今回は『さんかく窓の外側は夜』の感想記事になります!
公開延期せずに公開してくれるだけで、ありがたいの
カエルくん(以下カエル)
「300館クラスの大規模上映で、緊急事態宣言もある中で公開を延期しなかっただけでもありがたいね。
どの映画もすごく考えている最中だと思います……」
亀爺(以下亀)
「洋画は大作はほぼ全滅、邦画も大作は公開延期の作品も目立っておる。
エヴァも延期してしまったしの……映画館は開いているだけに、厳しい判断を迫られておるの」
カエル「こういう時こそ、しっかりと盛り上がってほしいね。
みんながWINWINになることを望みます!」
亀「それでもレビューはしっかりとやってい苦かの。
ちなみに今回は途中まで原作を読んでから映画を見に行っておる。
それでは、映画の感想記事のスタートじゃ!」
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#さんかく窓の外側は夜
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年1月22日
原作途中まで既読
すんげぇ中途半端な印象かなぁ
前衛芸術ばりに尖ったシーンもあるもののエンタメ、BL、オカルト、ホラー、役者映画…どの視点で見ても中途半端
原作を大改編した割にはその昇華にうまくいったのかすごく微妙な作品に
語りづらいなぁ pic.twitter.com/uSVs0qq33o
生半可に原作を読まない方が良かったかもしれんの
カエル「今作の場合、原作を4巻まで読んで劇場に向かいました。
それ以上は時間の都合上読めなかったのですが……今作に関しては、むしろその予習が大きな障害となってしまったようにも感じられます」
亀「普段であれば原作を読むことによって、どこをどのように改変したのか、それが映画的にどのような意味合いを持つのか? などと言ったことを考える手助けになる。
わしは原作に忠実である必要はないと思っている方ではあるが、しかし今作の場合はその改変があまりにも目立ちすぎた。
タイトル、基本キャラクター設定などを借りた全くの別作品と思った方が、きっと楽しめるじゃろう。
その意味でもかなり面食らう内容であったことは、はっきりと伝えておきたいかの」
原作を読んでいない、全く知らない方との評価の乖離が大きそうだよねぇ
問題はその改変が意味を持ったのか? ということじゃな
カエル「原作はホラー・サスペンス要素だけでなく、BL要素もある作品となっていますが……そこもかなり脱臭されているよね。
ソフトBL作品と言われているけれど、あまりその手のジャンルに手を伸ばさない爬虫類としては、かなりガッツリと描かれているようにも感じられたかな。ただ、この映画版はその要素もあるものの、弱くなっていて……これだとバトルのないワンピースとか、意味がわかるボーボボというか……1番大事な部分が抜けているようにも感じられるんだよねぇ」
亀「途中までしか読んでいない身であまり語るのもなんじゃが……わしにしてみれば、原作付きの映画版としてはかなり辛口の評価にならざるを得ない。
それくらい、根本から物語を壊しておる。
では、それをしただけの映画としての価値があったかというと……どうじゃろうな。評価ははっきりと割れておるようじゃが、わしはそれを感じなかった。
単純に原作の長所・味わいを壊し、別の要素を中途半端に入れただけの作品にも思えてしまったの」
原作つきの作品として
その、原作付きの作品としての変更点について考えていこうか
まずはなんといってもBL描写の薄さじゃな
カエル「今作が人気を博したのはBL要素もあるところだと思っていて……キャラクター造形も主人公の三角は原作だと文化系ながらも鍛えていて、ガッチリとした体型なんだよね。だけれど、映画版では細身となっていて、弱よしく感じるというか……
その変化自体は別に構わない部分ではあるけれど、キャラクター描写に関してはさすがに漫画の方が良かったかなぁ」
亀「主人公コンビのある種の一方的な愛情関係ながらも、それを嫌々ながらも受け止めている構図などが、キャラクターとして際立っておったからの。
しかし映画版ではそこがなくなっておる上に、心霊現象中は気持ちいいとか、そういった部分がなくなってしまっていた。
わしは今作はホラーやサスペンスとしてよりも、BL要素が強い作品だと感じておるので、そこを脱臭してしまうのはもはや解釈違いどころか、原作無視も甚だしいとファンならば声をあげるレベルじゃと思っておる」
これが許されるならば、ドラゴンボールが単なるラブコメ映画になっても許されるべきなんじゃないかなってくらい、原作を壊しているよね?
……わしはそこまで極端なことは言わんがの
亀「また、キャラクター描写としても今作は微妙なところが多い。
非浦英莉可などはもっと可愛げのあるキャラクターのようにも思えるが、今作の場合は不気味な部分ばかりが目立つ女子高生になっておるの。
幽霊の払い方もサッと消え失せてしまうだけであり、原作の投げ飛ばす、体の中に入れるなどの描写はなくなっておる。その消え方も映画として見ていて、あまり特徴を感じられず面白みが少なかったの。
ただ、一方で原作が抜群に面白いかと言われると……わしもそこはかなり疑問符がある。改変は必要じゃし、映画向きの題材ではないと思うが、それにしても改変があまりにも多かったのではないじゃろうか」
映画としての評価
ではでは、今度は1作の映画としての評価といきますが……
ここもわしはすごく微妙なんじゃよ
カエル「なんていうか……全部において中途半端な印象なんだよねぇ。
今作って大別するとホラー・サスペンスに該当するだろうけれど、じゃあそこまで怖かったかと言われるとそんなこともなくて……BL要素もあるけれど、それもメインじゃないし。
じゃあ何がメインだったのか、と言われると……なんだろうね?
全体的にはうまくまとまっている気がするけれど、逆にいうと、まとめすぎていて、個性がないようにも感じられるかなぁ」
亀「最も個性的だったのは映像の作り方だったのかもしれん。
その意味では、うちでやっているYouTube番組の方でもコメントをもらったが、同じCM作家出身ということで中島哲也を、もっともっとマイルドにしたような感じと言えるかもしれんの。
ただし、それが面白かったのかと問われると……どうじゃろうな。
個性を感じるほどとは、わしは思えんかった。
今作に限るものではないが、映像表現としては”エンタメ性と芸術性”のバランスの取り方が重要という部分もある。映像が尖れば尖るほど、それについていける観客は限られてしまう。
今作の場合はそれが確かに映像が鋭利だっというか……鋭い部分を感じさせつつも、エンタメとしてのバランスが取れておる。
しかしそれは尖った2つが融合しているというよりも、尖った部分をなんとか丸くして融合させたという方が近いのではないかの」
結果としてはこの映画がジャンル映画としても、エンタメ、あるいは前衛的な映画としても中途半端だったのでは? ということかなぁ
1月公開とはいえ、年間ランキング選定の時にこの作品を覚えている人がどれだけいるのか、ということじゃな
カエル「もちろん、全部が全部傑作である必要もなくて、単に笑って楽しめるポップコーンムービーやファミリームービーも大切なんだけれど、それともまた違う感じなんだよねぇ」
亀「バディムービーとして楽しむという手もあるかもしれんが、わしは長所がなくて弱いという印象を受けてしまった。
1ヶ月後にこの作品の話をしている人がどれだけいるのだろうか、という問題でもあるかの。
何よりも、監督などのスタッフがこの原作に惚れていないことがよくわかってしまった。
この原作を渡されて『どのように映画化するか』をしっかりと考えて、原作を改変して映画化した。そのやり方、映画にするときのあり方ばかりを考えてしまっているようにも感じられる。
結局は120万部売れているというネームバリューが欲しかっただけなのではないか? と疑ってしまうの。
その冷めた感覚が伝わってきてしまう。これはわしの想像ではあるが、原作ファンや原作を読めば読むほど違和感を抱くであろうし、ファンは嫌悪感にまでなってしまうのではないのかもしれんの」
役者について
キャラクターを脱しない演技たち
次に役者について語っていきましょうか
といっても、ここも難しいんじゃがな
カエル「う〜ん……良い、悪いというのともちょっと違うんだけれど……今作のような作品は役者の魅力が伝わってくるような演技を楽しむのも1つの重要なポイントだと思うんだよ。
あんまり印象が良くない言葉かもしれないけれど、アイドル映画的というか。
それこそ岡田将生、志尊淳の魅力、役者としての面白さが伝わって来れば、それで全部OKになると思うんだけれど、それもあんまりなかったよねぇ」
亀「漫画原作ということもあるのかもしれんが、人物というよりもキャラクターの印象がとても強かった。だからこそ、そのキャラクターたちの内面の変化などの人間味を楽しむというよりは、より強烈なキャラクター性を楽しむという方向性の作品であるじゃろう。
しかしの……わしは、それに関しても色々と思うところはある。
やはり原作ほどキャラクターの魅力が強く感じられないし、深みもなければ、名演だとも一才思えなかった」
これは物語の作り方もそうだけれど、なんでそうなっているのかが、よくわからなんだよねぇ
キャラクターの行動原理やパターンが、物語ありきのものになっているからの
カエル「例えば中盤から後半にかけてある大事な場所に登場人物が集結するけれど、なんでみんな申し合わせたようにタイミングよく集まるのか、よくわからないんだよね。
この映画ってそういうことが多くて……キャラクターの行動が、全て物語を動かすためにあるというか」
亀「この辺りをうまく演じてキャラクター以上のものを発揮するのが役者の力であると思う。
この映画の演技は悪い意味でキャラクター的であり、アニメ的じゃ。
もっともっと人間味のある動き、あるいは仕草、声色などで表現すべきことを、表現しきれていない。
その結果、キャラクターの表面上の……”性質”しか演じられていない。
演じるべきは”性格”などであるはずじゃ。
行動だけでなく、行動原理を伝えねばならん。
例えば癖であったり、あるいは過去、思想、ある人物に対する思い……それらを観客に伝える、あるいは伝わらずともその厚みを感じさせることが大事じゃが、それができておらん。
人間というものを描くこと、それが監督・演出家、そして主演たちの今後の課題となってくるじゃろうな」
平手友梨奈について
ちなみに、平手ちゃんに関しては
……正直、上手いとは全く思えないの
カエル「彼女に与えられた役って”いかにも呪いが好きそうな根暗な女子高生”ってやつで、まあぶっちゃけそれだけ隠のある演技、雰囲気を持つ人だと思うけれど」
亀「どうしても、彼女に関してはデビュー作の『響 HIBIKI』が比較対象になるじゃろう」
個人的には合わないけれど、平手友梨奈のデビュー作としては文句なしに最高の作品だったね
ここまでの強烈なパワーを感じさせる作品も、そう多くはないからの
亀「『響』では天才小説家としての”キャラクター”を見事に演じ切っていた。彼女は2018年で最もインパクトのある主演女優だったと語る人もいるじゃろう。
今作に関しては残念ながらそこまでのインパクトはなかった。
もちろん、毎回毎回それだけの演技を披露できるわけではないし、まだ10代ということを考えるとその必要もないかもしれんが……今の10代の若手女優が多くいる中で、彼女が生き残る方向性はどこなのか、しっかりと見定めていく必要があるようにも感じたの」
カエル「まだ映画の演技経験は2度目だけれど、アイドルを卒業して女優としてやっていくならば、方向性を探らないといけないのかなぁ」
亀「まだ10代の女の子には酷なことを言うようではあるがの。
わしは毎年毎年、10代の若手女優で素晴らしい才能をたくさん見てきておる。もちろんアイドルでも演技が上手い役者はいるじゃろう。
その点では平手友梨奈も素質は十分あると思う。
だからこそ、彼女の魅力を監督も引き出すことができていないし、平手友梨奈も自身の演技を磨くことができていないという点ははっきりと指摘したいの。
今回は厳しい意見になるが、悪いとは思わん。
じゃが、逆に上手いとも、良いとも思わん。
良いと思えるものにする……それだけのモノを身につけることが一番大変じゃが……しかしその原石となる個性はとても強い。それをしっかりと見定めるのと同時に、どのような方向性でやっていくのか、しっかりと考えてほしいの」
最後に
以上で、この記事は終了となります!
中途半端に原作を読まなければ、もう少しハマっていたか、なんならばボロクソ言えたかもしれんの……一番中途半端なのはわしかもしれんな