物語る亀

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物語愛好者の雑文

真田丸9話までの感想 ドキドキワクワクな生き残り劇

 今回で9話目を迎える真田丸の感想をあげていく。

 なお、私はこのドラマは3話づつで一区切りという構造をしていると感じたため、感想も3話ずつあげていく。

 前回の6話までの感想はこちら。

 ちなみに3話までを武田編、6話までを織田編としたが、今回は9話までは翻弄編、そして独立へ……という流れになるのだろう。

  

monogatarukame.hatenablog.com

 

  大河ドラマという長丁場において、明確な区切りというのは歴史的な大イベントがないとつけにくいが、今作は真田を扱っているという都合上、さらにそれは難しいことになっている。

 なぜならば真田の戦いというのは基本的には防衛戦であり、その領地を守るための戦いであって、大軍を率いての大戦とはならない。

 真田の強さというのは大軍に囲まれているが故にどこも積極的に手を出しづらい、ちょうど緩衝地帯であるということ、また山々に囲まれた自然の要塞であり、攻めるに難く、守りに易いという土地があるからだろう。

 それは作中でも何度も言及されてきたことだ。

 

 大河ドラマは基本的には大きなことを成し遂げた人物が主役を張るもので、近年は女性たちという直接スポットライトを浴びる活躍をするわけではないが、陰に日向に躍動するいわば裏方たちを描いてきたが、やはり目玉は万対万という大戦だろう。

 だが、真田は殆どその大戦に縁がない。

 大戦に影響を与えるほどの活躍をしているのだが、その多くは籠城戦だし、手勢はそこまで多くない事態が多い。つまり、真田が主役というのは実質大阪までないと言っても過言ではないだろう。

  

 私はこれは大きなハンデになると思っていたが……正直言おう、その予想を覆された!

   

1 小大名だからこそ描ける『ずるい』生き残り方

 今回の真田は小大名であり、今の段階ではそもそも大名ですらない。

 大きな徳川や上杉が攻めてきたら一たまりもないような家である。だが、だからこそ描ける面白さが詰まっている。

 これが大きな家であった場合、結局は自分の都合で物事を動かすことができる。相手の出方を見て、それならばこう対策しようと考えながら、権謀術数を重ねていく。

 だが小大名である真田を描いた場合、自主性というものはあまり描くことができない。なぜならば、自分の好き勝手に動いた場合、簡単に大大名たちに吹き飛ばされてしまうからだ。その代りに描くべきなのは、相手の裏の裏の裏まで読んで、どう行動し、どう発言するか、それにどう対応するかという策略の話だ。

 

 これは大大名を描いていたらできない描き方で、この一寸先は闇なんだけれども、この絶体絶命のピンチをどうやってくぐり抜け、来週からはどうなるのだろうという、ドキドキ感が面白みに繋がっている。その代わり、爽快感がなくなりそうなものだが、それが無くなっていないのがまた巧いと思わせる。

 

2 役者の『コミカルな演技』だからこそ際立つシリアス

 今作の面白さはやはり役者にあると前回の記事でも言ったが、それは今でも変わらない。だが前回の記事では真田昌幸役の草刈正雄ばかり絶賛していたが、ここまで見ると役者勢の多くが見事にエンタメとして振り切った演技をしている。

 例えばクソ真面目な真田信之も、これが本当にクソ真面目な役者がやったら『つまんない男』で終わってしまう。それがコメディ俳優でもある大泉洋を使うことによって、そのクソ真面目が騙された時の反応というのが、見事に笑いにつながっている。

 一部では『真田どうでしょう』なんて言われているが、そう言いたくなる気持ちもよく分かる。

 そう考えてみると主演の堺雅人もコメディ気質な俳優で、内田けんじ監督と組んだ『アフタースクール』(ちなみにこちらも堺雅人と大泉洋が出演)や『鍵泥棒のメソッド』でも非常に難しい役柄ながら見事に演じ分け、それでいて笑わせるという芸当をこなしていた。

 前回からガッツリと登場した北条親子も、切れ者ではあるが融通が利かないというか、少しばかり問題のある家風であるという面がよく出ていたし、最後の家康との抱擁? も笑みの裏に込められた憎しみと怒りがよく表現されていた。

 

 こういったコミカルな演技もできる役者を集めることによって、エンタメの笑いとして十分なものになっているし、その状況が切羽詰まったものだからこそ、緊張感を持続し、『緊張と緩和』のお笑い理論のようになっているのかもしれない。

   

 ちなみに一部で批判されている長澤まさみの演技も私は好感を持っている。あの時代の常識にとったらおかしな言動をしているかもしれないが、それはドラマなんだから当たり前だろう。

 それは長澤まさみがより目立つというだけで、他の役者もおかしな部分はあるし、何よりもそれを指示しているのは演出なのだから、あまり長澤まさみをどうのこうのというのはなぁ……

 

 批判等は色々あるのかもしれないし、大河なのだから硬派で重厚な作品が見たいという意見も多いにわかるのであるが、私は今回の真田丸はエンタメとして吹っ切っているのが非常に好感が持てる。

 これからも楽しんで視聴できそうだ。

(唯一真田丸だけで使うドラマカテゴリーも無駄にならなそうで良かった)

 

2016年NHK大河ドラマ「真田丸」完全読本 (NIKKO MOOK)

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 短編小説やってます。

 

 

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