カエルくん(以下カエル)
「ではアニメ映画の感想記事といきますか!
リトルウィッチアカデミアも2クールに入ってからは初の感想記事になるね!」
ブログ主(以下主)
「そろそろ4月からはじまったアニメも色々と感想を書いていきたいなぁ……」
カエル「主はやっぱり今期もそこまで感想を書けないの?」
主「……やっぱりと言われると心外だけど、まあ、うん……
オリジナル作品を幾つか感想書けたらいいなぁ、とは思うけれど、GW中に色々見て決めようかな? あんまり増えすぎると追うだけでも大変だしね」
カエル「もちろん、リトルウィッチアカデミアも継続で感想を書いていきますよ!
そんなわけで……今回は手短に! 感想記事を始めるよ」
1 2クール目に入って
カエル「じゃあ2クール目に入ってきて、まずは何よりも語らなければいけないのはクロア先生のことだけど……」
主「このブログではリトルウィッチアカデミアは『アニメについて語っているアニメ』という文脈で捉えている。つまり、魔法とは手書き作画のことであり、ルーナノヴァとはアニメ制作会社のことである。
その文脈で見ると色々なことがわかってくるんだけど……まず大事なのは、クロアは『科学の導入』を進めているということだ。それこそが魔法を救う道だと信じている」
カエル「14話なんてまさしくそうだもんね。クロア先生の科学の力も相まって、ルーナノヴァの危機を救うという話で……」
主「あれってどういう意味かというと、もうそのままアニメータやスタッフの負担が大きすぎてアニメ会社が崩壊寸前ということで……魔法エネルギーというのは、まあお金とか労力だよね。それが尽きるとアニメは作ることができないけれど、もう本当にギリギリで……現実を知るとアッコも反旗を翻して、ストライキを起こすような状況ということ。
そこで現れるのがクロエとその科学技術で、その力をもってなんとか労力を減らすことができる」
カエル「これはデジタル技術やCGなどを取り入れて、効率化することでアニメ制作体制をよりスマートにした、ということだね」
主「今まで手書きで全てやらなければいけなかったことが、デジタル技術でだいぶ楽になった。セル画の時代は色塗りを丁寧に1枚1枚やっていたけれど、今はデジタルでクリック一つでやってくれる。だから楽、というわけではないけれど、慣れたら効率的だよね。塗りムラとかもないし」
クロエ先生と科学技術
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
敵のいない物語
カエル「この作品ってクロエとアーシュラ先生の対立のようにも見えるけれど、そうなるのかな?」
主「そうならないだろうね。
あの構図だとTRIGER作品だと『キルラキル』の構図を連想させられるけれど、今作では徹底して『敵の排除』を描いてきた。これがアッコや物語の大目標の不在として指摘されることではあるけれど、わかりやすい悪のボスを倒してお終い、という物語では決してない。
絶対に敵は作らないし、敵は出てこないんだよ。
なぜなら、本作は『アニメを語ったアニメ』だから」
カエル「あ〜〜アニメ制作現場の人が同じ職場の人を悪くいうことはできないもんね」
主「それもあるけれど、アニメ制作って……これはどの企業も同じだと思うけれど、明確な敵っていないじゃない? 多くの部署が手を取り合って、共通する1つの目的……例えば利益の追求だったり、品質の高い製品……アニメだったらクオリティの高い作品を作ることが求められる。
そりゃ、嫌な人はいるよ? 怠け者もいるし、利益をかっさらう部署もあるかもしれない。だけど、だからと言ってその人たちを排除することが必ずしもいいことではない。むしろ、状況の悪化を招くこともある」
カエル「改革は必要だけど、排除だけが正解じゃない……」
主「だから本作は敵が作れない。これはある意味で構造上のジレンマかもしれない。
『SHIROBAKO』も確かに無能な人やトラブルメーカーはいたけれど、決して敵ではなかった。1人だけ排除されるキャラクターもいるけれど、その人はあくまでも架空の人物とわかるように過度に強調されていた。
敵がいない物語こそが、リトルウィッチアカデミアなどのお仕事ものの長所でもあり、作劇としては短所でもある。明確なゴールなんてそうそうないからね」
真の目的を知ったアッコ。その挑戦の結末は如何に……
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
OPからわかること
カエル「OPも新しくなったね!」
主「アニソンの素晴らしいところって、歌とアニメがイコールで結ばれているところだと思っていて……例えば『グレンラガン』だと空色デイズの歌詞がそのまま作品テーマに直結している。
本作もそうだよ。今回の新OPテーマがこの作品の全てを物語っている」
カエル「歌詞は完全に『特別な人なんていない、みんなヒーローになるんだ!』というものだもんね」
主「まず、スタートはシャリオを眺めるアッコから始まる。だけど、そこで追いかけるわけでもなく『地にしっかりと足をつけて』顔を上げる。
そこでズラッと並ぶ魔女たちはアニメーターやスタッフだ。そこで『誰もがヒーローになれる可能性を……』という歌詞を当ててくるのが象徴的なんだよ」
カエル「そしてダイアナとアッコのすれ違いから、アーシェラ先生とクロエ先生の過去の姿となり、手をつなぐね」
主「ここで2人の辿ってきた道が違っているとしても、目標は同じであることを暗示している。もしかしたらダイアナとアッコも、アーシェラ先生とクロエのようにすれ違うかもしれないけれど……それでも、目指すものは同じなんだよ。
ここの歌詞も『同じ未来を……』というものだけど、絵と歌が見事にマッチしている。
そしてみんなそれぞれの得意分野の魔法を披露しながらも、アッコは相変わらずかもしれない。それでも、夢に向かって必死に頑張っていくわけだ」
カエル「みんなで箒や魔法の杖を振りながら『it's show time』というわけだ」
主「そして最後は全員集合で顔を上げて終える。これは『無限のリヴァイアス』などもそうだけど、群像劇であり特定の主人公だけの物語ではないことを象徴している。ここでは色々なキャラクターが並んで、中にはあんまり活躍の場がない人もいるけれど、そういう人もしっかりと大事なスタッフの1人であるということを表している。
すごく考え抜かれたOPだよね」
2 魔法の素晴らしさ
カエル「じゃあ次に15話について語ってみようか」
主「15話って実は今最もホットな話題かもしれないよ!
『ひるね姫』って最近公開された、神山健治のアニメ映画があったけれど、この映画がやったことと、この15話って実は結構似ているんだよ。
『ひるね姫』のパンフレットを読んでいたら、作画監督の黄瀬和哉が恨み節たっぷりなの。何がって、すべてタブレットなどで書かされたから、すごくやりづらかったって。
ほら、15話でもそんな話あったでしょ? タブレットで授業をするけれど、何だかやりづらいって話。これは『デジタル技術の導入と伝統の問題』でもあって……それまで手書きで書いてきたのに、それをタブレットになるとすごくやりづらいって話でもある」
カエル「結構大物アニメーターが慣れないタブレットの操作に四苦八苦なんてお話が多く聞こえてくるよね」
主「フィネラン先生がまるで老害のようなことを言っていたけれど、あれもベテランなら当然の反応でさ。いわば、宮崎駿みたいなものなんだよ。手書きこそが至高であり、タブレットなど邪道である、という考え方。もしくは単純に効率の問題もあってさ。
どちらが正しいなんて話じゃない。どちらも等しく正しい考え方だから、余計に対立してしまう」
いよいよ本気を見せるアーシュラ=シャリオ!
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
アーシュラの魔法
カエル「そしてアーシュラ先生がいよいよ覚醒したね!」
主「あそこは監督の兄弟である吉成鋼がおそらく作画をしていると思うけれど、素晴らしい作画だったね!
あれこそがアッコが魅せられた、魔法の力の一端であると何よりも雄弁に語っているよ!」
カエル「魔法技術=作画技術ということを考えれば、ここで派手なアクションを見せることによってその説得力が一気に増すんだね!」
主「ここで動けば動くほど、人々を魅了する作画であればあるほど、本作の素晴らしさはより際立っていくんだよ!
ここで多くの作品が陥りがちなのが台詞で『すごい魔法だ!』なんて言わせちゃったりするけれど、しっかりと絵として、演出で魅せてくれたでしょ? これはハードルが高いものだけど……すごい力だよ」
3 16話について
カエル「そして最新話の16話についてだけど……まず、あの伝染病ってなんなの?」
主「あれはセルについて語っているんじゃないかな?
セル画に用いられるセルって保存が難しくてさ、失敗するとカビが生えてきたりしちゃう。色も褪せていくし、いつまでも保つものではないんだよね。
だからそれをカバーしなければいけないんだけど、手入れをするのもアニメーターの役割でもあるってことではないかな? だけど、その手入れがうまくできずに、カビが生え始めてしまった。このままではすべてのセルがダメになって、作品自体がダメになってしまうから、急いでなんとかしようということだよね」
カエル「それをファンタジーとしてみせたんだ」
主「あれだけたくさんの時間をかけて、大変な思いをするのは手入れというのは地味で長い時間をかけて丁寧に行われることだからだろう。
その手入れの大変さを描いたのがあの描写だね。そんなお話を教育的にするだけではなくて、しっかりと楽しめるファンタジーとして描いてきたのが良かったなぁ」
寒い冬山で震える日もある。それが仕事であり、クリエイターである。
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
4話と対になる物語
カエル「4話というとナイトフォールのお話だよね。ロッテの大好きな小説の話で、ファンと創作者の関係について描いて、リトルウィッチアカデミアでも屈指の神回!」
主「あのお話はあくまでも『ファンとして作品を応援する』ということを描いていた。だけど、今のアッコはみんなを救うために、クリエイターとして頑張らなければいけない。
あのイエティもギャグのように扱われていたけれど、実はすごく大事なことを訴えかけている。
つまりさ、みんながみんな好意的な反応をもらえるわけではない、ということだよね」
カエル「どの仕事にも目立たない裏方さんっているもんね」
主「じゃあファンがつきにくい、目につきにくいセプションの人はどうするのか?
そしてファンを獲得できない表現者はどうするのか? という物語でもあって……それはもう自分で自分を鼓舞するしかないんだよ。
イエティは同じスタッフの象徴であるアッコに励まされたけれど、そのあとでトボトボと雪道を歩いて帰るアッコの姿はまさしくクリエイターの心境を表している。
『自分がやらないといけない理由』を見つけるのってすごく難しいことだからね」
カエル「これはどの組織でもそうだろうなぁ……」
主「結局は良い社会というか、組織としてしっかりしていればいるほど、歯車になりやすい。『この人でなければできない!』というのは職人としてカッコ良いけれど、その人にもしものことがあったら一気に崩壊してしまう。
それを考えると『誰でもできる』って実はすごく重要で……でも誰でもできることってモチベーションを保つのは辛いことだ」
カエル「『SHIROBAKO』でいうと13話だったかな? 庵野秀明がモチーフとなったキャラクターが『君じゃないとできないと言われる仕事がしたい』と語ることがあるけれど、それと同じなんだね」
主「実際はアッコのレベルだとまだまだ『誰でもできる』レベルかもしれない。むしろ、アッコができることが他の人にできないわけがないレベルといってもいいかも……
でもさ、そういうことじゃないんだよ!
『忍耐が大事!』ってことだよ!
自分にできることをコツコツとやっていく、その先にしか成長ってないんだよ!
その先にあるのが『自分にしかできないこと』
そして『自分にしかできない仕事』につながっていく。すごく説教くさいような、当たり前のメッセージを娯楽として伝える、だからこそリトルウィッチアカデミアは素晴らしい作品なんだ!」
最後に
カエル「というわけでここいらで感想記事を終えようとしようか」
主「2期になってからも勢いは衰えないし、しかもメッセージ性もしっかりと持っていて、やはり驚愕のアニメだと思うよ。
ここまでのメッセージ性を、メタファーを交えながら見せてくる作品ってそんなに多くないんじゃないかな? それを考えると、この作品をリアルタイムで観られることは結構幸せなことかもしれない。
作画、脚本、音楽、演出、もちろん声優の演技も含めて非常にレベルの高い1作だね」
カエル「さて、リトルウィッチアカデミアは当然これからも視聴するとして……あとはどの作品の感想を書いていこうか?」
主「こういうメタファーに満ちた作品ってあまりないからなぁ……できればオリジナルを中心に考えていくけれど、GW中には決めよう」
カエル「春アニメも多いしね」

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