベントもありました。これは自主制作時代の『フミコの告白』や『Rain town』から『ペンギンハイウェイ』に到るまでを語っており、非常に面白いトークショーでした。
その様子は別記事で!」
カエル「他にも見たことはないんですが、そうめんを使ったアニメーションを製作した韓国のキム・ジンマン監督や、アニメーションジャーナリストの数士直志による講演会など、様々なアニメファンに向けられた催し物もたくさんありました!」
今回のテーマ〜日本の長編作品を考える上での注目点〜
では、ここからは今回の映画祭のテーマについてこうだったのでは? ということを考えてきましょう
一見バラバラなようでいて、実は日本のアニメの流れを捉えた見事なプログラムだよね
カエル「今回、大きく分けて日本のエンタメ作品を中心としたプログラムには2つの流れがあることに着目しました」
- 日本を代表する新たな才能への着目(山田尚子監督、石田祐康監督など)
- 爆音上映、応援上映の充実
主「まず、1の方はわかりやすいと思うけれど、間違いなく今後の日本のアニメ業界をリードしていく才能であり、30代と若い監督である2人に着目している。
それから『秒速5センチメートル』の上映もあるけれど、自主制作からスタートし、今や日本を代表する監督になった新海誠監督と、その新海イズムに刺激を受けた中国の作家たちの国際的な交流だ」
カエル「自主制作短編→商業長編へ、という流れを語る上で、石田監督と新海監督は欠かせないよね」
主「それって今までと全く違う流れだよね。山田監督は王道で、どこかのスタジオに入り研鑽を積み、やがて監督になるルートを辿っている。
だけれど、石田監督は一時期プロの現場を手伝っていた時期はあるものの、誰かの下で研鑽を積んだとは言いづらい環境にいた人であり、現代でも特殊な監督へのステップアップだと言えるのではないかな?」
日本の商業作品の新たな楽しみ方
そして、今回なぜ長編コンペディションに『少年ハリウッド』が入ったのか? という疑問だよね
もちろん想像になるけれど、これは他のプログラムを見たい
カエル「今回、実は爆音や応援上映のプログラムが非常に増えています」
- SHOW MIKU LIVE2018 応援上映
- 少女☆歌劇レビュースターライト 舞台挨拶&2話まで上映
- 爆音上映『犬ヶ島』 LIVE Homecomings
- 少年ハリウッド 応援上映
カエル「『ゴールデンカムイ』は北海道を舞台にして、アイヌについて触れた作品だから特集を組んだとしても、これだけ多くの作品が爆音上映や応援上映を意識しているのは面白い流れだよね」
主「これは最近のアニメ映画界を象徴していることでもあって、近年は『キンプリ』や、『映画プリキュア』などのように”画面上にいるキャラクターを応援する”という作品が増えている。
またリズや『ガールズアンドパンツァー』などが顕著だけれど、爆音や極音上映だってかなり注目を集めているんだ」
カエル「ふむふむ……」
主「つまり、映画のLIVE化だよね。
そしてアイドルアニメというのは、近年『アイマス』『ラブライブ』『うたプリ』『キンプリ』など多くの作品で人気を集めている。
音楽と絵の融合という意味でも非常に難しく、レベルが高い作品制作を行うことで、世界にも類を見ないアニメ文化を作り上げることに成功している」
カエル「”観る、感じる”という受動的なアニメーション映画の鑑賞から、”応援する”という発信的な、新しい上映スタイルの誕生だね」
主「残念ながら『少年ハリウッド』の上映では外国人の姿がなかったんだけれど、これは事件の兆しとも言える。そもそもの映画を観るスタイルが変わろうとしているんだけらね。
つまり、本映画祭は2つのこと……
- 新たなる才能
- 新たなる上映、鑑賞形態
という日本独自のスタイルに着目し、そこを掘り下げようとしている。これはとても面白いし、だからこそ長編コンペに少年ハリウッドを選んだことは意義が大きいだろうね」
見えてきた課題〜良くも悪くもガラパゴス化する日本〜
では、この映画祭を通して見えてきたものを端的に表すとどうなるの?
……自分はガラパゴス化が深刻化する日本の姿が見えたかなぁ
カエル「当然映画祭に来る海外アーティストの方は短編コンペディションや長編コンペディションに着目しているし、どちらかといえば日本の、いわゆるオタク層に向けたコンテンツだという前提はあるにしろ、どのプログラムでも外国人の姿はあまりなかったのかな」
主「まあ、興味もあまりないかもしれないし、自分が見ていないだけかもしれない。もちろん、自分が外国人アーティストの立場ならば、日本の作品にはいかないかもね。
ものすごく新しい(と思われる)ことがあるのに、それがなかなか世界では注目を集めづらい現状は悲しいよなぁ」
カエル「本来は『リズと青い鳥』なんて、アニメ表現の最先端と言える作品なのではないか? というのが持論だもんね」
主「自分は山田尚子作品はどこかのコンペディションに入って欲しいと痛切に願うし、世界でも類を見ない、豊かな表現力を持った作品だと思っているけれど、どうしても、ね。
一方で湯浅政明監督などは世界でも評価されやすいから、これは日本どうこうというよりは作風としか言いようがないのかもしれないけれど……悔しい思いもあるかなぁ」
カエル「今回のコンペディションに出てきた作品などもそうだけれど、政治的な事情や暗喩を込めて自分たちの歴史を語った作品が多いよね。
少年ハリウッド以外の4作品は、その全てが実際に起こった歴史的な出来事について語っている作品です」
主「その意味では日本の作品は確かに政治的な主張であったり、暗喩などは少ない印象がある。これは日本の独特な状況もあるだろう。単純に戦前の日本を否定す流のが正しいのか、という歴史に対する反省も国民、政府レベルでしっかりとなされたとはいいづらい。
それにこれはとてもいいことだけれど、日本は政治的にも安定しているから、そのような作品はあまり望まれていないという現状もあるのかもね」
カエル「う〜ん……難しいなぁ」
主「あとは、やっぱりこの手の審査する場では政治的、歴史的な言及がなされていた方が評価しやすいというのもあるだろう。
多分、それは世界のどの表現でも共通することなんじゃないかな?
自分はエンタメ作品が好きな人間だから、もしかしたら賞レースとの相性が単純に悪いということかもしれないね」
カエル「色々な課題があるんだね」
まとめ
では、一度この記事のまとめをしましょう!
- 世界のアニメーションの流れを知ることができるいい舞台!
- 日本は”体験する”などの新たな上映形態が注目を集める!?
- 政治的、歴史的な批判が少ないために日本の作品は評価されずらいかも……
今のアニメーションの流れを知るにはいい機会です
カエル「ちなみに、今回いくつかの短編コンペディションも観たけれど、やっぱりよくわからないというか……この手のアニメーションと、自分たちが普段見ている作品は観点が根本から違うってことなんだろうね」
主「まぁ、こればっかりはしょうがないのかなぁ。
あとは、やっぱりプレイヤーっていいよね。自分みたいに外部からグダグダいう人間の一万倍はまともだし、有意義だよ」
カエル「色々と指摘する人も大事だと思うけれど……」
主「プレイヤー以外は物語の神様に愛されることなんて絶対ありえない。その祝福が欲しければ、下手でもぶつかって、戦って表現するしかないんじゃないかなぁ。
こういう記事を書くのも1つの戦いかもしれないけれど、プレイヤーにはなれないよね」
カエル「……まあ、その辺の話はこの辺りで終わりにしとこうか」