物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『劇場版 Free!-Timeless Medley-絆』感想 初見でも楽しめた1作!

カエルくん(以下カエル)

「じゃあ、ここで人気アニメの劇場版『Free!』の記事をかくよ!」

 

ブログ主(以下主)

この映画ってアニメ2期の総集編だったのね……2作公開されるという話だったから、当たり前のように1期と2期の総集編だと思ったのに……」

 

カエル「結構複雑……というのかわからないけれど、色々な展開をしているからね。

 『Free』がテレビで1期が放送。そのあとに劇場版で原作を映像化した『ハイ☆スピード』が公開されて、そのあとに『Free!-Eternal Summer-』というテレビ版の2期が放送されて、今回の劇場版2部作はテレビ放送版の総集編であって……」

主「……前回の劇場版と今回の劇場版はまた違うの? 前回のは1期の総集編とかじゃないの?」

カエル「違うみたいだね。全ての物語の大元になるのが『ハイ☆スピード』で、これはいわばEP0の扱いで、今回のはテレビアニメ版2期に総集編だから……

主「アーー!! ややこしいわ!

 

カエル「……これでもスターウォーズとかアイドルマスターに比べれば相当わかりやすいんじゃない?

 アイマスなんて765メンバーのオリジナルがあって、765メンバーと新キャラがいる『アイドルマスターミリオンライブ』があって、こちらが今度アニメ化が発表されている。

 その前に765メンバーのアイマスもアニメ化されているけれど、さらにその次にアニメ化されたのは『アイドルマスターシンデレラガールズ』の方で、こちらは765メンバーは登場しないでしょ。で、『ぷちます』は765メンバーを2頭身ミニキャラの織りなすコメディ漫画のアニメ化で、今放送中の『シンデレラ劇場』はシンデレラガールズのミニキャラ化。さらに女性向けに男性キャラばかりの……」

 

主「アーーーー!! 意味わからんわ!

カエル「ファン向けコンテンツというのはややこしさを増していく一方なので、初心者は迂闊に近寄れなくなっていくものだからなぁ……

 まあ、何が言いたいかというと、特に予習も何もせずにこの作品から『Free』の世界に入った人間なので、あまり目くじらを立てないでください、ということで……

主「一切事前情報が皆無の人間の感想ですがあしからず。

 ではスタート!」

 

 

 

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1 総集編映画として

 

カエル「じゃあ、まずは前提となる知識を何も知らないということを含めてだけど……」

主「総集編映画ってどうしてもテンポが速かったり、説明不足だったり、本来ならば必要な描写がカットされていて不満が残るものも多いと思うけれど、京アニはさすがだね。

 『響け! ユーフォニアム』の映画の時も思ったけれど、結構しっかりと物語を再構成してある。特にテレビシリーズでは3話で1つの山、6話で大きなドラマ、というように節目節目で盛り上がるポイントを作っている。

  だから映画としてそこまで退屈しないようになっているんだよ。序盤、中盤、終盤と飽きないテンポになっている」

 

カエル「この映画から『Free』シリーズに触れたわけだけど、それでも大丈夫なの?」

主「自分は大丈夫だった。序盤で過去作の説明も回想という形で少し入るし、お話としてはそこまで突飛なものじゃないから。

 主人公はトンデモナイ才能を持つスイマーで、一緒にいる親友はそこまでの実力は持たないけれど水泳が好きで……などのお話はこの手のスポーツ物語としてそこまで突飛なものではないしね」

カエル「結構わかりやすい物語なんだ」

主「もちろん、この仲間達やライバルとの関係性とか、いろいろと理解していた方が楽しめるとは思う。

 だけど、そうじゃないと楽しめないのかというと、別にそうでもないかな。

 本作品を入り口としてFreeの世界に触れて、楽しもうというのもありだと思うよ」

 

 

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キャラクターについて

 

カエル「じゃあ、ここでキャラクターについて語っていこうか」

主「う〜ん……おそらくキャラクター自体は結構この手の作品の……女性向けアニメのテンプレートのようなキャラクターが多いかな?

 なんというか……男の匂いがあんまりしないキャラクター達。現代ではそれが望まれているのかもしれないけれどね。特に声優陣もそういう作品でよく見かける人気声優ばかりだったし……

 こんな男いないよなぁ、という思いはある。だけど、それを言い出したら『たまこマーケット』のような女子高生がいるのか? という話になるわけで、まあそこは置いといていいと思う」

 

カエル「むしろ気になるのは、各キャラクターの個性だよね

主「ここが受け入れられるか? というのが1番大きくて……

 特に1番可愛らしい男の子である渚は他の男子達の顔がシュッとした、少し面長で瘦せ型に造形されているのに対して、丸みを帯びた顔立ちをしている。そしてその動きは京アニでいうと『たまこマーケット』のかんなちゃんとか、ああいうタイプの女子のようなやら若い動きをしている。

 だから声やキャラクター設定として男と説明されているけれど、見た目は女の子にしか見えないんだよ。そのギャップを受け入れることができるかどうかという問題がある」

 

カエル「真琴、レイもその中性的な部分ってあるからね。凛の言葉遣いとかは女性の敬語キャラを連想させたし……」

主「アニメーションを記号的に解釈していくとそういうことになるのかもね。

 そういう男像がダメ! という人はトコトンだめな物語だね」

カエル「ああいう男の人なんてこの世に存在しないだろう! って?」

主「……意外といるけれどね。特に最近は『可愛い男子』が流行しているから、たまに見かけたりするよ」

 

 

 

 

2 光る演出

 

カエル「じゃあ、簡単に演出面のお話もしていくとするけれど……」

主「今作は水泳の動き、水の動きなどもそうだけど、やっぱり京アニの演出力が光る作品でもある。

 例えば、ところどころで『魂』を連想させる描写が入るんだよ。空を飛ぶ2匹の蝶が戯れているシーンとか。物語において蝶は死者の魂のモチーフである、というのが通説なんだけれど、この作品では登場人物たちの魂として機能している。

 それが最大限に発揮されたのが精霊流しのシーンだ

 

カエル「あの提灯? を死者の魂に見立てて、海へと流す行事だよね。さだまさしの歌でも有名な」

主「そうそう。じゃあ、なんであのタイミングで、精霊流しが入ってきたのかというと、その行事の本質って『魂が自由に海を泳ぐ』という点から来ていると思う。

 あの時の遥はなんのために泳ぐのかわからなくなってスランプに陥っていた。泳ぐことができなくなっていた。

 だけど、あれだけたくさんの『魂』が自由に海を泳ぐ……その情景の美しさをもさることながら、それこそがまさしくFree……『自由に泳ぐ』ということにつながっている。

 その後の花火も真琴が遥に自分の進路を伝えることができた、という意味での祝福と、そしてその心の奥にある気持ちを爆発させた瞬間でもある、という2重の意味がある描写でさ、そういうところがしっかりとうまくできているよね」

 

カエル「あとは廊下の奥の光とか?」

主「そうだね。この映画では廊下を長いトンネルのように描いているシーンが多いけれど、その奥に光がある。そこに凛は飛び込んでいくけれど、遥は立ち往生してしまうあんなことを引き起こしてしまう。

 そしてオーストラリアで2人が噴水の前に座っている時に、そこには光の通路がある。そこをジッと見つめるわけだ。

 ラストになると4人でそのトンネルを抜けて光へと向かっていく……基本的なようでも大事な描写だね。

 こういうところがしっかりと出来ているからこそ、この映画はしっかりとした物語になっているんだよ」

 

 

 

3 響け! と比較した場合

 

カエル「同じ部活もので全国を目指すという意味では『響け! ユーフォニアム』とセットになる作品かもしれないね」

主「これが面白いのが……ユーフォの方は可愛らしい女の子がたくさん出てくるけれど、その内容はどちらかというと王道のスポ根ものでさ、強くなるために必死の努力と他人を蹴落とす、勝負をして他の人よりも上に行くということをテーマとして描いていた。

 その先に全国大会への道がある。

 だけど、Freeって必ずしもそういう物語ではないんだよね。全国大会を目指すけれど、むしろそっちよりも

 

『なぜ全国大会を目指すのか?』

『なぜ泳ぎ続けるのか?』

 ということの方がテーマになっている」

 

カエル「映画のタイトルが『絆』であるように、結構絆について重要視している作品だったよね

主「一般論で考えると逆だと思わない?

 男の子に他人よりも上に行く努力と汗と涙のスポ根をさせて、女の子には絆の先にあるもの、将来の進路を直視させるのが多いと思うんだよ。男性的、女性的という表現は差別的と怒られるかもしれないけれど、やっぱり他人と勝負する、ぶつかるという物語は男性的な印象がある。

 だけど、京アニは逆にしているんだよ」

 

カエル「それはなんでだろうね?」

主「う〜ん……もちろんビジネス上の理由もあるかもしれない。女性には男同士の友情の方が……腐った意味においても需要があるとかさ、女の子がギスギスの熱いバトルをするからこそ、そのバトルの裏にある百合要素も引き立つとかさ。

 だけど、個人的にはそれってギャップなのかな? って思うのね」

 

カエル「ギャップかぁ」

主「あんまりさ、この手の物語を男性的な物語にしすぎると、どの層に向けて描いているのかわからなくなるのかもしれない。ムキムキの男が熱いバトル! というのは実は男性向けの物語になりすぎるのかも。

 それを一言で表すと『ギャップ』だよね。ムキムキの男が絆の物語をやっている、可愛い女の子がギスギスの物語である……そのギャップによって物語の魅力が引き立つようにできている。

 やはり考え抜いていると思うよ」

 

 

 

最後に

 

カエル「劇場内も9割女性で、やはり女性向けコンテンツとしての面が強調されていたけれど、結構男女問わず楽しめそうな作品だったね」

主「そうね。意外と好き嫌いしないでみんな見ることができるんじゃないかな?

 自分も時々言うけれど、食わず嫌いはダメだなぁ……と思ったよ」

カエル「特にスタートのあの演出は驚いたよね! あんな光景、生まれて初めて見たよ!」

主「あれはファン向けに演出とてして画期的かもしれない。在庫を抱えないし、だけどファンは劇場に向かうし……Free、恐ろしい子! となったよ」

カエル「それがどんな演出なのかは是非劇場で確認してね! 衝撃的な体験があなたを待っているから!」

主「まあ、SNSとかでいくらでもアップされているんだろうけれどね」

 

 

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