ハロルド作石の『RiN』の最終話が掲載された。
私は毎月、月マガを楽しみに買っているのだが、その中でもRiNは特に好きな作品の1つで、『ましろの音』や『ポールルームへようこそ』が休載ぎみの中、毎月毎月相当な量の原稿を掲載して一定のクオリティを保っているので驚愕した作品でもある(同じ意味で川原正敏作品も非常に好きだ。新連載も面白いし)
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さて、最終回の感想に入るが、私の感想としては少し物足りない印象のものになってしまった。
ここまでの伏線やお話が駆け足で一気に回収されていく、怒涛の展開で幕を閉じることになってしまった。
特にその煽りを食ったのは本多さんであり、確かに彼氏がいてもおかしくない(というよりもいないとおかしい)風貌なキャラではあったものの、一応メインヒロインの凛のライバルであり、伏見の憧れの人物でもう一人の運命の人という重要なキャラ付けの割に、適当なラストになってしまったことは否めない。
なぜ今月でラストになってしまったのかは来月のインタビュー記事を読むしかないのであるが、正直解せないということが私の本音である。過去の話は決着がついたとしても、伏見と瀧が描く『トーラス』の伏線であったり、姉と自分の病気のことであったり、1つ1つの設定にはオチというか回収されてはいるのだが、その手法が少々強引な印象を受ける。
この辺りは私のような人間からすると少々邪推してしまうところでもあり、どちらかというと打ち切りのような雰囲気すら感じてしまう。
だが、実際にRiNが打ち切りかといえばおそらくそんなことはないと思う。出版社の内部事情はわからないが雑誌を上げて推されていた作品でもあるし、それなりの売り上げも(多分)あれば、ハロルド作石という名前もある。そもそも、正直な話微妙な聖域感のある作品も掲載されている月マガだから、もっと切る作品は沢山あるように思うし。
書くネタがなくなったのか、他に書きたいものができたのか、それともこれが本来の形なのかはわからないが、そのラストとしては少し物足りない印象だ。
RiNで描きたかったこと
しかし、今回のラストによってハロルド作石がRiNの中で描きたかったものは、すべて出ていたように思う。
最近読んだ内田樹の本に書いてあったのだが「文章を書いていると神というか、霊感というか、そのようなものが自分に乗り移って書いていると思う時がある」という話があった。
内田は大学教授であり創作作家ではないものの、同じく何かを作り出すということを専門としていることからこのような発言に至ったのであろうが、ハロルド作石が描きたかったものは『まんが道』や『バクマン』の描く漫画家のなり方(成功への道)というよりも、広い意味での作家が創作する際に至る何らかの超常的な体験に支えられた、業や奇跡のような体験をテーマにしたかったのだろう。
やっさんの正体が自分の魂ということも、作品に込める情熱や、真摯に作品に向き合ってきた証拠ということだろう。
石堂凛に対して他のみんなは能力を当てにしている感があったし、瀧などは「石堂さんがどう感じるかな」などと言って、その能力によってどのような超常現象を見ることができるか期待している節もあった。
だが、伏見は決してそのような視点に至らなかった。
ただ1人の少女として凛を見つめていた。
それは決して凛という少女が特別な存在ではなく、自分の魂と向き合ってその声を聞くことができれば、その形は様々であっても超常現象のような体験というのは簡単に起こるということを示唆しているのだろう。
最後のルーさんと伏見の会話が非常によくて
「創造か破滅か……それがあなたの進もうとしている道よ」
「危険の伴わない創造とかはありえません
とどまることなく前に進んでいきます!」
という1シーンなどはハロルド作石の作家宣言にも思えて、また次の作品を創るという新たなリスタートを切るという意味においても、これから先の作家人生を生きる上においても、非常に重要なものだろう。私も強く惹かれた部分である。
これが書けたからテーマとしては一貫しているし、もう終わり時にしたのかなぁ……なんて思ったり。
RiNの物語はここで終了してしまうが、来月のインタビューなどを読めばまた印象が変わるかもしれない。できればもう少し連載して欲しかったし、駆け足にならずに走って欲しかった感もあるが、作者がこう決めたのであれば致し方ない。
ハロルド先生、お疲れ様でした。
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