カエルくん(以下カエル)
「久々の漫画感想記事だねぇ」
亀爺(以下亀)
「ここ最近は映画感想ばかりじゃったからの」
カエル「テレビアニメも全然見れてないし、漫画感想はちょっとずつ上げているけれど、小説などの感想に関しては数えられる程度だしねぇ」
亀「見たい映画が次々と増えて行く、とは語っておるが……それにしても映画に偏りすぎかもしれんの」
カエル「今週もオールナイト含めて7本見て、それでも見たいのが尽きないって言っているからねぇ……」
亀「……映画館に就職なりバイトした方がいいと思うがな。
それでは久々の漫画感想といくかの」
あらすじ
30歳OLの多和田聡子は独身で彼氏もおらず、仕事一辺倒の日々を過ごしていた。同じ職場にが学生時代に付き合っていた椎川がおり、ある日彼に呼び出されるとその席には椎川の結婚相手がいた。
今更何も起こらないと高を括っていたが、心の奥底ではモヤモヤとしたものが残ってしまう。
そんな日々を送るある日、深夜に公園でひとりサッカーをしている女の子みたいな男の子である早見真修に出会う……
この漫画がすごい! 2017オトコ編 第2位を受賞した。
登場人物紹介
多和田聡子
30歳OL、彼氏なしの独身。どこにでもいるような普通の女性。
学生時代はフットサルサークルに所属するなど、サッカーは得意。仕事一筋であるが、特別仕事が大好きというわけでもない。
ある日、真修に出会い、最初は子供として接していたが、徐々にその存在が聡子の中で大きくなっていく。
早見真修
一見少女のように見える少年。
深夜の公園で汚い服をきながらサッカーをしているところ聡子に見つかり、交流を深めていく。サッカーが好きでクラブに所属していたが『レギュラーが取れなかったら無駄だからやめなさい』という父親の言葉に従い、辞めようとしていたところで聡子と練習を重ねていく。
父親と弟がいる。
1 感想
カエル「実はこの作品、1巻の発売直後に買って、感想記事を書こうか迷っていたんだよね。だけど結局断念したけれど……」
亀「もともと、ネット広告でもたまに見るような作品じゃったからな。グロテスクなものが多い印象じゃったが、こんな純粋で美しいものでも宣伝されるんじゃな、と少々驚いていたわい」
カエル「でもさ、何でこの作品の記事を書かなかったの?」
亀「色々と記事にしたいものも多かったが……1番大きいのは『設定に対する違和感』かの」
カエル「違和感?」
亀「この作品の紹介にもあるが、本作はいわゆる『オネショタ』ものじゃ。年上のOLが可愛らしい少年と交流を含めていくうちに……という奴じゃな。
じゃが……これは1巻の作者あとがきでも書かれておるが、この作品、いうほどオネショタをしているかの?」
カエル「それは何、あのオタク的な要素が足りないってこと?」
亀「というよりも……少年役の真修が女性的すぎるわけじゃな。単純な話として、年上のOLと少年の交流を描くのがわかるわけじゃが……これだと『男性と女子の交流』とあまり変わらん印象があった」
カエル「OLの描き方はうまいよね。多分、作者の『高野ひと深』という名前を考えても女性だと思うけれど……1話の年齢も立場も微妙なところにいる女性像というのがよく描かれていて、うまいなぁ、と思ったよ。
特に『うっわ微妙ー』のシーンとかは、すごいなぁって感心した」
亀「そちらが非常にリアルじゃからこそ、この少年にリアリティというか……少年らしさを感じなかったわけじゃな。
それが違和感としてあったからこそ、惜しい漫画じゃと思った」
2巻の変化
カエル「だけどさ……まあ、これもあとがきに書いてあることだけど、2巻から真修のキャラクターが一気に生き生きとしてきたように思えるんだよね」
亀「一気に変わった気がするの。
もしからしたら他の子供が出てきたりして、差別化が図られているからかもしれんが……いたずらをし始めたりなどして、そのキャラクター描写に少年らしさがたくさん出てくるようになってきた。
特に大きなキャラクターの変化があるわけでもないんじゃが……」
カエル「すごく少年らしさが出始めてきたよね」
亀「その意味ではあとがきにも描かれている H澤さんもすごいが、それを絵にすることができる、物語にすることができるという、作者の技量もまたすごいものじゃな。
この時代の……小学生の頃に持つ『性が分化されていない美』とでもいうのかの、そういうものがしっかりと出ておるように思う。
いやいや、大したものじゃな」
2 男性向け? 女性向け?
カエル「でもさ、この漫画って『オトコ編』でノミネートされていたんだね。結構このマンガがすごい! のノミネートってオトコ、オンナで分けると微妙なものもあると思うけれど……」
亀「『3月のライオン』なんかはそうじゃの。掲載雑誌は断然男性向け漫画雑誌じゃが、こう言った賞にノミネートされるときは女性向けとして扱われることもある。
例えば……そうじゃな『高杉さん家のおべんとう』や『応天の門』などもそうじゃが、男性向け、女性向けというのも一言では語れない作品かもしれんの」
カエル「そうだよねぇ……」
亀「じゃが……これはあくまでも持論じゃが……『保護する系漫画』とでもいうのかの……1つの特徴で、わしが思うところがあるんじゃな」
カエル「え? それはどういうこと?」
亀「例えば、こう言った『大人が子供を偏愛する』という漫画だといかにも『ロリコンな男向け』と思われがちじゃが……実は女性向けとされる作品にも多くこのモチーフは登場する。
例えば古典でいうと源氏物語じゃな。あれもいい年をした大人が、子供を妻に貰い受けるが……源氏物語はどちらかというと、女性に人気じゃろ?」
カエル「でも『ロリータ』とかは男性の偏愛じゃない?」
亀「そこでわしは気がついたのじゃ。
男は『幼いこと』に意味を求め、女は『成長』に意味を求めるのではないか? と」
カエル「……どういうこと?」
亀「つまり、男はロリータであること、幼い状態に意味や興奮を覚えるのであって、その子供が成長する過程を描いてしまうと『娘』となってそういった……性的な視線で見ることができないのではないか?
逆に、女性は『成長する過程』に意味を求める。その過程において、保護役の男性を『理想の相手』としてみるのかもしれんの
『うさぎドロップ』などもそのラストに賛否があったが……理想の男性としての保護者がいるのだから、その保護者と結ばれるということはおかしなことではないのかもしれん。
この漫画では微妙なところかもしれんが……今にも襲いかかろうとするほど、性が見えるわけではないの」
カエル「もちろん人によるけれど、って話だと思うけれどね」
物語の構造
カエル「でもさ、やっぱり物語は天真爛漫な結果を迎えるわけじゃないよね」
亀「基本的にこの手の物語は『子供が何の問題もないと成立しづらい』ものじゃからな。もちろん『ばらかもん』などのように、子供の側に重い設定が初期の段階で明らかにされていない作品もあるが……あれは引き取る話ではないからの。
赤の他人がある日少年や少女を引き取る、という経緯が必要となった場合、どうしてもそこに重い事柄が発生してしまうからの」
カエル「その意味ではどうしてもお話が限定されちゃうかもね」
亀「大体は親の事故であったり、突然の失踪、ネグレクト、虐待などでないと子供に赤の他人が手を差し伸べることにはならんからの。
その意味では……この先、どのようにして差別化をしていくか、物語を紡ぐか、ということが楽しみになってくるの」
最後に
カエル「でも、この作品が2位になるって思いもしなかったよねぇ……」
亀「この漫画がすごい! の1位などはある程度売れている漫画であったり、作品知名度が漫画好きの中では高い作品が推される傾向にあると思ったが……まさか、この漫画が2位になるとは思ってもみなかったの」
カエル「最初に見た時は驚愕だよね。
『え!? この漫画が2位になったんだ!』って」
亀「オトコ編というのもびっくりしたし、相変わらず基準や傾向のつかみにくい賞じゃな」