新千歳空港国際アニメーション映画祭、3日目(個人的には2日目)のレポートになります。
単なる旅行記も兼ねてますが、今日も収穫が多かった!
今回も普通のブログみたいに進めていきます。
朝・起床
このも映画祭会場の映画館に隣接する新千歳空港温泉にて一泊。あまり寝ることができずに、睡眠時間は3時間ほど……これは大変だろうな、と思いつつ朝から温泉に浸かって極楽気分を味わった後に朝食でした。
北海道うまうま④
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月2日
おはよう朝ごはん pic.twitter.com/veRX1iodtQ
それなりの量(朝ごはんとしては多すぎる?)食べるのだが、この日はこれくらい食べないと体力が持たないと判断……
今日はスケジュール的に食事ができるタイミングがほとんどない!
そのため、朝ご飯を多くとって備えて、そしてブログを書き終えた後に整理券配布に並びます。
朝8時半前ですでに30人くらいの行列が……あれ、昨日より多い!?
ちょっとだけ焦りながら整理券をゲットして、映画祭に出発です。
(ちょっと出遅れていたら何作品かは見れなかった……)
作品鑑賞
長編コンペディション③〜Awey〜
#away
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月3日
青年が島の端の港を目指して旅をする物語
全編セリフがなく絵だけで物語が語られるが美しい背景もあり魅了される
ICOやワンダと巨像、風の旅人などの叙情的な雰囲気が通じるものがあるほか、カメラの動かし方がアドベンチャーゲームを連想させる
今のところ長編コンペでは1番好きです pic.twitter.com/OsEsUnzQym
監督が1人で作り上げたCGアニメーション。ラトビア出身であり、1994年生まれで現在25才と非常に若いGints Zilbalodis監督の作品、
実はアニメーション映画ファンの一部では話題になっていたようにも感じられる作品。本作はほぼ真裏で開催されている東京国際映画祭でも上映されていました。
物語の内容は飛行機からとある島へと不時着した青年が、島の端にある漁港を目指して旅をする、という簡単なもの。後ろから追いかけてくる謎の大きな黒い影から逃げながら、様々な試練を乗り越えていきます。
今作の魅力は何と言っても映像美!
ポスターでも採用されていますが、抜けるような空とそれを反射する湖? の中をバイクで走るシーンは圧巻の一言であり、個人制作でこのレベルの作品を作り上げたことだけでも激賞ものです。
上映開始から3分ほどである特徴に気がつきます。
あ、これ『ICO』『ワンダと巨像』『風ノ旅ビト』に強く影響を受けた作品だな、
自然の美しさを中心とした状況描写、カメラアングルの見せ方、背後にいる黒い巨人の描き方、会話がない物語……その多くが上記の作品に通じるものがありました。
特に本作はカメラの動かし方が独特で、快感が強く、ゲーム的な作品でした。
その後の監督のトークイベントには参加できなかったのですが、Q&Aでフォロワーさんが質問してくれていて、監督も『ワンダと巨像』や『風ノ旅ビト』が好きだった模様。どうしても映画好きは映画を、アニメーション好きはアニメーションから影響を受けたと思って語ってしまいがちですが、近年の映像クリエイターを語るときに欠かせないけれど言及が少ないと感じるのはゲームの存在。
特に『ワンダと巨像』は『キングコング 髑髏島の巨神』などのジョーダン・ヴォード=ロバーツ監督も影響を感じさせるシーンを入れたりするなど、海外のクリエイターの多くが影響を受けており、若手監督を語る際には押さえておかなければいけないゲームの1つだと思います。
自分も『ICO』などは比較的好きなこともあるのか、今作に惹かれるポイントも多かったかなぁ。今作は会話が一切なく、映像面で表現されており、その手の作品が比較的苦手な部類なんですが、今作は問題なく入り込めました。
物語そのものも複合的な受け取り方があり、自分は背後の巨大な巨人を親の束縛として、そこから離れて独り立ちして行く青年の物語に捉えたかなぁ……
個人的にはここまでの3作品では1番好き。
できれば監督のトークもしっかりと聞きたかったのですが、次のプログラムが差し迫っていたので断念(この日はこういうことが多かった……)
アニメ監督・森脇真琴&批評家・石岡良治の対談
次に訪れたのが『おねがいマイメロディ』『ミルキィホームズ』『プリパラ』などの監督を務められている森脇監督と、批評家の石岡良治さんの対談。
今回新千歳空港国際アニメーション映画祭の中心人物である土居さんと石岡さん、そしてこのイベントにも司会のような立場で参加されていた高瀬康司さんの3人が共同開催のイベントや書籍も多いです。その石岡さんが以前よりプリパラを絶賛されていて、女児向けアニメが非常に弱い身としては何がそこまで惹き付けるのであろう? と思い対談を拝聴しました。
しかし、なんというか……石岡さんがただのファンに(笑)
会場内も森脇作品のファンが多く、女児向けアニメは一部のプリキュアくらいしか見たことがない自分には内容に関しては完全に理解したとは思えない部分もあったものの、興味深い発言も多いものでした。
特にキャラクターに入り込む作り方が印象に残ります。『たとえモブであってもA子C子のような名前ではなく、ちゃんとした名前をつけてほしい』などの要望を出しているなどの話から強い思い入れが見えてきました。
また『プリパラ』に関しては近年のポリコレ的視点からしても特筆すべきものがある、という話はかねてより聞いていました。アイドルアニメではありえないようなキャラクターが、わざわざ3Dモデリングまでされてダンスを披露するなどのシーンが一部で話題となっていました。
そういったシーンが生まれた理由が……
監督『私デブ専なんですよ』
まさかの性癖!?
でも1番理解できるかも。
それだけキャラクターに深く入り込む人だからこそ生まれた数々の描写に、2日目に聞いたTRIGGER座談会での『まとまりそうな話を並べてスタートしたら、ありがちな話を突破できない』という趣旨の発言と通じるものがあるのかなぁ……
小休止
この後は短編アニメを鑑賞しようかと思いましたが、疲れを感じたためあえなく断念。とりあえず北海道うまうまタイムへ。
北海道うまうま⑤
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月3日
花畑牧場直営らしい
チーズ大好き!
デブ飯万歳! pic.twitter.com/tOdmNNrL0q
今や北海道以外の県民からの知名度も高い花畑牧場直営らしきレストランで食事。チーズ山盛りのパスタで、最高のデブ飯!
チーズ好きにはたまらなく美味しかったぁ……
今度きたらまたこの店に入ろう。
次はピザでも食べようかな?
武井克弘プロデューサー『HELLO WORLD』ができるまで
次に参加したのが『HELLO WORLD』の武井克弘プロデューサーさんによる、作品が出来上がるまでを明かすトークショー。
この回は英語への通訳も入ったために、ちょっとテンポが遅くなってしまいましたが内容が非常に濃くて自分が聞きたいものが全て聞けました。また、役職柄なのか話がまとまっており非常にうまく、引き込まれて……できれば2時間くらいかかけてじっくりと聞きたかった!
『HELLO WORLD』のそもそものスタートは武井Pの案からスタートしており『CGでSF作品を作りたい』との思いからスタート。その案を元に伊東監督を選び話の方向性を合わせて、脚本に野崎まど、キャラクターデザインに堀口悠紀子などのメインスタッフを揃えていったとの事。
スタッフの座組みと方向性を整えて、そこに向かって旗振り役をして、お金を用意するなどの大きな作品の管理だけでなく、また脚本などの物語面にも深く関与しており、”CGアニメで作品を作る意義”や作品の展開の大きな分岐点などを提案したことを明かされました。
自分としては記事で書いたことの答え合わせの部分もあり、そこはしっかりと意識されていたことがわかったので良かったなぁ。
質疑応答に入りましたが……自分としては反省点が多かったかなぁ。
自分の質問の真意は『この展開は物語としてもリスクが大きいと思いますが、変な受け取り方をされないためにどのような配慮をされましたか?』ぐらいの意味合いだったけれど……かなり問題のありそうな質問になってしまった印象も。
自分は例に挙げたある大作映画も好意的な評価です。
(あの場にいなかった多数の人にはなんのこっちゃって話かもしれません……)
最後までお話を聞きたかったけれど、次のプログラムが迫っていたために途中で離席。残念……!
長編コンペディション④〜音楽〜
#音楽
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月3日
大絶賛!
この作品に出会えたことは今回最大の収穫!
シンプルで下手にすら思えるアニメがここまで快楽性を経て、しかもコメディとしてもゲラゲラと笑えて、音楽もきちんと主役であった!
本作の存在そのものがロックだ!
みんな、来年の1月に公開したら観よう! pic.twitter.com/gCddv98ek0
大橋裕之の原作『音楽と漫画』を原作に岩井澤健治監督がアニメーション映画化した日本の作品。制作期間は約7年、作画枚数は4万枚にもおよび、全編をロトスコープ&手書きで制作されている。
世界4大映画祭の1つ、オタワ国際アニメーション映画祭にて、長編コンペディションのグランプリにも輝く。
またフェスのライブシーンでは実際に小規模ながらライブを敢行し、お客さんをネットで集めて、10台ものカメラで撮影したという作品。一見するとアニメを作っているのか、実写映画を作っているのかわからない話です。
今回自分にとって非常に大きな収穫は今作に出会えたことでした。
線の引き方やキャラクター造形はシンプルながらも、なぜか惹き込まれる味わいがあり、また4万枚も使ったというのも納得の激しい動きもあるかと思えば、中には30秒ほど一切動かないシーンもあるなどメリハリが効いていました。
何よりもコメディとして面白く、自分も含めて会場中何度も笑いが起こっていたほど!
間の取り方が天才的なんだよなぁ……
笑いの種類としては……スリムクラブに近いのかな?
下手だと断じる人もいるでしょう。
声優陣の演技なども含めて、決して日本の商業作品や他のコンペ出展作品と比べても技術的に特別抜けた作品ではないかもしれません。それでもこの映画が示したテーマである『ロックとは何か?』というものに対して一切の妥協なく、どんなロックバンドよりも如実に語っているような気がします。
この次に行われたメイキングトークにて『2019年中に完成させたかった』と語り、その理由が『なつぞらやアニメ映画がたくさん作られて、アニメ業界が盛り上がるから』というものでした。監督は『海獣の子供』や『天気の子』などと本気で戦うつもりだったようです。
もちろん単純な比較はできず、制作状況なども大きく異なるとは言え『音楽』が示した魂はこれらの作品に匹敵、あるいは超えた箇所もある、と自分は評します。
2020年1月から新宿武蔵野館を封切りに公開される本作。
決して公開館数は多くないのでしょうが、要注目の作品です!
せっかくだから監督にもう少し直接お話を聞けば良かったかな?
こういう時に怖気付いて人と話せないタイプです。
長編コンペディション⑤〜Ville Neuve〜
そして長編コンペディションの5作目に鑑賞したのがカナダから来た本作。ケベック州にて起きた独立をめぐる国民投票のキャンペーンの最中に再開する元夫婦の物語。
最初に言っておきます。
ごめんなさい。
自分は上映開始2分で気がついたのですが……今作は気力・体力が十分でないと全部見るのが難しいかなぁ。
白黒ベースの映像美と淡々と物語が進む、まさしく映画的な作品のように感じた。だからこそ、元々単なる娯楽アニメ映画オタクであり、体力もガンガンに減らされてしまった自分にはなかなか辛い映画に……
記憶も何度か飛んでおり、評価ができません。
今作の失敗で体力の限界を感じ、その日最後に見ようと思っていたプログラムは諦めて新千歳空港温泉に向かい、すぐにぐっすり寝ました。
1日中映画をみて気力・体力が残っている人はすごいなぁ…と改めて実感。
長編コンペの予想
では、Ville Neuveは上記の理由から除外せざるを得ませんが、個人的な長編コンペのグランプリがどの作品に輝くのか? という予想をしていきます。
グランプリは……正直、どれでもOK!
え、4作品ともグランプリの可能性があるの? と思われるかもしれませんが、審査員の方が何を重視するのか、によって結果が変わるかと思います。
- 物語の展開のうまさや社会批評性であれば『失われた体』
- 前衛的で尖ったアニメーション技法であれば『The Wolf House』
- カメラワークやCG技術など新しい手法と叙情性を重視したら『Awey』
- エンタメ性と日本アニメの特徴でもある音楽との融合では『音楽』
『Ville Neuve』も記憶は曖昧だけれど、王道的とも言える映像表現なども含めてこちらも上記4作品とは全く作風が異なり、どれも違ってどれもいい、と感じました。
この5作品を選んだ意図を考察すると色々と見えてくるものがあって、いいプログラムに感じました。
個人的には『音楽』が受賞したら嬉しいけれど、多分映画祭向きではないのかなぁ……
予想ではアニメーション技巧を重視して『The Wolf House』になるのかな、と思います。
でも、重ねて言いますがどれもみんないいです。
終わりに
というわけで、自分の新千歳空港国際アニメーション映画祭はこれにて終了!
いやー……面白かった!
でも、やっぱり自分はエンタメアニメオタクなんだな、というのを痛感する結果にもなった印象。あとはキャストインタビューよりも、スタッフの話を聞く機会が多い本映画祭などの場は非常に重要だな、と感じました。
あまり優れた鑑賞者ではありませんが、今後も長く続くように応援しています。
11月4日は京都へ!
余談
この日のうまうまラストはラム肉のステーキ。
濃厚でいい味をしており、好きだなぁ……