カエルくん(以下カエル)
「『君の名は』の公開まであと2週間を切ったね」
ブログ主(以下主)
「そうねぇ……」
カエル「これまでの全作品レビューを終えてみて、改めて聞くけれど、『君の名は』の期待度は主の中ですごく高いってことでいいんだよね」
主「そうねぇ。今年公開の……少なくとも夏に公開するアニメ映画では一番注目しているし、期待しているかなぁ。新海誠作品にはいつも期待しているけれど、今回は特に注目度が高いね」
カエル「じゃあ、過去の作品レビューを踏まえながら、その理由を説明してもらえる?」
主「そうね。今回は特に注目する理由を語っていこうかなぁ……」
1 新海誠の『進化』
カエル「このタイトルはダジャレのつもり?」
主「そんなわけないだろう!! いや、本当に偶然だよ、偶然」
カエル「じゃあ、まず進化っていうのは何か、説明してもらおうかな」
主「元々新海誠は他の作家と違って、プロの世界で誰かの下について、演出等で注目されて世の中に出てきた作家ではないんだよね。アマチュアの世界で評価されて、そのまま賞をとって商業作家になった。
だから、すごくいい部分もあったけれど、作品としては微妙な部分もあった」
カエル「どの作家も長所があれば、短所もあるものだけどね」
主「まず、『ほしのこえ』は本来商業用ではないから少し事情が違うものの、個人が作り上げたという点は本当に素晴らしいけれど、商業作品としては少し辛い作品になっていると思う。
まあ、元々商業用に作ったわけではないから当然だけどな」
カエル「その次に作ったのが『雲のむこう、約束の場所』だね」
主「だけど、これもまた成功作かというと、難しいところがある。SF作品だけど、その前半と後半で話が切れてしまっているし、わかりづらい作品になってしまっている。ただ絵のクオリティは上がっているし、成功作ではないかもしれないが、娯楽作品として商業として出せるものにはなっていると思う」
カエル「まあ、そうだよね。少なくとも次の作品を作ることができるわけだし」
『秒速』以降の成長
主「そして『秒速5センチメートル』でブレイクするわけだ。個人的に大好きな作品でね、最大の武器である圧倒的な絵の美しさと、物語の叙情性(空気感)を獲得するけれど、受け手の感性に大きく頼って賛否の分かれる作品になった。
好き嫌いはあるけれど、代表作と呼べるものが出来上がったわけだ。
だけど、1本の『映画』と呼べるかというと、これもまた微妙だと思っている。結局は3本の短編を繋げた作品だから、『雲の向こう』で短編2本を繋げたのと同じような作品なんだよね」
カエル「……さっきからすごく文句を言っているように聞こえるけれど、大丈夫?」
主「まあ、それぞれの作品感想でも書いたことだからね。
そしてその次の『星を追う子ども』は……確かにジブリの模倣が強すぎるきらいはあるけれど、この作品において短編を繋げた作品ではなく、1本の長編映画として完成されているんだよ。
星を追う子どもは、確かに作品自体の評価としては微妙かもしれないけれど、個人的には新海誠の『進化』を語る上では最も重要な作品だと思っているんだよね。ファンタジーというジャンルもあって、新海誠の最大の武器である『叙情的な共感性』はなくなったけれど、今になってみればここで模倣として得たものは大きい。それは後で話すけれどさ。
ターニングポイントになった作品はたくさんあるけれど、特に星を追う子どもは大きいんじゃない?」
カエル「そして『言の葉の庭』に繋がるわけだけど……」
主「ここで秒速と同じような絵の美しさなどから出る『叙情的な共感性』を得ながらも、1本の映画として短編にわけることなく、話を展開させてきたんだよね。
この流れを見るとさ、それまでの武器である『絵の美しさ』とか『空気感』を秒速にて確立したことに加えて、その後の作品で『物語性』も獲得しようとして、映画として大事な要素を少しづつ獲得しているのがわかる。
秒速を見た後も感動はしたけれども、『物語としての完成度』は課題だと思ったからこの方向性は大正解だと思うよ」
カエル「……なんかスッゲェェェェェェ偉そうなのはこの際置いておくよ……」
2 新海誠が獲得したもの
主「映像の美しさ、空気感は元々素晴らしかった。そこに物語性も獲得し始めた……でも大きな課題として残ったのは『キャラクター性』なんだよね」
カエル「キャラクター性?」
主「それまでの新海誠作品てさ、正直言うとほとんど同じキャラクターだったんだよね。男は心のどこかが冷めた男で、女は疲れたOLか、少女なら黒髪ロングの文学少女。ある意味、オタクらしいといえばオタクらしいキャラクター像だよ。
それはそれでアリだけどね。スターシステムとしてやっていくというのも一つの手だし、特に新海誠みたいに監督以外に脚本もやって、小説も自分で書くとなると、どうしても似てしまうのは当然といえば当然かもね」
カエル「まあ、確かにね。基本的に大人の女性は彼女と彼女の猫の主人公と同じだし、男は村上春樹の小説に出てくるようなキャラクターのような気がするよね」
主「だけど『星を追う子ども』において、その表現の仕方が少し変わったような気がした。頬を染めたりさ、キャラクター性を増したんだよね。『言の葉の庭』はまた元に戻ったけれど、同時上映の『だれかのまなざし』はキャラクター性も発揮した。
そして一番驚愕したのは、Z会のCMなんだよね」
主「この短いCMにおいて、女の子がそれまでにない『崩した』演技ができている。男は相変わらずだけどさ。
これを見るとリアルな人物ではなく、アニメ的なキャラクターを描くことができるようになったんだよね。これによって描ける人間の幅が増えたと思う。これは何の作品の影響かといえば、やっぱり『星を追う子ども』を書いたからだと思うね」
カエル「同じCMでも大成建設も良かったよねぇ」
新海誠 大成建設 CM アニメ 「ベトナム・ノイバイ空港」篇
主「これを見てもわかるけれど、秒速とかのリアルな作画とアニメ的な作画を融合させることに成功しているんだよね。
じゃあさ、こういうことができるようになった新海誠の最新作はどうなると思う?
期待値は上がるでしょ?」
カエル「絵の美しさ、空気感、物語性、キャラクター性を備えたら、あとはバランスを整えるだけだもんね」
主「だから、『君の名は』は名作になるよ、きっと」
音楽の使い方
カエル「あれ? 音楽の使い方も理由にあるの?」
主「もちろん! 例えば、『秒速』にしろ『言の葉の庭』にしろ、音楽と絵が合わさった瞬間に最高のカタルシスをあたえてくれるわけだ。
ここからわかるように、音楽の使い方やセンスは抜群にいいんだよ。それが映画的な使い方かどうかは意見が分かれると思うけれど」
カエル「でも元々が名曲だからねぇ」
主「そう。元々も名曲だから、それだけ訴えかける力があるわけよ。だから名曲のMVなんて言われることもあるわけじゃない。
だけど今回はRADの新曲を使うわけじゃない。予告を見ると2曲くらい使うのかな? 今回はいつもと違って、既存の名曲じゃなくて新曲を扱うわけでしょ。もちろんRADだから一定以上のクオリティの曲を仕上げてくるだろうけれどさ、そこがまた新しい新海誠って感じがして、すごく楽しみだよね」
最後に
カエル「さて、超上から目線だけど、これだけ期待してますよってのが伝わったかな?」
主「……なんだかさ、その上から目線ってよく言われるけれど、本人には自覚があまりないんだよねぇ」
カエル「……それって相当やばい状態だと思うよ」
主「いやいやいや、素直なだけだよ。お為ごかしなことも言っていないしさ、期待しているのは本当だから。
今年は結構邦画界もいい作品が多いけれど、その中でも一段と輝いて欲しいね。新海誠ここにあり! ってところを見せて欲しいよ。
新海誠の真価が問われるね!」
カエル「……親父ギャグで締めるのかよ……何はともあれ、2週間が楽しみだね!!」
『君の名は』の試写会に行ってきました
カエル「……と書いた、このタイミングで君の名はの試写会の感想を書いていくんだけど……」
主「……実はさ、上の記事は試写会に行く前にすでに書き上げていたんだけれど、今となっては知らねえよって感じだよね……証明しようがないし。なんか答え合わせをしてから、解答用紙に書き込んだみたいなことになったなぁ」
カエル「では、当たり前だけどネタバレなしの感想をしようか」
主「まずは一言。
新海誠史上最高の名作であり、今年のアニメ映画邦画部門のトップに躍り出ました。
うまさの意味が違うけれど、『ズートピア』クラスの傑作だな」
カエル「おお! そこまで言う!?」
主「今年の邦画界は本当にレベルが高いけれど、この作品もそう。シンゴジラほどではないけれど、アニメ映画界における一つの事件だと思う。新たなアニメ映画界の巨匠が生まれたかもしれない」
カエル「おお! ちなみに、映画館で見る意味はある?」
主「めちゃめちゃあるよ。とにかく、この映画を映画館で見ないのは本当に勿体ないから。
本当に楽しみたかったら、過去作も見返したほうがいい。特に『秒速』と『星を追う子ども』と『言の葉の庭』は必見。そこまでいったら『ほしのこえ』と『雲の向こう』も見ちゃえ!! 損はしないよ」
カエル「おお!! まじか……そこまで言うなら、見てみようかなぁ」
主「自分も公開したら映画館に行こうと思います。パンフも欲しいし。
感想記事は公開当日にアップしますが、シンゴジラ並みに長くなりそうだなぁ……」