今1番面白い少年漫画は? と聞かれたら、私は『火ノ丸相撲』と答えることにしている。何でって1番面白いからに決まってんだろ!
という久保帯人ばりの帯ネタは冗談としても、この意見には結構同意している。少なくとも、ジャンプの中では今1番面白い漫画だと私は確信している。
以下ネタバレあり
圧倒的熱さ
以前こちらに記事でも紹介したのだが少年漫画の面白さとは『明確な勝利条件に挑んでいく』ことだと考えている。
火ノ丸相撲の場合は『大相撲の横綱になる』という大きな目標のために、体が小さいというハンデも物ともせず、目の前の国宝と呼ばれる敵たちを倒すという典型的な少年漫画になっている。
今巻ではその強敵がまさかの1番の味方であった小関部長となった。この対決は今までと違い、1番身体能力に恵まれなかった火ノ丸と、環境に恵まれなかった部長の正面から張った名勝負が繰り広げられている。
この辺りは胸が震えるところがあって、それまでは持ち前の優しさから全力を発揮できないとされていた小関部長であるが、そのリミッターを解除して全力で火ノ丸と対峙している。その時の実力は国宝に一歩も譲らず、ほぼ互角に戦い通した。
私が火ノ丸相撲のうまさを感じるのはこう言ったシーンであり、最近は人気が落ちると新キャラを入れてテコ入れをする作品も少なくない。それはそれでいいのだが、そのせいで今まで登場していたキャラクターの影が薄くなり、終いにはほとんどフェードアウトしてしまう漫画もあるほどだ。
これも1つの創作術ではあるものの、それでは過去に登場したキャラクターは使い捨てで終わってしまうのかという残念なことになりやすいが、火ノ丸相撲は全てのキャラクターの見せ場を作り、過去との確執と課題、それを乗り越える瞬間を与えてくれる。
それは少年たち選手のみでなく、大人たちもまたいい味を出している。どうしても指導者側というのは前線に出て戦うわけではないし、実力はあってもその競技からは一歩引いた立場になるため、魅力的に描くというのが難しかったりする。
しかし火ノ丸の場合は柴木山親方はもちろんのこと、レスリング部の顧問や他の生徒にも見せ場を与えてくれる。これは簡単なようでいて、中々出来る事ではない。
肝心の絵の力というものも、迫力満点でありこの巻ではないが、久世の眼力が2ページに渡って描かれたシーンなどというものは、非常に身が震える思いがしたし、第73番の『唯一人、勝者のみ』のシーンも気迫あふれるものになっている。
これは素晴らしい場面である。
さて、千葉大会も終わり全国大会へと駒を進めたが、ここで新たなる国宝の日景典馬との野良試合で幕を閉じることになったが、これから火ノ丸は全国の猛者とどのように戦っていくのか、この先の展開も目が離せない。